ばあちゃんは数日前からまた風邪を引いて寝込んでいる。俺がしっかりしないと。ばあちゃんに、また負担をかけてしまう。
「オビト、いつもすまないね。明日は好きなもん買ってきていいからね」
「うん。あんがとな、ばあちゃん」
誕生日には、ばあちゃんが毎年ケーキを焼いてくれる。が、今年は無理そうだ。もう家族で無理に祝わなくても、と思わなくもないが、ばあちゃんは俺を可愛がることが生き甲斐みたいなもんで、俺がリンと過ごしたいからってそれを奪うのは忍びない。
それに、先ほどの
『ゲンマの家でお祝いしてもらうんだ』
俺も幼い頃に両親を亡くしたし、うちがうちは一族の中でも特殊な立場にあることで、ずっと孤立感を感じてきた。お前らはうちはじゃないと口にする連中もいるくらいだ。
でも俺にはいつも、ばあちゃんがいてくれた。記憶の中の両親も優しかったし、俺にとって家族とは温かく見守ってくれる存在だ。
「
布団に横になったままばあちゃんが突然そう聞いてきて、俺は驚いて飛び上がった。ばあちゃんの口から
「あ……ごめん、ばあちゃん」
「どうして謝るんだい。あの子ももう九つか。大きくなったんだろうね?」
「まぁ……身長は、俺の方が大きい。多分。でもあいつはもう下忍だから……なんか、どんどん逞しくなるよ。俺も頑張んないと、いけないんだけど……」
言いながら、自分がどんどん惨めに思えてくる。飛び級なんてとんでもない。俺は本当に落ちこぼれだ。
うちはも
早く
それでも何とか食らいつこうとしていられるのは、リンがそばで見守ってくれるからだ。
『私も、早く
リンはそう言って、いつも俺の背中を押してくれる。
『一緒に頑張ろう、オビト。いつか
リンの前向きな笑顔が、俺のいじけた心に明かりを灯してくれた。きっかけはただ、
リンが大好きだ。もっと一緒にいたいし、笑顔を見たいし、たまにはかっこつけたい。でもそんなことをしたってきっとリンには全部お見通しなんだろうけど。
「
ばあちゃんがぽつりと漏らした言葉に、俺は顔を上げる。
「ばあちゃん、それ、どういう意味?」
「……あの家は、負わされるものが多すぎる。心を失くすか、心を病むか、二つに一つなんだよ」
そこまで話して、ばあちゃんは急にむせ返った。俺は慌てて背中をさすりながら、布団をしっかりと肩までかけてやる。
「ばあちゃん、無理すんな。ゆっくり休んでていいから」
「……すまないね、オビト。つらい思いを、させて」
「何言ってんだよ。俺はばあちゃんが大好きだし、友達にも恵まれてる。勉強は、まぁ……大変だけど、何とかするよ。ばあちゃんは何も心配しなくていいからさ」
申し訳なさそうに微笑むばあちゃんにもう一度笑いかけて、俺はそっと部屋を出た。
忍になるのが当たり前の環境で、紛い物扱いされて育ち、うちはであることを証明したくて、それなのに自分はやはり紛い物なんじゃないかといつも悩んで。
でもばあちゃんから聞かされたじいちゃんの話や、父さんの話。うちはの中でも自由で柔軟な考えを持ち、取り分けじいちゃんは同族婚が慣例のうちは一族にあって、他所の旧家の出身であるばあちゃんと結婚するという変わり者。
じいちゃんは俺が生まれるずっと前に死んだけど、ばあちゃんはそんな変わり者のじいちゃんが大好きだったそうだ。
そんな家族のもとに生まれた俺が、順風満帆にいくわけがない。
(ちょっとくらい、波乱万丈じゃないと面白くねぇよ)
家族のことを思えば、そんな誇らしいような気持ちも湧いてくる。
いつかうちはの連中に俺のことを認めさせて、『友達』じゃなくなったリンと、一族のことなんか気にしないでじいちゃんみたいに結婚するんだ。
そのとき結婚式には、
だからそのとき、
やっぱり俺は、
『後ろなんか向いてる暇はないよ』
リンの言う通りだ。
リンにも
俺だって、いつまでも世話を焼かれる側のままなんて、嫌だ。
だから――早く二人に、追いつかないとな。