男が希少な異世界の未開地に転移したら都市伝説になった   作:パンダプリン

185 / 185
おまけの10 なんの変哲もない師匠と弟子

「こうして異世界を歩けるようになったのは、新鮮だな」

 

「むぅ~~!」

 

 アリシアが頬を膨らませながら、胸をポカポカと叩いてくる。

 恨めしそうに、これ見よがしに、背負っているのはかつての大きなリュックだ。

 俺、あんなものに入って移動していたんだよな……

 

「気持ちはわかりますが、そんな窮屈な状態で旦那様を運ぶのはやめなさい。アリシア」

 

「でも、ソラ様だって狼の姿に戻れないから、秋人さんを運べなくて不満そうじゃないですか!」

 

「だから、気持ちはわかるとは言ったのです。私たちの自己満足よりも、旦那様の気持ちが最優先ですよ?」

 

 ソラがいい子!

 喋れるようになったソラは、アリシアの暴走を簡単に鎮めてくれる。

 やっぱり、神様なだけあるなあ……聖女も女神には逆らえないんだ。

 

(私のときは、全然言うこと聞かなかったわよ。そいつ)

 

 イーシュ様の声が聞こえたような気がするが、気のせいだろう。

 今のイーシュ様は神託はできないし、リティアのところにいるはずだからな。

 アリシアへの恨みが怨念となり、俺に伝わってきたんだろうか……

 

「主様と同じ大きさになったルピナスなら、背に乗ってもらい飛ぶこともできるのではないか?」

 

「試してみたですが、背中にある羽がびびびびって、アキトさんの顔を叩いたのでやめたです……」

 

 あの時はゆっくりと浮かんだ後に、顔が往復ビンタされたのでびっくりした。

 あの羽、見た目以上に頑丈なんだね。

 

「よ、よう……久しぶりじゃねえか」

 

 国の入り口についたと思ったら、まさか先生が直々に出迎えてくれた。

 

「お久しぶりです。せんせ……女王様」

 

「はあっ!? なんだその呼び方は、今までと同じにしろ、この馬鹿弟子」

 

 怒られた。

 これでも、俺の世界と異世界との交流なので、女王様に馴れ馴れしい口を利かないようにと考えてのことだったのだが……

 

「お前は、まだまだ私の弟子なんだからな!? 私が許すまでは、面倒を見てやるから覚悟しておけ!」

 

「は、はいっ! ありがとうございます!」

 

 たしかに、鍛冶をやってる場合じゃなくなってしまったからな。

 俺もだが、先生もドワーフの国ドルーレの女王様になってしまい、あの頃のように師弟として何かを作る暇がなくなった。

 そんな俺でも、先生はまだ弟子として扱ってくれていることが嬉しい。

 

「ソラ様、ソラ様。あれ、どう見えます?」

 

「旦那様にすり寄る女の一人です。でも、ノーラですし許容しましょう」

 

「そうですね……アリシアアイも、秋人さんへの好感度が100を超えていると言っています」

 

「アイなのに、見えるんじゃなくて言うんですか?」

 

 なんか、ソラとアリシアがこそこそ喋っている。

 好感度って……師弟愛的なものだろ、それ。

 

「うるせえぞアリシア! これはその……あれだ……」

 

「どれです?」

 

「うるせえ! 好きで悪いか!!」

 

 ほら、先生が困ってる。

 

「師弟愛的なものですよね?」

 

「あっ、うう……そうだな」

 

 あまり無礼なことをしてはいけない。

 親しい仲ではあるが、相手は一国の王様なんだぞ。

 

    ◇

 

「さて、よくきてくれたなお前ら」

 

「先生の頼みなら、当然ですよ」

 

「そ、そうか……」

 

 アリシアとソラが先生をじろじろと観察している。

 多分、君たちが思っていることは間違っていると思うぞ。

 

「それでだな。お前、私たちの国を優先して、向こうの世界の品を流してくれているだろ?」

 

 互いの世界で、人の行き来こそまだ俺たちしかできていないが、品物の交易のようなことはすでに少しずつ始めている。

 別に先生の国を優先というか、俺が知ってる国のほうが取引もしやすいというだけだ。

 決して、先生を贔屓したりはしていない。先生なら品の価値がわかるから、一番色々な品を取引したり、一番たくさんの品を渡したりしているのは、私情ははさんでいない。

 

「なにか、品物に不備でもありましたか?」

 

「いや、あれはこっちの世界にはない精巧で良い品だよ。だけどな、うちの国のやつらが……いや、もしかしたら他の国のやつらもか。あれじゃあ、満足しないと思うぞ」

 

 なんと……うちの世界の品は不評だというのか。

 

「な、なにが気に入らなかったんでしょうか?」

 

「ああ、悪い。物自体は良い物ばかりだ。私たちの世界にない発想だったり、技術力は大したもんだよ」

 

「じゃあなにが……」

 

「うちの国の馬鹿どもは、男の手製の品を期待していたらしい。フィオやアルドルに聞いたら、あいつらの国でも同じみたいだな。期待していたものじゃなかったってさ」

 

 ああ、そうなっちゃうのか。

 いまだに、この世界の男性の数は少ないままだもんな。

 男が作ったというだけでブランド品扱いになってしまうんだ。

 

