ハピネスチャージプリキュア!夕映えのアーベント   作:Leona

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第17話『努力と根性!! めぐみと誠司の絆!!/休む勇気と、続ける強さ』

第17話『努力と根性!! めぐみと誠司の絆!! /休む勇気と、続ける強さ』

 

「セ・イ・ジ! セ・イ・ジ!」

 

 ブルースカイ王国大使館の広間に、太鼓の音と大声援が響き渡っていた。

 

「フレー! フレー! せ・い・じーっ!」

 

 長い学ランに鉢巻姿のめぐみが、両手を大きく振り上げる。その隣では、同じ格好をしたゆうこが穏やかな笑顔のまま声を合わせていた。

 

「頑張れ、頑張れ、相楽くーん」

 

「もっと気合い入れて!」

 

 めぐみが叫ぶ。

 

「じゃあ、もう一回いこうか」

 

「ゆうゆう、さすが!」

 

 その正面には巨大な横断幕。

 

『ガンバレ♥セイジ』

 

 リボンは鉢巻を締め、小さな身体で太鼓を叩いている。

 

「さあ姫もご一緒に! せーの!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 ひめは渡された学ランを両手で持ったまま後ずさった。

 

「どうして私が誠司のためにこんな格好しなきゃならないの!?」

 

「空手大会に出るんだから応援しないと!」

 

 めぐみが当然のように答える。

 

「それはめぐみがすればいいじゃん! 幼なじみなんでしょ!」

 

「みんなでやった方が元気出るよ!」

 

「私は別に誠司の応援団じゃないし!」

 

 少し離れたテーブルでは、ブルーが茶を飲みながらタンバリンを鳴らしていた。

 

「頑張って、誠司君」

 

「ブルーまで何してるの!?」

 

 ひめが叫ぶ。

 

 そのさらに横では、悠が巻き込まれないよう壁際の椅子へ座っていた。

 

 ひめが目を細める。

 

「赤石くん」

 

「何?」

 

「何で自分は関係ありませんって顔してるの」

 

「相楽君を応援してるよ」

 

「どこが!?」

 

「心の中で」

 

「見えない!」

 

 めぐみが悠へ学ランを一着差し出した。

 

「赤石くんも着ようよ!」

 

「遠慮する」

 

「即答!?」

 

 悠は横断幕を見る。

 

「でも、相楽君なら普通に勝てると思う」

 

「そういう問題じゃないよ!」

 

 めぐみが頬を膨らませた。

 

「頑張ってる人を応援するの!」

 

 ひめはそこで何かを思いついたように手を叩いた。

 

「だったらさ、応援って別にこれじゃなくてもいいでしょ?」

 

「例えば?」

 

「ほら……お弁当とか!」

 

 一瞬、全員が止まる。

 

 ひめは嫌な予感を覚えた。

 

 めぐみの目が輝く。

 

「それだーっ!」

 

「え」

 

 ゆうこも嬉しそうに頷いた。

 

「いいね。大会の日にみんなでお弁当を作って持っていこうか」

 

「え?」

 

「ひめちゃんも一緒に作ろうね」

 

「ちょっと待って!」

 

 ひめが慌てる。

 

「私は学ラン以外の応援もあるって言っただけで、料理するなんて一言も──」

 

「自分から言い出したんだから最後までやろうよ!」

 

「何でそうなるの!?」

 

 リボンが満足そうに頷く。

 

「頑張る人を応援するために頑張る。素晴らしいですわ!」

 

「リボンまで!」

 

 悠はそのやり取りを見ながら、静かに呟いた。

 

「大変そうだね」

 

「赤石くんも手伝うの!」

 

 ひめに指を突きつけられた。

 

「僕も?」

 

「逃がさないから!」

 

「分かった」

 

 あっさり頷かれて、今度はひめの方が調子を崩した。

 

「……もうちょっと嫌がりなさいよ」

 

「手伝ってほしいんでしょう?」

 

「そうだけど!」

 

 悠には、なぜ怒られているのかよく分からなかった。

 

 ★★★

 

 その日の放課後。

 

 空手道場には、乾いた打撃音が響いていた。

 

 誠司が拳を突き出す。

 

「押忍!」

 

 踏み込む。

 

 突き。

 

 蹴り。

 

 構え直す。

 

 汗が顎から落ちても、動きは止まらない。

 

「随分やっているのね」

 

 声に振り向く。

 

 道場の入口に、いおなが立っていた。

 

「氷川」

 

「大会が近いんでしょう?」

 

「まあな」

 

 いおなは靴を脱いで中へ入る。

 

「一人で練習するより、相手がいた方がいいんじゃないかしら」

 

 誠司が少し意外そうに見る。

 

「お前がそんなこと言うなんて珍しいな」

 

「別に。私も今は少しでも強くなりたいだけよ」

 

「そうか」

 

 二人は向かい合い、一礼した。

 

「なら遠慮しないぞ」

 

「どうぞ」

 

 同時に構える。

 

 次の瞬間、拳と拳がぶつかった。

 

 道場の外。

 

 学校から帰る途中だった悠が、その様子を足を止めて見ていた。

 

 誠司の攻撃をいおながかわし、低い蹴りを返す。誠司は防ぎ、その勢いを利用して距離を取る。

 

