宵越しのレベルは持たない ~サキュバスになった彼女にレベルを吸われ続けるので、今日もダンジョンでレベルを上げる~   作:パンダプリン

197 / 197
第180話 ここから先は君の目で……とはいかず

「な、なんかすごい勢いでズドーンって!」

 

「ああ、ごめん。一応事前に言っておいたつもりだったんだけど……」

 

 対竜戦で、前回まったく攻撃が通じなかったから、上空から重力をかけて、スピードと重さで底上げしようと提案した。

 あまり理解できていなさそうだったが、返事だけはよかったので承知してくれたと思っていたのだが……。

 やはり、よくわからないままだったらしい。

 さぞかしびっくりしただろう。悪いことをしてしまった。

 

「楽しかったです! もう一回やってください!」

 

「ああ、そうなるんだ……」

 

 本人が喜んでいるのなら、それでいいけど……。

 常日頃、もっととんでもない軌道で敵と戦うもんな。

 さっきの程度は、シェリルにとって遊びみたいなものだったか。

 

「いつか、硬い敵に遭遇したらな」

 

 なので、次からはガンガンシェリルという杭を敵に打ち込もう。

 

「……? なんか寒気がします?」

 

「大丈夫か? 無理はよくないぞ」

 

 やはり、あれだけ竜相手に立ち回っていたので、本人も意識していない疲れとかが出てしまったのかもしれない。

 

「そんなことより、二人とも手伝ってよ~!」

 

「厚井さんここに呼んだほうが早いかもしれないね」

 

 気づけば夢子と大地は、大量のドロップ品をまとめていた。

 さすがは竜。あの巨体にふさわしい量の素材や魔導具を落としてくれた。

 

「牙とか爪とか鱗とか、これは……うわっと!」

 

「魔力袋ね。ブレスを吐いたばかりで活性化してるから危ないわよ」

 

「気をつける……」

 

 キラキラと光る袋を触ったら、中から炎が噴き出した。

 夢子が片手間で炎を制御し、紫杏が結界を張ってくれたので無傷だが、油断してたら火傷していたかもしれない。

 

 あと、大量の宝石やら金貨はなんなんだろう。

 これだけでも結構な価値がありそうだけど、竜といえば宝を溜め込むってことか?

 

「魔導具に素材に宝ねえ……これ、僕たちじゃ無理だよ。素直に厚井さん呼ぼう」

 

 諦めたように、大地は改めて提案した。

 俺たちじゃ価値とかわからないものも多いから仕方ないな。

 探索を続けていたことで、それなりにドロップ品の目利きもできるようになったと思ったが、まだまだわからないことは多いな。

 

「そうだな。全部運ぶのも面倒だし、厚井さんに連絡してみる」

 

    ◇

 

「こんな場所じゃ、慶一をよこすこともできねえじゃねえか」

 

「なんかすみません」

 

 厚井さんがいてよかった。

 よくよく考えれば、【超級】ダンジョンまで買い取りに来てくださいなんて依頼、普通は受け入れられるはずがない。

 そもそもダンジョンに入る許可が下りないからな。

 

「まったく……それにしても、ついに竜狩りか。うちの店の装備品のおかげだと喧伝しておいてくれ」

 

「言いふらす相手いないんですけど」

 

「お前らも後輩たちを自分の派閥に取り込めばいいじゃねえか。夢幻の織り手みたいに」

 

 それは、ちょっとなあ……。

 やり方が合うとか合わないとか以前に、そういう後輩たちを引き連れること自体が性に合わない。

 

「俺たちには向いていないので」

 

「だろうな。言ってみただけだ。そもそも、私はあいつらのこと好きじゃない」

 

 厚井さんが嫌っているのって、赤木さんだけじゃなかったんだな。

 

「なにかあったんですか?」

 

「職人が手作業で作る商品なんて、完成度にばらつきがあるから当てにならないとさ」

 

