歴史改変能力者は世界の裏を日本に生やしたい   作:無異常世界

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第十一話

板が、音もなく前へ出た。

 

勢いよく蹴ったわけではない。

 

片手を上へ置き、もう片方の手で少し押しただけだった。

 

河原の固い土の上を、古い板がするすると滑っていく。

 

向かいにいた友人が、慌てて足をどけた。

 

「こっち向けるなって」

 

「当たってないだろ」

 

「当たってからじゃ遅い」

 

板は少し先で石にぶつかり、ようやく止まった。

 

二人でそこまで歩く。

 

本人はしゃがみ込み、板の端を持ち上げた。

 

裏には泥がついている。

 

削った跡も、油を塗った跡もない。

 

友人が足の裏で地面をこすった。

 

「ここ、昨日より乾いてるぞ」

 

「じゃあもう一回」

 

「待て。今度は止まる方」

 

「何で」

 

「そっちの方が分かりやすい」

 

二人で板を少し傾いた土手へ運ぶ。

 

下には何も置かない。

 

人も立たせない。

 

最初に試した時、板だけを見ていて自分たちの足元を見ていなかった。

 

それで一度、二人とも転びかけた。

 

だから今は、先に下を見る。

 

友人が板を斜面へ置いた。

 

すぐに滑り始める。

 

本人が上端へ手を置いた。

 

板が止まった。

 

押さえつけたようには見えない。

 

腕へ力を込めてもいない。

 

ただ手のひらが板へ触れた瞬間、そこに貼りついたように動かなくなった。

 

友人が横から板を押した。

 

「ほら」

 

「押すなよ」

 

「動かない」

 

もう少し強く押す。

 

板は動かない。

 

本人が手を離した。

 

途端に板が斜面を滑り落ちた。

 

「だから先に言えって!」

 

友人が飛び退く。

 

板は下の草へ突っ込んだ。

 

本人は笑った。

 

「分かっただろ」

 

「分かったけど、離す前に言え」

 

「今言った」

 

「離した後だよ」

 

二人で板を拾いに行く。

 

もう、最初の時のようには驚かなかった。

 

何日か前までは、こんなことはできなかった。

 

雨の後だった。

 

濡れた木へ手をついた時、妙に手が滑らなかった。

 

偶然だと思った。

 

次は逆だった。

 

持ち上げようとした物が、手の中からありえないほど簡単に抜けた。

 

それから何度か試した。

 

乾いた板。

 

濡れた板。

 

木箱。

 

石。

 

うまくいく時と、よく分からない時がある。

 

触れている間だけ変わり、離せば元へ戻る。

 

少なくとも、今のところはそうだった。

 

誰かに教わったわけではない。

 

名前もない。

 

二人の間では、滑る方と、止まる方で通じていた。

 

「次、あれ」

 

友人が河原の端に置かれた小さな木箱を指した。

 

「昨日やった」

 

「昨日は下が砂だった」

 

「今日は?」

 

「土」

 

「変わると思う?」

 

「知らないからやるんだろ」

 

本人は箱へ手を置いた。

 

友人が先に周りを見る。

 

道の方に人はいない。

 

橋の上にも、こちらを見ている者はいない。

 

「いいぞ」

 

箱を押す。

 

最初は普通だった。

 

少し動いて、土へ引っかかる。

 

「まだ?」

 

「待って」

 

もう一度押す。

 

今度は、さっきまでとは明らかに違った。

 

箱が前へ滑る。

 

軽くなったわけではない。

 

持ち上がってもいない。

 

土の上を引きずる音だけが、急に小さくなった。

 

本人が手を離す。

 

箱はすぐ、いつもの重さで地面へ噛んだ。

 

「やっぱ手を離したら終わる」

 

友人が言う。

 

「それは前から」

 

「箱の下も変わってるんだな」

 

本人は箱の底を覗いた。

 

「たぶん」

 

「手のところだけじゃない」

 

「たぶん」

 

「さっきからそればっかりだな」

 

