変な人こと、レヴィさんが仲間に加わったで!
「フィリス、この後はどっちに向かうんや?」
「えっと、道なりに南に向かってファーヴェ丘陵に… いや、南西の方にも向かってみようかな…?」
「錬金術は経験が大切… フィリスちゃんの行きたいように進めばいいのよ」
「それじゃあ、ちょっとだけ南西に行って、そしたらすぐに丘陵に向かう!」
「わかった、南西だな」
軟膏持った、フラムも持った、細剣も持っとる、服も着替えた、準備は万端やな。フィリスもカギを直した後にちゃんと眠ったし、全員元気… なはずや。暗くなってきたんが怖いけど、レヴィさんがお化けだって何とかしてくれるはずや…
「フィリス、ランタン返しとくな」
「ありがとう、でも大丈夫? アカネさん、お化けに…」
「大丈夫や、きっとな」
「…アカネは幽霊が苦手なのか?」
「ちょいと苦手なだけや、逃げたりせんでぶっ倒したるから心配せんで大丈夫や」
「本当ですか…?」
「ほ、本当や、任せてくれや!」
アトリエを出てから、ウチらは結構な距離を歩いた。道なりに南に向かって、途中から西に向かった感じやな。魔物に襲われることもなく、かといって採取するような素材もなく、何も起こっとらん。途中でたき火の跡を通ったくらいで、目につくものは何もない道やったな。ただただ、足元に気をつけながら歩いとるだけや。
「…ん? これって… リア
「ここ? この辺りは小さな林になってるわよ」
「林! 草が生えてて、木が生えてて、お花… は咲いてないけど、これが林かぁ!」
「フィリスは林に来るのが初めてなのか?」
「岩山育ちなもんでな、フィリスは外の世界自体が初めてなんや」
「そうなのか…」
小さな、本当に小さな林に辿り着いたら、フィリスが走って行ってもうた。木も数本生えてるだけで、草も木の周りに生えとるだけの、ホンマに小さな林やけど… ずっと荒野を歩いてきとったから、安らぐ感じがしてええな。オアシスの周りとはまた違う空気や、植物の強い命の力を感じる。
「…ここ、お花が咲きそうなのになぁ」
「もしかしたら、ウサギに食べられちゃったのかもしれないわね」
「じゃあ、ウサギを倒したらいつか生えてくるかな?」
「こんな荒野やし、土の栄養も足りてないんとちゃうか?」
「ん〜、じゃあ栄養剤を作ってこよう!」
「…どうやって作るんや?」
「…わかんない!」
「ほんなら、思いついたときにでも作って、いつかここに帰ってきたときに撒いてやるか」
「それがいいわ、また今度のお楽しみにしましょう?」
小さな林を抜けて、ウチらは右に曲がりながら進んだ… 西に進んだところから右前に向かったわけやから、北西か? エルトナの方向に向かっとるけど、たぶんエルトナには着かんはずや。 …この先に何があるかは分からんけど、進んでのお楽しみやな。
「おっ、あそこにたき火があるで」
「もう日が昇る時間だ、一度休んでも良いんじゃないか?」
「そうね、私もそう思うわ。どう? フィリスちゃん」
「うん、そうしよう。休んだら、来た道を戻って丘陵へ!」
…アトリエに、みんな入って行ったな。ウチはもうちょいとだけ、外で頑張るとするかな。来た道を戻ってしまう前に、この道の先… どこに繋がっとるんか、見てみたいんや。たぶん、すぐに岩壁が出てきて、進めなくなってまうと思うんやけど… それでも、地図に想像のことを書くわけにはいかんからな。
ウチら、エルトナからライゼンベルグまでの大きな縮尺の地図はあるんやけど、細かい地図は持っとらんのや。ほんで、旅の記録も兼ねてフィリスが中心になって地図を書いとるんよ。まっ、測って作っとるような地図やないから、怪しいところは多いけどな。でも、オアシスの場所とか、林の場所とか、目立つ場所を記録しとけば後からでもわかるやろ? せやから、自分達で作っとるん。
そういうわけやから、この道の行き止まりまで行ってくるわ!