 どちらも真剣だった。

 

 悠の目はいおなへ向く。

 

 氷川いおな。

 

 まりあの妹。

 

 あれ以来、何度もその事実が頭をよぎる。

 

 聞きたい。

 

 まりあはどこにいる。

 

 どうしてファントムに敗れた。

 

 鏡の中にいるのか。

 

 今も生きているのか。

 

 それでも、口には出せなかった。

 

「何を見ているの?」

 

 突然声をかけられた。

 

 いおなが道場の入口に立っていた。

 

 いつの間にか休憩に入ったらしい。

 

 悠は一瞬黙る。

 

「相楽君の練習」

 

「それだけ?」

 

「……うん」

 

 返事が少し遅れた。

 

 いおなの目が細くなる。

 

「赤石君。あなた、最近私を見る時に何か言いたそうね」

 

 悠の身体が固まった。

 

「そう?」

 

「そうよ」

 

「気のせいだと思う」

 

「あなた、嘘が下手ね」

 

 悠は視線を外す。

 

「よく言われる」

 

「なら誤魔化さなければいいでしょう」

 

 いおなは容赦がない。

 

 悠はしばらく黙ってから尋ねた。

 

「氷川さんは、どうしてそんなに強くなりたいの?」

 

 いおなの表情が変わる。

 

「それをあなたに話す必要がある?」

 

「ないよ」

 

「なら聞かないで」

 

「分かった」

 

 あっさり引いた悠を見て、今度はいおなが少し戸惑う。

 

 悠は道場の中へ視線を戻した。

 

「相楽君、かなり頑張ってるね」

 

「ええ」

 

「強くなるために?」

 

「それだけじゃないでしょうね」

 

「どういうこと?」

 

 いおなは誠司を見る。

 

「本人に聞きなさい」

 

 それだけ言って道場へ戻った。

 

 悠は少しだけその背中を見つめたあと、歩き出した。

 

 まだ聞けない。

 

 それでも以前の自分なら、何も尋ねずに全部一人で調べようとしただろう。

 

 少しずつでいい。

 

 そう思えるようにはなっていた。

 

 ★★★

 

 夜。

 

 大使館から帰宅したひめは、ベッドへ寝転がりながらめぐみと電話していた。

 

『絶対誠司って嫌味だよ!』

 

「そうかなあ?」

 

『だってさ、私たちが応援しようとしてるのに「無理するな」って何なの?』

 

 めぐみは自室のベッドへ仰向けになる。

 

「きっと、あたしたちに面倒かけたくないんだよ」

 

『へえー。さすがめぐみ、誠司のことよく知ってるね』

 

「幼なじみだからね」

 

 少し間があった。

 

『めぐみって、誠司のこと好きなの?』

 

「え?」

 

『だって応援もすっごく張り切ってるし』

 

「幼なじみを応援するのは普通だよ!」

 

 めぐみは笑う。

 

「それに、誠司はずっと空手を頑張ってきたから」

 

『何でそこまで頑張るの?』

 

「うーん」

 

 めぐみは少し考えた。

 

「誠司だから?」

 

『全然答えになってない!』

 

「でも、ひめも練習してるところ見たら応援したくなると思うよ」

 

『本当に?』

 

「本当!」

 

 めぐみは勢いよく起き上がる。

 

「だから明日はみんなでお弁当作りの練習ね!」

 

『ええーっ!?』

 

 電話の向こうから、ひめの悲鳴が響いた。

 

 ★★★

 

 翌日。

 

 大使館の台所には、惨状が広がっていた。

 

 フライパン。

 

 卵の殻。

 

 焦げた何か。

 

 原形を失った卵料理。

 

 そして大量の失敗作。

 

「もう!」

 

 ひめは卵焼き器を置いた。

 

「だし巻き卵って難しすぎる!」

 

「ひめちゃん、火が少し強いかも」

 

 ゆうこが横から覗く。

 

「それに、巻く時は慌てなくても大丈夫だよ」

 

「分かってるよ!」

 

「ひめ、さっきもそう言って焦がしたよ」

 

 めぐみが指摘する。

 

「うるさい!」

 

 悠はテーブルの上で割る前の卵を並べていた。

 

「残り三個」

 

「言わないで!」

 

「数えただけだよ」

 

「余計プレッシャーになるの!」

 

 リボンが空になった卵のパックを見る。

 

「このままでは練習用の卵がなくなりますわ」

 

「じゃあ、もっと簡単なおかずにする?」

 

 ゆうこが提案する。

 

 ひめは首を振った。

 

「嫌!」

 

「どうして?」

 

「ここまで失敗したんだから、できないまま終わるの悔しいじゃん!」

 

 もう一個。

 

 卵を割る。

 

 殻が少し入った。

 

「あっ!」

 

 悠が取ろうとする。

 

 ひめはその手を止めた。

 

「待って。自分で取る」

 

「うん」

 

 箸で何度か追いかけ、ようやく殻を取り出す。

 

 ゆうこが微笑んだ。

 

「じゃあ、もう一回やってみよう」

 

 卵液を流す。

 

 少し固まる。

 

「今だよ、ひめちゃん」

 

「分かってる……!」

 

 慎重に巻く。

 

 一回。

 

 二回。

 

