さて、前回までのあらすじをば。クルセビナをぶっ飛ばした!以上、終わり!
「二人とも、怪我はない?」
「ええ。フォーリアさんが守ってくれたから」
「ありがとう。フォーリアさんがいなかったら、私はクリーヴの命を奪ってしまっていた」
「いいのよ。さて、私たちは晴れて執行官殺しのお尋ね者なわけだけれど…」
正直言って、ここから先はノープランだ。だってクルセビナをぶっ飛ばすことしか考えてなかったから。かといって行く宛のないであろうクリーヴとペルヴェーレを見捨てるわけにもいかない。私一人だったら別に野宿でもいいんだけど、二人に窮屈な思いはしてほしくないしなぁ…。
「もしかして…フォーリアさん、ここからノープラン?」
「ギ、ギク…」
私が一人で唸っているとクリーヴが尋ねてくる。ま、まずい!このままではミステリアスつよつよお姉さんとしての私の立場が…。
「ふふっ、フォーリアさんにも抜けてるところがあって少し安心したわ」
「ああ、ようやく人間らしいところが見れた」
「あ、あはは…」
人間らしい、か…厳密にはこの体は人間ではないのだけれど。ていうか本当にどうしよ。モラもなければ住居もない。壁炉の家も半壊してるし、ここで暮らすのは無理だろう。それに、ここにとどまってはファデュイの追手が来ないとも限らない。
「どう、しましょうね…?」
「ならばフォーリアさん、サーンドル河はどうだろう?資料でしか見たことはないが、野宿よりは幾分マシになると思う」
「サーンドル河か…」
サーンドル河…フォンテーヌ挺の地下下水道に位置する集落であり、前科者、現役犯罪者、貧困者や障害者など、主に社会のはみ出し者たちが住んでいる、前世で言うスラム街に似たような地域だ。実質的に
「私たちの心配なら無用だ、フォーリアさん」
「そうよ!そこら辺のチンピラより、お母様を倒した私たちの方がずっと強いもの!」
「…!ふふっ、その通りですね」
そうだ、私は何を心配していたのだろう。この子達は強い。ペルヴェーレは原作では一人でクルセビナを倒しきった。クリーヴも、クルセビナの仕打ちに幾度となく耐えてきた。私が過保護にならなくたって二人は強い。それに、サーンドル河ならヌヴィレットやファデュイとの遭遇率もかなり下がるはず。そうと決まれば善は急げだ。
「行きましょう、二人とも」
「ええ!」「ああ」
目指すはフォンテーヌ挺・サーンドル河だ。
半壊した『壁炉の家』から残った物資をかき集め、ひとまず野宿で一晩明かした後巡水船に乗ってフォンテーヌ廷に向かい、一直線にサーンドル河へ。
地上に比べて空気は淀んでいるが、生活できないほどではない…と思う。二人は大丈夫かな?
「二人とも、大丈夫?」
「ええ。大丈夫よ」
「これくらい問題ない」
「分かったわ。無理はしないでね」
さて、まずは棘薔薇の会と接触しないことには始まらない。身寄りがないと説明すればある程度の援助は得られるはずだ。それに…カーレスとも接触するいい機会だしね。
道行く人々に場所を聞きながらサーンドル河を進んでいく。
「すみません、棘薔薇の会の場所を知りませんか?」
「ああ?知らねえな。それよりお前ら、随分と小綺麗な服装じゃねえか」
「女だけでここに来るなんて命知らずもいいところだぜ?」
「うわぁ、ご挨拶ね」
声をかけたものの、どうやら絵に描いたようなチンピラたちだったようだ。
「へへっ、覚悟しやが──ぐわっ!?」
「まったく、騒ぎは起こしたくないのだけど…」
向かってきた男の手首を弾き、軽く鳩尾に一撃。その男は蹲って動かなくなった。一応それなりに手加減はしたんだけど…。
「あら、根性が足りないんじゃない?」
「くそっ、こうなったらガキのほうを…!」
「…舐めてもらっては困る」
ペルヴェーレは一瞬にして男の背後に回り込み、腕を組み上げる。
「くっ!?」
「さあクリーヴ、一思いに」
「ええっ!?ご、ごめんなさい!えいっ!」
「ごっ!?はぁ──…」
抵抗できなくなった男に対して、クリーヴの容赦ない蹴りが急所に叩き込まれる。ペルヴェーレ、クリーヴ、恐ろしい子…。
「ひぃっ!?す、すんませんした──」
「おっと、逃がすわけにはいきませんね」
逃げようとした三人目の男の前に、サングラスをかけた黒服の男が立ちはだかった。あの服装、もしかして…。
「て、てめぇは、棘薔薇の会…」
「女性に対する恐喝、そして暴力未遂。同行してもらいます」
「くそ…」
そしてその奥からぞろぞろと人が現れ、あっという間に男たちを拘束した。
「助けようと思ったのですが、その必要はなかったようですね?」
「いえいえ、そんなことは」
この顔、誰かに似ているような…?前世で見たことあるのかな?
