歴史改変能力者は世界の裏を日本に生やしたい 作:無異常世界
朝、仕事場へ着いて最初にやったのは、昨日と同じように荷を下ろすことだった。
木箱を受け取る。
運ぶ。
置く。
数を合わせる。
今日こそ、最初の条件を置く。
昨夜から何度も頭へ浮かんでいる。
それでも、荷の途中で抜ける気にはならなかった。
「相良、そっち先」
「はい」
呼ばれれば返事をする。
空いた場所へ箱を寄せ、次の荷が入れるようにする。
持ち上げた瞬間に底が少し撓んだ箱は、一度下ろして持ち方を変えた。
急いで落とせば、今日やりたいこととは何の関係もなく誰かが困る。
それは嫌だった。
昼前になって、ようやく一段落した。
年嵩の作業員が腰を伸ばしながら拓真を見る。
「今日は落ち着かんな」
拓真は手を止めた。
「分かります?」
「朝から何度も外見てる」
「そんなに見てました?」
「何かあるのか」
答えかけて、やめる。
世界に今までなかった条件を置きに行く。
そう言っても、冗談にしか聞こえない。
「帰りに、ちょっと寄るところがあって」
「女か」
「違います」
「即答か」
「そこは即答できます」
男が笑った。
「なら荷を落とすなよ。上の空が一番危ねえ」
「はい」
言われて、拓真は少しだけ可笑しくなった。
今日これからやることの方が、たぶん人生で一番大きい。
それでも今は、木箱を落とさない方が先だった。
* * *
昼の荷を店へ運ぶ。
拓真が箱を下ろすと、和枝が帳面から顔を上げた。
「そこ、もういいよ」
「はい」
「それと、昨日の」
和枝が店の隅へ置いてあった包みを指した。
戸の金具だった。
替えそのものではない。
けれど、使えるかもしれないと言っていたものだ。
「見ていいですか」
「そのために置いてる」
拓真は包みを開いた。
今付いているものと比べる。
形は近い。
ただ、そのまま取り替えれば終わるほど同じではない。
「どう?」
「使えると思います」
「思います?」
「付けて動かすまでは」
和枝が少し笑った。
「ほんと変わらないね」
店の人へ断ってから、戸を外せるところまで動かす。
古い金具を見直す。
昨日まで使っていた部分は、やはり減っていた。
見つかった方を合わせる。
そのままではずれる。
向きを変える。
当たる場所を確かめる。
無理に押し込まず、収まる位置を探す。
「一回、動かしてもらえますか」
和枝が戸を引く。
途中で少し音がした。
けれど、止まらない。
もう一度。
今度も最後まで動いた。
「前より軽い」
「しばらく見てください。変な音が増えたら止めて」
「今度も『しばらく』?」
「今度は部品を替えてるので、前よりは」
「そこでも言い切らない」
「見てない先のことは」
「はいはい」
和枝はもう一度戸を開け閉めした。
昨日まで直しきっていなかったものが、一つ先へ進んだ。
それで終わりだった。
奥から子どもの声がした。
澄江ではない。
店へ来ていた別の子らしい。
拓真は、反射的にそちらを見そうになった。
止める。
まだ何もしていない。
それなのに、もう誰かへ結びつけようとしている。
昨日決めたばかりだった。
瀬尾家を起点にしない。
澄江を最初にしない。
それは、澄江だけを選ばなければいい、という話でもなかった。
誰か別の一人を探して、その人へ置けば同じことだ。
「相良さん?」
和枝に呼ばれた。
「はい」
「終わった?」
「今のところは」
「またそれ」
拓真は空になった縄をまとめた。
「じゃあ戻ります」
「ご苦労さま」
店を出る。
道へ出てから、ようやく息を吐いた。
誰も選ばない。
言うだけなら簡単だった。
実際に人を知ってしまうと、少し難しくなる。
顔を知っている方が安心できる。
何か起きた時に見に行ける。
困った時に手を出せる。
知らない誰かより、知っている誰かの方が結果を追いやすい。
でも、それをやれば。
自分が見ていないところでも勝手に続く世界が欲しいと言いながら、最初から自分の見える場所へ紐を付けることになる。
拓真は歩いた。