 形が崩れる。

 

「ああっ!」

 

 フライパンの端で卵焼きが潰れた。

 

 ひめは肩を落とした。

 

「また失敗……」

 

 悠は潰れた卵焼きを見る。

 

「食べられないの?」

 

「食べられるけど、誠司に出すのにこれじゃ格好悪いじゃん」

 

「味が同じならいいのでは?」

 

 ひめが睨む。

 

「よくない!」

 

「そうなんだ」

 

 悠にはまだ違いがよく分からない。

 

 ゆうこが失敗作を小皿へ移す。

 

「料理って、食べられればそれで終わりじゃない時もあるんだよ」

 

「気持ち?」

 

 悠が尋ねる。

 

「うん。それもあるかな」

 

 めぐみが失敗作を一つ食べる。

 

「でもこれ、おいしいよ!」

 

 ひめが顔を上げる。

 

「ほんと?」

 

「ちょっと焦げてるけど!」

 

「どっちなのよ!」

 

 また台所が騒がしくなる。

 

 それでもひめは、もう一度卵を手に取った。

 

 悠はその姿を見ていた。

 

 失敗。

 

 また失敗。

 

 それでも繰り返す。

 

 戦闘なら、同じやり方で何度も失敗することは避けるべきだ。

 

 けれど料理は、失敗するたびに少しずつ手の動きが変わっている。

 

「白雪さん」

 

「何?」

 

「楽しい?」

 

「今の私を見て、そう見える!?」

 

「見えない」

 

「じゃあ聞かないでよ!」

 

「でも、やめないから」

 

 ひめの手が止まった。

 

「……悔しいんだもん」

 

「それだけ?」

 

「それだけで十分!」

 

 悠は少し考える。

 

「そういう頑張り方もあるんだね」

 

「赤石くんは頑張るって何だと思ってるの?」

 

「できるまで続けること」

 

「同じじゃん」

 

「僕の場合、壊れるまでやることが多かったみたいだから」

 

 ひめの顔から苛立ちが消えた。

 

「それは頑張るじゃなくて、無茶するって言うんじゃない?」

 

「最近そう言われる」

 

「最近じゃなくてもそうだよ」

 

 ゆうこが穏やかに割って入った。

 

「頑張るって、同じことを無理して続けるだけじゃないと思うよ。やり方を変えたり、休んだり、誰かに聞いたりしながら続けるのも頑張ることだから」

 

 悠はその言葉を聞く。

 

 続ける。

 

 でも、壊れるまでではない。

 

 少し違うものとして覚えておくことにした。

 

 その直後。

 

 リボンが冷蔵庫を開ける。

 

「卵、本当に全部なくなりましたわ」

 

「え」

 

 ひめが固まる。

 

「……買ってくる!」

 

 財布を掴む。

 

「ついでにネギと鶏肉もお願い!」

 

 めぐみが言う。

 

「梅干しもお願いしますですわ!」

 

「牛乳もあったらお願いね」

 

 ゆうこまで追加する。

 

 ひめの腕へ買い物袋が積み上がる。

 

「何でこうなるのーっ!」

 

 ★★★

 

 買い物を終えたひめは、両手いっぱいの紙袋を抱えて河川敷を歩いていた。

 

「もう……何で私が誠司のお弁当のためにこんな……」

 

 袋の中で卵が揺れる。

 

「割れたら最悪だし……」

 

 足を止める。

 

 河川敷の少し先。

 

 道着姿の誠司が、一人で素振りを繰り返していた。

 

「押忍!」

 

 拳を出す。

 

 戻す。

 

 蹴り。

 

 踏み込む。

 

 また拳。

 

 汗だくになっても動きを止めない。

 

 ひめはしばらく見ていた。

 

 やがて誠司がこちらへ気づく。

 

「おう、ひめ」

 

 爽やかに手を上げる。

 

 ひめの眉が吊り上がった。

 

「爽やかに挨拶してんじゃないわよ!」

 

「何で怒ってるんだよ」

 

「私はね、あんたのお弁当を作るためにすっごく苦労してるの! 卵焼きは全然巻けないし、卵は全部なくなるし、それで買い物に行ったらこんなに頼まれるし!」

 

「そりゃ大変だったな」

 

「誰のせいだと思ってるの!」

 

「俺?」

 

「そう!」

 

 興奮して紙袋のバランスを崩す。

 

「わっ!」

 

 落ちかけた袋を、誠司が素早く受け止めた。

 

「危ないぞ」

 

「……ありがと」

 

「持つよ」

 

「いい」

 

「卵割れたら、また買い直しだぞ」

 

 ひめは黙る。

 

「……半分だけ」

 

「はいよ」

 

 二人で紙袋を分けた。

 

 誠司は少し離れた場所へ荷物を置く。

 

「もう少し練習したら一緒に戻る。待っててくれるか?」

 

「仕方ないわね」

 

 ひめは芝生へ座った。

 

 誠司はまた練習を始める。

 

 最初は退屈そうに見ていたひめだったが、しばらくすると表情が変わった。

 

 拳。

 

 蹴り。

 

 構え。

 

 何度も同じ動きを繰り返している。

 

 近くで見ると、誠司の腕や脚には細かな擦り傷があった。

 

