何時かのように過去を追体験し、同時に自身の記憶を断片とはいえ知る機会に恵まれ、識った。だが幸か不幸か戻った時には覚えておらず、思い詰めた表情のレツに見下ろされていた。
「……俺は何で見下ろされているんだ?」
「ポータルを潜ってフロゥリアに着いた途端に仰向けに倒れたからだね。大丈夫? これは見える?」
「普通は指何本じゃないのか……丈が短いのに突っ立ってるせいでパンツ見えてる……いや、見えるって言ってたのはパンツの事か? ならちゃんと見えてるぞーースジまでくっきりと」
「…………指を見てほしかったなぁ……見えてるならいいんだよ、うん」
目についたのがパンツ+スジだったのでそう告げたトウヤだったが……レツはちゃんと指を出していたらしい……併せて意図はしていないが、女性だと性バレした瞬間だった。
「…………あー、言ってもいいか分からないが……俺はレツが女だろうと勘づいてはいたぞ」
「え?」
「まあ……その服って割とボディライン分かるし、丈が短いからチラチラとパンツは見えてたし、もっこりしてないから女だろうなと……隠す理由があるんだろうと黙ってたが……」
「…………」
「…………それで実は男でした。となったら技術すげえなとなっていた」
起き上がり、頬をかきながら打ち明けるトウヤにレツは顔を赤くしたり青くしたりと落ち着かない素振りを見せた後……
「勘が鋭いのも考えものかな……もう一蓮托生するしかなくなったよ?」
溜め息をついてそうおどけた風に告げた。だがその顔には何処かすがるような色が見えた。
「安心しろ。フロゥリアを知りたいと言った事に遊びとか興味本意は一切ない。ホシノ達が覚悟を決めたように俺も覚悟を決めたーー仮にそれで死ぬ事になろうが構わない。覚悟を決めるっていうのはそういうものだろ」
そんなレツにトウヤは真剣な眼差しを向けて、殺し文句を炸裂させる。レツが未だにフロゥリアの事を言わないのは悩んでいたからだと思われる。故にその言葉は彼女の不安諸々を吹き飛ばしてしまった。
「……国を取り戻したら王子にするからそのつもりでいてよ。ボクは姫になるんだからね」
「成る程、今の言葉で大体解った。国を追われて集落を作り里長と次期里長と言ってたがそれは仮初めで何れは国を取り戻す算段だったんだろ。で、いつ仕掛ける気だ」
「凄いね……ボクがフロゥリアの事を言わなくても今のだけで理解するなんて……百点だよ」
「……何か、トミクニからポータルを通ってフロゥリアに着いてからやけに冴えるんだよな……まるで知らない筈なのに知ってる、そんな感じだ……気持ち悪くて仕方ない」
驚きと少しの恐怖を滲ませて告げるレツにトウヤは眉間にシワを寄せて返す。あの追体験をトウヤは覚えてないが何らかの影響を体は受けてるようだ。
いつ仕掛けるのかは告げず、黙ったまま集落に向かうレツにトウヤは首を傾げながら追従する。
「……(そういう事か)」
レツとリンが住んでいる家に向かう途中、普段は出歩いている里民が一人も居ない事とレツの言動から察して追従し、家に着いた時、庭に整列する忍びのような衣装を纏い武装した里民達を見て仕掛けるのは今からだと言うことが、当たっていたと腰に差した白狼の柄を握った。
「……支度してくる。リン、今のうちに話をしておいた方がいいよ」
「……ん」
「お、おい?」
家の中に入るレツ。リンは待とうとしていたトウヤの手を引き、何時かの夜に鍛練をしていた場所まで連れていく。
「……次、言えるか分からないから言っておく……私は、お前が好き」
「……それ、死亡フラグだぞ」
ムードの欠片もない突然の告白にトウヤはジト目でリンに突っ込む。
「茶化さないで。最後くらいは……自分に正直でありたい」
茶化したつもりはないと返しかけたがその表情は真剣で、トウヤは開きかけた口を閉じる。そして何故急に告白してきたのかを考える。
