石の世界で農業チートしてたら比べ物にならん程のチートがワラワラ湧いてきた件 作:史上最強のラーメン
これじゃ農業チートじゃなくて料理チートだよ
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超絶唆る科学アイテムを作るにあたって、村人達が何を欲しているか把握する必要があった。
誰が調べてくるか、という話になったが余所者である千空に明らかに与していると思われているクロムやコハクではなく、スイショウやスイカがその調査を行うことが最善であると判断された。
「よっしゃやるぞスイカ!俺達はこのストーンワールドで統計を取る!就業環境改善基本統計調査だ!」
「唆るんだよこれは...!」
スイショウは畑仕事の就業環境改善の参考にするため、という名目で村長から村人全員へアンケートを行う事の許可を得た。これでスイショウが行うアンケートは公に認められた効力を持ち、やむを得ない理由がない限り拒むことはできなくなった。
「なんか千空みてーになってんな」
「あ゛ー、やる気満々のようで何よりだ」
「ハッ、微笑ましい限りじゃないか」
村長の後ろ盾があったため、調査はかなり円滑に進んだ。マグマやマントルといったアウトローがかなりゴネたが、人口の少ない村なので調査から集計まで半日ちょっとで終えることが出来た。
「ということで、調べてきたんだよ!」
スイショウ達は、クロムの住処である科学王国の拠点に戻ってきた。千空達は座って報告を待っていた。
「えー、株式会社スイショウファーム社長、スイショウが第1回就業環境改善基本統計調査の結果を発表いたします」
「この時代の科学で作れるモンだとおありがてぇがな」
「本調査は、村の隠居子供含めた全員を対象に行いました。調査内容は1つ。現在、村での生活で満ち足りていないことです。早速、1位から3位までのランキングを発表します。ご清聴ください」
第1位『美味しい食事』
第2位『彼氏』
第3位『筋肉』
「誰だよ彼氏とか言ったやつ!!!」
「絶対科学じゃ無理なやつきたー!!!」
「絶対にガーネット達キラキラ三姉妹だな」
「当たりだよ!イケメンで強くて奢ってくれる人がいいって言ってたんだよ!」
「欲望に果てしなく忠実だな...」
調査結果にざわめきが広がる。おそらくストーンワールド初の公に行った調査だ。地味だが世が世なら歴史に刻まれるレベルの話である。このくらい楽しんで貰った方が調査した甲斐があったというもの。
「調査結果に対する所感を述べさせていただきます。今回の調査で私は大変ショックを受けました。我が社は村の食料生産を牽引してきた自負とプライドがありましたが、まさか圧倒的第1位が食事になるとは。人の食欲に際限は無いとはいえ、ぶっちゃけ我が社はかなり頑張っているし、最近は野菜を安定的に収穫出来ており、また小麦の栽培も安定傾向にあります。なにより養蜂成功の兆しも見えてきており、甘味の普及もすぐそこです。私が以前、野生の蜂の巣を持ち帰ってきたことで村で蜂蜜ブームが起こったことは記憶に新しいですが、私も養蜂成功に向けて可能な限りの努力を重ねており、『蜂蜜はまだ取れないのか?』とかそんなに催促されても困ります。少しでも人の心があるならば調査実施者の顔を見た段階で気を遣ってくれてもいいのに特にあの三姉妹は話は長いわ我儘に我儘を重ねるわ───」
「わーったわーった!話なげぇわ!!」
対して、スイショウは調査結果に落胆していた。その恨み辛みを口に出したが、千空に遮られてしまった。
「にしてもそうか、メシか。ならあれを作ってやろうじゃねぇか」
調査結果を受けて、千空は何かを閃いたのかいつも通りのニヒルな笑みを浮かべていた。
「大丈夫か千空。料理とか科学関係ねーぞ」
「関係ねーどころかメシ=科学だ。そもそもテメェらが毎日食ってる魚の旨みってのはなんだと思ってる。グルタミン酸やイノシン酸だぞ」
3700年前の料理にスイショウは興味津々だった。そもそもスイショウの持つ記憶は虫食い状態で欠けている箇所が多い。そして記憶が主としてどの年代のものなのか、スイショウには判断することができない。もしかしたら、3700年前の文明より進んでいたかもしれないし、遅れていたかもしれない。千空がスイショウも全く知らない料理の知識を持っている可能性は十分過ぎるほどにあった。
「3700年前のメシ...!一体どんな料理なんだ!?」
スイショウはワクワクが抑えられず、急かすように言葉を発した。