 自分の人差し指にも、小さな絆創膏が巻かれている。

 

 卵焼き器で失敗した時につけた傷。

 

「……大変そう」

 

 思わず漏れる。

 

 それでも誠司は続ける。

 

 やがて一区切りつけ、一礼した。

 

「押忍!」

 

 タオルで汗を拭きながら近づく。

 

「待たせたな」

 

「誠司って、本当に毎日こんなことしてるの?」

 

「毎日ってほどじゃないけどな」

 

「疲れない?」

 

「疲れるよ」

 

 ひめが目を丸くする。

 

「じゃあ何でやるの?」

 

「やりたいから」

 

 あまりに普通の答えだった。

 

 誠司はひめの絆創膏へ気づく。

 

「そっちも大変だったみたいだな」

 

 ひめは慌てて指を隠す。

 

「別に!」

 

「弁当、ありがとな」

 

「まだできてないし!」

 

「作ろうとしてくれてるだけでもありがたいだろ」

 

「……そういうことさらっと言うから嫌味なのよ」

 

「何でだよ」

 

 少し沈黙。

 

 ひめは膝を抱えた。

 

「ねえ。誠司って、何でそんなに空手を頑張るの?」

 

「空手?」

 

 誠司は川を見る。

 

「興味があったのもあるし、強くなれそうだと思ったからかな」

 

「ふうん」

 

「きっかけは、めぐみだったかもしれないけど」

 

 ひめが勢いよく顔を上げた。

 

「めぐみ!?」

 

「まあな」

 

「何それ! どういうこと?」

 

 誠司は少し笑った。

 

「そのうち分かるよ」

 

「何でそこで勿体ぶるの!」

 

 二人が紙袋を持って歩き出す。

 

 その川の対岸。

 

 一人の少年がサンドバッグへ拳を打ち込んでいた。

 

「絶対優勝する!」

 

 何度も打つ。

 

「俺が一番になるんだ!」

 

 その拳が止められた。

 

「素晴らしい!」

 

 少年が振り返る。

 

 オレスキーが腕を組んで立っている。

 

「一番になりたい! その気持ち、よーく分かるぞ!」

 

「誰だ!?」

 

「心配するな。このオレスキー様が、お前を文句なしのナンバーワンにしてやろう!」

 

 巨大な鏡が現れた。

 

「鏡に映る未来を最悪に変えよ! 来たれ、サイアーク!」

 

 黒い霧が河川敷を覆った。

 

 ★★★

 

「何!?」

 

 ひめと誠司が振り返る。

 

 巨大なサンドバッグを身体へ組み込んだサイアークが、河原へ降り立っていた。長い腕は鎖のように伸び、拳の部分も巨大な打撃具になっている。

 

「サイアーク!」

 

 誠司が紙袋を置く。

 

 ひめも周囲を見る。

 

 避難する人々。

 

 チョイアークの群れ。

 

「誠司!」

 

「何だ!」

 

「めぐみとゆうこに知らせて!」

 

 プリチェンミラーを取り出す。

 

「それまで私がやる!」

 

「一人で大丈夫か?」

 

 ひめは一瞬だけ止まる。

 

 以前なら「余裕!」と答えたかもしれない。

 

「分かんない!」

 

 誠司が目を瞬く。

 

「だから早く呼んできて!」

 

「分かった!」

 

 誠司はキュアラインを取り出した。

 

 ひめは走る。

 

「プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」

 

 青い光が広がった。

 

「天空に舞う蒼き風! キュアプリンセス!」

 

 チョイアークの群れへ飛び込む。

 

「プリンセス・爆弾ボンバー!」

 

 青い爆発が連続し、チョイアークが吹き飛んだ。

 

「来たか、プリキュア!」

 

 オレスキーが高笑いする。

 

 プリンセスは着地して指を突きつけた。

 

「またあんた!? みんなをこんな目に遭わせて何が一番よ!」

 

「荒野こそ俺様という最高の男を引き立てる最高の舞台!」

 

「意味分かんない!」

 

「温室育ちのお姫様には分からんだろうな!」

 

「誰が温室育ちよ!」

 

 頭に血が上がる。

 

 プリンセスはサイアークへ突っ込んだ。

 

「たあっ!」

 

 蹴りを放つ。

 

 サイアークが腕で止める。

 

「え?」

 

 重い拳が飛ぶ。

 

 プリンセスは空中で身体を捻ってかわし、左右から拳を叩き込む。

 

 一発。

 

 二発。

 

 三発。

 

 サイアークは僅かに揺れただけだった。

 

「硬い!」

 

 背後からチョイアークが迫る。

 

「チョイ!」

 

「しまっ──」

 

 横から蹴りが入り、チョイアークが吹き飛んだ。

 

 誠司だった。

 

 さらに一体へ拳を入れ、別の一体の攻撃をかわして足を払う。

 

「誠司!?」

 

「連絡はした!」

 

 誠司は構える。

 

「こいつらは俺が止める。プリンセスはサイアークを!」

 

 プリンセスは一瞬だけ迷った。

 

 人間の誠司へ任せていいのか。

 

 それでも。

 

「……分かった!」

 

 以前のひめなら、全部自分で何とかしようとしたかもしれない。

 

 今は任せる。

 

「お願い!」

 

「ああ!」

 