仕事場へ戻る。
午後の荷を終える。
帰りに、道端の店で紙を買った。
昨夜、予定へ書いた通りだった。
紙を抱えて、それからようやく町の外れへ向かった。
* * *
低い丘だった。
山というほどではない。
町から歩いて来られる。
上まで行けば、屋根が重なって見えた。
道が伸び、その先に畑が続いている。
遠くで煙が上がっている。
拓真は立ったまま、しばらく町を見た。
あそこに仕事場がある。
少し離れて、和枝の働く店がある。
自分が借りた部屋も、この景色のどこかにある。
学校へ行く子どもがいる。
働く人がいる。
具合が悪くなれば医者を頼る人がいる。
ここへ来てから、自分の足で歩いた範囲だった。
全部を知っているわけではない。
むしろ、知らない場所の方が多い。
それでよかった。
拓真は手帳を開いた。
昨夜の一行が残っている。
第一の条件を定着させる範囲を、瀬尾家とは切り離して考える。
その下は空白だった。
「……やるか」
声に出して、手帳を閉じる。
時点を移動する時の感覚とは違った。
あれは、行き先を掴む。
今からやることは、行き先ではない。
人間や生き物の身体。
感覚。
意識。
自分が自分であるという、その辺り。
今までなら、普通ではないものが入り込もうとしても、世界の側が最初から成立させなかった場所。
そこへ、成立できる余地を残す。
言葉にすると、それだけだった。
けれど。
拓真はすぐには実行しなかった。
一度、澄江の顔が浮かんだ。
昨日見た、宿題の紙を持っていた顔。
その像へ意識を寄せてみる。
何もない。
この子へ何かを与える。
この子だけを変える。
そういう掴み方が、そもそも見つからなかった。
少し安心した。
同時に、確かめる。
たとえば、身体を強くする。
目に見えないものを見せる。
触れただけで何かが分かる。
完成した結果を一つ思い浮かべても、そこへ直接届く感覚はない。
作るものを選ぶ場所がない。
あるのは、もっと手前だった。
今までなら、何をしても普通の範囲へ戻ってしまう。
その手前にある、硬い境目。
そこを、ごくわずかに緩める。
何が通るかは決めない。
誰のところで通るかも決めない。
いつ通るかも決めない。
拓真は目を開けた。
まだ何もしていない。
なのに、胸の奥が少し速くなっていた。
第一話で欲しがっていたものを思い出す。
自分が知らない能力者。
自分が見たことのない怪異。
誰かが勝手に作る決まり。
自分と関係なく続く仕事。
完成したものを一つ置けば、最初から最後まで自分の作品になる。
これは違う。
置けるのは、始まれる条件だけだ。
「本当に、種だけなんだな」
小さく言った。
誰も答えない。
拓真はもう一度、町へ視線を落とした。
一つの家へ寄せない。
一つの通りだけにも寄せない。
自分が顔を知っている人間の周囲だけを濃くしない。
この町と、その周り。
人が暮らし、行き来している範囲へ。
薄く。
何かを今すぐ見たいという自分の都合より、ずっと薄く。
意識を定める。
最初は、何も起きなかった。
いや。
起きた、と拓真には分かった。
音はしない。
光もない。
風も変わらない。
丘の下で歩いている人が立ち止まることもない。
それでも、時点移動を初めて理解した時と同じように、説明より先に身体が知っていた。
さっきまで、どれだけ条件が揃っても成立しなかったものがある。
今は違う。
ごく稀に。
何かが重なった時に。
人間や生き物の側へ、普通ではない性質が残り得る。
その余地が、この辺りへできた。
変わったのは、目の前の誰かではない。
可能性の方だった。
拓真は息を止めていたことに気づき、ゆっくり吐いた。
「……置いた」
それだけだった。
世界を変えた。
そのはずなのに。
丘の下では、人が普通に歩いている。
遠くの道を荷車が進む。
鳥が鳴いた。
風が草を揺らす。
世界は、何事もなかったように続いていた。
拓真は笑った。
「分かりにくいな」
でも。
それも、自分が欲しかったものだった。
