ハピネスチャージプリキュア!夕映えのアーベント   作:Leona

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第12話『めぐみピンチ! プリキュア失格の危機!!/助けたい心と、助けすぎる手』

第12話『めぐみピンチ! プリキュア失格の危機!! /助けたい心と、助けすぎる手』

 

 朝のぴかりが丘学園は、返却されたテストの話題で騒がしかった。教壇では教師が採点済みの答案を一枚ずつ返しており、赤点を免れて喜ぶ者もいれば、思ったより低い点数に机へ突っ伏す者もいる。

 

「愛乃」

 

「はい!」

 

 めぐみは元気よく立ち上がった。教師は答案を見て、ほんの少し間を置いた。

 

「……あとで話がある」

 

「え?」

 

 教室のあちこちから小さな笑い声が漏れる。めぐみは嫌な予感を覚えながら答案を受け取った。紙の右上には、普段あまり見たくない数字が大きく書かれている。

 

「ええーっ!?」

 

「めぐみ、うるさいぞ」

 

 隣の誠司が注意する。

 

「だって誠司! これ見てよ!」

 

「見せなくていい」

 

「見て!」

 

 半ば無理やり答案を突きつけられ、誠司は点数を確認した。

 

「……勉強してなかっただろ」

 

「したよ!」

 

「いつ?」

 

「昨日の夜!」

 

「テスト前日に始めるのは、勉強したうちに入らない」

 

 前の席では、ひめが自分の答案を見ながら笑いを堪えていた。

 

「めぐみ、本当にこの点数取ったの?」

 

「ひめ! 笑わないでよ!」

 

「だって、私より低いじゃん!」

 

「そこまで言うことないでしょ!」

 

 二人のやり取りを横目に、悠は自分の答案を確認した。飛び抜けて良いわけではないが、再テストとは無縁の点数だ。人間社会で生活するために必要な知識は、なるべく覚えるようにしている。ただ、三百年前には存在しなかった用語や制度も多く、社会科の答案にはいくつか赤い訂正が入っていた。

 

「赤石」

 

 誠司が答案を覗き込む。

 

「結構取ってるな」

 

「覚えれば答えられる問題が多かったから」

 

「社会は?」

 

「少し苦手」

 

「意外」

 

 ひめが振り返った。

 

「赤石くんって、何でも知ってそうな顔してるのに」

 

「どんな顔?」

 

「ずっと昔から生きてそうな顔」

 

 悠の手が止まった。ひめ自身は深い意味もなく言ったらしく、すぐにめぐみの答案へ興味を戻している。誠司だけが悠の横顔を見た。

 

「赤石?」

 

「何でもないよ」

 

 返事は少しだけ早かった。

 

 その時、教壇から再び教師の声が飛ぶ。

 

「愛乃。それから石神」

 

「はい……」

 

 教室の後方で、男子生徒が渋々立ち上がった。野球部の石神健太だった。

 

「今回、愛乃が学年最下位。石神がその一つ上だ」

 

 教室がざわつく。

 

「学年ビリ!?」

 

 めぐみの顔が真っ青になる。健太は頭の後ろで腕を組んだ。

 

「俺より下がいたんだな」

 

「喜ばないでよ!」

 

「二人とも再テストだ。基準点に届かなければ、しばらく放課後は補習に出てもらう」

 

「ええーっ!」

 

 今度は二人の声が揃った。

 

「嫌なら勉強しろ」

 

 教師にぴしゃりと言われ、めぐみは答案を抱えて力なく席へ戻る。ひめが小声で尋ねた。

 

「そんなに大変なの?」

 

「補習になったら、みんなと遊ぶ時間がなくなるよ!」

 

「心配するところ、そこ?」

 

「プリキュアとして動く時間も減るかもしれないし!」

 

「それは困るね」

 

 ひめの顔もようやく真剣になる。

 

 悠は答案を机へしまいながら、めぐみを見た。誰かを助けることなら、考えるより先に動ける少女だ。しかし、自分のための勉強となると、ずいぶん勝手が違うらしい。

 

 ★★★

 

 昼休み。屋上に集まっためぐみたちの中央には、問題の答案が広げられていた。ゆうこは答案の上から下まで一通り確認し、それからめぐみを見る。

 

「めぐみちゃん」

 

「はい……」

 

「名前はちゃんと書けてるね」

 

「そこから!?」

 

「できてるところから見ようと思って」

 

 ゆうこは次の問題を指さした。

 

「こっちは計算の途中までは合ってるよ。最後に符号を間違えてるね。それから、こっちは問題を最後まで読んでないみたい」

 

「ほんとだ……」

 

 ひめも答案を覗き込む。

 

「めぐみ、分からないっていうより慌てすぎじゃない?」

 

「時間がなくなると思ったら急いじゃって」

 

 誠司は弁当を食べながら言った。

 