 プリンセスはサイアークへ向き直った。

 

「今度こそ!」

 

 連続攻撃。

 

 拳。

 

 蹴り。

 

 青い光。

 

「これなら!」

 

 サイアークが倒れる。

 

「どうだ!」

 

 胸を張った。

 

 直後。

 

 サイアークが何事もなかったように起き上がった。

 

「ええええっ!?」

 

 オレスキーが大笑いする。

 

「このサンドバッグサイアークは打たれ強さナンバーワン! お前の攻撃など全部受けても平気なのだ!」

 

「そんなのずるい!」

 

「ナンバーワンに卑怯も何もあるか!」

 

 サイアークの腕が伸びる。

 

 プリンセスは飛んでかわす。

 

 別の拳。

 

 防御。

 

 大きく吹き飛ばされた。

 

「プリンセス!」

 

 誠司が振り向く。

 

 その隙へチョイアークが襲いかかる。

 

「くっ!」

 

 腕で防ぐ。

 

 数が多い。

 

 一体を倒しても、また次が来る。

 

 誠司の呼吸が荒くなっていった。

 

「キリがないな……」

 

 プリンセスも立ち上がる。

 

「こっちも全然倒れないし……!」

 

 サイアークが巨大な拳を振り上げた。

 

 プリンセスと誠司へ影が落ちる。

 

 その瞬間。

 

 桃色の光が二人の前へ飛び込んだ。

 

 轟音。

 

 拳が受け止められる。

 

「ラブリー!」

 

 プリンセスと誠司の声が重なった。

 

「待たせてごめん!」

 

 ラブリーが拳を押し返す。

 

 その後ろへハニーも降り立つ。

 

「チョイアークは私に任せて」

 

 ハニーバトンが光る。

 

「ハニー・ココナッツサンバ!」

 

 陽気なリズムが河川敷へ響き、チョイアークたちの動きが狂う。

 

「チョイ!?」

 

「チョイチョイ!」

 

「サイアークな気持ちは、汗と一緒に流しちゃおうね」

 

 ハニーが踊りながらチョイアークの群れをまとめて遠ざける。

 

 オレスキーまで身体を揺らし始めた。

 

「マンボ! マンボ! ……って、何をさせるかーっ!」

 

 我に返って叫ぶ。

 

 ラブリーはサイアークへ向かう。

 

「プリンセス、少し休んで!」

 

「でも!」

 

「大丈夫! あたしがその分も頑張る!」

 

「ラブリー!」

 

 ラブリーはサイアークへ飛び込んだ。

 

 拳を受け流し、懐へ入る。

 

 蹴り。

 

 パンチ。

 

 また蹴り。

 

 どれほど相手が立ち上がっても、ラブリーも前へ出続ける。

 

 少し離れた場所へ、悠も到着した。

 

 周囲の人々を安全な位置まで誘導し終え、戦場を見る。

 

 サイアーク。

 

 プリキュア。

 

 チョイアークと戦う誠司。

 

 今、自分が完全な姿へ戻る必要はない。

 

 悠は誠司の近くまで走った。

 

「相楽君!」

 

「赤石!」

 

 チョイアークが一体、悠へ向かう。

 

 誠司が間へ入り、蹴りで追い払った。

 

「前出るな!」

 

「分かった」

 

 悠はすぐに下がる。

 

「言うこと聞くの早くなったな!」

 

「最近練習してるから!」

 

「そんな練習あるのかよ!」

 

 短いやり取り。

 

 その間にも、ラブリーは戦っていた。

 

 何度殴っても立ち上がるサイアーク。

 

 それでも、めぐみは止まらない。

 

 誠司がその姿を見る。

 

「ひめ」

 

「何?」

 

「俺が空手始めたきっかけ、あれだよ」

 

 プリンセスがラブリーを見る。

 

「え?」

 

 誠司は少し笑った。

 

「めぐみは昔から変わらないんだ」

 

 悠も耳を傾ける。

 

「困ってるやつを見ると、後先考えずに突っ込んでいく。自分のことより、誰かのことに一生懸命でさ」

 

 幼い頃。

 

 高い場所から降りられなくなった猫。

 

 めぐみは誠司を足場にして登ろうとし、そのまま二人で転んだ。

 

『めぐみちゃん、大丈夫?』

 

『うん! 猫ちゃんが無事で幸せハピネス!』

 

 怪我をしても笑っていた。

 

 誠司は苦笑する。

 

「危なっかしいんだけどな」

 

「それは今もだね」

 

 悠が言う。

 

「否定できない」

 

「でも」

 

 誠司はラブリーを見る。

 

「あいつが頑張ってると、自分も負けてられないって思うんだ」

 

 プリンセスは黙る。

 

 ハニーも戦いながら笑った。

 

「私も分かるな」

 

 チョイアークを光で押し返す。

 

「頑張ってるめぐみちゃんを見ると、自分も頑張らなくちゃって思えるの」

 

 プリンセスはラブリーを見る。

 

 サイアークの拳が飛ぶ。

 

 ラブリーはかわす。

 

 転ぶ。

 

 立つ。

 

 また向かう。

 

 自分が初めてプリキュアとしてまともに戦えなかった頃。

 

 めぐみは隣に立ってくれた。

 