 う~ん……いい物しか作らないのになあ。

 でも納得だ。夢幻の織り手なら、ワンオフのオーダーメイド品よりも、大量生産された安定性の高い品を好みそうだ。

 

「じゃあ、アキサメの品とか好きそうですね」

 

「……あの野郎ども。うちの商品がアキサメの量産品以下だと!? 烏丸! うちの剣で竜を倒したと自慢してこい!」

 

「嫌ですよ……シェリルじゃないんだから」

 

 あえて煽りに行く必要はないだろう。

 彼らは彼ら、俺たちは俺たちだ。……だけど、心配だなあ。大丈夫なんだろうか。あの子たちは。

 

 ここにきた手間や、夢幻の織り手の話で、終始機嫌が悪そうだった厚井さんだったが、俺たちが案内したドロップ品を見るとほくほく顔で褒めてくれた。

 やっぱり職人なんだなあ。すべて余すことなく使い方を考えるようで、すっかり先の話はどうでもよくなったみたいだ。

 

    ◇

 

「気にすることないのに」

 

「そうなんだろうけど、さすがに加入する探索者が増えすぎてるのは、どうしても気になる」

 

 それも、新人の探索者ばかりが加入している。

 

 夢幻の織り手。

 昨年の探索者が発足した新鋭のパーティであり、俺たちより一年後輩となる。

 彼らは、優秀な探索パーティだった。

 

 ダンジョンの構造、地形、特性を正確に分析し、生息する魔獣も徹底的に調べ上げる。

 そうして、自分たちの力量で攻略できると判断したら、すさまじい勢いでダンジョンを踏破してしまう。

 それ自体はなにも問題ない。むしろ、とても優秀な探索パーティとして賞賛されるべきだろう。

 

 問題は、赤星くんを勧誘していた後輩たちが言っていた攻略本だ。

 別に夢幻の織り手がそう言ったわけではないが、通称である攻略本という呼び名のほうが今は周知されている。

 その呼び名が安っぽいことから、余計に問題につながりそうなんだ。

 

「ダンジョンのすべての情報を記した書物を、すべてのメンバーに配布するとはな」

 

「まめな性格なのかもしれないわね」

 

「情報の共有自体はむしろ推奨されることだけど、それ目当てに加入したメンバーにも惜しげもなく配布するのは、僕は反対だな」

 

 大地もそこは反対らしい。夢子もそうだし、きっとシェリルもだろう。

 だからこそ、俺たちは古いパーティ扱いされているわけだ。

 

 夢幻の織り手謹製のダンジョンの情報は、新しいメンバーにも渡される。

 それを頼りに新しい探索者は、いとも簡単にダンジョンを攻略し、あるいは挑戦することもなく攻略を諦める。

 すべてはその攻略本を頼りにした探索というわけだ。

 

 そんな方法で探索するものだから、夢幻の織り手に加入した新人たちは次々と効率的に探索を進める。

 攻略本片手に探索して成功してしまっている。

 そんな同期か後輩を見て、【初級】や【中級】の探索者は焦りを覚えないはずがない。

 結果。その探索者たちもすがってしまうのだ。攻略本に。

 

 あとは、どんどん夢幻の織り手のメンバーが増えていくだけ。

 危険な目に遭うこともなく、次々と昇格していくメンバーを抱えて、夢幻の織り手は巨大なパーティへと変貌していた。

 

 徹底したマニュアル通りの探索者。

 厚井さんに言っていたように、武器は安定性だけを求めアキサメの量産品だけを愛用する。

 当然だ。下手に威力が高くても、その場合の戦い方なんて攻略本には書いてないんだから。

 

 その徹底ぶりこそが、安全に確実な成果を残す探索者を量産する秘訣なんだろう。

 だけど、俺たちは探索が情報どおりに終わらないということを、よく知っている。

 

 本来そこに出現しないはずの、上位種の魔獣が現れることもある。

 悪意ある者の手で、ダンジョンや魔獣とは無関係に変化が起こることもある。

 そうなったときの対処方法なんて、当然攻略本には書いてないだろう。

 

