宵越しのレベルは持たない ~サキュバスになった彼女にレベルを吸われ続けるので、今日もダンジョンでレベルを上げる~   作:パンダプリン

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第46話 リザルト画面の乱入者

「今日もいないな」

 

「例の絡んできたっていう探索者たち? いないほうがいいじゃない」

 

「そうだな。でも、あの連中いないと本当にこのダンジョン誰もいないんだな」

 

 まるで初心者ダンジョンなみだ。俺たちの他には受付さんしかいない。

 それほどまでに、このダンジョンが不人気だということだろう。

 たしかに【初級】と同じくドロップなんて全然しないけど、経験値の効率はいいのになあ。

 

「まあ混んでるより助かるか。とりあえず、シェリルが釣って紫杏が加減しながら殴ってくれ」

 

 ダンジョンの中へと進みながら、大まかな方針をみんなに伝えておく。

 

「お任せください!」

 

「はいは~い」

 

 まずは俺と大地と夢子のレベルを少しでも上げておきたいからな。

 そのため二人には悪いが、とどめだけを譲ってもらわなくてはいけない。

 

「俺が戦える程度のレベルになったら、俺とシェリルである程度ワームの生命力を削るから、大地と夢子はとどめのとき以外は魔力を温存してくれ」

 

「悪いね。僕たちだけ楽することになって」

 

「ふっ、しかたないですね。私が二人のことを守ってあげましょう。強くなりつつある人狼のシェリルが!」

 

「うん。よろしくねシェリル」

 

「あっはっはっは! ついに、認めることになりましたか! いいでしょう、私が大活躍してあげますから!」

 

 シェリルは気分良さそうに先頭を歩きだした。

 かわいそうだが、俺には体よく大地に使われているようにしか見えない。

 

「慣れたみたいだな」

 

「ダンジョンの中でまで、余計な言い争いするわけにはいかないからね」

 

「それじゃあ、今日も無理せずがんばろう」

 

「善でもそんなこと考えているんだね」

 

 おい、俺を何だと思っている。

 というか、余計な言い争いは避けるようにしていたんじゃないのか。

 大地のほうを見ると、何食わぬ顔で笑っているだけだった。

 

    ◇

 

「毒も火も効くな。よかった、これで効かないようなら作戦も糞もなかった」

 

「インプより、いやボスインプよりもさらに効きにくいけどね」

 

「私のほうは、ボスインプよりは燃えやすかったわ。魔法を使うタイプじゃないからかしら?」

 

 順調にダンジョンの中を進んでいく。

 単独のワーム相手ならばすでに問題はなく、群れが相手でも前と同じ戦法で危なげなく戦えた。

 大地と夢子のほうもレベルを上げながら、ワームにどの程度自分たちの魔法が通用するか検証してくれているが、悪い結果ではなさそうだ。

 

「さて、問題はこの先だな」

 

「この次の層に、その黒いワームが出るんだよね」

 

「前回はそうだった。たぶん入った瞬間に襲いかかってくるから、シェリルは回避に専念。俺が斬撃で鎧を破損させる。大地と夢子はなんとかその隙間に魔法を撃ってくれ」

 

 層を移動していないので、作戦の最終確認を行う。

 各々がうなずいたのを確認し、俺たちは再び黒いワームへと挑むべく次の層へと移動した。

 

「それでは、頼みます!」

 

 前方から迫る巨大なワームに向かって、シェリルが勢いよく走っていく。

 あまり頭はよくないためか、俺たちを脅威と認識していないためか、黒ワームは相も変わらずシェリルへと食らいついた。

 当然、シェリルはその攻撃をあっさりと回避して、無防備な横っ腹が遠くに現れる。

 

「シェリル! いったん距離をとってくれ!」

 

「はいっ!」

 

 攻撃に巻き込まないようにシェリルに一旦退避してもらいつつ、斬撃を可能な限りワームの胴体に命中させる。

 目を凝らすと、たしかに出血はしていないが小さな亀裂ができているようだった。

 

「大地! 夢子!」

 

 前回同様に、シェリルではなく体に傷をつけた俺に狙いを変える。

 なので、今度は俺がみんなから離れてワームを引きつけなければならないが、その前に二人指示を出す。

 

「準備はできてるわよ!」

 

「あれだけ大きいと毒が回るまで大変そうだね」

 

 俺が指示する前に二人はすでに魔法を構築してくれていたらしく、指示と同時にワームの体めがけて炎が飛んでいく。

 夢子の魔法を行使する技術力・精密操作性の高さなのか、まるで黒い体の亀裂に吸い込まれるように、炎は内部へと侵入していった。

 大地のほうの魔法は霧のように変化して、ワームの周囲を覆っている。

 

「くっさ! 効いてます! 鎧の中は、焦げ臭さとゴミみたいな匂いが混ざってめちゃくちゃです!」

 