* * *
すぐには帰らなかった。
拓真は丘に残った。
何か起きるかもしれない。
誰かが急に立ち止まるかもしれない。
妙な声が上がるかもしれない。
自分の身体に何か分かるかもしれない。
そんな期待が、どうしても消えない。
少し待つ。
何も見えない。
さらに待つ。
やはり、見える範囲では何も変わらない。
坂を上がってきた男が一人、拓真の横を通り過ぎた。
拓真は顔を見た。
普通の顔だった。
当たり前だ。
能力者なら顔に何か書いてある、という話ではない。
男が向こうへ行く。
今度は、下の道を子どもが二人走っていった。
拓真の目が追う。
途中でやめた。
「分からない」
声に出す。
今この瞬間、誰かに何かが起きているのか。
まだ一人もいないのか。
ごく弱い何かが起きていて、本人すら気づいていないのか。
今日ではなく、何日も後なのか。
もっと後なのか。
拓真には分からない。
分からないことを確認すると、少しだけ不安になった。
薄すぎたのではないか。
もう少し濃くすれば。
何か見えるところまで強くすれば。
考えて。
拓真は眉を寄せた。
仕事で、似たようなことを何度も見ていた。
状態が分からない。
だから、とりあえず強くする。
もっと回す。
もっと締める。
もっと流す。
それで壊したら、ただの雑な作業だ。
今は、測る道具すらない。
目の前で派手な結果が出ないことは、失敗した証拠にならない。
同時に。
成功した証拠にもならない。
分かるのは、自分の側に定着させた感覚があることだけだ。
なら。
確認したいという理由だけで、条件を強くするべきではない。
拓真はその場にしゃがみ、買ったばかりの紙を一枚出した。
膝の上で書く。
第一の条件。
地域へ定着させた感覚あり。
誰に起こるか、不明。
いつ起こるか、不明。
起きたかどうかの確認手段、なし。
少し考える。
もう一行。
見えないことを理由に強めない。
書いてから、読み返した。
ずいぶん地味な記録だった。
世界に今まで存在しなかった可能性を置いた直後の記録としては、笑えるくらい地味だった。
でも。
そこに「最初の能力者」とは書けない。
名前も書けない。
能力の種類も書けない。
起きていないことを、起きたことにはできない。
分からないものは、分からないまま残す。
拓真は紙を畳んだ。
立ち上がる。
まだ、もう少し待ちたい。
その気持ちはある。
けれど、待てば答えが出る保証もない。
日が落ちるまで丘へ立っていたところで、見知らぬ人間が自分へ能力の報告をしに来る理由はない。
そもそも。
この町で暮らしている人間は、拓真が今日何をしたのか知らない。
何かが起きても、それを拓真へ知らせる義理はない。
その事実が、急に大きく感じられた。
自分は条件を置いた。
でも。
その先の世界と自分の間には、何の連絡線もない。
「……そうなるよな」
少し怖い。
少し嬉しい。
拓真は丘を下りた。
坂を下りきる頃には、町の音が近くなっていた。
人の話し声。
荷を引く音。
店先で何かを打つ音。
道の向こうで、子どもが転んだ。
拓真の足が一瞬止まる。
泣き声が上がった。
近くにいた女が駆け寄る。
膝を見て、土を払う。
子どもは泣きながら立った。
それだけだった。
拓真は、自分でも分かるくらい肩の力を抜いた。
「何見てんだ、俺」
昨日までなら。
子どもが転んだ。
泣いた。
立った。
それで終わっていた。
今日から、何か普通ではないものが混じる可能性はある。
だからといって。
起きること全部へ意味を足していいわけではない。
誰かが熱を出した。
妙な夢を見た。
手が痺れた。
物音を聞いた。
そんな話を一つ聞くたびに、自分が置いた条件のせいだと思い始めたら。
二〇二六年で怪談を見ていた時より、よほど悪い。
あの頃の自分は、分からないものを分からないままにしていた。
今も同じにしなければならない。
本物が生まれ得る世界へしたからこそ。
本物ではないものまで本物にしてはいけない。
拓真は歩き出した。