「最初から最後まで全力で突っ込むからだろ。戦う時と同じじゃないか」

 

「勉強と戦いを一緒にしないでよ!」

 

「似てると思うよ」

 

 悠が言うと、めぐみが振り向く。

 

「赤石くんまで?」

 

「問題を最後まで見ないで答えている。戦いでも、相手が何をするか見る前に飛び込むことがあるよね」

 

「うっ」

 

 図星だった。

 

 ひめが得意そうに頷く。

 

「ほら、めぐみ。もっと私みたいに落ち着かないと」

 

 誠司がひめの答案を取った。

 

「白雪も人のことを言える点じゃないぞ」

 

「返して!」

 

 ひめが慌てて取り戻したところで、めぐみのキュアラインが鳴った。画面にはブルーの顔が映っている。

 

『めぐみ。テストの話を聞いたよ』

 

「もう!?」

 

『リボンから聞いたんだ』

 

 ひめが鞄から顔を出したリボンを見る。

 

「リボン!」

 

「大切なことですもの!」

 

 ブルーは少し困った顔で続ける。

 

『プリキュアとして戦うことは大切だ。でも、めぐみは中学生でもある。学校生活を疎かにしたまま、プリキュアの活動だけを続けるのはよくないと思う』

 

「ちゃんと勉強するよ!」

 

『再テストで一つでも赤点を取った場合、しばらくプリキュアとしての活動は禁止する』

 

 めぐみが固まった。

 

「……え?」

 

「禁止って、変身しちゃダメってこと!?」

 

 ひめも目を見開く。

 

『そうだよ』

 

「そんな! サイアークが出たらどうするの!?」

 

『その間は、ひめとゆうこたちに任せてほしい。誰かを助ける前に、自分の生活を守ることも覚えてほしいんだ』

 

 ブルーの口調は穏やかだったが、今回は譲る様子がない。

 

『めぐみならできると思っているよ』

 

 通話が終わると、めぐみは青ざめた顔で呟いた。

 

「プリキュア失格……」

 

「失格とは言ってないよ。活動禁止だよ」

 

 悠が訂正する。

 

「どっちも嫌だよ!」

 

 ひめが勢いよく立ち上がった。

 

「こうなったら、私が勉強を教える!」

 

「ひめが?」

 

 めぐみが不安そうに見る。

 

「何、その顔! 私だって王女として、いろいろ勉強してきたんだから! めぐみを絶対に合格させてあげる!」

 

 悠は二人を見る。

 

「その前に、白雪さん自身の宿題も終わらせた方がいいと思う」

 

「赤石くんは黙ってて!」

 

 ★★★

 

 放課後、誰もいなくなった教室には、一人の教師らしき女性が立っていた。眼鏡をかけ、髪をきっちりまとめ、手には長い指示棒を持っている。

 

「それでは、愛乃めぐみさん!」

 

「はい!」

 

「今日から私が、あなたを徹底的に鍛えます!」

 

 教師姿のひめが黒板を指示棒で叩いた。プリカードを利用した変装である。一番前の席には、めぐみと健太が並んで座っていた。

 

「何で俺まで?」

 

 健太が露骨に嫌そうな顔をする。

 

「同じ再テストなんだから、一緒にやった方がいいでしょ!」

 

「俺は野球の練習があるんだよ」

 

「赤点取ったら補習だよ?」

 

「試合で打てればいい」

 

 教室後方で見ていた誠司が、呆れた視線を向けた。

 

「そのまま補習になったら、野球部の練習にも出られないぞ」

 

「……それは困る」

 

 ようやく健太の顔が変わる。

 

 ひめは満足そうに眼鏡を押し上げた。

 

「では授業を始めます!」

 

 黒板へ勢いよく問題を書く。

 

「まず、この式を解きなさい!」

 

 めぐみと健太が答案用紙へ向かう。一分、二分、三分。二人とも手が止まった。

 

「分からない……」

 

「俺も」

 

 ひめのこめかみに青筋が浮かぶ。

 

「どうして!? ここをこうして、こうすれば簡単じゃん!」

 

 黒板へ次々と式を書き始めるが、速度が速すぎて二人とも途中から追えなくなった。

 

「待って、ひめ先生!」

 

「先生と呼びなさい!」

 

「ひめ先生、最初のところから分かんない!」

 

「そこ!?」

 

 悠が席から立ち上がった。

 

「白雪さん。一度止めた方がいい」

 

「何で?」

 

「二人がどこで分からなくなったか、白雪さんが見ていない」

 

 ひめは黒板を見る。確かに、自分が説明したい順番で話していただけだった。

 

「じゃあ赤石くんがやってみてよ」

 

「僕?」

 

「さっき偉そうに言ったんだから!」

 

 悠は少し迷い、黒板の前へ立った。

 

「愛乃さん。最初にどこまで分かる?」

 

「えっと……ここで数字を移動するところまでは」

 