 怖くて逃げた時も。

 

 失敗した時も。

 

「……そっか」

 

 プリンセスが小さく笑う。

 

「私もかも」

 

 誠司を見る。

 

「誠司が頑張ってるところ見てたら、何でこんなに頑張るのって思ったけど」

 

 自分の絆創膏を見た。

 

 何度失敗しても卵焼きを作ろうとした。

 

「頑張ってる人を見てると、自分もやらなきゃって思っちゃうんだね」

 

 悠はその言葉を聞く。

 

 誰かが頑張る。

 

 それを見た誰かが動く。

 

 一人の努力が、一人だけで終わらない。

 

 まりあもそうだったのかもしれない。

 

 自分が約束を守ろうとするのは。

 

 あの人が自分のために何度も動いてくれた姿を覚えているから。

 

「……そういうことか」

 

 悠が呟く。

 

 誠司が聞く。

 

「何が?」

 

「少し分かっただけ」

 

「何を?」

 

「僕も、負けてられないって思う時があるから」

 

 誠司が笑った。

 

「じゃあ同じだろ」

 

「同じなんだね」

 

 その答えが、悠には少し嬉しかった。

 

 ★★★

 

 ハニーがプリンセスの近くへ着地した。

 

「プリンセス」

 

「何?」

 

「ラブリーだけに頑張らせちゃダメだよね」

 

 ハニーバトンが優しい黄色の光を放つ。

 

「ハニー・ヒーリングリズム!」

 

 光がプリンセスと誠司を包む。

 

 疲労が少し和らいだ。

 

 プリンセスが飛び上がる。

 

「来た来たー! パワー百倍!」

 

「相楽君は無理しないで」

 

 悠が言う。

 

「お前に言われる日が来るとはな」

 

「どういう意味?」

 

「後で教える」

 

 プリンセスはラブリーの横へ並ぶ。

 

「ラブリー!」

 

「プリンセス!」

 

「私も頑張る!」

 

 二人でサイアークを見る。

 

 プリンセスは少し照れくさそうに続けた。

 

「っていうか、ラブリーが頑張ってると、こっちまで頑張りたくなっちゃうのよね!」

 

「え?」

 

 ラブリーが目を丸くする。

 

「それってどういうこと?」

 

「言わせるなー!」

 

「何で!?」

 

「秘密! ミステリアス!」

 

「分かんないよ!」

 

 オレスキーが地団駄を踏んだ。

 

「他人のために頑張るだと!? そんなもの無駄だ! 俺様は俺様自身のためだけに頑張る!」

 

 プリンセスが構える。

 

「勝手にすればいいじゃん!」

 

 ラブリーも拳を握る。

 

「でも、あたしたちは違うよ!」

 

「誰かが頑張ってたら応援したい!」

 

「誰かが困ってたら助けたい!」

 

 二人が同時に地面を蹴る。

 

 サイアークの拳をラブリーが受け流す。

 

 プリンセスが跳ぶ。

 

「プリンセス・ゲンコツツインマグナム!」

 

 巨大な青い拳が二つ出現し、サイアークへ直撃する。

 

「サイアーク!」

 

 巨体が吹き飛ぶ。

 

 それでも立ち上がろうとする。

 

 ラブリーとプリンセスは互いを見る。

 

「いくよ!」

 

「うん!」

 

 二人のラブプリブレスが光った。

 

「勇気の光を聖なる力に!」

 

「プリキュア・ツインミラクルパワーシュート!」

 

 桃色と青の光が一つになり、サイアークを包み込む。

 

「ハピネスチャージ!」

 

 巨大な身体が光へ変わる。

 

「サイアーク!」

 

 黒い霧が晴れ、鏡へ閉じ込められていた少年も解放された。

 

 オレスキーは悔しそうに拳を振り回す。

 

「俺様はこれからも俺様のために頑張る! 目指すは俺様最高!」

 

 黒い霧の中へ消えていった。

 

 プリンセスは大きく息を吐く。

 

「終わったー……」

 

 誠司が近づく。

 

「大丈夫か?」

 

「まあね」

 

「よく頑張ったな」

 

 ひめは変身を解きながら顔を逸らす。

 

「誠司に言われなくても頑張ったし」

 

「そうか」

 

「……ありがと」

 

 小さな声だった。

 

「何か言った?」

 

「何も言ってない!」

 

 悠は落ちていた買い物袋を見る。

 

 幸い、離れた場所へ置いてあったため無事だった。

 

 袋を持ち上げる。

 

「卵も割れてない」

 

 ひめが駆け寄った。

 

「ほんと!?」

 

「うん」

 

 一気に顔が明るくなる。

 

「よーし! 帰って練習する!」

 

 誠司が苦笑する。

 

「無理すんなよ」

 

「今の私にそれ言う!?」

 

「休みながらやれって意味だ」

 

 ひめが一瞬止まる。

 

 ゆうこも頷く。

 

「疲れたまま料理すると、また失敗しやすいからね」

 

 ひめは渋々頷いた。

 

「……ちょっと休んでからやる」

 

 悠が感心したように見る。

 

「白雪さん、成長したね」

 

「赤石くんにだけは言われたくない!」

 

「どうして?」

 

「同類だから!」

 

 悠は少し考えた。

 