「ただいまー、起きとるか?」
「アカネさん! よかった…」
「…?」
「アカネ、急に姿をくらますな。今から皆で探しに行こうと話し合っていたのだぞ」
「あぁ、それはすまんかった、一声かけとけば良かったな」
「もしかして、ずっと採取してたんですか…?」
「奥に洞窟を見つけてな、行ってきたんや。ほらフィリス、綺麗な石やで」
アトリエに戻ってきたんは、お昼頃やった。 …次からはちゃんと声をかけるようにするわ。いらん心配をかけてもうたみたいやし、悪いことしたわ。
でも、探索は思いの外成果があったんやで。今おるたき火のあたりから北西に行ったところに洞窟を見つけて、綺麗な青い石を1つ見つけたんや。エルトナ水晶とは違って光ってないんやけど、宝石みたいな石らしい輝きをしとってな。ついでに採ってきたエルトナイトみたいにくすんだ色でもなく、綺麗な青色の角ばった宝石なんや。
「これは… “蒼剛石”ですね。青色に透き通った石英の塊で、宝石としても、鉱石としても用途が多くて、なかなか優秀ですよ」
「ソウゴウセキ… 書いとかないと」
「洞窟か… 他にめぼしいものはなかったか?」
「岩や草くらいやな、ただの洞窟やった」
「そうか、わかった」
特記することはない、普通の洞窟やった。 …初めての洞窟やったし普通の洞窟が何なのかわからんけど、たぶん普通って言っていいと思う。魔物もおる、鉱石もある、道が狭くて入り組んどって、岩に道を塞がれてたりもする。エルトナと違って整備されとらんから、歩くだけで大変やったわ…
「よしっ、書けた!」
「ほんなら、出発するか?」
「うん!」「そうね」
「…待て、アカネは眠らなくて問題ないのか? 食事も摂っていないように見えるが」
「あぁ、言っとらんかったか… ウチは人やあらんので、必要ないんや」
「人じゃ… ない…?」
「そうや、食事睡眠なくても生きていける。まっ、ウチでも良くわかっとらんから、詳しいことは神のみぞ知るって感じやがな」
「…そうか、わかった」
さっ、今度は南東に向かう番やな。ファーヴェ丘陵、どんなところやろうか… 丘陵っていうくらいやし、ちょっと起伏があって、自然豊かなところやろうか。楽しみや、ここまで殆ど草花を見とらんからな…
「そこにたき火があるぞ、休んでいくか?」
「ん〜、大丈夫! だよね?」
「大丈夫よ」「大丈夫やで」
「じゃあ、このまま進もう!」
昨日駆け抜けた道を駆け戻って、そのまま東の岩壁沿に着いたところや。ここからは東に行けんから、南に向かっていくことになるな。たき火の位置もメモだけして… 道なりに進むとするか。
「ん、誰かおるな」
「旅人さんかな?」
「だろうな、屈んでいるのが気になるが…」
もうすぐファーヴェ丘陵に入れそうなくらい緑の風を感じる辺りやけど、道の真ん中で屈んどる男の子がおる… 見た目的に、フィリスよりちょっと年上くらいか? …邪魔って思ったけど、道の真ん中で屈むなんて、もしかして何かあったんか?
