石の世界で農業チートしてたら比べ物にならん程のチートがワラワラ湧いてきた件 作:史上最強のラーメン
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あれからしばらくラーメンを配り続けていると、見知らぬ男が勝手にラーメンを食べていた。
千空によると、その男の名はあさぎりゲンと言い、千空と同じく3700年前の人間なんだそうだ。ゲンは千空と敵対する獅子王司の手勢らしいのだが、恐らく丸腰だろうに、コハクや金狼銀狼に武器を向けられても冷静な態度を保つ豪胆さと不気味さがあった。
しかし、千空はそのような相手に対しても自身のペースを崩すことなく、ラーメンを食べた対価として労働を要求したのだった。今頃、ゲンを含めラーメンを食した者は皆、地獄の製鉄作業に従事していることだろう。今後、あの地獄の作業を経験しても尚再びラーメンを食べたいと思うのか、スイショウは少しだけ興味があった。
夕方、スイショウはルリの夕飯を届けに村長の家を訪れていた。
「お疲れ様、ジャスパー、ターコイズ。巫女様のお食事を持ってきたよ」
ジャスパーとターコイズは村長の側近の夫婦だ。渋めの顔をした男性がジャスパーで、チャーミングなデコをした女性がターコイズだ。
村長の家の門番をしており、村長やルリに会おうとする者は基本的にまずこの2人を通さなければならない仕来たりがある。
「待て、止まれスイショウ」
「なんだなんだ?」
スイショウはルリに食事を届ける役目を拝命しており、いつもは顔パスで通れていたのだが、今回は何故か止められたため困惑していた。
「悪いけど、あなたの持ってきた食事の毒味をさせて貰うわ」
「あー、成る程」
スイショウはターコイズの言葉から、大体の事情を察する。恐らくスイショウは、ラーメンの件で余所者の千空に与する存在だと村長に認識されてしまったのだろう。
千空の人間性を知らない村長は、スイショウが千空に操られて食事に毒物などを入れた可能性を考慮し、ここでジャスパー達に毒味させる判断をしたのだ。
「それは仕方ないな。村長の命令なんだろ?遠慮なくやってくれ」
「分かるのか」
「あぁ。巫女様を心配してのことだろ。なら俺が異を唱えることはないよ」
「やはりお前は賢いな」
「村長が巫女様を心配する気持ちは痛いほど分かる」
ターコイズは、少し申し訳なさそうにしながら匙で一品ずつ料理を口に運んでいた。村の住民からは、真面目で厳格な村長の側近と見られがちな2人だが、特にターコイズは村長に勘当されたコハクを気にかけるような良い男である。真面目に職務に準じる彼らを、どうして責めることがあろうか。
しかし当然、ルリのことを心配して何か行動している人間は村長だけではない。コハクやクロム、スイカに千空。そしてスイショウも気持ちは同じだ。
「そう、村長が巫女様を守るために最善の手段を取るように」
「スイショウ?」
「いや、やっぱなんでもない」
今日はルリと話していくことも許可されなかったため、スイショウは食事を届けてすぐにその場を離れたのだった。
スイショウは千空達の様子でも覗きに行こうかと村の外に向かっていると、急に大雨が降り出した。雷が鳴り響き、村人達は右往左往している。村人達は雷が自然現象であることを知らず、神の怒りだと信じているのでこの慌てようは当然だった。
スイショウは適当な建物で雨宿りしようと小走りで住居区を駆けていると、甲高い声が聞こえてきた。
「大変大変大変!村の橋壊してるよ余所者さん達!」
発声源は、お喋りや噂話が大好きなシャベルという村の少女だった。
「ムハハ!ついに悪の本性を現しやがったか!任せろ、俺が殺す!」
この時を待っていたと言わんばかりにマグマを筆頭にカーボ、マントルを含めた3人組が殺気を漲らせながら、橋の前で何らかの作業をしている千空の下へ向かおうと橋の上を進んでいた。
今マグマ達に千空へ手を出させる訳にはいかない。スイショウは全速力でマグマ達の下へ向かい、大声を張り上げた。
「待てマグマ!余所者達の対応は俺がする!!」
「あぁ?俺様に命令してんじゃねぇスイショウ!!」