「分からないのに分かったって言う方がおかしいだろ」

 

友人は少し黙った。

 

「それ、あの医者みたいな言い方だな」

 

「誰だよ」

 

「知らない」

 

二人で笑った。

 

まだ、この町のどこかで別の子が、自分の手から他人の身体の違和感を拾っていることを知らなかった。

 

田代という医者が、その異常を診断と分けて記録し始めていることも知らない。

 

相良拓真という男が、世界へ置いたものの結果を一つずつ追いかけていることも知らない。

 

知らないまま、自分たちで遊び方を増やしていた。

 

* * *

 

拓真がその噂を聞いたのは、三日後だった。

 

「川の方に、変な芸をするのがいる」

 

最初は、それだけだった。

 

何が変なのかと聞けば、壁みたいなところを手だけで登るだとか、重い箱を片手で飛ばすだとか、話す人間ごとに内容が違った。

 

拓真はその時点で半分くらい期待を捨てた。

 

噂は、近づくほど派手になる。

 

澄江の時もそうだった。

 

本人が実際にできることと、周りが面白がって話すことは別だった。

 

「箱を飛ばしたって、どのくらい」

 

「知らないよ。俺が見たわけじゃない」

 

「じゃあ誰が見たんですか」

 

「向こうの子らしい」

 

「向こうって」

 

「川の向こう」

 

それ以上は分からない。

 

別の人間へ聞く。

 

今度は、濡れた板でも滑らず歩ける、という話になった。

 

さらに聞くと、本人ではなく友人がやったことになった。

 

その次は、油を使った手品だと言われた。

 

拓真はメモへ書いた。

 

目撃経路、ばらばら。

 

実見者、未確認。

 

内容、滑る/滑らない方向で共通部分あり。

 

翌日、川へ行った。

 

誰もいなかった。

 

翌々日も行った。

 

今度は子どもが数人いただけで、噂の人物は分からない。

 

三回目。

 

拓真は、少し離れた場所から二人を見つけた。

 

見つけたというより、板の方を先に見つけた。

 

斜面へ置かれた古い板が、一人の手が触れた瞬間に止まった。

 

もう一人が横から押す。

 

動かない。

 

手が離れる。

 

滑る。

 

「……あった」

 

声が出た。

 

二人が同時にこちらを見る。

 

拓真はしまったと思った。

 

隠れて見るつもりはなかった。

 

ただ、近づく前に何をしているか見たかっただけだ。

 

それでも、知らない男が少し離れたところから自分たちを見ていて、急に「あった」と言えば、十分気味が悪い。

 

友人の方が先に立った。

 

「何ですか」

 

警戒が声に出ていた。

 

拓真は両手を見える位置へ出した。

 

「悪い。変なことしてるって噂を聞いて」

 

「してない」

 

「今のは?」

 

「何も」

 

即答だった。

 

拓真は一度口を閉じた。

 

ここで、見た、隠しても無駄だ、と押す理由はない。

 

逃げられれば終わる。

 

それ以上に、自分がそういう側になりたくなかった。

 

「分かった」

 

拓真は言った。

 

「じゃあ、俺の見間違いでもいい」

 

二人の表情が少しだけ変わった。

 

「ただ、一つだけ聞きたい」

 

「何」

 

「困ってる?」

 

今度は本人が答えた。

 

「別に」

 

「身体が痛いとか、勝手に起きて止められないとか」

 

「ない」

 

「ならよかった」

 

友人が眉を寄せた。

 

「何なんですか」

 

「相良。相良拓真」

 

自分の名前だけ言う。

 

相手の名前は聞かなかった。

 

「俺、少し前に、似てないけど似たようなことが起きた人を見た」

 

本人の顔が初めて大きく動いた。

 

「似てないのに似てるって何」

 

「普通なら起きないことが、本人のところでは何度やっても起きる」

 

「何ができるの」

 

拓真は答えかけて止まった。

 

澄江の顔が浮かぶ。

 

学校で自分の手の話が勝手に歩いていくことを嫌がっていた。

 