「じゃあ、その先だけやろう」

 

 悠は途中までの式を黒板へ書く。

 

「ここで符号が変わる」

 

「どうして?」

 

「反対側へ移すから」

 

「どうして移したら変わるの?」

 

 悠の手が止まった。

 

「そういう規則だから」

 

「それじゃ分からないよ!」

 

 ひめが横から笑う。

 

「赤石くんも教えるの下手じゃん!」

 

 悠はしばらく黒板を見た。覚えることには慣れている。命令も、手順も、戦闘データも、そのまま記憶すればよかった。なぜそうなるのかを誰かへ説明する訓練は、ほとんどしていない。

 

「確かに、下手だね」

 

「認めるんだ」

 

 めぐみが笑った。

 

 そこへゆうこが前へ出る。

 

「まず、小さい数字でやってみたらどうかな。例えば、三個のおにぎりが欲しいのに、今一個しかないとするでしょう?」

 

「あと二個必要!」

 

 めぐみが即答する。

 

「そう。それを式にすると──」

 

「ゆうゆう、分かりやすい!」

 

「おにぎりだからじゃないの?」

 

 ひめが呟く。

 

「分かりやすければいいと思うな」

 

 ゆうこは気にしなかった。

 

 勉強会は、そこから少しずつ進み始めた。

 

 一時間ほど経つと、めぐみの集中力は目に見えて落ち始めた。

 

「頭から煙が出そう……」

 

 机へ突っ伏す。健太も椅子を揺らしながら窓の外を見ていた。

 

「そろそろ野球の練習行っていい?」

 

「ダメ! まだ全然終わってない!」

 

「でも、明日試合なんだよ」

 

 健太の目がグラウンドへ向く。野球部の仲間たちはすでに練習を始めていた。

 

「俺がいないと困るんだ」

 

 めぐみが顔を上げる。

 

「じゃあ、少しだけ練習に行って、そのあと勉強したら?」

 

「めぐみちゃん」

 

 ゆうこが呼ぶ。

 

「何?」

 

「めぐみちゃんの勉強は?」

 

「健太君が困ってるから!」

 

「愛乃さん」

 

 悠も続ける。

 

「今は愛乃さんも困っているよ」

 

 めぐみが言葉に詰まる。

 

「でも、健太君は試合があるし」

 

「めぐみにも再テストがあるだろ」

 

 誠司が言った。

 

「何でも自分より相手を先にするな」

 

「でも……」

 

 健太が立ち上がる。

 

「俺、一人で行けるから。愛乃は勉強してろよ」

 

「でも、練習相手が必要ならあたしが──」

 

「何でお前が野球の練習まで手伝うんだよ」

 

 健太自身が困惑していた。

 

 誠司は鞄を持つ。

 

「俺が行く。俺ならキャッチボールくらいできる。石神、練習を短めにして戻ってくるぞ」

 

「おう!」

 

 健太の顔が明るくなる。

 

 めぐみは何か言おうとしたが、ゆうこがその前へ小さな包みを置いた。

 

「めぐみちゃん。今は、こっち」

 

 中には小さなおにぎりが二つ入っている。

 

「少し休んで、食べてから自分の勉強をしよう」

 

「でも誠司たちが」

 

「相楽くんが手伝うって言ったでしょう? だったら任せよう」

 

 めぐみは教室を出ていく誠司と健太を見る。前なら、そのまま一緒に飛び出していたかもしれない。

 

「……分かった」

 

 めぐみは椅子へ座り直した。

 

 悠はその様子を見ていた。相手を助けるために、自分が動く。それが一番確実だと思ってしまう。だが、自分でなくてもできることなら、誰かへ任せてもいい。めぐみが学んでいることは、悠自身にも必要なことだった。

 

 ★★★

 

 グラウンドでの練習を終えた健太は、誠司と一緒に教室へ戻ってきた。汗をかいた顔には、先ほどよりもすっきりした表情がある。

 

「よし、やるか!」

 

 ひめが腕を組む。

 

「最初からそのやる気を出しなさい!」

 

「ひめ先生も説明うまくなった?」

 

「なったよ!」

 

「本当に?」

 

「何その目!」

 

 めぐみも笑いながら机へ向かった。

 

 今度は、誰かがすぐ答えを教えることはしなかった。めぐみが間違えれば、どこで間違ったかを一緒に探す。健太が手を止めれば、答えではなくヒントを出す。悠も途中で何度か説明しようとしたが、最初から式を書き切ることはしなくなった。

 

「赤石」

 

 誠司が小声で呼ぶ。

 

「何?」

 

「変わったな」

 

「何が?」

 

「さっきは全部答えを書いてただろ」

 

「その方が早かったから」

 

「今は?」

 

 悠は問題を考えているめぐみを見る。眉を寄せ、何度も消しゴムを使い、それでも自分で次の式を書いていた。

 

「自分で答えを出さないと、次も分からないみたいだから」

 