途中で、道端に座っている男が腕を揉んでいた。
見た。
それ以上は見なかった。
理由は分からない。
分からないなら、それだけだった。
部屋へ戻る。
灯りをつけ、買った紙を机代わりの場所へ置く。
丘で書いた一枚を広げた。
第一の条件。
地域へ定着させた手応えあり。
誰に起こるか、不明。
いつ起こるか、不明。
起きたかどうかの確認手段、なし。
見えないことを理由に強めない。
その下へ、一行足す。
普通の出来事を、発現した証拠にしない。
書いて。
拓真は少し考えた。
さらに一行。
誰かに異常が起きたとしても、本人が気づかなければ自分には分からない。
もう一行。
本人が気づいても、自分へ話すとは限らない。
そこで止めた。
当たり前のことしか書いていない。
けれど、その当たり前が大事だった。
拓真が作ったのは、報告装置ではない。
自分へ答えを返す実験でもない。
この町で生きている人間の側へ、今までなかった可能性を置いただけだ。
なら。
その人たちが最初にするのは、拓真へ報告することではない。
自分で驚くかもしれない。
家族へ言うかもしれない。
黙るかもしれない。
普通の不調だと思うかもしれない。
その先で、何かが自分のところまで届くなら。
その時に見る。
届かないなら。
届かないままのものがあってもいい。
そう思うと。
少しだけ、第一話で考えていた世界に近づいた気がした。
自分が知らないから存在しない、ではない。
自分が見ていないから止まる、でもない。
今のところ、そこにあるのは条件だけだった。
その先は、まだ誰のものでもない。
* * *
次の日の朝。
仕事場の引き戸は、まだ動いた。
拓真が一度だけ目を向けると、年嵩の作業員が気づいた。
「今日は見ただけか」
「止まってないので」
「昨日までは毎朝気にしてたろ」
「気にはしてます」
「なら見ろよ」
「動いてる時に勝手に止めたら怒るでしょう」
「それもそうか」
男が笑う。
朝の荷が来た。
拓真はそちらへ向かった。
昨日、世界の条件を変えた。
今日、自分がやっているのは、届いた荷を数えて運ぶことだった。
何もおかしくない。
むしろ、それでよかった。
箱を運ぶ。
昼になる。
店へ荷を持っていく。
和枝が奥から出てくる。
「今日は早いね」
「向こうが早く片付いたので」
「昨日の戸、今朝も動いたよ」
「音は?」
「そこまで聞いてない」
「じゃあ帰りに一回見ます」
「また見るの?」
「替えた後の方が見た方がいいです」
「そういうもの?」
「前の仕事だと」
「じゃあ任せる」
奥から足音がした。
澄江が出てくる。
学校から戻ったところらしい。
「相良さん」
「こんにちは」
「戸、直った?」
いきなり言われ、拓真は一瞬止まった。
「昨日、部品を替えた」
澄江は引き戸を見た。
「じゃあ一応じゃない?」
「今のところは大丈夫」
「また今のところ」
「替えた後に変なところが出ないか見ないと」
「じゃあまだ一応じゃん」
「そう言われると、そうだな」
澄江は納得したのかしていないのか分からない顔をした。
和枝が言う。
「帰ったなら先に手、洗ってきな」
「洗った」
「今帰ったばっかりでしょう」
「学校で」
「家で洗いなさい」
澄江が不満そうに奥へ戻る。
拓真はその背中を見た。
条件を置く前なら。
ここで、もう少し考えたかもしれない。
この子に何か起きていないか。
手を見れば分かるか。
話せば違和感があるか。
でも。
そんなものは分からない。
仮に、今この瞬間に澄江の中で何かが変わっていたとしても。
本人が何も感じていないなら。
拓真が見ただけで分かる仕組みはない。
「どうしたの」
和枝が聞いた。
拓真は視線を戻した。
「いえ。何でもないです」
「また戸?」
「今日は戸です」
「今日は?」
「何でもないです」
和枝が怪訝そうな顔をした。
拓真は箱を下ろした。
それ以上、澄江を見なかった。
* * *
その日も、目に見える何かは起きなかった。
少なくとも、拓真のところには何も届かなかった。