和枝が、病人を目の前へ連れてきて断りにくくするのはやめる、と決めたことも知っている。

 

「それは、俺が勝手に話すことじゃない」

 

友人がすぐ言った。

 

「じゃあこっちのことも話すなよ」

 

「話さない」

 

「本当に?」

 

「少なくとも、名前も場所も知らないまま帰れる」

 

本人が少し笑った。

 

「名前、聞いてないだけじゃん」

 

「聞かないで帰ることもできる」

 

拓真は河原の板を見た。

 

「でも、今のが本当に何度もできるなら、俺はかなり見たい」

 

友人が呆れた顔をした。

 

「急に本音出た」

 

「そこはごまかしても仕方ない」

 

本人はしばらく拓真を見ていた。

 

「見て、どうするの」

 

「今は、何が起きてるか知りたい」

 

「捕まえる?」

 

「しない」

 

「どこか連れていく?」

 

「嫌ならしない」

 

「医者は?」

 

「困ってないなら、いきなり連れていく理由はない」

 

「じゃあ何」

 

拓真は少し考えた。

 

自分なら、どうする。

 

能力を得た夜、自分は一人で試験計画を書いた。

 

誰かが来て、危ないから全部やめろと言われたら、たぶん聞かなかった。

 

逆に、世界を変えるために協力しろと言われても嫌だっただろう。

 

「見せてもいい範囲を、そっちで決めてほしい」

 

拓真は言った。

 

「見せたくないなら帰る。少しならいいなら、少し見る」

 

本人が友人を見る。

 

友人は肩をすくめた。

 

「俺に聞くなよ」

 

「一緒にやってたじゃん」

 

「できるのはそっちだろ」

 

「でも、ばれたのは二人」

 

「それはそう」

 

二人で小声で話す。

 

拓真は待った。

 

何を話しているか聞き取ろうとはしなかった。

 

やがて本人が板の方へ歩いた。

 

「一回だけ」

 

「分かった」

 

「触るなよ」

 

「触らない」

 

「近づきすぎるな」

 

「分かった」

 

友人が板を斜面へ戻す。

 

本人が手を置く。

 

板が止まる。

 

拓真は足元を見る。

 

押さえ込む体勢ではない。

 

板の角度も変わっていない。

 

風もない。

 

手が離れる。

 

板は滑る。

 

「もう一回いい?」

 

「一回って言った」

 

「そうだった」

 

拓真はすぐ引いた。

 

その反応が意外だったのか、本人が少し間を置いた。

 

「……止めるだけだと思った?」

 

拓真の顔が上がる。

 

「違うの?」

 

「逆もできる」

 

友人が笑った。

 

「言うんだ」

 

「一回見せるって言っただけで、何を見せるかは言ってない」

 

「屁理屈」

 

本人は平らな場所へ板を置いた。

 

片手を乗せる。

 

軽く押した。

 

板が、拓真の予想よりずっと先まで滑った。

 

拓真は無意識に一歩追った。

 

「マジか」

 

声が出る。

 

板が止まるまで見てから、本人の手元を見る。

 

「止めるのと、滑らせるのと、両方?」

 

「たぶん」

 

「たぶん?」

 

「まだ全部分かってない」

 

拓真は笑いそうになった。

 

馬鹿にしたわけではない。

 

嬉しかった。

 

澄江とは違う。

 

他人の身体の中でもない。

 

痛みや違和感を拾うものでもない。

 

目の前の板の動き方そのものが、触れている間だけ変わっている。

 

しかも、拓真が教えたのではない。

 

本人たちの方が、もう使い方を知っている。

 

「いつ分かった?」

 

「それは言わない」

 

「じゃあ、何で試したかは?」

 

「それも」

 

「分かった」

 

拓真は頷いた。

 

質問を止める。

 

止めてから、自分の中にまだ十個以上聞きたいことが残っているのが分かった。

 

触れている物なら何でもいいのか。

 

どこまで変わるのか。

 

手だけか。

 

重い物でも同じか。

 

