テスト走行後、本格的にレース戦略を建てる為、私は調べたコースマップや各チームのデータをホワイトボードに書き込んだ。
今回のキヴォトスグランプリはDUサーキットで行われる。
このサーキットは珍しい左周りのサーキットでスタートからS字のカーブに急な直線の下り坂、そして急角度のヘアピンカーブがあるセクター1。
直線を走り抜けるとS字のカーブがあり、間に急な坂とDRSゾーンを挟んで大きな90度カーブが2連続しているセクター2。
勝負を決める一直線の先にバンクが待ち構え、メインストレートに繋がるセクター3。
全長4.9kmで周回数は63周。
調べ終えると同時にミレニアムの最新シュミレーターからランが出てきた。
「すっご!良く調べられたね」
"うん、生徒の為だからね"
ランのシュミレーター記録が表示された。
記録は1分17秒
データ上は決勝レースの車体重量なのでかなり良い記録だ。
するとランはホワイトボードの一点を食い入る様に見つめた。
トリニティ・レーシング部、累須ハル:1分15秒
"知り合い?"
「知り合いも何も、ゴーカート時代からのライバルさ」
"そうなんだ"
「ハルの奴はロングランペースが凄い…タイヤマネジメントが不気味なのさ…」
確かに、過去のレースデータを見ると予選では順位が低くても、本選で圧倒的な技術で他のマシンを追い越している。
「でも、このデータから見る限り、ストレートでのスピードならウチの『MS-33』が勝ってる。セクター2で抑え込めれば、私が絶対に前に出れる」
ランはかなりハルをライバル視している様だ。
「先生的にはどこのチームが脅威だと思う?」
"私が警戒してるのはゲヘナ・モータースポーツ部とカイザー・フォーミュラチームかな…ゲヘナはエースの柊アンのレーステクニックが高いし、万魔殿がかなりの力を入れているみたい…あと、カイザーは公開されているデータが極端に少ないし、ドライバーも生徒と違って大人のプロレーサーだ、1番警戒するべきはカイザーかな…"
「…プロ?」
ランはどこか不服そうだった。
「ふーん…。カイザーね、お金持ちのおじさん達が作ったマシンかぁ。…でもせんせ、そんなの敵じゃ無いよ」
"そう?"
「今回のレース、私にとってはあの累須ハルに勝てれば良いんだ」
何故ランはそこまでハルにこだわるのか納得した。
ランの最速記録とハルの記録でのたったの2秒の差、それが自分が1番が良いと思うランがこだわる理由だった。
「先生がチーフとしてカイザーを警戒するのは分かるし、優勝する為だったらそれは必要な事…でも、せんせ、私はハルに勝ちたいんだ」
"(うーん、完全にハルしか見えてないな…)"
ランはハルへのライバル心を燃やし、私の不穏な予感と共に、予選・本選の日が近づいていく。
少し忙しくて今回は短めです。