「その攻略本で対処できないことと遭遇したら、普通の初心者たちよりも危ないと思うんだけどなあ……」

 

 だって、彼らは【初級】ダンジョンで危険な目に遭っていないんだ。

 だから、緊急時に逃げ帰るという体験すらしたことがない。

 新人以外の探索者は平気だろうけど、夢幻の織り手は新人を多く抱え込んでいるので、きっと多くのメンバーが混乱するだろう。

 

 なにかがあったときに、彼らは無事に帰還できるのだろうか……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~(作者:鏑木カヅキ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

 『狩り男』って知ってるか?▼ ソロ狩り専のレベリングをしてるイカれた冒険者のことさ。▼ しかも高レベルのダンジョンに籠ってるとか。▼ どんな魔物の攻撃も弾き、一撃で倒して、ボスさえソロで倒すらしい。▼ そんで死にかけの冒険者のもとに現れて、助けて、出口まで送って、そして金と食料までくれるって話だ。▼ 噂じゃ、大手狩りギルドや『勇者教』の連中も狩り男を探して…


総合評価:885/評価:8.08/完結:30話/更新日時:2026年09月04日(金) 16:27 小説情報

俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど!(作者:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

『ドラゴ・マギカ・クロニクル』 ▼ ドラゴン娘を育てて世界を救うという何とも特徴のない擬人化ゲーの世界に『カラバ・イルマイト』として転生して来た俺は特に波乱も無くモブとして生きていた。▼ シナリオの端っこでいつの間にか殺されているという様なことが無いことを願いつつ、ゲームのチュートリアルイベントで召喚したドラゴン娘は『R』でも『SSR』でも『UR』でも無かっ…


総合評価:1766/評価:8.36/連載:49話/更新日時:2026年11月04日(水) 23:35 小説情報

ED傭兵、清純幼淫魔を誑かす 〜行き倒れ淫魔を哀れに思い、ED治療も兼ねて拾ったが――勃たんし、それを硬派で誠実と勘違いされるし〜(作者:ぞうきん)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

 過去の出来事から不能になったオッサン傭兵クレバーは、ある日淫魔の少女を拾う。あわよくばED治せないかななんて軽い気持ちで考えていたが、彼は淫魔という生物のことを全く分かっていなかった。淫魔は幼かろうがなんだろうが、好いた男のためならば――――人外の執着心を以って、あらゆる手段でその精を搾り尽くさんとするのだ。


総合評価:1863/評価:7.96/連載:10話/更新日時:2026年08月09日(日) 17:59 小説情報

正体不明な拾った少女が実は闇堕ちした推しヒロインだってことを俺はまだ知らない〜「ごめん、俺は聖女が好きなんだ」「……それ、私ですよ?」〜(作者:水葉わいん)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

▼RPG世界のモブに転生した俺は、路地裏で横たわる正体不明の少女リアを拾った。▼しかし――リアの正体は闇堕ちした推しヒロインだった。▼「えへへ、ぎゅ〜っ!♡」▼俺は正体に気付かずに家にリアを住まわせていくと……なんだか、デレ始めて……?▼「あ、あの……好きです!」▼「ごめん、俺は聖女が好きだから……」▼「聖女? それ、私ですよ?」▼「……え?」▼結果、両想い…


総合評価:997/評価:8.35/連載:43話/更新日時:2026年10月11日(日) 07:18 小説情報

担いだ神輿が重すぎる!(作者:Ωが来た!)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

 周囲が人外だらけの中、主人公が生き残る為に軽そうな魔王候補を神輿として担いだ筈が…なんか気付いたら手に負えなくなっていた話▼ 或いは、ヤバい女達に囲まれ人外価値観に振り回されてながらも、知恵と勇気と下心で切り抜けようとするお話。▼ 尚、大小様々な矢印を追加で受けている様で、しっかりそれにも振り回される模様。


総合評価:2222/評価:8.13/連載:29話/更新日時:2026年09月27日(日) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>