「分かんなくても……カカシの力に、なりたかったよ……」
震える声で
あの頃は、
だが今は、
もちろん彼女の動機は、それだけではないだろう。アカデミー卒業から一年、俺たちは確かにチームとして機能し始めている。仲間のために今の自分にやれることをする。その意識が全員にあるのが分かる。
それでも、もっと根底にあるもの。以前、
「忍になっても、人を捨てたくなくて。それができるのか、証明してみたい」
それは『
幼い頃から家族の中でも孤独を感じていた
思い上がりでないのなら、俺が世話を焼いたおかげで
はたけサクモのことを今さら思い悩んでも仕方ないし、はたけカカシがそのことで仲間など要らないと誰も寄せ付けないのなら、そこに
だが、今日は何も意見しないと俺は決めていた。
時折涙を流しながらも話しきったらしい
そんな顔を見たら、ほっとけねぇだろうが。
「ごめんね、ゲンマ……聞いてくれて、ありがと」
「それはいいけど。そういうことは、溜め込む前に言えよ? 今だって、俺が聞かなきゃ言わなかっただろ。ひとりで墓場まで持ってく気だったのか?」
呆れながら問いかけると、
「そりゃ、口止めされてりゃ言えないかもしんねぇけど。でもお前、されてなくても言わなかっただろ」
「……お前の家族は、お前の話を聞かなかったかもしれねぇけど。お前の話を聞きてぇやつだっているんだよ。うちの母さんだってリンだって、あのとき本当にお前のこと心配してた。俺だってお前が潰れるくらいなら何でもしてやりたいって思ったよ。お前が話したくないことを無理やり聞き出そうなんて思ってねぇけど、それをずっとお前が引きずって暗い顔してるくらいなら、やっぱり無理にでも聞きたいって思う」
俺はしばらく忍猫たちをチラチラ盗み見ていたが、特に反応する様子はないので、意識をそのまま
「でも、俺たちは忍だ。少しでも助けてほしいと思ったら――自分から、話せるようになってくれ。俺は、いつでも待ってるから。お前のこと、ずっと見てんだからな」
すると
「……ゲンマぁ……」
「なんだ」
「……甘えてばっかでごめん、でも……そっち行って、いい……?」
「おう、いいぞ」
昔は確認もせずに飛び込んできたのにな。俺は懐かしくもどこか少し寂しさを覚えている自分に気づいて苦笑いした。あの頃と今じゃ、俺たちの関係は違う。そう何度自分に言い聞かせても、俺はまだあの頃の感覚を忘れられないらしい。
俺は将棋盤を倒して突っ込んでくる
俺の腕の中でしゃくり上げながら、
「うぇぇ……カカシに嫌われた……私はただ、カカシに……一人じゃないよって、伝えたかっただけなのに……」
俺は何も言わずにただ
思い出されたのは、先日会ったときのイクチとのやり取りだ。あいつは突拍子もないことを言い出した。
「ゲンマ。
「……はぁ?」
「あいつに惚れても絶対幸せになれねぇから」
「……あんなガキつかまえて、何寝言言ってんだよ」
だがイクチは大真面目に鋭い目をして俺の顔を覗き込んできた。口元の長楊枝をもどかしそうに揺らしながら、
「……カカシの小隊と組んだとき、あいつは任務遂行のために味方を置き去りにした。足手まといは要らないってな。結果的に任務自体は成功したが、カカシの小隊に負傷者が出た。うちがフォローに回ったし、幸い軽傷で済んだけどな。確かに俺たちは究極の選択を迫られるときがある。そういうとき、迷いなく判断できるのが優秀な忍ってことかもしれない。でも、あの場面で味方を切り捨てるやり方に俺は賛成できない。いざというとき、あいつは必ず仲間を捨てる」
イクチは物事をあまり決めつけることがない。あらゆる可能性を考慮して対抗策を練る。その能力を買われ、上忍率いる補給部隊に抜擢されることもあった。
そのイクチが、ここまで強く断言することに俺は驚いた。
「理由はどうあれ関係ない。いくら実力があろうと、あいつは誰も守れないんだよ。そんなやつに
「………」
まったく、年長者だと思って、イクチは何様なんだよ。俺は
そう、思っていたのに。
俺の腕の中で顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくる
俺は、
カカシの名前を呼びながら、
俺たちもいつか、戦地に送られるだろう。いつ死ぬか分からないこの世界で、いつまで続くかも分からないこのチームで。それでも俺はこの先も
お前の中のはたけ親子は消してやれなくても。
そんなお前を受け止めて、こうして支えてやることはできるよ。
だから、もう。
「……一人で抱え込むなよ」
ぽつりと漏らした俺の囁きは、今も涙をこぼす