「ラーメン。俺ら旧世界の人間なら全員大好きな世界一美味い料理だ」
〜〜〜
科学王国民一同は、クロムの住処から少し離れた場所にあるスイショウ個人所有の畑にいた。ここは村人が滅多に来ないため、スイショウが料理の試作を行う場所でもある。
村人を科学王国に取り込むための秘密兵器、ラーメンを作るには持ってこいの場所だった。
「小麦粉に卵と水と塩を加えてコネると...パンみたいに発酵はさせないのか。で、棒で伸ばして生地を薄くする。それを何層かに折りたたんで食べやすい均等な太さで切ると」
「あぁ、とりあえず小麦が大量にいる。あとは鳥だな。スープとトッピングに使う。チャーシューっつってな、アホほどうめぇ薄切りの肉だ」
スイショウは千空からラーメンという料理の詳細を聞いていた。
「調理に時間がかかる。全部で3時間くらいか。効率的にやらねぇともっとかかるかもな」
「骨を使って出汁を取るのか?やったことあるぞ」
「野鳥が必要か?私が獲ってこよう!」
「小麦脱穀しておいたんだよー」
「小麦粉々にしておいたぜ!」
「手際いいなテメーら」
千空から聞いた話と記憶にあるラーメンらしき料理の姿を照らし合わせ、頭の中で食材の分量や調理の段取りを組み立てる。恐らく作ることは可能だろう。
「ありがとう千空、大体どんな料理か分かった。唆るなこれは...!」
「料理は専門家に任せた。ラーメンが出来上がるまでに俺とクロムは製鉄炉に大量の酸素ブチ込む用のふーふー装置レベル2をクラフトする...!やんぞクロム!」
「おう!」
千空は、ラーメンが出来上がるまでの数時間も無駄にしたくないようで、クロムと共に拠点へ戻っていった。
スイショウは、調理設備のある小屋の中に入った。今からラーメンを5人分作る。千空にラーメンの詳細を聞いたことで、作り方も理解した。スイショウは、記憶で見た中でも一際美味しそうだった料理を再現できることに胸が高鳴っていた。早速調理に取り掛かる。
はじめに、ネギと人参と野鳥の骨をしっかり洗い冷水の入った鍋に入れる。何故かは知らないが、熱湯よりも冷水の状態から出汁をとった方が美味しくなるのだ。弱火で鍋を熱し、ふたをして大体1時間から2時間程煮る。途中途中でアクを取ることを忘れない。
次にスイカが脱穀し、クロムが粉状にして完成した小麦粉に、コハクが獲ってきてくれた野鳥の卵を5つ入れる。勘だが、卵4つでも出来る。しかし、小麦自体の品質が良くないせいで食感がボソボソになりそうな気がするのだ。故に卵の分量、というより小麦粉以外材料は全て分量を増やして小麦粉の品質を誤魔化す。発酵はいらないらしいが、一応少しの間放置しておく。20分程経ったら、麺を伸ばし折りたたむ。余分だと思うくらいに打ち粉をし、絶対に生地同士がくっつかないようにする。均等な太さに切れば麺の完成だ。
スープ完成にはまだ時間がかかりそうなので湯を沸かし、湯が沸騰したら卵を入れ9分ほど茹でる。ついでにほうれん草も茹でておいた。並行して野鳥のもも肉を火が通るまでじっくりと弱火で焼く。中に火が通ったら強火にして表面に少し焦げ目をつける。肉を焼いた際に出た油は捨てないで保管しておく。チャーシューとゆで卵とゆでほうれん草完成。
そして、そろそろ頃合いだろう。スープの入った鍋の蓋を開けた。すると、食欲を刺激する重厚な香りが鼻腔をくすぐった。骨を取り上げてアクを取り除いて醤油を入れ、少し味見をする。鶏出汁の濃厚な旨みが前面に出ている。鶏だけでは味に角ができるが、野菜がそれをまろやかにしてくれている。そしてそれらの全ての旨みを1段階引き上げる醤油。これは美味過ぎる。このまま飲み干してしまいたいレベルだ。
少し水を入れて味を調整し、遂にスープが完成した。
〜〜〜
器にスープを注ぎ、鶏油を入れる。次に湯切りした麺をスープが飛ばないようにゆっくり入れ、その上に鶏もものチャーシュー、ゆで卵、ほうれん草、刻みネギの順で綺麗に盛り付ける。
「ラーメンの完成だ、おあがりよ!」
ここにストーンワールド初の、ラーメンが完成した。
「これがラーメンとやらか」
「なんかニョロニョロしてるんだよ」
反応は様々だったが、はじめて見る料理に中々端が進まないようだった。
「ククク。ラーメンを作るとは言ったが、まさかこのストーンワールドで家系ラーメンにありつけるとはな...!」
「家系?ラーメンとやらには、いくつも種類があるのだな」
「マジか!?今度詳細教えてよ千空!」
「あぁ。麺伸びっからさっさと食うぞー」