「そういうことだ」

 

 悠は少し考える。

 

「助けるのと、代わりにやるのは違うんだね」

 

「今さらか?」

 

「僕には難しいよ」

 

 誠司は悠を見る。冗談で言っているのではないと分かり、それ以上茶化さなかった。

 

「分からないなら、これから覚えればいいだろ」

 

 悠は静かに頷いた。

 

 勉強会が終わったのは、空が橙色へ染まり始めた頃だった。

 

「終わったー!」

 

 めぐみは机へ倒れ込む。

 

 ひめも教師姿から元の制服へ戻り、椅子へ座り込んだ。

 

「教える方も疲れる……」

 

 ゆうこは空になった弁当箱を片づける。

 

「でも、最初より解けるようになったね」

 

「うん! 勉強って、一人でやるとすぐ飽きるけど、みんなとやると意外と楽しいかも」

 

 健太も問題集を鞄へ入れる。

 

「分からないところを聞けるのは助かるな」

 

「最初からそう思って勉強しろ」

 

 誠司が言う。

 

「でも野球の方が楽しい」

 

「それは別にいいだろ」

 

 健太は少し意外そうに誠司を見る。

 

「勉強を好きになれとは言ってない。必要なことまで捨てるなって話だ」

 

「何で勉強が必要なんだ?」

 

 健太が尋ねる。

 

 誠司は少し考えた。

 

「野球だけやってても、野球だけで生活できるとは限らないだろ。試合の記録を読んだり、作戦を考えたり、遠征に行ったりするにもいろんな知識を使う。今すぐ全部役に立つかは俺も知らない。でも、知らないことが多いと、選べるものも減るんじゃないか」

 

 健太は完全に納得した顔ではなかった。それでも、自分の問題集を捨てようとはしなかった。

 

 悠はその会話を聞いていた。

 

 選べるものが減る。

 

 自分には、そもそも選ぶことがほとんどなかった。命令され、戦う。それだけの存在として作られた。今は学校へ通い、知らないことを覚え、誰かと食事をし、夕焼け模様のペンまで持っている。それらが何の役に立つのかは分からない。けれど、選べるものを増やすためだと考えれば、少しだけ理解できる気がした。

 

「赤石くん?」

 

 ひめに呼ばれ、悠は顔を上げる。

 

「何?」

 

「ぼーっとしてた」

 

「考えていただけ」

 

「また難しいこと?」

 

「勉強する理由について」

 

「赤石くんまで真面目!」

 

 ひめは鞄を肩へ掛ける。

 

「私は赤点取らないためで十分だよ」

 

「白雪さんらしいね」

 

「どういう意味!?」

 

 教室に笑い声が広がった。

 

 ★★★

 

 翌日の放課後、健太はグラウンドのベンチで一人、問題集を開いていた。野球部の練習が始まる前に、昨日教わったところを復習するつもりだった。

 

「面倒ですなあ」

 

 声が聞こえた。健太が顔を上げると、いつの間にかベンチの背後へナマケルダが立っている。

 

「誰だよ、おっさん」

 

「野球が好きなのに勉強。練習したいのに再テスト。人生は面倒なことばかりですぞ」

 

「別に。終わったら野球できるし」

 

「その勉強、本当に必要ですかな?」

 

 ナマケルダの言葉に、健太の手が止まった。

 

「野球が好きなら、野球だけしていればいい。他のことなど、誰かが代わりにやってくれればよいのです」

 

「でも……」

 

 健太は昨日の誠司の言葉を思い出す。知らないことが多ければ、選べるものも減る。それでも、面倒なものは面倒だった。

 

「分からない問題を考えるより、得意な野球だけで勝つ方が気持ちいいでしょう?」

 

 ナマケルダが杖を向ける。健太の背後へ鏡が現れた。

 

「鏡に映る未来を最悪に変えよ! 来たれ! サイアーク!」

 

「何だこれ!」

 

 健太の身体が鏡へ引き込まれ、黒い霧がグラウンドを覆う。現れたのは巨大な野球選手の姿をしたサイアークだった。右手には巨大なボール、左手にはバット。胸には黒板のようなスコアボードがついている。

 

「面倒なことは全部、三振ですぞ!」

 

 サイアークがボールを投げた。黒い球が校舎の壁へ衝突し、爆発を起こす。

 

 ★★★

 

 校内にいた悠は、教師より早く異変へ気づいた。胸のレッドストーンが強く脈打つ。

 

「グラウンド」

 

 立ち上がる。近くで帰り支度をしていた誠司が、その声を聞いた。

 

「サイアークか?」

 

「うん」

 

 めぐみ、ひめ、ゆうこも顔を上げる。

 

「行こう!」

 

 めぐみが鞄を置いて駆け出そうとしたが、途中で足を止めた。

 

「……あ」

 

 ひめも気づく。

 