「否定しにくい」

 

 めぐみが笑った。

 

 ★★★

 

 大会当日の朝。

 

 まだ日が昇ったばかりの大使館。

 

 台所では、ひめが一人で卵焼き器と向き合っていた。

 

 眠い。

 

 手には絆創膏。

 

 それでも、以前のように焦ってはいなかった。

 

 卵液を流す。

 

 待つ。

 

 固まり始める。

 

 ゆっくり巻く。

 

 一回。

 

 二回。

 

 三回。

 

 皿へ置く。

 

「……できた」

 

 形の整った卵焼き。

 

 ひめの顔が輝いた。

 

「できた!」

 

 声が大きすぎて、リボンが寝室から飛んできた。

 

「何事ですの!?」

 

「リボン! 見て!」

 

 卵焼きを指さす。

 

「まあ!」

 

「できたよ!」

 

 ひめは笑った。

 

 一度できると、次は少し違う味を作る。

 

 鶏肉とネギ。

 

 梅。

 

 甘いもの。

 

 少ししょっぱいもの。

 

 途中でまた形を崩した。

 

 でも、最初からやり直せばいい。

 

 ようやく弁当箱いっぱいの卵焼きが完成した頃には、朝日が大使館の窓から差し込んでいた。

 

 ★★★

 

 空手大会の会場。

 

 試合前の控え室で、誠司の前へひめが弁当箱を置いた。

 

「はい」

 

「何だ?」

 

「見れば分かるでしょ!」

 

 蓋を開ける。

 

 中には隙間なく卵焼きが詰められていた。

 

 誠司が目を丸くする。

 

「すごい量だな……」

 

「全部味が違うんだから!」

 

 ひめは一つずつ指さす。

 

「これが鶏肉とネギ。こっちは梅。これは甘いやつで、そっちがしょっぱいの」

 

「全部ひめが作ったのか?」

 

「そうよ!」

 

 胸を張る。

 

 指には小さな絆創膏がいくつも貼られている。

 

「朝早く起きて作ったんだから感謝しなさいよね!」

 

 誠司は一つ食べる。

 

 ひめがじっと見る。

 

「……どう?」

 

「うまい」

 

 ひめの顔が僅かに緩む。

 

「本当に?」

 

「本当に。これならパワー百倍だな」

 

「百万倍って言いなさいよ!」

 

「増えたな」

 

「私がそれだけ頑張ったの!」

 

 誠司は笑った。

 

「ありがとな、ひめ」

 

 今度こそ、ひめは目を逸らす。

 

「私も頑張ったんだから、誠司もちゃんと優勝しなさいよ」

 

「押忍!」

 

 めぐみが後ろから顔を出す。

 

「あたしも食べたい!」

 

「ダメ! 誠司のお弁当!」

 

「一個だけ!」

 

「ダメ!」

 

 ゆうこが笑う。

 

「めぐみちゃんにはこっちね」

 

 別のお弁当箱を差し出す。

 

 悠も一緒にいた。

 

 ひめが少し考え、端に残っていた不格好な卵焼きを一つ差し出す。

 

「赤石くんも食べる?」

 

「いいの?」

 

「余ったやつ」

 

「ありがとう」

 

 悠は口へ入れる。

 

 少し甘い。

 

 形は崩れている。

 

 でも、おいしい。

 

「どう?」

 

「努力の味がする」

 

 ひめの顔が引きつった。

 

「何それ」

 

「昨日より上手になってるから」

 

「普通においしいって言えばいいじゃん!」

 

「おいしいよ」

 

「先に言って!」

 

 めぐみたちが笑う。

 

 やがて会場から選手を呼ぶ声が聞こえた。

 

 誠司は立ち上がる。

 

「行ってくる」

 

 めぐみが拳を上げた。

 

「誠司、頑張って!」

 

 ゆうこも続く。

 

「頑張ってね、相楽くん」

 

 ひめは腕を組んだ。

 

「絶対優勝だからね!」

 

 悠は少し考えて言う。

 

「相楽君」

 

「何だ?」

 

「いつも通りでいいと思う」

 

 誠司が笑った。

 

「それが一番難しいんだよ」

 

「そうなの?」

 

「でも、やってくる」

 

「うん」

 

 誠司は試合場へ向かった。

 

 ★★★

 

 決勝戦。

 

 誠司の正面に立っていたのは、河川敷でサイアークにされていた少年だった。

 

 二人が一礼する。

 

 構える。

 

「始め!」

 

 踏み込む。

 

 拳が交差する。

 

 めぐみが立ち上がった。

 

「頑張れ、誠司ーっ!」

 

 ゆうこも声を上げる。

 

「相楽くーん!」

 

 リボンも飛び跳ねる。

 

「頑張るですわー!」

 

 ひめは両手を強く握りしめていた。

 

「誠司……!」

 

 悠は静かに試合を見る。

 

 誠司は闇雲に攻めない。

 

 相手を見る。

 

 呼吸を整える。

 

 距離を取る。

 

 必要な時に踏み込む。

 

 何度も練習していた動き。

 

 一日だけ無理をして身につけたものではない。

 

 毎日の繰り返し。

 

 休み。

 

 また続ける。

 

 誰かと練習する。

 

 助言を受ける。

 

 応援される。

 