濡れていても乾いていても同じか。

 

続けるとどうなるのか。

 

昨日と今日で強さは変わるのか。

 

全部知りたい。

 

けれど、知りたいことと、聞いていいことは別だった。

 

友人が拓真を見て言った。

 

「本当にもう一人いるの」

 

「いる」

 

「同じことできる?」

 

「全然違う」

 

「じゃあ、これって病気じゃないの」

 

拓真は答えなかった。

 

病気ではない、と決める根拠もない。

 

病気だ、と決める根拠もない。

 

澄江を見た田代でさえ、異常な所見と診断を分けていた。

 

「分からない」

 

拓真は言った。

 

「分からないけど、一人だけに起きたことじゃない」

 

本人が板の端へ腰を下ろした。

 

「じゃあ、他にもいるかもしれない?」

 

「いるかもしれない」

 

「何人」

 

「分からない」

 

「何ができる人が出る」

 

「それも分からない」

 

友人が笑った。

 

「何も分かってないじゃん」

 

「そうなんだよ」

 

拓真も笑った。

 

「だから見つけた時、めちゃくちゃ嬉しかった」

 

本人が怪訝そうな顔をする。

 

「何で」

 

拓真はすぐには答えなかった。

 

世界の裏側が欲しかった。

 

能力者がいて、知らない人間が勝手に使い方を覚え、こちらの知らないところで生活していてほしかった。

 

目の前の二人は、まさにそれをしている。

 

けれど、ここでその全部を話せば、相手からすれば自分たちが誰かの願望の結果だと言われることになる。

 

それを今、言う必要はない。

 

「一人目だけなら、たまたま一人だけに起きた変なことかもしれないと思ってた」

 

拓真は言った。

 

「二人目がいて、しかも全然違うなら、話が変わる」

 

「何が」

 

「一人の人間の変な体質じゃなくて、もっと広く起きるかもしれない」

 

本人は少し黙った。

 

「じゃあ、勝手に調べる人が来る?」

 

「来るかもしれない」

 

「嫌だ」

 

即答だった。

 

拓真は頷いた。

 

「分かった」

 

「分かったって、止められるの」

 

「全部は無理」

 

「じゃあ意味ないじゃん」

 

「俺が連れてこないことはできる」

 

本人が拓真を見る。

 

拓真は続けた。

 

「俺が知ったからって、俺に管理する権利ができるわけじゃない」

 

友人が少しだけ目を細めた。

 

「さっきから変な言い方するな」

 

「自分でもそう思う」

 

「何の人なんですか」

 

「今は……探してる人」

 

「何を」

 

「こういうの」

 

拓真は板を指した。

 

友人が吹き出した。

 

「怪しすぎる」

 

「分かってる」

 

本人も少し笑った。

 

空気が少しだけ緩む。

 

拓真は鞄からメモ帳を出しかけた。

 

そこで止めた。

 

「書くの?」

 

本人が聞く。

 

「書きたい」

 

「正直だな」

 

「名前と場所は書かない。今見たことだけ」

 

「誰に見せる」

 

「今のところ、自分用」

 

「今のところ?」

 

「後で、他にも同じような人が出た時に、比べたくなるかもしれない」

 

「勝手に見せない?」

 

「見せない」

 

「だったらいい」

 

友人が口を挟んだ。

 

「でも変な名前つけるなよ」

 

拓真の手が止まる。

 

「変な名前?」

 

「何とか型とか。何とか第一号とか」

 

拓真は少し考えた。

 

正直、書きかけていた。

 

二例目。

 

接触型。

 

物体作用。

 

そういう言葉が頭には浮かんでいた。

 

けれど、二人しか見ていない。

 

澄江とこの人物が違うからといって、世界の能力を二種類に分けられるわけでもない。

 

「それはやめる」

 

拓真は言った。

 

「今は」

 

「今は、って付けるな」

 

「じゃあ、少なくとも二人見た、まで」

 

「それならいい」

 

メモ帳へ書く。

 