 それに、今回の品は機械による大量生産が可能なものばかりだし、手作り感は全然ないなあ。

 なるほど、次からはそういう種類の品も選ぶべきか。ためになる、さすが先生だ。

 

「それでだな……その、どうだ? 久しぶりに気分転換というか、私となにか作ってみないか」

 

「いいんですか? 先生も女王様としての仕事が忙しいんじゃ」

 

「私だってドワーフだ。たまにはなにか造らねえと腕が鈍っちまう、弟子なんだから付き合え!」

 

「別にいいですよ。俺も楽しいんで」

 

 なんか、途中からまくし立てるような勢いになったが、それほど仕事ばかりで鍛冶をする時間がなかったのか。

 かくいう俺も、最近めっきり物作りができてなかったからな。

 なんだか、あの森での暮らしを思い出して楽しくなってくる。

 

「それじゃあ、やりましょう! なに造りますか?」

 

「そうだな……え~っと、ほら、あれだよ。お前も腕が鈍ってるかもしれないからな。最初に教えた指輪を造ってみようじゃねえか」

 

「えっ、いいんですか? 先生ならもっと難しいものも」

 

「弟子のためだ! 文句あんのか!?」

 

「いえ、ありがとうございます。それじゃあ、先生が納得するような指輪、造ってみせますよ」

 

 俺だってあれから成長したのだ。

 四人の精霊は今はいないから一人で造ることになるが、神力というずるもできるし、きっといい物ができあがるだろう。

 そうしたら、誰に渡そうか。

 ソラたちには、しっかりとした物を渡したいし、場所もちゃんと選びたい。

 となると、やっぱり日ごろの感謝も込めて先生への贈り物とすべきだな。

 

「できあがったら先生にプレゼントしますね」

 

「そ、そうか……まあ、弟子からの贈り物だからな。大切に保管してやるよ」

 

 作業に取り掛かった俺たちの後ろでソラとアリシアは、また仲良くこそこそと話をしていた。

 

「ソラ様、ソラ様……あれ、やっぱりそういうことですよね?」

 

「まあ、いいでしょう。どうせこれからあと何人か旦那様の妻は増えるはずですし、その一人目がノーラだったというだけです」

 

 違うからな。というか、妻が増える予定って……俺ってそんなに浮気性な人間に見えるんだろうか……

 俺は、家に帰ったらソラとアリシアにお仕置きと愛情表現を兼ねて、何時間かなで回すことを心に決めるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

鬼畜陵辱エロゲの世界に転生したけど男女比がバグってるせいで竿役が俺しかいない(作者:乳と地位が比例する世界)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

——なら俺が竿役全員やるしかねえっ!!▼カクヨムにも投稿してます


総合評価:1137/評価:7.26/連載:9話/更新日時:2026年06月29日(月) 07:21 小説情報

担いだ神輿が重すぎる!(作者:Ωが来た!)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

 周囲が人外だらけの中、主人公が生き残る為に軽そうな魔王候補を神輿として担いだ筈が…なんか気付いたら手に負えなくなっていた話▼ 或いは、ヤバい女達に囲まれ人外価値観に振り回されてながらも、知恵と勇気と下心で切り抜けようとするお話。▼ 尚、大小様々な矢印を追加で受けている様で、しっかりそれにも振り回される模様。


総合評価:2183/評価:8.13/連載:29話/更新日時:2026年09月27日(日) 07:00 小説情報

駆け出しハンターは英雄に憧れる ~だけども、どうやら人間は滅んでいるらしい~(作者:木乃実なぎ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

▼ これは、英雄に憧れた少年が――いつか、誰かにとっての英雄になるまでの物語。▼ 生まれてから十七年。▼ 母と二人、森の奥で暮らしていた少年ルキウスは、物語に登場する英雄へ憧れ、ハンターになるため旅へ出る。▼ 胸が躍るような冒険を夢見て辿り着いた、自由交易都市エルドラン。▼ そこで彼は、この世界の常識を初めて知った。▼「え? 人間は千年前に滅んだ種族?」▼「…


総合評価:1941/評価:8.5/完結:77話/更新日時:2026年09月08日(火) 21:00 小説情報

貞操逆転世界を三大欲求強めに生きるだけ(作者:逆転逆転逆転逆転逆転)(オリジナル:現代/恋愛)

よく寝て、よく食べて、よく抱かれて。▼マルチ投稿


総合評価:3282/評価:8.58/連載:6話/更新日時:2026年09月19日(土) 02:04 小説情報

【求ム】貞操逆転世界の婚活ヒトオスVTuber【清楚系】※11月10日発売予定(作者:外なる天使さん)(オリジナル:現代/コメディ)

※書影公開中※▼1巻発売日は11月10日、電撃文庫から世の中に射るッッッ!▼転生した。そしてまたオタクと童貞を拗らせた。──だからバーチャルでなら貞操逆転したヒトメス共の性欲をどれだけ煽ってもいいと思った。▼※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名とは一切関係ありません。名前被り等ありましたらTSしながら教えていただければ幸いです。▼・カクヨム様にも…


総合評価:48790/評価:8.84/連載:68話/更新日時:2026年10月19日(月) 19:19 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>