ナズナのアトリエ ~悩める錬金術師とまほろばの神~   作:匿名設定

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第六章 鶤上の戦士とやんちゃな童子(6)

 翌日も行きと同じく朝から強行軍だった。まほろばの南側はさほど高い山ではないとはいえ、山ふたつを越えてゆかねばならない。朝から歩き通しで進んで、まほろばの里に帰り着くころには日がとっぷりと暮れていた。結局、いくさ場の捜索に丸三日かけたことになる。

「おつかれー。さすがに日が暮れちゃったねえ」

「疲れたよー。あたしはナズナほどには、山道を歩きなれていないしさぁ」

 ブーブー言いながら歩く小娘二人に、焔が声をかけた。

「俺たち二人はひとまず里長の家に泊まる。若い娘二人がいる社に泊まるよりも都合がいいだろう」

「こよりちゃんが話をつけてくれているし、問題ありません」

「明日、予定がなければそちらに行く。今後の方針を話し合いたい」

「それも問題ありません」

「では、な」

 そう言うと焔と紅丸は里長の家の方へと歩いて行った。ナズナは里の入り口にある篝火の台の方へと向かい、近くに鋤をもって立っている若者に声をかけた。

「何かあったのですか? 今まで見張りが立っていたことなどなかったと思うのですが」

 若者はかすかに頬を赤らめながら答える。

「は、はい! この間、先ほどここを通った若者が里のすぐ外で倒れていたでしょう。野盗の件もありますし、最近は色々と物騒なので、里長の命により夜だけでも交代で見張りについているのです。なにせ三日前にも殴り込みが――」

「殴り込み?」

 ナズナが首をかしげていると、遠くからデカい声をあげながら何やらちっこい影が近づいてくる。

「やいやいやいやい! また三日? また三日かよ! どうしていっつもいつもボクをきっちり三日三晩待たせるんだっ! みんなでケッタクしてボクを馬鹿にしてるんじゃないだろうなっ!」

「な、なんなのこの子?」

 驚くキャルロットに対し、ナズナはそのちっこい人物をなだめるように言った。

「お嬢さんは、どちらから来られたのですか?」

「ふん、まあ男扱いしなかったのは褒めてやるっ」

 ふんぞり返る童子の後ろから、こよりと権之助が息を弾ませながら駆けつけてくる。

「……ナ、ナズナさん。ご無事で……」

「ご無事なのは今のうちだけだぞっ!」

「……何が?」

 きょとんとして思わず聞き返すナズナの鼻先に、童子は指を突きつけた。

「アンタだ、アンタ! 聞けば祭神のくせに、一週間近くも社を空けていたそうじゃないか。そんなおサボリ癖のある怠け者の神さまなんて、ボクは神とは認めない! アンタを追い出して、ボクがここの祭神となってみんなを守ってやる! その方がみんなも幸せなはずだっ」

「……は、はぁ」

「はぁ、じゃないっ! 勝負だっ! あ、言っとくけどソンケーとかはナシだかんな。薪を切ったり水車を直したり赤子の面倒を見たり米俵を運んだり屋根の萱を吹きなおしたり壊れたあぜ道を直したり……(中略)……、とかいうワケわかんない勝負はごめんだからなっ!」

「よくわかんないけど、なんか色々とやらされたんだね」

「色々、どころじゃないっ! そのくせ、ちっともソンケーなんかされなかったぞ」

 同情の目で見るナズナにひとしきりキレたあと、童子は高らかにこう宣言した。

「どちらが強いか、戦って勝負だ! ボクに負けたらおとなしくこの村から出てゆくんだぞっ! ボクが負けたら? ボクは負けないっ! 特にお前なんかには、ぜ・っ・た・い・にっ、負けないからなっ!」

 そう言うと童子は、ふんぞり返ってスタスタと歩き出した。

「そっち、里の外……」

「わかってるっ! ボクをバカにするなっ!」

 童子はふてくされたようにぷりぷりと怒りながら引き返し、里の中のどこかへと姿を消してしまった。後に残され、茫然と顔を見合わせるナズナとキャルロット。

「……はぁ?」

 

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