石の世界で農業チートしてたら比べ物にならん程のチートがワラワラ湧いてきた件 作:史上最強のラーメン
「無限の彼方に声を届ける現代戦最強の武器、携帯の爆誕だ!!」
バッテリー、プラスチック、基盤、真空管、マイク。全員の力を合わせて、遂にストーンワールドに携帯が完成した。
しかし、千空はまだ作りたいものがあるようで、いつものようにニヒルな笑みを浮かべながら宣言した。
「俺らは司帝国に機動力とスピードで勝つ!みんな大好き家系ラーメンをバトル用にパワーアップさせる。このストーンワールドにフリーズドライラーメンを作るぞ……!」
フリーズドライ。冷凍してから空気と水分を抜いて軽くする手法。これで美味しい食べ物を味を保ったまま軽量化して持ち運べるらしい。
「フリーズドライ……!めっちゃ興奮してきたぁぁぁ!」
「スイショウがカセキのじいちゃんみたいになっちゃったんだよ」
早速スイショウは自分の調理小屋に向かおうとすると、千空からストップがかかった。
「待ちやがれスイショウ」
「なんだなんだ?早く料理しまくりたいんだけど!」
「落ち着けドアホ。どんな食いもんでもフリーズドライできるっつう訳じゃねぇ。油分が多いもんは味がアホほど落ちちまうから、なんか作るんなら油っ気の少ねぇもんにしろ」
「了解した!」
スイショウは今回もスイカに助手をしてもらい、試作を行うことにした。
「やるぞスイカ!」
「めっぽう唆るんだよこれは……!」
「なんか色々混ざってない?」
小麦、塩、重曹、蜂蜜、水、少量のお酢を混ぜて生地を作る。丸型のセルクルに入れて焼いたらパンの完成。
昔は黒焦げにしたり、岩よりも硬くなったりと散々な出来だったが、多少は見栄えと味の良いパンが作れるようになってきた。
「パンを作るのはめっちゃ苦手だったんだけど、千空が重曹を作ってくれたおかげでだいぶマシになったな」
「この前から重曹が大活躍してるんだよ!」
次に、猪肉を赤身と脂身に分けてミンチにする。赤身と脂身を9対1の割合で、更にみじん切りのノビル、水を吸わせたおから、卵、醤油を入れて混ぜる。
太めの小判形に整形してから、まずは中火で焼き、裏返したら弱火にして蒸し焼きにする。中まで火が通ったら猪肉ハンバーグの完成。
餃子の時から猪が有用すぎる。最近はラーメンのトッピングにもしてるし、村人達も猪=美味いメシと知っているからか、猪を積極的に狩ってくるのだ。
「なぁ、最近村の近くで猪見なくなったよな……」
「大変なんだよ!猪が絶滅しちゃうんだよ!」
「急いで猪を保護する法律を作るぞ!」
ストーンワールド初の鳥獣保護法を考えるのは後にして、続いてはソースを作る。
ソースは簡単に。醤油、みりん、砂糖をとろみがつくまで加熱。出来上がったタレに卵、油、塩、お酢を気合いで混ぜて作ったマヨネーズを投入して完成。
ハンバーグをパンで挟んでソースを塗ったら、
「簡易テリヤキバーガーの完成!」
ソースを除いて、全てフリーズドライにしても問題ないように工夫をしている。
「おいおいおい、これは美味そうすぎないか?」
「早く食べちゃいたいんだよ……」
「先食べちゃうか!」
スイショウとスイカは口を大きく開けてハンバーガーにかぶりついた。
『美味しいんだよ〜!』
濃厚な醤油ベースのタレが絡んだハンバーグは、噛むたびに野生味あふれる肉々しさが脳天を直接殴打するような衝撃をもたらす。肉汁もパンが優しく包み込んでくれており、全くしつこくもない。
美味しすぎて、スイショウはスイカと語尾が一緒になってしまった。
早速千空達の下へハンバーガーを持っていくと、
「ハンバーガーだー!」
珍しく、ゲンが子供のように目を輝かせて喜んでいた。
「千空ちゃんコーラある!?」
「ククク、事前にスイショウから何を作るのか聞いてたかんな。当然用意してやったぜ……!」
「さっすが千空ちゃん!ジーマーで気が効くぅ!」