「……自分でもおかしいとは思ってる。あれだけ嫌悪していた筈なのにあの夜から不思議とお前の事を考えてた……トミクニに行って不安になって、帰ってきて無事な姿を見て理解した……私はお前が好きだって」
「何もこのタイミングで言わなくても良かっただろ……今から総力をあげてのフロゥリア奪還戦を始めるのに何を考えてるんだ」
だが、リンが思いをぶちまけた事により考える事は中断。これから戦になるというタイミングでの告白にトウヤは刺々しく言い返してしまう。
「ごめん……でも、私はもう言えずに後悔はしたくなかったから!」
「っ……」
その言葉に思わず胸を抑えるトウヤ。知らない筈なのによく知っている言葉はリンと誰かを重ねた。
「……あ、ごめん…………その……私と兄さ……じゃなくて姉さんにはもう一人姉さんが居た……」
「……キマシタワー!」
「……? 多分、お前が思ってるのとは違うけど……続ける」
言えずに後悔、姉が居た。その二つのワードにリンはレツとは別の姉を愛しているーー同性愛の匂わせを感じたトウヤは思わず叫んだがリンは不思議そうに首を傾げながら続ける。
「まだ私達が城暮らしをしていた時……些細な事で姉さんと言い合いになった……レツ姉さんには大仕事を控えてる姉さんと早めに仲直りした方がいいと諭されたけど私は意固地になって先伸ばしにして日だけが過ぎていった……」
「……流れが変わったな」
「そして姉さんは勤めで城を出て帰ってこなかった……後から勤めに着いていった者から聞いた話だと何時ものような機敏さがなくて何処か焦っていたと……それで姉さんは最後にごめんね……って言い残したと聞いた……私の、方こそ……素直にごめんなさいとぉ! 言えてたらぁ!」
思い出したのか泣きじゃくるリンをそっと抱きしめるトウヤは内心でその姉の心境を察した。
「(……恐らく勤めを果たしながら姉はリンの事を考えていたんだろう……そして自分に非があったのかも、早く謝らないとと焦燥感に駆られた……戦において冷静さを失う事は愚者のする事……それが体に不調をきたしベストな行動を妨げる……その末路が別離か……)」
「ぐすっ……だから、私は言えずに後悔はもうしたくなかった……」
「成る程な……その気持ちに俺は応えた方がいいのか?」
「…………何でそんな事を言うの!」
幾分か落ち着いたリンに告白した理由を言われたトウヤは、何を思ったのかそんな最低な返しをした。結果、怒ったリンはーー
「遅かったな……って何があったの!?」
レツは追体験の時に身に付けていた騎士鎧に着替え、遅れて戻ってきたトウヤに咎めるような眼差しを向けたが、げっそりとして足元がおぼつかず、白狼を支えにしないと倒れそうな程に弱りきった姿に何時もの口調で叫ぶ。
「……猛獣と戯れてただけだ、それよりその格好はそういう事か?」
だが、弱りきった姿とは裏腹に普段と変わらない物言いにレツは動揺を鎮めると頷く。
「ああーー皆、この時までよく耐えて牙を研ぎ澄ましてくれていたな。予言の刻限に救星守が舞い降りた!」
……救星守。その言葉に欠けていた物が嵌まった音を聞いたトウヤは目を閉じて直ぐに開くとレツの言葉に沸き立つ里民を一瞥すると支えにしていた白狼を腰に差し直すと先程まで弱りきっていたとは思えない程しっかりとした足運びでレツの横に立つ。
「輪廻の輪、数多の運命、今代の救星守ーートウヤことナンバー108。これより使命を全うする。民達よ、怖れず突き進め、我が否を以て定めを覆さん」
「っ、往くぞ皆! 我等が国を取り戻す! 出撃!」
淡々と言うトウヤに何処か後悔したような表情を浮かべたレツだが、直ぐに改めると勇よく開戦を宣言した。
問、リンはトウヤを?
解、アッー!
問、トウヤ変わりすぎじゃない?
解、仕様です。例えるならブルアカのkeyに侵食されたAL-1S。つまりこれが素。
次回、遂にタイトルにあるアレが炸裂するかも……