「ブルーに、プリキュア活動禁止って言われてる」

 

「まだ禁止じゃないよ! 再テストで赤点を取ったら禁止。今はまだ大丈夫!」

 

「そういう問題かな……」

 

 ゆうこが少し迷う。

 

 悠は窓の外を見る。グラウンドにはまだ多くの生徒がいた。

 

「今は戦わない方が危険だと思う」

 

 誠司も頷く。

 

「再テストは明日だ。戦って戻って勉強すればいい」

 

 めぐみの表情が明るくなった。

 

「うん!」

 

 今度こそ三人は走り出した。誠司と悠も後を追う。

 

 グラウンドでは、野球型サイアークが次々と黒い球を投げていた。ボールが落ちた場所から黒いカビのような模様が広がり、地面やベンチを覆っていく。

 

「全員、校舎の反対側へ!」

 

 誠司が野球部員たちを誘導する。悠は転倒した生徒へ近づき、手を貸して立たせた。

 

「走れる?」

 

「う、うん」

 

「なら、相楽君の方へ」

 

 生徒を送り出した直後、巨大なボールがこちらへ飛んでくる。

 

 悠は軌道を見る。自分一人なら避けられる。だが、後ろには足を挫いた生徒が一人残っていた。

 

 身体の奥で、古い判断が立ち上がる。

 

 人間の身体では足りない。

 

 もっと強い身体なら、あの球を正面から受けても止められる。

 

 胸の奥が熱を帯び、制服の下でレッドストーンが一瞬だけ赤く脈打つ。

 

「赤石!」

 

 誠司の声が飛んだ。

 

 悠は反射的にそちらを見る。誠司が校庭脇に置かれていた防球ネットを倒していた。

 

「こっちを持て!」

 

 悠はすぐに判断を切り替えた。

 

 二人でネットの支柱を掴み、ボールの進路へ傾ける。巨大な球がネットへ直撃し、金属が激しく軋んだ。悠の右腕へ衝撃が走るが、一人で受け止めるよりはるかに小さい。ボールは軌道を逸らし、誰もいない地面へ落ちた。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫。本当に」

 

「なら次だ。残ってるやつを出すぞ」

 

「うん」

 

 悠は胸へ手を当てる。熱はすでに収まっていた。

 

 ほんの一瞬、自分はここで何をしようとしたのか。

 

 考える時間はなかった。

 

 桃、青、黄の三色の光がグラウンドへ降り注いだ。

 

 ★★★

 

「プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」

 

「世界に広がるビッグな愛! キュアラブリー!」

 

「天空に舞う蒼き風! キュアプリンセス!」

 

「大地に実る命の光! キュアハニー!」

 

 三人のプリキュアがグラウンドへ着地する。

 

 ナマケルダは面倒そうに傘を肩へ担いだ。

 

「勉強中ではなかったのですかな?」

 

 ラブリーが驚く。

 

「どうして知ってるの!?」

 

「サイアークになった少年の心から、少し見えただけですぞ」

 

 鏡の中には健太が閉じ込められている。

 

「健太君!」

 

 ラブリーが拳を握った。

 

 ナマケルダは笑う。

 

「彼もあなたと同じ。苦手なことは誰かに任せ、得意なことだけしていたいのです」

 

「同じじゃないよ! 苦手だから、今勉強してるんだもん!」

 

「では、勉強の成果を見せていただきましょう」

 

 ナマケルダが指を鳴らす。

 

 サイアークは巨大なボールを構えた。グラウンドの地面が変化し、ラブリーの前へ一本のバットが現れる。

 

「勝負は簡単。サイアークの球を打てれば、こちらの負けということにして差し上げますぞ」

 

「野球で勝負?」

 

 プリンセスが目を丸くする。

 

「ラブリー、できる?」

 

「やってみる!」

 

 ラブリーは迷わずバットを握った。

 

 ハニーが少し心配そうに見る。

 

「野球、やったことあるの?」

 

「誠司たちがやってるところなら見たことあるよ!」

 

「それ、やったことないって意味じゃない?」

 

 プリンセスの指摘を聞き流し、ラブリーは打席へ立つ。

 

 第一球。猛烈な速球が飛んだ。

 

「えいっ!」

 

 ラブリーが全力でバットを振る。

 

 空振り。

 

「速い!」

 

 第二球は一転して遅い球だった。先ほどの速さを想定したラブリーは、早く振りすぎてまた空振りする。

 

「今度は遅い!」

 

 第三球は、打者の直前で大きく曲がった。

 

「わっ!」

 

 バットは空を切る。

 

「三振ですなあ」

 

 ナマケルダが笑った。

 

 プリンセスが駆け寄る。

 

「ラブリー、力任せに振ってるだけじゃん!」

 

「分かってるよ!」

 

「分かってないから当たらないんでしょ!」

 

「二人とも」

 

 ハニーが間へ入る。

 