 ゴミみたいな匂いっていうのは、多分焦げたワームの匂いのことだろう。

 大切なのは、中で焦げているという情報のほうだ。

 それはこれまで攻撃が効かないと思っていたワームが、夢子の魔法でダメージを負っているということに他ならない。

 現に、俺に向かって動き出していたワームは、その場で身じろぎしながら苦しみだした。

 

「おっけー! それじゃあ、このまま魔力使いきるまで攻撃続けるわ! 帰りは役に立たなくなるけど許してね!」

 

 夢子は様子見をやめたのか、先ほど以上の火力でワームの内部を焼き続ける。

 大地も同じなのか、ワームの周囲を覆っていた毒の霧はさらに濃さを増していった。

 

「まずい、暴れ出した!」

 

 ついに大地の毒も効いてきたのか、ワームの巨大な口からおびただしい量の血が吐き出される。

 それと同時に、焼き続けられ毒に侵され続ける苦しみからか、ワームはその巨体をめちゃくちゃに振り回す。

 

「き、きもい……」

 

 いや、そんなこと言ってる場合じゃないな。

 あのワームそれでも自分にダメージを与えている大地と夢子を狙って、少しずつにじり寄っている。

 

「そっちじゃないぞ。お前の敵はこっちだ!」

 

 俺は斬撃を再び飛ばして、ワームの外装に傷を作り続けた。

 傷が増えれば増えるほどに、夢子と大地の魔法はワームの本体へと届きやすくなる。

 外装を傷つける俺と、本体に攻撃し続ける夢子と大地。

 ワームはどちらを狙えばいいかわからなくなっているようだ。

 

「動きが止まった……?」

 

 すると、気色の悪い動きをしていたワームの巨体が突如ぴたりと止まる。

 なんか、やばそうな気が……。

 

「紫杏! 結界術!」

 

 ワームはぷるぷると震えている。一見すると命が尽きる寸前で瀕死の状態のようにも見える。

 だけど、なんだかまだそこまで弱っているようには思えなかった。

 そのため、念のため紫杏に頼んで、あのよくわからないスキルを使用してもらう。

 紫杏からの返事はないが、紫杏は突然の俺の頼みにも即座に応えてくれた。

 

「どひゃあっ!!」

 

 シェリルの叫び声が聞こえる。つまり、向こうにも俺が食らった攻撃が届いているということか。

 

 恐らくあの巨体で、周囲一帯を薙ぎ払うように攻撃してきたのだろう。

 俺たちの周囲に薄い魔力の障壁が発生するのとほぼ同時。

 突然強い衝撃に襲われて、体が勢いよく吹っ飛ばされたことだけがわかった。

 結界に守られていたものの、結界ごと飛ばされたため体中が強く打ちつけられてしまう。

 

 まずい……今の一撃で全身が激しく痛む。

 職業を剣士に戻して、前衛になったはずの俺でこのダメージだ。

 後衛である大地や夢子。回避を主体とするシェリル。そして何よりも、俺の紫杏は無事なのか!?

 

 あたり一面は、砂ぼこりでまったく状況がわからない。

 潮どきだ。このままでは死角からワームに狙われてしまうだろうし、帰還の結晶を使うべきだ。

 

「みんな無事か!?」

 

 だけど、最低でもパーティの全員が無事か確認する必要がある。

 各自で帰還したはいいが、誰かが気を失っていたとなっては最悪だ。

 もう少し、緊急時にどう判断するか決めておくべきだった。

 

「シェリル無事です!」

 

「大地、夢子、紫杏。みんな無事だよ~!」

 

 幸いみんな無事なようだ。ならば帰還の結晶で……いや、やけに静かだな。

 あれだけワームが暴れまわって轟音が響いていたのに、俺の耳には仲間の声しか聞こえていない。

 その疑念を晴らすかのように、砂ぼこりは消えていき視界が確保される。

 

「あ、危なかった……」

 

 俺の目の前には、今度こそ動かなくなっていた黒いワームの死骸が倒れていた。

 そうか、こいつも限界が近かったんだな。

 

「これ、本当に【中級】の魔獣なの? いくらなんでも強くなりすぎよ」

 

「なんとか、倒せてよかったね。もう魔力も限界だったし」

 

「ま、まあ……二人ともすごかったと思いますよ」

 

「シェリルもね」

 

 さすがのシェリルも、大地と夢子なしではこのワームを倒せなかったと理解しているのか、いつもより素直に二人を褒め、大地もまたそれに答えた。

 なんだか、これまでよりは素直にやっていけそうだな。

 危険な相手ではあったけど、これで万事うまくいった。

 そう思いたかったのに、残念ながら余計な水を差す声が聞こえてきた。

 

「へえ、まじであの化け物倒せるとはたいしたもんだ」

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