チョウザ先生は一足先に立ち去り、私は病院内のベンチでしばらくガイと話したあと、膝を押さえながらゆっくり立ち上がった。動くとやはり痛みが強く思わず声をあげる私に、ガイは急いで肩を貸してくれる。
「家まで送ろう」
「ごめんね……でも、ゲンマに謝らないと。家にいるといいんだけど」
「ゲンマの家、知ってるのか?」
言ってなかったっけ。ゲンマとはアカデミーの頃からの幼なじみだと告げると、ガイは目を丸くしていた。まぁ、確かにそこまで親しいような素振りは見せてなかったかもしれないし、ガイは無頓着なところがある。
ガイの肩を借りて廊下を歩きながら、私は足元に視線を落とした。
「……ゲンマは昔から面倒見がよくて、一度引き受けたことはちゃんとやり遂げるっていう責任感もあってさ。チームメイトになったんだから、対等にならなきゃ、ゲンマを助けられるくらいにならなきゃって私は思ってたのに……結局またゲンマに甘えて、色々と押し付けちゃってたんだなぁって思った」
「そんなこと……ボクだって同じだ。ゲンマが頼りになるから、つい、甘えていたんだな。ボクももっと自分で考えて、強くならないと」
そんなことを話しながら外に出ると、病院前の門にもたれかかって、難しい顔で空を見上げているゲンマの姿が目に入った。
***
――この怒りは何なのか。
二人が俺の指示を聞かなかったからか?
それもあるだろうが、一番は自分自身への怒りだ。
そもそもチームは任務達成のために存在する。だが任務達成のためには仲間の長所を活かして協力し合うことが必要だ。そうすることで成功率も上がる。実際、Dランク任務をこなす中で、チームワークの大切さは分かっていたつもりだ。
だが仲間の身の安全がかかってくるとなると、話はまったく別だと分かった。俺はこれまでの経験から、ガイが反射的に前に出過ぎることは想定できたし、
チョウザ先生は、プレッシャーを打ち明けた俺に「お前は考えすぎだ」と言ったけど。俺に二人とは違う役割を与えたのは先生じゃないか。そう恨み言を言えば、チョウザ先生はニッコリ笑ってこう言った。
「お前にはそれができると信じているからな。だが、焦るなよ。ゆっくりでいいんだ。仲間を信じて、仲間を頼って、一緒に成長していけばいい。お前たちはまだ芽吹いたばかりの若葉なんだからな」
そう、聞かされて臨んだのに。結局ひとりで抱えて、任務は失敗するし、
気持ちの整理がつかず、俺は病院にもついていかなかった。冷たいやつだと思っただろうな。ガイはどうしてあんなに、まっすぐ突っ走れるんだろうな。
遠回りして歩いて、家の近くまで戻ってきた。どのみち
彼女のことを思い出したら、自然と笑みがこぼれた。同時に、自己嫌悪が全身を駆け巡る。
俺は何をやってるんだ? 俺の未熟さで二人を危険な目に遭わせたのに、ひとりでさっさと逃げ帰ってみっともなさすぎる。謝らなければならない。そしてまた、三人で話し合ってやっていきたい。俺は自分を高く見積もっていたんだ。自分ひとりで二人を引っ張っていけると。
まだ
みっともない。どうしようもない。器が小さい。自分を形容する言葉なんてそんなものしか出てこない。俺は
俺が、もっと前を向いて進まないといけない。そのために火遁も再開した。いつか
病院に着いて、中に入るか迷った。だが診察中かもしれないし、俺はおとなしく外で待つことにした。季節はもうすぐ冬だ。羽織りを着ているとはいえ風が冷たく身震いする。長く息を吸って、止めて、吐く。アカデミーでも習った呼吸法をゆっくり繰り返しながら、白い空を仰ぎ見て俺は目を細めた。
同じチームである以上、逃げられない。自分の弱さと向き合って、
ちょうど、チョウザ先生が病院から出てくるところだった。
「おう、ゲンマ。やっぱり、
「いえ、そういうわけじゃ……」
「照れるな。顔に書いてある」
そんな分かりやすい顔をしているわけない。俺は無言でチョウザ先生を睨んだが、先生は気楽に笑って俺の肩を叩いた。
「
「……はい」
信用していなかったわけではない、と言ったところで言い訳だ。本当に信頼していたなら、ちゃんと話して、すぐに向き合えていたはずだ。俺が勝手に、二人を弱いものとして下に見ていた。そういうことなんだろう。
「お前たちは大丈夫だ」
チョウザ先生はそう言って、そのまま立ち去った。先生から二人に何か話したのかもしれない。だからといって、俺がだんまりを決め込むわけにいかない。自分の言葉で、自分で二人に向き合うんだ。
それからしばらく待って、ふと病院のほうを見ると、今度は