安定して繰り返す異常、二例目を確認。

 

一例目とは性質が異なる。

 

本人は発見前から再現を試している。

 

接触中の物の滑り方が変わるように見える。

 

詳細、未確認。

 

本人希望により、氏名・場所・追加確認は記録しない。

 

最後に一行足した。

 

二例で体系を決めない。

 

友人が横から覗こうとした。

 

本人が止める。

 

「見るなって」

 

「俺のこと書いてないか確認する」

 

「書いてない」

 

拓真はメモを閉じた。

 

「帰る」

 

「もう?」

 

本人の方から聞いた。

 

拓真は少し驚いた。

 

「一回だけって言われたから」

 

「二回見たけど」

 

「二回見せたのはそっちだろ」

 

「それはそう」

 

友人が板を拾う。

 

「また来るんですか」

 

拓真は本人を見る。

 

「来てもいい?」

 

今度は先に聞いた。

 

少し考えてから、本人が答えた。

 

「一人なら」

 

「分かった」

 

「知らない人連れてきたら帰る」

 

「それも分かった」

 

「あと、勝手に触るな」

 

「触らない」

 

「板も」

 

「板も?」

 

「こっちが使ってる時は」

 

「分かった」

 

条件が増える。

 

拓真はそれを面倒とは思わなかった。

 

むしろ、少し可笑しかった。

 

自分が世界へ置いたものの結果を見に来たはずなのに、もう相手側の決まりに従って見せてもらう立場になっている。

 

「じゃあ」

 

拓真は手を上げた。

 

「また」

 

二人は返事をしなかった。

 

追い払うほどではない、くらいの顔だけした。

 

拓真は河原を離れた。

 

何度も振り返りたくなったが、やめた。

 

見られている側が嫌だと言えば、そこで終わる。

 

少し歩いてから、笑いが出た。

 

「二人目……」

 

小さく口にする。

 

一人目とは違う。

 

しかも、本人は自分より先に能力の使い方を知っていた。

 

拓真が考えた能力ではない。

 

拓真が選んだ人間でもない。

 

拓真が教えた遊び方でもない。

 

ただ条件だけを置いた後で、自分の知らないところに生まれた。

 

それを本人と友人が、勝手に試していた。

 

欲しかったものが、少しずつ自分の手から離れ始めている。

 

そのことが、拓真にはたまらなく嬉しかった。

 

* * *

 

拓真が見えなくなってから、友人が板を足でつついた。

 

「変な人だったな」

 

「うん」

 

「また来させるの?」

 

「一人なら」

 

「何で」

 

本人は少し考えた。

 

「他にもいるって本当なら、ちょっと知りたい」

 

「さっき聞いたら教えなかったじゃん」

 

「勝手に話さない方がいいだろ」

 

「こっちも勝手に話されたくないから?」

 

「それもある」

 

友人は納得したような、していないような顔をした。

 

「じゃあ次、何する」

 

本人は板を見る。

 

斜面。

 

平らな土。

 

その先に、少し湿った草地がある。

 

「草の上」

 

「まだやるのかよ」

 

「土と違うかもしれない」

 

「帰る時間は?」

 

本人が空を見る。

 

「あと一回」

 

「それ昨日も言った」

 

二人で板を持ち上げる。

 

誰かの研究でもない。

 

誰かの仕事でもない。

 

まだ名前のついた技でも、決められた手順でもない。

 

ただ、同じことを何度かやって、危なかったことだけは次に避ける。

 

見つけた方が試し、見ている方が口を出す。

 

それだけの小さなやり方が、拓真に見つかる前からもうできていた。

 

澄江の家では、触らない日を決める紙が棚の横にある。

 

ここでは、手を離す前に声をかける。

 

誰も二つを同じものだとは知らない。

 

同じ名前で呼ぶ人もいない。

 

それでも、本物はもう一人分だけ増えていた。

改稿前verだけ見て切られたら困るんですが、消した方が伸びると思いますかね?

  • 消した方が伸びる
  • 消さない方が伸びる
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