「なんだ? また一緒にいてほしいのか?」
「そ、そういうんじゃないよ!」
彼女に促されて、一緒にベッドの端に腰かけた。
「ゲンマ、将棋やったことある?」
「いや、親父はやってたけど。俺はない」
「そっか……ゲンマが知ってるなら一緒にやりたいなと思ったんだけど」
「ゲンマ?」
「お前、いつから将棋やってんの?」
「えーと、五か月前、かな」
思ったより直近だった。まぁ、初心者用テキストがあるくらいだもんな。前にこの部屋に来たときはなかった気がするし。
「シカク先生が教えてくれたんだ。しばらくチョウザ班を留守にしたでしょ? あのとき私、すごく焦ってて。私がぼーっとしてるから、落ち着くために一週間将棋やらされてた」
「はぁ? お前そんなことやってたのかよ」
知らない間に一か月も留守にしておいて、そのうち一週間も将棋やってたのかよ。何だそりゃ。俺はシカク先生の顔を思い浮かべながら呆れた。だが
「私も最初は納得いかなくて怒ってた。こんなことやってる場合じゃないのにって。でも、今は大事な時間だったなって思うよ。まだまだ焦っちゃうし、できもしないこと色々考えたりしちゃうけど。でも、前よりちょっと、自分のこと分かるようになった」
そう語る
知らず知らずのうちに目線が下がっていた俺の手を、
「なんだよ」
照れ隠しに、俺はぶっきらぼうに聞いた。
「シカク先生に教えてもらってから、ずっとひとりで詰将棋やってた。落ち着けるし、静かにじっくり時間かけて考えられるから。でもたまには誰かと一緒にやりたいな」
「……誰でもいいなら、やったことあるやつのほうがいいんじゃねぇか?」
「そんなの知らないし、誰でもよくないよ。ゲンマが嫌じゃなかったらゲンマがいい。ゲンマも息抜きになると思うよ」
俺は気恥ずかしいような、思わず頬が緩むような不思議な高揚感に包まれた。
彼女の手を少し握り返しながら、答える。
「いいぜ。将棋はお前が先輩だな」
「え? あ、うん、そういうことになるね」
「じゃあ、こうしようぜ。俺が対局でお前に勝ったら、お前は俺と風遁の修行をする。それまでにひとつでも術ができてなかったらお前の負けだ」
「えっ……ええっ!?」
そんなつもりで言ってない、とでも言いたげな顔で
「ちょうどいいだろ。俺は将棋を頑張るし、お前は風遁を頑張る。先に達成したほうの勝ち。負けたほうが勝ったほうの言うことを何でも聞く。どうだ?」
「……なんか、ハードル上がってない? 私、対局なんかしたことないんだよ?」
「でも俺より早く始めてるだろ? 俺はまだルールもろくに知らねぇんだから」
まだ納得いかない様子の
「あっでも……おじさんに教えてもらうとかなしだよ?」
「しばらく帰ってこねぇよ。それに、誰に習うかは俺の自由だろ?」
「えぇ……」
「お前だって、風遁の修行は三代目にも教えてもらったんだろ? 贅沢じゃねぇか」
「うっ……それは、そうだけど」
「恨みっこなしだ。お互い誰に教えてもらっても文句は言わない。嫌か?」
「……嫌だけど、分かった」
「お前の素直なとこ、好きだよ」
「もう、こういうときだけ! ふつーに言ってよ!」
何もないときに好きとか言えるかよ。恥ずかしい。俺が力を緩めると、
「ーーで、
俺が茶化して問いかけると、仏頂面の
「じゃあ、先輩がやさーしく教えてあげよう。一回で覚えてね」
「厳しいな、先輩」
茶目っ気のある声で先輩風を吹かせてみせる