「あの子、怪我してるじゃない! ちょっと、大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ… これくらい、どうってことねぇ…」
…どう見てもどうってことないようには見えんな。脚を抑えとるけど、旅人やとしたら脚を痛めるのは大問題やろ。この辺りに救護所があれば運んでやりたいけど、近場にそんな場所は知らんのよな…
「ううん、絶対、大丈夫じゃない! だよね、リア
「ええ、このままだとよくないわ。アトリエの中で治療しましょう!」
「うん! 平気? 少しだけ… 歩ける?」
「無理そうなら肩を貸すで」
「俺も手伝うぞ」
「何とか歩ける… くそっ、すまねぇ…」
フィリスがすぐ側のたき火にアトリエを張ってくれたから、少年が入るまで周りに何かおらんか見とくか… 怪我しとるようやし、強い魔物がおったんかも知れんからな。
「…アカネ、何か見えたか?」
「何も見えとらん、レヴィさんは?」
「こっちもだ…」
「…安全そうやし、一旦アトリエに入るか」
「…そうしよう」
「はい、これで終わり。もう動いてもいいわよ」
「おう! ありがとうな、髪の長いねーちゃん!」
アトリエに入ったら、もう治療は終わっとったみたいや。リアーネさんの手際はええな、慣れとるんやろうな。 …フィリスお手製の軟膏を塗ってやったんか、そんならすぐに治りそうや。よかったな、髪の短い少年。
「お… おお!? すげー! もうぜんぜん痛くねーぞ!?」
「よかった… わたしの作った薬、ちゃんと効いたみたいだね」
「お前が作った…? へぇ… 薬を作れるなんて、すげーんだな。お前… 医者か何かなのか?」
「ううん、わたしは錬金術士をやってるんだ。名前はフィリスって言うんだよ」
「それで私は、フィリスちゃんの姉のリアーネよ」
「ほんでウチが護衛のアカネで」
「…俺がレヴィだ」
おぉ、ちゃんと流れに乗って名乗ってくれた。ちょいと間があった気がするけど、ウチの振りを無視して丁寧に自己紹介してくるかと思っとったから嬉しい誤算や。 …振りってほどの振りでもないし、普通にしただけかもしれんけどな。でも、ちょっと好感持てるで。そういう細かいとこのノリが大事やからな!
「それで… あなた?」
「へへ… オレはハインツ! よろしくな!」
「うん、よろしく! …ところでさ、その怪我ってどうしたの?」
「あぁ、これな… 実は、さっきまで魔物と戦ってたんだけどよ、後一歩のところで油断しちまってさ。こんな傷を食らっちまったってわけだ」
「そっか、魔物にやられたんだ… うー、やっぱり怖いよね、魔物って…」
「ん、なんだ? お前、魔物が怖いのか?」
「え? そりゃまぁ、そうだけど…」
戦ってる時は楽しそうやけどな… でも、やっぱり魔物って怖いよなぁ。殴られたら痛いし、向こうはこっちを恐れず飛びかかってくるし。亀にも痛い目に遭わされたしな… ウチやって怖い、特にお化け。
「へぇ… あ、そうだ! 良いことを思いついた!」
「良いこと? なんや?」
「助けてもらった礼もあるしさ、これからはオレがお前のことを守ってやるよ!」
「それは嬉しいけど… 本当にいいの?」
「ああ、もちろん! へへ… いつでも頼りにしてくれていいからな! オレの力を借りたくなったらいつでも呼べよ! わかったな、フィリス!」
「それじゃあ、次の町まで、一緒に来てもらってもいい?」
「もちろん、任せろよ!」
仲間になるんなら、ウチの手帳にもちゃんと書いとかなあかんな… 迷子になったときとか、大怪我をしたときにもわかるように、服装とか名前とかしっかりメモしとるんよ。せやから、ハインツのことも書いとこう。
髪は… 茶色と灰色と緑色の間くらいで、短くてトゲトゲした感じ。服は鎧で、軽鎧って感じかな。色は金属的な部分と、オレンジの部分と、藍色の部分がある… っと、こんな感じか。性格は… 元気な子供っぽい。よし、これでええな。
「…よし、それじゃあ今度こそ、南に向かおう!」
「せやな、行ってまおう!」
やることメモ
0.エルトナ
→1.エルトナ周辺
→1.乾いた平野帯
1.初めてのお外と旅人
2.オアシスを超えて
3.突然の依頼
→4.怪我した旅人
これからよろしくな!
頼りにしとるで!