海賊系白髪無口っ娘   作:ひょっとこ_

1 / 10
 プロローグってことで、超短めです。


プロローグ

「なぁ、おれ腹減っちまってさぁ。まさかあれだけ積み込んだ肉が半日で切れちまうとはなぁ……、いやいや、はっはっは、不覚だった」

「…………」

「よし、そういうことで、お前、おれと海賊やろうっ!」

 

 まったくもって意味不明だった。

 私が生まれてこの方暮らしてきたこの島――アルカミー島を照らす日の光が、いつもよりも少しだけ強く感じられた今日のこと。麦わら帽子を頭の上に乗せて、頬になにやら傷痕をこしらえているその少年は突然やって来て私に向かってそう言った。波の音が少しだけ遠ざかり、どこかで黒羽の鳥が鳴いたような気がした。

 暑いから変なのが出た。そのくらいの感覚で麦わら帽子の少年を一瞥した私は足元に横臥する一メートル後半程の大きさの純白の毛並みを一撫ですると、腰掛けていた流木から立ち上がった。それに合わせて、同時に純白の毛並みの我が愛豹雪片もすっくと伏せていた体躯を起こし、頭を低くし、尻を突き出すような姿勢で伸びをしてから背後の鬱蒼と茂る雨林へと歩き始めた私に追随する。

 強引なのは、あまり好きではなかった。

 

「おっ、何だよ、どっか行くのか? メシか? 肉だな、よし、行くぞっ!」

 

 森に入る私と雪片を追い越して、走り出す麦わら帽子の少年。それを見て今先程の考えを改める。

 自分がしたいからそうしている。彼は、ただそれだけだった。強引だが、悪くはないかもしれない。そう思った。思うと、不思議と頬が少しだけ吊り上げられて、気づくと私は久方ぶりに微笑んでいた。

 

「がうっ」

 

 雪片がご機嫌な様子で小さく喉を鳴らす。尻尾もふりふり、私が微笑んだことが嬉しいらしかった。そのことがなんだか嬉しくて、今の顔の作り方を忘れまいと両頬を手で包み込み、それから雪片の首のところの和毛を掻いてやる。

 

「ぐるぅっ」

 

 自分の機嫌を気取られているとは思わなかったのだろう雪片は、尻尾をさらに踊らせつつ仕方ないから撫でられてるんだよ、とでも言いたげにそっぽを向いた。

 

「ふふっ……、ありがとう、雪片」

「がうっ」

 

 貸し一ね、そんなニュアンスで喉を鳴らした雪片はもっと撫でろと言わんばかりに和毛を掻き回す私の右手をその長い尻尾でぺしぺしと叩いた。

 さて、麦わら帽子の少年は一体全体どこまで行ってしまったのだろうか。

 遠くのほうで木々が薙ぎ倒される音と何かを砕き割るような破壊音、そして、彼と何かとの二つの猛々しい咆哮が響いているのを耳にして、ここらへんの野獣たちの凶暴性を身を持って知っている私は雪片と一緒に彼がいるであろう方向へと走り出した。

 できれば彼には死んでほしくない。なんとなくだが、私はそう思っていた。




 皆々様の反応次第で続く……、かも。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。