フロゥリアの事を話すというレツ。何時にもなく真面目な雰囲気に呑まれるトウヤ。しかし、此処では話さない又は話せないのか……元来た道を戻り始め、その後に続く。入って来た時と同じように証を翳して扉を開く。
「…………?」
「どうしたの?」
外に出て、虹色の巨大な門を見上げたトウヤは門の向こう側は見えないのに何故か透過して先の景色が見えていた。そこは図書館であり、安楽椅子に腰掛けた金髪の少女が居て本を読んでいた。
ーー私を知覚出来るのかい? だとしたら君の旅は間もなく終わる事の証明になるね。それが悲劇になるのか喜劇になるのかその時になるまで分からない。だけどそうだね……君が本命だとしたら善き終わりになるだろう。(長いから省略)……数字が導いた果てに、また会おう。
……彼女は話し出したら止まらない上に回りくどく……理解されない事が多いだろう。現にトウヤは彼女が何を言いたいのか何一つ理解できなかった。
「……いや、来るときも思ったが大きい門だなと改めて……な」
「確かにそうだね……」
一度門から目を逸らし、レツを見て再び門を見る。釣られてレツも門を見たが……先程のように透過はしなかった。
陰陽寮を離れて街中へ。ポータルに向かうかと思ったがそうではなく……何処に行く気なのかと首を傾げながら後を追うトウヤ。
「腹が減っては戦は出来ぬってね。少し遅い昼御飯にしようよ」
立ち止まった店の前でそんな事を言うレツ……トウヤはフロゥリアの事をいつ言うのかと気を張っていたがこの言動に気が抜け、店の中から漂う匂いに釣られて腹の虫が鳴いた。
ちなみにフロゥリアを出たのが朝でトミクニに着いた時もまだ朝だった。陰陽寮の中で自己紹介等を済ませている内に時間はそれなりに過ぎていたようだ。
暖簾を潜り、店内に向かうレツとトミクニはどんな料理があるのかと期待に胸を膨らませて続くトウヤだった。
「ーーいらっしゃいませ、二名様ですね? カウンター席になりますが構いませんか?」
出迎えてくれたのは黒髪が美しい狐っ娘な店員だった。レツは頷いてカウンター席に向かい、トウヤは店員を見て首を傾げながらも後に続く。
「……レツ、あの店員は顔に怪我でもしてるのか?」
「いや? ただ単に彼女……ワカモは恥ずかしがりやなだけだよ。素顔はボクでも見惚れてしまう程だから勿体ないと思ってるけど……店長がそういうの気にしないタイプだからそのまま仮面着用してるんだよ」
「そう、なのか……いやでもあの仮面は別の意味で注目されるぞ? それに変声機能もないのか地声出てるし……俺なら顔隠すなら声も変えるが」
「分かる」
鈴の音を転がしたような透き通っている声音とは裏腹にメタリックシルバーな狐を模した仮面にフリルが施された和装はある意味注目の的だ。
……昼過ぎとはいえ人気店なのか新規の来店客を出迎えるが、やはり客はワカモを二度見、いや四度見して案内に従う始末。恥ずかしがりやと言ってたが、注目を集めて良いのだろうか?
「まあ……素顔が見えなければ大丈夫というタイプなんだろう……」
そう思う事にしたトウヤはメニューを見て何にするか考え始める。国が和を彷彿とさせていただけあり、品も和風な物が多い。少し悩んだ後、決めたトウヤはレツに決まったかと訊ねる。
「うん、決まったよ」
それを聞いたトウヤは店員を呼ぼうと店内を見渡すが、忙しいせいか……なかなか声を掛けれずにいた。そんな中で察して注文を受けてくれたのはワカモだった。
「ボクは焼き鯖定食」
「俺は酢豚定食とゴマ団子」
「注文を繰り返します。焼き鯖定食が一つと酢豚定食にゴマ団子が一つ……」
間違いがない事を確かめてオーダーをメモして厨房に伝えに行く……その際に然り気無くトウヤの手に折り畳んだ紙切れを握らせる。トウヤは首を傾げながら紙切れを開き、中を見た。
そこには……『私はあなた様の右腕……然るべき時に馳せ参じます。どうか御自愛下さいませ』と書かれていた。
「(……ラウラが目でワカモが右腕ね……俺の喪失している過去で何があったのやら……)」
改めて考えると目や右腕と自称するのは普通じゃない。トウヤは記憶喪失になる前の自分は何だったのかと……少しの恐怖を覚えた。
食事を終え、フロゥリアについて話すと思っていたが……それからもトミクニという国を満喫し、日が暮れた。
「……なあ、レツ。そろそろ話してくれてもいいんじゃないか?」
「そうだね……これ以上先伸ばしにするのも苦しいだけだし……」
ポータルの前でしびれを切らしたトウヤがそう言うとレツは答えると言いながらポータルを潜る。トウヤはラウラと合流してないけど良いのか、話すんじゃないのかと思いながら後を追う。
ワカモの仮面はギーツやマイスみたいなのを想像してください。つまり、頭はあの仮面なのにそこから下は普通に和装という構成。自分で書いておいて無いな(笑)となってます。
本当、上手く書ける人は凄い。