石の世界で農業チートしてたら比べ物にならん程のチートがワラワラ湧いてきた件 作:史上最強のラーメン
ドクスト面白いですよね。千空やアイシールド21の蛭間みたいなキャラクターにどうして心惹かれるのか...その謎を追い求めて我々はアマゾンの奥地へ向かった。
畑を耕す。村の職人に作ってもらった道具を使い、淡々と畑を耕す。暫く耕し続けて、一番近くにいた人間に1時間の休憩を取るように指示を出すと共に、全体に適宜水分を補給するようにと呼びかける。
まだ比較的涼しいとはいえ体力仕事だ。熱中症で倒れられでもしたら、その責任は使用者である自分に帰属する。子供と隠居を除いて約40人程度の小規模な村のため、労災が発生すると村での人間関係がギスる可能性がある。故に労務管理にはしっかりと注意を払うことにしていた。
この世に生を受けて9年。生活の質をを上げるために色々と試行錯誤をしていたら、いつの間にか村の食料生産の中核を担うまでになってしまった。
今では、自身の農場にて数人の村人を取りまとめる管理職をやらせて貰っている。この歳にして村カースト上位勢だ。我が農場は村長の後ろ盾もあるし、今の地位はしばらく盤石だろう。まさに記憶で見た、
『原始世界の村人に農業チートで転生したんだが?』みたいなご都合主義だった。
「休憩戻ったよー。次はスイショウの番なんだよ」
休憩から戻ってきた労働者兼幼馴染。西瓜の皮を被っているこの少女は、名をスイカと言う。スイカはスイショウと同じ孤児で、村の孤児が集まる家屋で一緒に暮らしている。年齢も同じなため幼馴染であり兄妹のような関係性だった。
「おぉ、もうそんな時間か。よっこらせ。スイカや、水を一杯貰えんかのう?」
「カセキのじいちゃんみたいなんだよ」
「あのムキムキ爺と一緒にしないでくれ。あの人はもっと元気だろ」
スイカから水を貰い、畑の近くにある木陰に移動する。今日の昼飯は最近試作中のパンだ。作りはじめは、黒焦げの炭のようななにかだったものが、随分と立派な見た目になったものだ。さて出来栄えは如何に。
......うむ、まずい!
労働時間の規制の外にされがちな管理職とはいえ、ここは法律の欠片もない原始の世界。上司がしっかりと休憩を取らなければ部下の休憩取得を萎縮させてしまう可能性がある。
それに、休憩も取らず無理に働き続けるのは、スイショウのポリシーにも反している忌み嫌う事柄だった。
衣食住、この原始の世界には全てが足りていない。特に食住。食に関しては、肉を挟んだ分厚いパンや細長いツルや肉、卵等が入った熱々の汁。住に関しては、寒い冬でも家の中で薄着でいられる機械や見た目鮮やかな器。
そんな記憶の中にある数々の美味しそうな食べ物や便利グッズを作り出し、豊かに暮らす。それがスイショウの夢だった。
このストーンワールドにおいて、目指すは健康で文化的な生活。
そのために、スイショウは労働基準法を遵守しながら農作業に従事するのだった。
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スイショウには前世らしい記憶があった。らしいというだけで記憶の一部は虫食い状態、知らない誰かの記憶が幅広く薄っすらとある程度だ。スイショウもはじめの頃は身に覚えのない記憶に困惑したものだが、せっかくだから存分に便利な記憶を利用してやろうと考える図太さがあった。
スイショウの住まう石神村は、記憶にある人々とは違い、非常に原始的な暮らしをしている。食料は基本的に狩猟、採取。村が湖にあるため、主に食卓に並ぶのは魚料理、山菜、魚、魚、魚。調理は単純でぶった切りにした魚に塩や魚醤をかけて食べるだけ。肉は猪や鹿が不定期に獲れる程度。
そして、春や夏は食料事情が安定しているが、冬は地獄だ。少ない保存食を村長が管理し皆で分け合う貧しい生活。スイショウが産まれるかなり前には、村で多くの餓死者が出た年があったらしい。
故にスイショウは、村の食料事情を改善しようと試みた。
外で採取した野菜類の種を集め、村の近くの土地を耕し種を植えた。生産効率が良いとされる青菜からはじめ、育つまでに畑の肥やしの試作を行った。まずは自らの糞で肥料作成を試みた。これは発酵までに時間がかかる上に村で異臭騒ぎを起こしてしまったため廃案となった。なにより誰かに自分の糞を使って何かをしているのを見られたくなかったし、仮に成功したとして村の住人に、「うんこ寄越せ」とは言えない。