ラーメンには他にも沢山種類があると聞いて興味を唆られるスイショウを横目に、それぞれ麺を啜った。なんの感想も言わず、しばらく無言で味わっていた。スイショウに僅かな緊張が走る。少しして、はじめに声を挙げたのはクロムだった。
「うめーーー!!!ラーメンうますぎんだろヤバすぎだろ!!!」
スイカもコハクもがっつくように食べている。千空の表情も明るく、舌が肥えているであろう彼の口にもあったようだ。
「わぁぁぁ!ズルズルって食べる感じもこんなの初めてなんだよ!」
「こんな食べ物がこの世にあることが信じられん...!」
「流石に現代の店レベルとはいかねぇが、充分うめぇ!やるじゃねぇかスイショウ!100億万点くれてやる!」
「お粗末!!」
スイショウは、スイカ達が美味しそうにラーメンを食べている様子を見て無性に込み上げてくる思いがあった。
「あぁ...めっちゃお腹空いてきたな...!」
「あ?」
「俺は...この世界に溢れる美味いものをもっともっと食べたい!」
スイショウは込み上げる思いを、欲を素直に口にした。
美味しそうにご飯を食べる人間を見ていると、見ている人間までお腹が空いてしまう現象がある。きっと、スイカ達が美味しそうにラーメンを食べる様子を見て、スイショウも更にお腹が空いてしまったのだろう。
「でも多分、あのまま村にいるだけだったらそれは一生叶わなかったッ...!」
千空が来なければ、スイショウは村を発展させることのみにその才を注ぎ、生涯を終えていただろう。
「だからありがとう千空、村にやって来てくれて!」
スイショウの夢は、記憶の中にあるような美味しいご飯や便利な道具に溢れた豊かな生活を送ること。
千空がもたらしたラーメンや便利な科学アイテム。それらに触れ、
「あ゛ぁ〜、欲しいは科学の原動力だ。目的のために俺んこと利用すんならそうしろ。そん代わり俺もテメーんこと利用しまくってやっからなぁ。アホ程働いてもらうぜぇ、覚悟しとけよ」
「あぁ!労働基準法を遵守しながら死ぬ気で働くよ!」
千空と出会ったことで、スイショウは自らの夢へ一歩近づいたことを確かに実感したのだった。
〜〜〜
翌日、科学王国は村へと続く桟橋の前で村人達にラーメンを配っていた。
ラーメンは予想の通り、大好評だった。
「うめぇ!うんめぇ...!」
「もっちりとすっげぇ!それでいてすっげぇ!」
「このすっごい美味しいの作ってくれた人、千空君っていうの〜?えー、どんな娘がタイプ〜?」
「製鉄炉に大量の酸素を送れる娘」
「ド直球すぎる!!千空、君は回りくどく口説いたりとか一切しないタチだな...」
村の外から来た余所者、千空がこの美味い食べ物を作ったと全面的にアピールするために千空がメインで調理をし、スイショウ達は給仕を従事している。
「なぁガンエン、千空と交渉してお前だけ特別にもう一杯食わせてもらえることになった」
数人の村人がラーメンを美味しそうに食べている中、スイショウは村一番の食いしん坊であるガンエンに声をかけた。
「いいのか!?」
「あぁ。千空はメチャクチャいい奴だからな。ただし条件があってな」
「条件?」
「なに、簡単な話だ。残りのラーメンをゆっくりと食べながら村中をまわって欲しいんだ」
「なんの意味があるんだそれ?」
「皆んなに伝えて欲しいんだよ、世の中にはこんなにも美味しい食べ物があるんだってね。美味しいものは皆んなで共有してこそだろ?村の皆んなも美味しい思いをできて、ガンエンもラーメンを腹一杯食える。皆んな幸せじゃないか」
「!?スイショウも千空も良いやつだな!わかった行ってくる!」
「頼んだぞー!」
スイショウは、ラーメン片手に村に戻っていくガンエンを手を振りながら笑顔で見送る。
「ステマとは考えたじゃねぇか。最小限の労力で利益を産み出す超合理的手法だ」
「ガンエンは食欲の化身みたいな奴だが素直ないい奴だよ」
「その素直ないい奴を利用しといて言うセリフじゃねぇな、この年齢詐称野郎」
千空とスイショウは顔を見合わせ、ニヤリと口角を上げる。
『ククク』
「千空とスイショウ、すっごく悪い顔してるんだよ...」
「悪役の顔だなもはや」
「おう千空!村からまた5人くらい追加で来たぜ!」
「おう!科学のメシラーメンでこの村を制圧する...!気合い入れんぞテメーら!」
『おー!』
〜おまけ〜
「やっぱスイショウのメシはうめぇな!」
「流石は村で嫁にしたい男ランキング第1位だな」
「そんなことやってたのかよ女共は」
「ちなみにクロム、キミは1票で同率4位だ」
「誰だよ俺に入れたやつ」
「さぁ、それは誰だろうなぁ」