ハンバーガーとコーラ。ハンバーガー好きのゲンにとってこの組み合わせはマストらしい。
「ぶはーーー!!!涙が出るっ!石化してた体に3700年ぶりのハンバーガー……!染み込んでくるね、身体に……!」
今、地球上で最も幸福な男はゲンだろう。そう断言できるほどに、彼は恍惚とした表情を浮かべながら、ハンバーガーをキンキンに冷えたコーラで豪快に流し込んでいた。
「ヤベーーー!これ過去一うめぇぞヤバすぎんだろ!」
「このソースがめっぽうクセになるな!これは醤油か!?それに、このマヨネーズとやらが味全体を柔らかく包み込み、旨みをプラスしてくれている!」
「コーラとやらも油分を上手いこと流してくれてめっちゃ合うのう!この組み合わせなら、いくらでも食べられそうじゃわい!」
みんな喜んで食べてくれており、スイショウとスイカは手を合わせて料理の成功を祝った。
そして、全員が完食したところでスイショウは話を切り出す。
「美味いんだけど、マヨネーズはフリーズドライできないからこの味を持ち運ぶことは無理なんだな。ちなみにこっちがフリーズドライ用のソースね」
数本の匙と小さな器に入ったソースをお盆に乗せて差し出した。
「これも充分に美味なのだが、やはりマヨネーズありのものと比べるとイマイチ味が劣ってしまうな」
「そうね。油分が多いものはフリーズドライできないって千空ちゃん言ってたもんねぇ」
「できるぞ〜」
「ジーマーで!?」
「ただのフリーズドライじゃ100億%不可能だがな、中の分子をいじくり回せば味を保ちつつ持ち運ぶことも可能だ。今からマヨネーズを粉末化する……!」
早速千空の指示のもと、スイショウ達は山に入り葛という植物を根っこごと大量に採取した。
村に戻って葛の根を細かく砕き、水の入った土器に入れてから手で強く揉みほぐす。ゴミを取り除いてから1日放置すると、土器の底に白いデンプンが溜まる。
「葛の根っこから抽出したデンプンに水を足して、粘りが出るまで加熱する。60℃くらいまで冷ましてから麦芽の酵素───アミラーゼをぶち込めば、デキストリンができる」
デンプンは乾燥させると片栗粉になるそうだ。料理のレパートリーが増えて、再びスイショウはソワソワしていた。
「このデキストリンをマヨネーズに混ぜて、冷凍してからフリーズドライマシンにかけりゃ、油の粒をすっぽり包むバリアができる。マヨネーズをそのままフリーズドライすりゃ乳化が崩壊して、ドロドロの油とボソボソの卵に分離する大失敗コース100億%確定だが、このバリアがあれば粉末化が成功するっつう寸法だ」
コハクが固まったマヨネーズを粉々に砕いた。
「部隊の機動力をアホほど上げる科学、粉末マヨネーズの完成だ……!」
これで、少々野菜は少ないが、栄養面にも配慮した保存食が一式出来上がった。
・主食は家系ラーメンorテリヤキバーガー
・汁物兼野菜は、魚のツミレとネギ、大根、椎茸の味噌汁
・甘味は、ミニパンケーキとジャム
ジャム以外は全てフリーズドライで軽々と持ち運び可能。
「決戦は2日後。美味いメシと最強の科学で司帝国を無血開城する!唆るぜこれは……!」
〜〜〜
司帝国との決戦、その前日の朝。いつもより少し早起きをしたスイカは、スイショウや他の同居人のために朝食を用意していた。
「おはようスイカー」
「おはようなんだよ、スイショウ!」
眠気まなこを擦りながら、スイショウが起床した。
「おっ、悪いね。朝ごはん作って貰っちゃって」
「本当だよ〜。今日はスイショウの当番なんだよ?」
「さーせんした」
千空が開発してくれた、鶏出汁の粉末をベースとした野菜スープを、スイショウはウマイウマイと言いながら飲んでくれている。
そう、この便利で美味しい粉末スープは千空が作ってくれたのだ。スープを入れているこの鉄の鍋も、今も家の中を温かくしてくれる暖炉も千空が作った。
千空が村に来てくれて、メガネをはじめとした便利な道具や美味しい食べ物がスイカの人生を更に彩り、豊かなものにしてくれた。