当然のようにマグマは反発した。確かにマグマ達が千空達を攻撃をしようとする理由は正当だ。今までは特に村に損害を与えなかったため手を出さなかったが、今回千空は村の一部を破壊したのだ。寧ろ短気なマグマ達は、今までよく我慢した方だろう。
「命令するが?だって俺の方が村での立場偉いじゃん」
「んだとクソチビ!ぶち殺されてぇのか!?」
しかし、スイショウも目的のために引き下がることはできなかった。利用できるものは何でも利用させてもらう。
「マグマ、俺は村の食料分配に関して大きな発言力を持っている。この意味がわかるか?」
「知るか!何言ってんだテメー!!」
「なぁカーボにマントル、また魚だけの生活に戻りたいか?」
マグマ、カーボ、マントルの3人組。リーダー格であるマグマは基本的に話が通じない脳筋だが、カーボはまだ話が通じるし、マントルは利害を考えられる頭を持つ。
村には娯楽が殆どないため、村の者にとって食は日常の一部であり娯楽だ。それを司っていると言ってもいいスイショウは、このように強引に荒事を収められる力を持っていた。
「チッ、おいマグマ、面倒だからここは引いた方がいいんじゃねーか?」
「いい判断だカーボ。最近蜂蜜が結構な量取れてな?近々配るから楽しみにしとけよ。お前達の分は量を増してもらえるように村長に掛け合うから。マントルもいいな?」
碌な甘味のない村では、蜂蜜は超が付く程の嗜好品で嫌いな者はいない。到底甘味を好みそうな顔面をしていないこの3人も、例に漏れず蜂蜜にドハマリ中である。
「あぃ!マグマ様雨も酷くなってきてますし、ここは戻りましょう!」
甘味の誘惑は凄まじく、カーボもマントルも既に帰る気満々のようだった。
「テメェら食い物に釣られてんじゃねぇ!...チッ、覚えとけよスイショウ」
「あぁ、風邪引かないように早く家に戻れよ」
まさか蜂蜜が戦を止めることになるとは。スイショウは微妙な気持ちになりながら、千空達の下へ向かった。
「超絶大手柄だスイショウ!」
「千空!流石に橋壊すんなら事前に一言連絡してくれ!」
「急ぎなんだからしょうがねーだろ!今すぐ銅線巻き付けた鉄に雷ぶち当てなきゃなんねーんだ!」
「なんかとんでもないことやろうとしてる!?でもめちゃくちゃ面白そう!!よし千空、好きなだけ橋持ってけ!どうせカセキが直してくれる!」
「いや手のひら返しゴイスー!」
「流石に好きなだけ持ってったら橋落ちちまうだろ!」
「カセキの爺ちゃんにあんまり無理させちゃダメなんだよ!!」
総ツッコミを食らってしまった。そして敵対勢力であるはずのゲンが、まるで科学王国の一員であるかのように見事なツッコミを入れていた。なんというか、彼はもう凄く科学王国に馴染んでいた。スイショウも、科学王国のいつもの6人が揃っているなと一瞬勘違いしてしまったほどだ。
「スイショウちゃんって言ったっけ?さっきの見てたよ。若いのにやるねぇ」
「おぉ、ゲン。司帝国だったか?話には聞いてるよ。科学の無い原始的で不便な生活を送ってるらしいじゃん?これからこの村はどんどん発展していくから、こちら側についてくれるならいつでも歓迎するよ?」
「キミ何歳?」
「9ちゃい」
「これで9歳?ジーマーで言ってる?」
スイショウの放つ謎の圧に若干引き気味のゲンだったが、千空達がどこかに向うのを見て直ぐに平静を取り戻していた。
その後、見事千空は鉄に雷を落とすことに成功し、鉄+銅線+雷で作る超強力磁石が完成した。そしてこの磁石を用いて電気を作り、サルファ剤製作のロードマップを大きく進めていくのだった。
〜〜〜
千空が原始のストーンワールドに電気を灯した夜、スイショウとコハクは森の中で剣を交えていた。
「珍しいなスイショウ、キミの方から稽古を申し出てくるとは!」
「あぁ、御前試合に勝つ確率を少しでも上げるためにね!」
御前試合。それは、一世代に一度だけ石神村で行われている大きな武術大会のことを指す。村の巫女が成人した誕生日に開催され、優勝者は巫女の夫となり、村長の座を継ぐ。
実は数ヶ月前に既に御前試合は行われており、優勝候補筆頭のマグマを倒したコハクが優勝していた。当然姉妹での結婚は認められていないため、来月に再び開催される運びとなっている。
