少し変えました。
トミクニ、と呼ばれた国はフロゥリアのような自然に囲まれてはいなかったが、何処か和を感じさせる装いだった。トウヤは一目見て仮に住むとしたらこの国だと密かに決意した。ちなみにトミクニのポータルは桜木で作られた鳥居、そして龍が鎮座していた。
「陰陽寮は此方だよ」
「ワタシは仕入れに行ってくる。またポータル前で集合しよう」
……護衛といっていたラウラが離れるのはどうかと思ったが、治安が良いのだろうと判断し、観光したい欲を抑えて先導するレツに続く。
「……なあ、レツ」
「ん?」
「ラウラが護衛を中断して仕入れに向かったが……トミクニにも俺を影から護衛する人がいるのか?」
「……流石だね」
治安が良いと判断した後、何やら視線を感じた事でレツに訊ねる。レツは真面目な顔で肯定する。今までが今までだけにこんな顔も出来るのかとトウヤが内心で驚いたのは此処だけの話。
「正確には護衛じゃなくて監視だね……トミクニは最重要国だから暴動とかの取締りは特に厳しいよ」
「……ああ、召集理由がそうだったな」
忘れてた訳じゃないが、改めて言われると何処か甘く考えていたと内心で反省し、気を引き締める。それから陰陽寮に着くまで視線を感じなくなる事は無かった……
「到着だよ」
「これが陰陽寮か……」
トミクニ内を歩いて暫く、目の前に佇むのは巨大な虹色の門、どう見てもレツやトウヤが潜るのには大きすぎる。呆気にとられるトウヤを尻目にレツは門に向かい、手を当てる。
ーーフロゥリアの証を確認、開門。
「……何だ今の声?」
触れた手から何かを認識し、門が開く。その際に声が聞こえたが……レツには聞こえてないのか『声?』と首を傾げていた。
「いや、何でもない……というか変わった開き方だな」
レツに声が聞こえていないなら何故自分だけが? と思いつつ、今は気にするだけ無駄かと思い……話を変える。
「……この巨大な門が全部開く時は全てを終わらせる時……っていう言い伝えがあるんだけど、今まで全部が開いた事はないんだよね」
「意味深な言い伝えだな……」
「本当だよね。全てが終わる時ならまだ分かるけど終わらせる時ってのがまた……」
肩を竦め、緑色に当たる位置に小さく開いた入口を潜るレツ。
ーーハジャールの証を確認、開門。
それに続こうとしたトウヤは再び聞こえた声と赤色に当たる位置に小さく入口が開いているのに気づき、思わず目を向ける。
「……うへ? おじさんの顔に何かついてる?」
視線を感じたのか入口を潜る足を止めて振り向く一人称が独特な桜髪の少女で黒い外套を身に纏っていた。
「いや、おじさん……?」
「……気になる?」
「そりゃ……見るからに美少女なのに自分をおじさんと言うから気になるだろ……いや、それは個人の勝手か…………その眼帯、怪我してるのか?」
「初対面で結構踏み込むねぇ……そういうの良くないよ? でも、美少女呼びは悪い気しないかなぁ……」
前半辺りは何処か咎めるように、後半辺りは少し照れたように言う少女はトウヤの言う通り右目を覆う黒い眼帯を着けていた。
「悪い……気になったからつい……」
「分かれば良いよ。じゃ、おじさんは急いでるから~」
ひらひらと手を振りながら入口を潜る少女。トウヤは会った事ないのに何処かで会ったような? と腑に落ちない感覚に陥りながら、少女が潜った後で閉じた入口を見てレツを待たせてしまった事に少し罪悪感を覚えながらレツが潜った後でも開いたままの入口を潜る。そして門が閉じた。
「……遅い」
「悪い……少し気になった人が居たんだ……」
潜った先は一直線の通路。周りは壁に覆われていて狭い……そしてすぐ近くに頬を膨らませたレツが居て勾玉を懐に仕舞うのが見えた。どうやらこの勾玉フロゥリアの証とやらで開門の鍵になり、トウヤが来るまで此方側で開き続けてくれていたらしい。
「……気になる人?」
「ああ……リンよりも身長が低くて子供に見えたのにハジャールの証とやらでレツみたいに入口を開いてた……凄いよな、あんな成りで責任者か」
「……子供? あれ、ハジャールの責任者にあたる人はデカパイのユメ姫だけど……代替わりしたのか、ボクみたいに次期責任者かな?」
「デカパイ……ごくり」
通路を進みながらトウヤの言葉にレツは自分の知る人と違う? とハジャールの事を呟き首を傾げる。トウヤはレツのデカパイという言葉に思わず唾を呑む。悲しい男の性である……尚、リンも大きいのだが、それよりも大きいと何故か分かったらしい。
「気持ちは分かるけど不敬だよ」
「……姫、だもんな」
……レツの咎める視線に肩を竦めた。
暫く通路を進むと開けた場所に出る。そこには何かを嵌め込む台座があり、レツが入口を開くのに使っていた勾玉を嵌め込む。
ーーデータ照合中……
ーーフロゥリア現・責任者『レツ』
ーー前責任者による戴冠継承済み
ーー偽証認めず、開場。
「こ、これは……!」
「驚いた? 入口は別だけど中は繋がっていて此処に行き着くんだ」
再びあの声が聞こえた後、勾玉が光を放ち周囲の壁が最初から無かったかのように消えてしまった。そして室内とは思えない空が見える庭園に様変わりした。
「……ん、さっきの……そりゃそうか……あの場所に居たって事は責任者又は従者って事になるか~」
声が聞こえる方を向くと、そこには先程の眼帯少女が居て法衣にベールを被った少女に膝枕をされてーー溶けていた。新種のスライムだろうか。
「……召集されたにしては自由すぎないか?」
「いつもの事だよ。でも、あれ……従者として来てた時より顔ぶれが随分変わってる気がする……何というかロで始まりンで終わる人が歓喜しそう」
……そう言われて周りを見渡す。
ーー溶けた眼帯少女スライム、ベールに隠れてはいるがケモミミ持ちなシスター少女、明らかに迫られている金髪の少女、迫ってる青髪の少女……我関せずな黒衣の少女、何れもロリでカオスな光景だが確かに歓喜しそうだ。
「……あの金髪は性別レツとみた」
「どういう事!?」
レツが性別レツに対してガビーンといった効果音が似合いそうな顔になる……トウヤは何となく、金髪の少女は少年ではないかと思っていた。
性別レツは某作品でいう第三の性別、秀吉・ギャスパー、デオンの事。剥かなきゃ分からないシュレディンガーの性別。
ちなみにゲーム風なら眼帯少女に会った際……
・女の子……か?
・お、おじさん……?
と選択肢が出るが、前話の光景(条件を満たさないと発生しない特殊イベント)を見ていた場合はおじさん一択になります。前者を選んでたら画面暗転してトウヤの体力が1になる上に好感度がガクッと下がります。口は災いの元。