科学王国のみんなも優しい人ばかりで、スイカは千空やゲン、クロムのことを兄のように、コハクやルリのことは姉のように思っている。
毎日が激動だが、それ以上に楽しかった。
恐らく、新しいものが大好きなスイカの家族同然の幼馴染も、同じように感じているだろう。
「今日も村を巡回してくるわ〜」
「スイカもついて行くんだよ!」
村長となったスイショウは、日課の畑仕事を終えてから、毎日村人全員の元を回ってコミュニケーションを取るようにしていた。
「ねぇ、千空ちゃん。ハンバーガーやパンケーキを司ちゃん達の陣地にいくつか置いてきたらさ〜、取り合いからの内乱を誘発できちゃうんじゃない?」
「悪魔のような作戦にスイカが怯えてるぞ、ゲン」
「ちょ、スイカちゃん!?俺は科学王国のためを思ってね───」
「ククク、流石は腹黒メンタリスト様だ。その案採用……と言いてぇ所だがな、俺たちが敵陣地に近づいた痕跡を残しちゃならねぇ。司の警戒をアホほど強めちまう」
「だよね〜。携帯でジワジワ内通者を増やしていく作戦の方が、ジーマーで確実だもんねぇ」
基本的に、一番最初は千空の元へ赴き、科学クラフトの進捗を聞いたり、作業の手伝いをしていた。
その後は畑に戻るか隠居の家を訪ねたりするのだが、今日は違った。
「ハッ、スイショウ!村長になったからといって訓練をサボるのは許さんぞ!」
「チィ!ここ最近誘ってこないから油断してた!」
「スイショウも地獄の特訓を楽しもうねー!」
スイショウは、コハク達戦闘員組に連れ去られて強制的に地獄の訓練に従事することになった。
そして、銀狼は自分より弱い仲間ができて凄く嬉しそうにしていた。
「ムハハハ!俺も混ぜろ!合法的に村長の首を討つチャンスだぜ!」
「マグマクソ野郎!!!パワーandスピードのコンビは一番ダメなやつだろ!」
「どうした、今のは避けられただろう!?明らかに身体が鈍っているな。そんなことでは司の魔の手からスイカを守れないぞ!」
「こんな弱ぇクソチビが村長様とは笑わせてくれるぜぇ!」
「いやっ、スイカは関係ないし金狼でも今のは避けられな……ぐわぁぁぁ!」
コハクとマグマの同時攻撃を捌ききれなかったスイショウは、木の上まで大きく吹き飛ばされてしまった。
その後もしばらくコハク達に限界までしごかれ、ようやくスイショウは解放された。
「おい大丈夫かスイショウ?顔がヤベーほどパンパンに腫れてんぞ?」
スイショウが次に向かったのは、クロムとカセキのいる工作チームの作業場だった。
「クロム、お前も人に気を使えたんだな。それをほんの一欠片でもルリ姉に向けてやってくれ」
「よしスイショウ、テメーはもう一度ボコられてこい」
「ホッホッ〜、クロムも少しはコハクちゃん達に鍛えてもらったらどう?ルリちゃんのためにも」
「なんでルリのためなんだ?」
「このクソだらぁが」
クラフトを手伝いに行ったが何もすることはなく、少し話をしてその場を後にした。
「スイショウ遊ぼう!」
「スイカちゃんもあーそぼ!」
「おやつ作って!」
再び村を歩くと、スイショウは子供達に囲まれた。
「え〜、忙しいからリーム〜。でもなんか面白いことしてくれたらおやつは作ってあげる」
「じゃあスイショウの物真似するね!パンパンの顔!」
「コラー!あんま村長舐めんなよ〜!」
スイショウはぷりぷり怒りながら、村の子供達を追いかけまわしていた。子供達も非常に楽しそうにしている。少し前まで怖がられていたのが嘘のようだった。
「あ〜、スイカ。そういえば千空が呼んでたぞ。ほら早く行ってこい」
子供達との遊びを終えたスイショウは、急にそう言った。シッシッと手を振りながら、物凄く目が泳いでいて挙動不審だった。
スイカは千空の所へ向かうフリをして、すぐにこっそりと後をつけた。
人払いをしてまでスイショウが向かった場所とは……
「うわぁ〜ん、村長大変すぎる!ルリ姉膝枕して!」