 その全部が今の動きへ繋がっている。

 

 悠は少しだけ理解した。

 

 努力するというのは、自分一人で耐え続けることではない。

 

 続けられるように、自分を壊さないことも含まれている。

 

 試合場で誠司の拳が決まった。

 

 審判の旗が上がる。

 

「勝者、赤!」

 

 一瞬の静寂。

 

「やったーっ!」

 

 めぐみが飛び上がった。

 

「誠司優勝だよーっ!」

 

 ゆうこも拍手する。

 

「相楽くん、すごい!」

 

 ひめも勢いよく立ち上がった。

 

「やった! 誠司ー!」

 

 誠司は対戦相手と握手する。

 

 それから観客席へ顔を向け、親指を立てた。

 

 めぐみが両手を振り返す。

 

 ひめは笑いながら、自分の絆創膏だらけの指を見る。

 

「頑張る人のために頑張るって……」

 

 小さく呟く。

 

「結構いいかも」

 

「白雪さん」

 

 隣の悠が呼ぶ。

 

「何?」

 

「卵焼き、もう一個残ってる?」

 

「結局それ!?」

 

「おいしかったから」

 

「……しょうがないなあ」

 

 ひめは少し嬉しそうに弁当箱を開いた。

 

 ★★★

 

 帰り道。

 

 めぐみたちは優勝した誠司を囲んで歩いていた。

 

「優勝者なんだから今日は何でも奢ってよ!」

 

 ひめが言う。

 

「何で俺が奢るんだ」

 

「私たちが応援したからでしょ!」

 

「応援されると金払わないといけないのか?」

 

「そういうもの!」

 

「絶対違う」

 

 ゆうこが笑う。

 

「じゃあ大森ごはんでお祝いしようか」

 

「賛成!」

 

 めぐみが即答した。

 

 悠は誠司の横を歩く。

 

「相楽君」

 

「ん?」

 

「努力って、毎日続けること?」

 

「急にどうした」

 

「少し気になった」

 

 誠司は少し考える。

 

「まあ、それもあるな」

 

「じゃあ休んだ日は努力してない?」

 

「そんなわけないだろ」

 

 悠が見る。

 

「休むのは、次にちゃんと動くために必要なんじゃないか?」

 

「じゃあ、休むのも続けることの一部?」

 

「俺はそう思う」

 

 悠は歩きながら考える。

 

「難しいね」

 

「何が?」

 

「頑張るのをやめることと、休むことの違い」

 

「戻るつもりがあるかどうかじゃないか?」

 

 悠の足が僅かに止まる。

 

 戻る。

 

 ブルースカイ王国から逃げるように帰ってきた時、ひめも同じことを選んだ。

 

 諦めるためではなく、戻るために帰った。

 

 まりあとの約束もそうなのかもしれない。

 

 一度退く。

 

 誰かに頼る。

 

 休む。

 

 それは、生きて戻るために必要なこと。

 

「相楽君」

 

「何だ?」

 

「僕も、もう少し上手に頑張れるようになるよ」

 

 誠司が悠を見る。

 

「今までどんな頑張り方してたんだ」

 

「多分、下手だった」

 

「知ってる」

 

「即答なんだ」

 

「散々見てきたからな」

 

 悠は少しだけ笑った。

 

 前では、めぐみがひめと騒いでいる。

 

 その背中を見る。

 

 誠司が空手を始めるきっかけになった背中。

 

 ゆうこやひめを前へ動かす背中。

 

 悠も何度か、あの背中を見て動いたことがある。

 

「愛乃さんって、不思議だね」

 

「今さらか?」

 

「うん」

 

「本人は多分、何も考えてないぞ」

 

 前から声が飛んだ。

 

「誠司ー! 聞こえてるよー!」

 

「聞こえるように言った!」

 

「ひどい!」

 

 めぐみが走って戻ってくる。

 

 悠はその様子を見ていた。

 

 誰かが頑張る。

 

 それを見て、自分も動く。

 

 自分が動けば、また誰かが動くのかもしれない。

 

 いつか。

 

 まりあと再会できた時。

 

 自分も、少しは頑張ったと言えるようになりたい。

 

 ただし。

 

 今度は、生きてそこへ辿り着くために。

 

 次回予告

 

 めぐみ:

「結婚式だーっ!」

 

 ひめ:

「うわあ、すっごくきれい!」

 

 ゆうこ:

「幸せそうだね」

 

 悠:

「結婚すると、ああいう顔になるの?」

 

 誠司:

「俺に聞くな」

 

 増子美代:

「ぴかりが丘の結婚式をプリキュアが全力応援!? これは取材しないわけにはいかないわ!」

 

 ひめ:

「何で美代さんまでいるの!?」

 

 ホッシーワ:

「人の幸せなんて、見ているだけでお腹いっぱいだわ!」

 

 めぐみ:

「そんなこと言わせないよ!」

 

 ラブリー:

「みんなの幸せ、絶対守るんだから!」

 

 めぐみ:

「次回、第18話『みんなで幸せ全力応援! ぴかりが丘の結婚式!! /祝う人と、幸せのかたち』」

 

 悠:

「幸せって、一人分じゃないんだね」

 

 ゆうこ:

「うん。分けても減らないものもあるよ」

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