「今の球、全部違ってたよね」

 

「速いのと、遅いのと、曲がるの」

 

「だったら、次に何が来るか見た方がいいと思うな」

 

「でも、投げられてからじゃ間に合わないよ」

 

 プリンセスが言う。

 

 ラブリーはサイアークを見る。

 

 昨日の勉強を思い出す。

 

 問題を最後まで読まず、答えだけ急いだ。戦いでも、攻撃が来る前に飛び込んだ。野球でも、球を見る前にバットを振っている。

 

「投げる前を見る」

 

 ラブリーが呟く。

 

 サイアークの腕、足、身体の向き、ボールを握る手。

 

「もう一回!」

 

 ラブリーがバットを構えた。

 

 ★★★

 

 グラウンドの外から、誠司と悠が勝負を見ていた。

 

「ラブリー、野球できるのか?」

 

「ほとんどやったことない」

 

「大丈夫なの?」

 

「力だけならホームランにできる。でも、当たらなきゃ意味がないな」

 

 悠はサイアークの投球を観察する。腕の角度、身体の沈み込み、指の位置。球種ごとに僅かな違いがあった。

 

「次は曲がる」

 

 悠が呟く。

 

 ラブリーも何かへ気づいたらしく、バットを振らず球を見送った。ボールが直前で大きく横へ曲がる。

 

「今のを見送った?」

 

 誠司が少し驚いた。

 

 次の球では、サイアークの足の上がり方が小さい。

 

「遅い」

 

 ラブリーは待った。ボールが近づいてからバットを振る。

 

 金属音。

 

「当たった!」

 

 プリンセスが叫ぶ。

 

 打球はファウルだった。それでもラブリーは笑っている。

 

「分かってきた!」

 

 ナマケルダの表情が僅かに曇る。

 

「偶然ですぞ」

 

 再び投球。今度は速球。

 

 ラブリーはサイアークの腕が振り抜かれる瞬間まで、ボールから目を離さなかった。バットを振る。再びファウル。

 

「惜しい!」

 

 ハニーが声を上げる。

 

 悠は静かに見ていた。自分なら、初めから投球動作を分析できる。身体がそのように作られているからだ。

 

 だが、ラブリーは違う。

 

 失敗し、一球ずつ見て、自分で覚えている。

 

 その過程を、誰かが代わりにすることはできない。

 

「愛乃さんは、自分で分かろうとしてる」

 

「そうだな」

 

 誠司が頷く。

 

「答えを教えなくていいの?」

 

「今はな」

 

 悠は少しだけ笑う。

 

「相楽君も、少し変わった?」

 

「お前に言われたくない」

 

 ★★★

 

 サイアークが大きく振りかぶった。その姿勢は、最初に投げた速球と同じだった。

 

 だが、ラブリーはバットを握ったまま動かない。

 

 違う。

 

 足の踏み込みが僅かに浅い。指の位置も違う。

 

「曲がる!」

 

 ラブリーは球の変化を待つ。

 

 黒いボールが打席の直前で横へ曲がった。

 

 その先へ、バットを振り抜く。

 

 鋭い音が響いた。

 

 ボールが高く上がり、グラウンドを越えて遥か彼方へ消えていく。

 

「ホームラン!」

 

 ハニーが笑う。

 

 ラブリーはバットを放り出し、両手を上げた。

 

「やったー!」

 

 ナマケルダの顔が引きつる。

 

「な、なぜですぞ!」

 

「ちゃんと見たからだよ!」

 

 ラブリーはサイアークを指さす。

 

「何を?」

 

「投げるところ!」

 

 説明としてはかなり足りなかった。

 

 プリンセスが横から補足する。

 

「球によって投げ方が少しずつ違ったんだよ!」

 

「プリンセス、分かってたの?」

 

「今分かった!」

 

「もう!」

 

 三人が笑い合う。

 

 ナマケルダは傘を振り上げた。

 

「野球勝負など知りませんぞ! サイアーク、普通に倒してしまいなさい!」

 

「約束が違う!」

 

 サイアークが巨大なバットを振り回す。ラブリーは飛び退き、プリンセスが風で軌道を逸らした。ハニーはラブリーの隣へ立つ。

 

「勉強と同じだったね」

 

「うん!」

 

「分からなかったら、見て考える」

 

「それでも分からなかったら、みんなに聞く!」

 

 プリンセスも隣へ降りる。

 

「それで、自分でやる!」

 

 三人が並んだ。

 

「それじゃあ終わらせよう!」

 

 サイアークがボールを連続で投げる。今度は無闇に殴り落とさない。ラブリーが速球を引きつけて身体をずらし、プリンセスが曲がる球を青い風で逸らし、ハニーが遅い球を黄色い光のリボンでまとめて地面へ落とす。

 

 三人が同時に距離を詰めた。

 

「プリンセス、右!」

 

「任せて!」

 

「ハニーは左!」

 