「スイショウはいつも頑張っていますね〜」
スイショウは人目につかない場所でルリに甘えていた。普段の姿が嘘のようにフニャけている様は、幼馴染のスイカからしても非常に情けなく見えた。
スイショウは賢いのに、どうして自ら隙を晒すのだろうとスイカは疑問に思うのだった。
「頭も撫でて!」
「ふふっ、最近ちょっと大人っぽくなったと思っていましたが、こういう所は昔のままですね。よしよし」
スイカは、いつまで経ってもルリの側から離れない幼馴染を置いて、ひと足先に家に戻った。もうすぐ夜ご飯の時間なので、準備をしなければならないのだ。
後日スイショウは、ルリに甘えている様子を千空やコハク達に目撃されて、イジり倒されることになるのをまだ知らない。
「ただいま〜」
「おかえりなさいなんだよ、スイショウ!」
日が暮れてから、しれっと何事も無かったようにスイショウは自宅に帰ってきた。自宅といっても村の孤児達が集まる共用の家ではあるが。
村長になったスイショウは、村長用の広い家に住むことも可能だったが、今もこの家に住んでいた。理由を尋ねると、『スイカ達と一緒の方が楽しいから』と答えてくれた。
スイカも家族同然に過ごしてきた存在が急に居なくなってしまうのは悲しかったため、その言葉が物凄く嬉しかった。
「夜ご飯作っておいたんだよ!」
「ありがとう!家に帰ってご飯が用意されてるってのは、ほんと助かるな〜」
スイショウの料理を手伝うにつれて、スイカもどんどん料理の腕が上がっていった。今やスイカの料理スキルは、村でも上から数えた方が早いほどだ。
「スイショウ、今日は算術を教えてほしいんだよ!」
「お〜、勉強熱心だなスイカ!」
「スイカも早く賢くなって、もっとみんなのお役に立ちたいんだよ!」
最近は、夜ご飯の後にスイショウに勉強を教えてもらうのがスイカの日課になっていた。
司帝国との戦い直前ということもあって、近頃は授業もお休みになっているため、スイカにとってこの時間はとても貴重だった。
その後、しばらく勉強をしてからスイカ達は床に就いた。
「スイショウ」
「どうした、スイカ」
明日は朝早くに起きなければならないのだが、スイカはなんだか落ち着かず、隣で横になっているスイショウに話しかけた。
「明日のために、みんなで一生懸命準備を頑張ってきたんだよ」
「みんな自分に出来ることをして、本当によく頑張ってくれたなぁ」
「でも司っていう人はコハクよりも、この前の氷月って人よりも強いんだよ」
「想像もつかないな。コハクやあの男よりも強い人間がいるなんて」
「……誰も怪我をしないで、死なないでほしいんだよ」
明日から戦争が始まる。戦争なんて経験もしたことがないスイカだが、それがとても辛く残酷なものだという事だけは、なんとなく理解していた。
「怪我は……分からないが、そうだな。誰も死なない。絶対に大丈夫だよ。千空がきっとなんとかしてくれるさ」
「……うん。千空がいてくれるから、スイカも安心できるんだよ。コハクやクロム、ゲンにカセキ、それにスイショウもいてくれるから……」
「あぁ」
「みんな大好きなんだよ」
早く戦争なんて終わらせて、美味しいものを食べながら大好きな人達と楽しくお喋りをして、勉強をして寝る。そんな幸せな日が戻ってきて欲しい。そう願いながら、スイカはゆっくりと瞼を閉じた。
「おやすみなんだよ、スイショウ」
「あぁ、おやすみスイカ」
小さな掌から伝わってくる温もりが、今はただ心地良い。血は繋がっていなくても、2人の間には確かに家族の絆が存在していた。
その夜、スイカとスイショウは、久しぶりに手を繋ぎながら眠りについたのだった。
いつも感想、評価、お気に入り登録、誤字報告等ありがとうございます!
料理シーンはかなり長いですが、今後も描写してもよろしいでしょうか?
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