「それにしても、見ない顔ですね。新入りでしょうか?」
「ええ。実は私たちは身寄りがなく、ここに流れ着いた次第でして…」
「なるほど。それでしたら付いてきてください。ボスのところまで案内します」
そう言うと男は引き返してサーンドル河の奥へ進んでいく。
「ボスに取り次ぎますので、少々お待ちください」
男はたどり着いた建物のドアを開け、中へ入っていった。
「フォーリアさん、ここに来る提案をした私が言うのもなんだが、この組織は信用できるのか?」
「ええ。少なくとも変な気を起こさなければ、最低限は生活を支援してくれるはずです」
「フォーリアさん、本当に何でも知ってるのね!」
クリーヴはキラキラした目で私を見つめる。…実はフォンテーヌのことだけ異常に詳しいだけで他の国はそこそこなんだよなぁ。フォンテーヌが一推しってだけで。視線がいたたまれない…。
「お待たせしました。中へどうぞ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」
「お、お邪魔します…」
「失礼します」
黒服の人に通された部屋の奥には、貫禄のある人が椅子に座ってこちらを見ていた。この人が…
「初めまして、棘薔薇の会の会長のカーレス・カスパールだ」
「私はフォーリアと申します。こっちの桃色の髪の子がクリーヴで、白い髪の子がペルヴェーレです」
私に合わせて、ペルヴェーレは流れるように、クリーヴは若干ぎこちないながらもお辞儀をする。
「丁寧な自己紹介をありがとう。さて、話を聞こう。マルシラック、下がりたまえ」
「はい、ボス」
「え」
マルシラックって…あのマルシラック!?そうか、道理で見覚えが…これが若かりし頃のマルシラック…。
「えっと、自分の顔に何か?」
「あ!すみません、お気になさらず…」
「そ、そうですか…失礼します、ボス」
いけないいけない。ついマルシラックの顔をまじまじと見てしまっていた。気をつけないと不審がられてしまう…。
「それで、身寄りがない、という話だったね」
「はい。少々複雑な事情で、私はこの二人を連れてここまで辿り着いたのです」
「なるほど。職も家もないと、そういうことだね?」
「ええ。棘薔薇の会は貧民の経済的手助けをしていると聞きました。出来れば、私たちもその恩恵にあずかりたいのです」
「ふむ…」
出来るだけ事情を伏せて交渉したけど…どうだ?少々卑怯かもしれないけど、カーレスはかなりの人格者だから、私たちのような人たちを見捨てるような性格ではないはず。
「事情は分かった。君、特技は?」
「え?体力には自信がありますが…あとは他国の知識と、武芸を少々…?」
「そうか。君…よければ棘薔薇の会に入らないか?」
「…はい?」
whats?カレハナニヲイッテイルノデショウ?私に、棘薔薇の会に、入れと。そう言ったのか?思わず素で聞き返しちゃったよ?
「実は棘薔薇の会はまだまだ人員不足でね。君が他の人とは少しばかり違うのは一目で分かった。マルシラック曰くかなりの実力があるようだが、事情も詳しくは聞かない。仮組員として実力を見た後、結果次第では君を正式な組員として迎え入れてもよいと思っている。どうかな?君にとっても悪い話ではないと思うが…」
「なる、ほど…?」
「もちろん、そこの子供たちの生活も保障するし、仮期間もそれ相応の対価を支払う」
さすがはカーレス。ひと目で私が尋常じゃない人外だと見抜いたよ…私ってそんな異彩放ってるの?二人の方を見るとうんうんと頷いている。その場合余計ヌヴィレットに会いたくなくなってきたよ…?
正直、即決でもいいレベルで好条件な交渉だ。だけど、不審な点もあるのは事実。うん、ここは探り合うより直球で聞こう。カーレス相手はきっとその方がいい。
「ええ、とても嬉しい話です。…こちらにとって都合がよすぎるほどに。何か他の狙いがあるのではないですか?初対面である私になぜそこまで…?」
「先ほど言った人員不足という話も本当だがね。…君は自分のためではなく、孤児となった子供二人を助けるためにここに来たのではないか?服はまだ綺麗だし、数日間行き場もなく彷徨ったといった様子でもない。その二人の暮らす場所をいち早く確保するために、行き場のない者に最も寛容な我々を頼った…違うかな?」
「…感服、ですね」
「ならば、君ほどの人格者に手を差し伸べない理由はない。我々は君のような人を歓迎する。もちろん、棘薔薇の会に入らなくても通常通りの保障はすると約束するよ」
頭も切れて、それでいて他人に優しさを見せることが出来る。本当に、素晴らしい人だ。だからこそ…あの未来が悔やまれる。いや、違うだろう。私が、変えるんだ。
「分かりました。そのお話、受けましょう」
「君ならそう言うと思っていたよ。住居はフローレントに案内させる。少し待っていたまえ」
そう言ってカーレスは部屋を後にする。
「…っはぁ~、緊張したぁ…」
「あのカーレスという人、かなり切れ者のようだ」
「ええ。私、終始無言になるしかなかったもの…」
「でも、これで生活問題は解決ね」
行き場がなくなって大ピンチ!とかにならなくて本当に良かった。まあこれから暗躍するのには、棘薔薇の会という肩書もちょうどいいかもしれない。
こうして私は棘薔薇の会の一員(仮)となったのでした。
フォーリアが棘薔薇の会に加入した!
なんかチンピラ戦闘時に若干ペルヴェーレがはっちゃけている気もしますが、クリーヴが生きてたら案外こんな感じなのかなと。クリーヴ、やる時はやる容赦のない女の子。
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