翌日も仕事へ行った。
その次の日も行った。
荷があれば運ぶ。
頼まれたことをする。
同じ箱でも、持つ場所を間違えれば腕だけが先に疲れる。
最初の頃に教えられたことを、今度は新しく来た男へ横から伝えることもあった。
「そこじゃなくて、下持った方が楽です」
言ってから、拓真は少し止まった。
自分がここへ来た日に、同じことを言われた。
「何だ」
年嵩の作業員が聞く。
「いや。俺もそれ教えてもらったなと思って」
「やっと一個教える側になったか」
「一個だけです」
「そのうち増える」
仕事場で笑いが起きた。
拓真も笑った。
その間にも。
第一の条件を置いた時の手応えは、記憶の中ではっきり残っていた。
けれど。
誰に何が起きたかは、やはり分からない。
拓真は、わざわざ町を歩き回ることをしなかった。
人に触れて回ることもしない。
妙な体調はないかと聞き歩くこともしない。
病人を探すこともしない。
子どもを集めることもしない。
そんなことをすれば、自分が何かを始めたと町中へ知らせるだけでは済まない。
何より。
人間を結果確認の道具にすることになる。
その代わり、普通に暮らした。
仕事場で名前を呼ばれる。
店へ行けば和枝がいる。
澄江がいる時も、いない時もある。
自分の部屋へ帰れば、壁の向こうで水を使う音がする。
朝になれば誰かが戸を開ける。
町のどこかで誰かが病気になり。
誰かが喧嘩し。
誰かが仕事を探し。
誰かが子どもを叱る。
その一つ一つを、拓真は知らない。
第一の条件を置く前からそうだった。
置いた後も、そうだった。
違うのは。
その知らない生活の中に、今までなら絶対に生まれなかったものが混じる可能性ができたことだ。
しかも。
それが混じった瞬間を、自分が見ているとは限らない。
拓真はそのことを、日に日に実感していった。
* * *
部屋へ戻った夜。
拓真は手帳を開いた。
最初の頁には、二〇二六年で書いた計画がある。
完成品を作らない。
起こり得るようにする。
その後は分からない。
今見ると、前より意味が具体的だった。
完成品を作らないというのは。
能力の形を選べない、というだけではない。
最初の一人を選べない。
発現した瞬間を見届けられない。
起きたことが自分へ報告される保証もない。
自分が正しく種を置いたとしても。
その先の人間は、自分の予定表に従わない。
拓真は、新しい頁を開いた。
第一の条件。
定着させた手応え、あり。
自分のところへ届いた発現確認、なし。
発現者、確認不能。
追加で濃くしない。
そこまで書く。
次の行で、ペンが止まった。
能力者を探す。
一瞬だけ、その言葉が浮かんだ。
書かなかった。
代わりに、明日の予定を書く。
朝、仕事。
昼、店へ荷。
仕事場の戸、様子を見る。
紙を買い足す。
それだけ。
拓真は手帳を閉じた。
何も起きていないのかもしれない。
もう、どこかで何かが始まっているのかもしれない。
それを今すぐ確かめる方法はない。
なら、待つ。
ただ丘に立って待つのではなく。
ここで働く。
人と付き合う。
生活する。
その間に、誰かの側でも生活が続く。
種を置いたからといって、毎日掘り返して芽を探したら意味がない。
誰が最初になるかまで、自分の手元へ戻してしまう。
拓真は灯りを消した。
暗くなった部屋で、外の足音を聞く。
誰の足音かは分からない。
それでいい。
何かが起きるなら。
それは、拓真の予定表の外で起きていい。
改稿前verだけ見て切られたら困るんですが、消した方が伸びると思いますかね?
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消した方が伸びる
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消さない方が伸びる
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どっちでも良い