「うん!」

 

 サイアークの両腕が開く。

 

 中央が空いた。

 

 ラブリーがラブプリブレスを構える。

 

「愛の光を聖なる力に! プリキュア・ピンキーラブシュート!」

 

 桃色の光がサイアークを包み込む。

 

「ラブリー!」

 

 巨大な野球選手の身体が光へ変わり、空へ昇っていく。鏡に閉じ込められていた健太も解放され、グラウンドへ倒れ込んだ。

 

 ナマケルダは面倒そうに傘を閉じる。

 

「勉強も野球も、一生懸命とは実に疲れますなあ」

 

「疲れたら休めばいいよ!」

 

 ラブリーが胸を張る。

 

「そのあと勉強に戻るんだよ、ラブリー」

 

 ハニーが付け加える。

 

 ラブリーの笑顔が固まった。

 

「今それ言う?」

 

「明日、再テストでしょう?」

 

「そうだったー!」

 

 プリンセスが頭を抱える。

 

「忘れてたの!?」

 

 ナマケルダは呆れたように三人を見る。

 

「勝手に苦労してくださいな」

 

 黒い霧が広がり、その姿を消した。

 

 ★★★

 

 浄化後のグラウンド。めぐみたちが健太の無事を確認している間、悠は校舎裏へ残った黒い粒子を見つめていた。サイアークが残した人工的な負のエネルギーだ。

 

 胸のレッドストーンが反応する。

 

 悠はすぐには手を伸ばさなかった。今の身体の状態、これまでに吸収した量、周囲に人が残っていないか、人間から生まれた感情と人工的な残滓を確実に区別できているか。

 

 一つずつ確認してから、右手をかざす。

 

「少しだけ」

 

 黒い粒子が手のひらへ吸い込まれ、胸の奥へ沈んでいく。

 

 その瞬間、ぞくりと背中へ冷たい感覚が走った。

 

 悠は勢いよく振り返る。

 

 誰もいない。

 

 校舎の屋上、給水塔、フェンス、夕暮れの空。見慣れた景色だけがある。

 

 それでも、悠の身体は確かに何かを察知していた。

 

 負の力そのものとは違う。

 

 もっと鋭い。

 

 敵意とも少し違う。

 

 誰かに見られている。それも、ただ観察されているのではない。こちらの隙を計られているような感覚だった。

 

「赤石?」

 

 誠司の声がして、悠はそちらを見る。

 

「どうした?」

 

「……何かいる」

 

 誠司も屋上を見上げる。

 

「ナマケルダじゃないのか?」

 

「違うと思う」

 

「他の幻影帝国のやつか?」

 

 悠はすぐには答えなかった。感じたことのない気配だ。だから断定できない。

 

「分からない。でも、嫌な感じがする」

 

 誠司は冗談を言わなかった。

 

「めぐみたちにも話すぞ」

 

 以前なら悠は「確証がない」と言って、自分の中だけへしまっていたかもしれない。今回は少し迷っただけだった。

 

「うん。伝えよう」

 

 二人はグラウンドへ戻っていく。

 

 悠が去ったあとも、屋上には誰の姿もなかった。

 

 ただ、給水塔の陰に落ちていた影が、夕日の動きとは違う方向へ僅かに揺れた。

 

 次の瞬間には、それも消えていた。

 

 ★★★

 

 翌日、再テストの答案がめぐみと健太の前へ伏せられていた。教師が腕を組む。

 

「二人とも、自分で確認しろ」

 

「怖い……」

 

 めぐみは答案の端をつまむ。健太も額に汗を浮かべていた。教室の周囲では、ひめ、ゆうこ、誠司、悠が結果を待っている。

 

「せーので見る?」

 

「何で一緒に見るんだよ」

 

「一人だと怖いから!」

 

「しょうがねえな」

 

 健太も答案へ手を置く。

 

「せーの!」

 

 二人が同時に紙を裏返した。

 

 数秒。

 

「やったーっ!」

 

 めぐみが椅子から飛び上がる。赤点ではない。満点からは遠い。それでも、再テストを通過するには十分な点数だった。

 

 健太も拳を握る。

 

「俺も通った!」

 

「やったね、健太君!」

 

 二人は思わず手を合わせた。

 

 教師が咳払いする。

 

「喜ぶのはいいが、次は最初から勉強するように」

 

「はい!」

 

 今度の返事は二人とも大きかった。

 

 昼休み、屋上へ集まると、めぐみはキュアラインを取り出してブルーへ結果を伝えた。

 

『合格できたんだね。おめでとう、めぐみ』

 

「ありがとう!」

 

『これなら、プリキュア活動を禁止する必要はないね』

 

 めぐみは胸を撫で下ろす。

 

「よかったー!」

 

 ひめが呆れた。

 

「もう二度と学年ビリにならないでよ」

 

「努力します!」

 

「そこは絶対って言って!」

 