「...残念だが、御前試合に出るには14歳以上でなければならない。キミの年齢だと───」
御前試合に出場できるのは、14歳以上の未婚の者。9歳の少年であるスイショウは、参加資格を有していなかった。
しかし、そんなことは関係ないと言わんばかりに、スイショウは声を上げた。
「出る!歳が足らなくても俺の出場を認めなきゃならない状況を作る!そのために今色々やってるんだ!」
御前試合は古くから続く伝統で、村では神聖な催しとされている。そんな伝統を破って参加しようとしているスイショウのことを、不可能だと断じるのは当然で、
「そうか。キミがそう言うのなら可能なんだろうな!私にできることがあればなんでも協力するぞ、遠慮なく言ってくれ!」
「コハク...」
当然の筈だったのだが、コハクは疑念など一切含まない瞳でスイショウの言葉を肯定した。
その勇ましくも優しい声に、スイショウの涙腺は緩るんでしまった。
「...コハクお姉ちゃんのそういう、人の言うことを真っ先に肯定してくれるところ、やっぱ好きだ!」
「ハッ、久しぶりにお姉ちゃんと呼んでくれて嬉しいぞスイショウ!」
溢れそうになる涙を堪えながら、スイショウはコハクに感謝の気持ちを伝えた。
なんだかんだ言いながら、スイショウはこのコハクという姉のことがルリと同じくらいに大好きだったのだ。
「千空の科学でルリ姉は治る!村も豊かになる!でもそれだけじゃ足りない!ルリ姉に望まない婚姻なんて絶対にさせない!」
「そうか...」
サルファ剤のおかげでルリが助かったとして、ルリが御前試合の優勝者と結婚しなければならない運命は変わらない。
スイショウは、ルリには自身が心の底から惚れ込んだ相手と添い遂げて欲しかった。
「なんというか、キミはクロムの次に千空の影響を良い意味でよく受けているな!」
攻撃を止め、コハクは感慨深そうにスイショウを見つめていた。
「本当に、めっぽう大きくなったなスイショウ...」
「コハク...」
「ルリ姉や私の後ろを着いてまわっていた頃が懐かしいな。キミがルリ姉のことを間違えてママと呼んで───」
「それは忘れろぉ!!!」
スイショウも格好つけたいお年頃だった。勢いよく振るわれたスイショウの攻撃は、羞恥の余り乱れまくっており簡単に避けられてしまった。
「とにかく、俺は俺の立場で出来ることをする!」
スイショウは、順当にいけば今回の御前試合もコハクが優勝すると考えていたが、何が起こるかは分からない。普段は脳筋のマグマだが、精一杯の悪知恵を働かせてコハクの妨害を行う可能性がある。それに、仮にコハクが優勝したとして再び御前試合をやり直すだけだろう。コハクには悪いが、コハクが優勝しても時間稼ぎにしかならないのだ。
「なにかするつもりか?」
「あぁ、コハク。俺は───」
大好きな姉に幸せになって貰うために脳をフル回転し、スイショウはある一つの策に辿り着いた。
「俺が村を手に入れて、ルリ姉を解放する」
静まり返った夜の森にて、スイショウは意を決してそう宣言するのだった。
〜〜〜
スイショウの宣言の後もコハクとの特訓は続いていた。
しばらく武器を打ち合っていると突然、血相を描いたスイカが大変な報せを運んできた。
「大変なんだよスイショウにコハク!ゲンが死んじゃったんだよ!!」
『なにぃ!?』
ゲンには科学王国に寝返って貰った上で、無傷で司帝国に帰還して貰わなければならない。もしゲンに傷をつけて返しでもしたら、チート人間の千空が認めるレベルのチート戦闘力を持つ獅子王司が降臨する可能性があるからだ。
恐らく千空も同じように考えているだろう。その目論見が破綻しかけている現状に、スイショウは嫌な汗が止まらなかった。
スイショウ達は急いで科学王国の拠点であるクロムの住処に走った。
拠点には、身体のあちらこちらに傷を作り、苦しそうにして床に臥すゲンがいた。
これは死んでは...いないようだ。
「いやゲン生きてるじゃん!めちゃくちゃ焦ったわ!情報は正確に伝えなさいスイカ!」
「いたっ!ごめんなんだよー!」
「すまんスイカ、流石にこれは擁護できん」
流石に怒ったスイショウは、スイカの頭を小突いた。
一方で、生きてはいるが重体な様子のゲンを見てスイショウは頭を抱えるのだった。