青菜の生産は苦戦するかと思いきや、思いの外すんなりと成功した。農耕文化が無い石神村において、青菜といえど継続的に収穫できる食料の誕生は革命だった。その勢いまま大根や遠出した際に偶然見つけた小麦等、他の作物の生産にも取り掛かったが、特に小麦は土が合わないのか、収穫出来るようになるまで1年以上かかってしまった。
そして、スイショウは村のメイン食材である魚料理のレパートリーを増やすことも試みた。魚団子の鍋や炭焼き、蒲鉾等。魚をそのまま焼くか煮るかしかしなかった村にとって、これもまた革命だった。
紆余曲折を経て、村の食生活の発展に多大な貢献をした結果、齢9にしてスイショウは村長の娘であり、巫女様であるルリの料理番を任せられるに至った。
「はい巫女様。今日のお食事です。こちら左から順に、お好み焼き擬き、だし巻き、山菜のスープ、大根と里芋の煮物です」
お好み焼きには、小麦粉に野鳥の卵、魚のすり身と細かく切った青菜、魚から取った出汁を入れ焼き、特製マヨネーズととろみをつけた魚醤をかけた。
だし巻きも同じく野鳥の卵と魚の出汁、マヨネーズ、そして現在試作を重ねている大豆から作った貴重な醤油を使って、平型の土器で根性で巻いた。
山菜スープは山菜の他に、畑産の大根の葉と青菜も入れている。出汁は野鳥のガラから取った。
煮物は、大豆の醤油と魚の出汁を入れて細かく水で味を調整した。
全てルリの健康に配慮した献立だ。
「スイショウ、いつも美味しい食事をありがとうございます」
「いえ、全ては巫女様のため。矮小なワタクシですが、少しでも巫女様のお役に立ちたいと思い至り奉り候」
「ふふっ、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。というより、畏まりすぎて不自然です」
「そう?じゃあそうさせてもらおうかな!」
スイショウ含め、村の子供達は皆ルリに可愛がってもらっていた。スイショウのような両親のいない者達は特に。
幼いながら村の大役を任されるスイショウもルリを実の姉のように慕っていた。
「ルリ姉、体調はどう?食欲無かったら残しても大丈夫だからね?」
「心配ありがとう。今は安定していますよ」
ルリは幼い頃より病を患っていた。遺伝性の病なのか、ルリの母親も同じ病で亡くなってしまったらしい。
スイショウは、前世の記憶にルリの病を治す方法がないかと探してみたが大した知識は無く、病名すらも分からなかった。スイショウに出来ることは、食事療法にてルリの延命を図る事だけだった。
「それにお残しは...許しまへんでーでしたか?スイショウに怒られちゃいますからしません」
「流石に病人にそれは言いまへんで」
両親のいないスイショウは、ルリに対して母性のようなものを感じていた。
ルリの病は治らないと理解していたが、せめて美味いものをお腹いっぱいに食べて少しでも長生きをして欲しいと思っていた。
ルリに食事を届け終えたスイショウは、畑に向かっていると、前から見慣れた球体が転がってきた。
「大変なんだよスイショウー!!」
「うわ!前からスイカが!!」
「コハクが余所者を連れてきたんだよ!」
村の人間は当然、スイショウもこの世界には石神村に所属する者以外に人間はいないと考えていた。故にスイカの持ってきた情報は大ニュースだった。
過去に罪人として追放された者が戻ってきたやら、村の外に転がっている人型の石像が動き出したやら。村人達は想像を膨らませ、面白そうに話をしていた。娯楽が少ないが故に当然の反応だろう。
そんなミーハーな村人達の様子をスイショウは冷めた目で見つつ、ふっとニヒルな笑みを浮かべ、
「なんだそれおもしれーな!見に行こうぜスイカ!!」
「スイカが案内するんだよー!」
スイショウとスイカはワクワクしながら村にやってきたという人間の元へ向かうのだった。
〜〜〜
「ネギだ...」
「あ゛ぁ?誰がネギだテメー」
石神村にやってきた余所者、千空との出会いにより村の運命は大きく変わる。そしてスイショウの農業チート生活は終わりを迎え、同時に自身の夢に向けて大きく歩みを進めていくのだった。
筆者は法律にはそこそこ詳しいですが、農業は素人です。