「無理な約束はしない方がいいって学んだから!」

 

「変なところで成長してる!」

 

 ゆうこが小さなおにぎりを配る。

 

「合格祝いだよ」

 

「ゆうゆう、ありがとう!」

 

 健太も誘われ、屋上の端で一緒に食べていた。

 

「勉強した後のおにぎりって、何かうまいな」

 

「頭を使うとお腹が空くからね」

 

 ゆうこが嬉しそうに答える。

 

 悠は自分の答案を広げ、間違えた社会科の問題を見直していた。ひめが隣から覗き込む。

 

「赤石くん、もうテスト終わったよ?」

 

「分からなかったところが残っているから」

 

「真面目だなあ」

 

「知らないままにすると、選べるものが減るんでしょう?」

 

 誠司がその言葉に気づく。

 

「覚えてたのか」

 

「うん」

 

 悠は夕焼け模様のボールペンを取り出し、訂正を書き込んだ。

 

 めぐみがそれを見つける。

 

「そのペン可愛い!」

 

「白雪さんに選ばれた」

 

「えっ、ひめが?」

 

 めぐみがひめを見る。

 

 ひめは急に照れたように顔をそらした。

 

「普通の黒いペンしか買おうとしなかったからだよ!」

 

「いいじゃん! 赤石くんに似合ってるよ!」

 

 悠は手元のペンを見る。

 

「そうかな」

 

「うん!」

 

 めぐみは迷いなく答えた。

 

 その明るい声を聞きながら、悠は昨日感じた視線を思い出していた。

 

 正体は分からない。

 

 敵なのかどうかも、まだ確信できない。

 

 それでも、めぐみたちには伝えた。自分だけで判断して、黙って抱え込まずに。

 

 ほんの少し前なら、しなかったことだった。

 

 だが、誰かに見られていたという感覚だけは消えていない。

 

 悠は校舎の向こうに広がる青空を見た。

 

 何も見えない。

 

 だからこそ、胸の奥へ小さな不安が残った。

 

 ★★★

 

 その日の夕暮れ。

 

 ぴかりが丘から遠く離れた高層ビルの屋上に、一人の男が立っていた。白を基調とした服に、冷たい眼差し。手には鏡を思わせる武器が握られている。男の足元では、海外のプリキュアが鏡の中へ封じられていた。

 

「また一人」

 

 感情の薄い声が風へ消える。

 

 プリキュアハンター・ファントム。世界各地を巡り、プリキュアを狩り続ける男だった。

 

 ファントムは新たな獲物を探すように、遠くの空へ目を向ける。

 

 ぴかりが丘。

 

 そこには複数のプリキュアの光がある。まだ未熟な光。新たに加わった黄色い光。

 

 そして、その少し離れた場所に、プリキュアとは明らかに異なる気配が一つあった。

 

 何なのかは分からない。

 

 サイアークと判断できるほど明確でもなければ、プリキュアの力でもない。ただ、戦場の近くを漂うには妙な気配だった。

 

 ファントムは僅かに目を細める。

 

「……何だ、あれは」

 

 それだけだった。

 

 名前も知らない。

 

 正体も知らない。

 

 何のためにプリキュアの近くへいるのかも分からない。

 

 今のファントムにとっては、狩るべき標的ですらない。

 

 ただ、ぴかりが丘へ向かう理由が一つ増えただけだった。

 

「まずはプリキュアだ」

 

 ファントムは鏡を閉じる。

 

 黒い風が屋上を吹き抜けた。

 

 次に彼が姿を消した時、そこには鏡へ封じられたプリキュアだけが残されていた。

 

 ファントムはまだ知らない。

 

 ぴかりが丘で感じた正体不明の気配が何なのかを。

 

 そして悠もまた知らない。

 

 次にその視線の主と出会った時、人間の姿の奥へ隠し続けてきたものを、ついに晒すことになるということを。

 

 次回予告

 

 フォーチュン:

「プリキュアハンター・ファントム。世界中のプリキュアを狩っている男よ」

 

 プリンセス:

「そんなのが、ぴかりが丘に来るの!?」

 

 ラブリー:

「だったら、みんなで止めるよ!」

 

 ハニー:

「でも、今までの相手とは違うみたい」

 

 誠司:

「赤石。昨日感じたっていう気配、あいつなのか?」

 

 悠:

「分からない。でも……多分、向こうも僕に気づいてる」

 

 ファントム:

「プリキュアではないな。お前は何だ?」

 

 悠:

「……答える必要はない」

 

 ラブリー:

「次回、第13話『強敵登場! キュアフォーチュンVSプリキュアハンター! /狩る者と、隠れていた影』」

 

 ファントム:

「ならば、邪魔をするな」

 

 悠:

「それはできない」

 

 ひめ:

「赤石くん、待って!」

 

 悠:

「鏡に映る我が身を──最悪に変えよ!」

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