茜色の錬金術士   作:緑雨

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あらすじ

 乾いた平野帯を抜けて、いざファーヴェ丘陵へ!
 後、ハインツが仲間になったで。


丘陵の町

 

「うっわぁ! すっごーい! こんな景色、見たことない!」

「そうね… 私も初めて見たとき、感動したわ。町の近くとはがらりと雰囲気が変わるから」

「エルトナの近くに、こんな自然豊かな場所があるんやな…」

「そうだね! 本当にすごいや… でも、世界ってまだまだ広いんだよね…! ここより綺麗な場所も、不思議な場所も… きっと世界のどこかにはあるんだよね」

「ええ、きっと。想像もつかないような場所が、たくさんあるはず」

「そうだよね…! やっぱり、お外の世界ってワクワクするなぁ…! わたし、見てみたい! もっともっといろんなところ、見てまわりたい!」

「ええやん、とっても素敵やんな」

「ええ、私もそう思うわ」

「うん…! えへへ… 夢が広がるなぁ、楽しみだなぁ…!!」

 

 ウチらは乾いた平野帯を抜けて、ファーヴェ丘陵に足を踏み入れたところや。辺り全体に広がる草花、間隔を空けながら伸びる木々… エルトナでは想像もできんかった景色や。丘陵って名前やけど、起伏もほとんど感じんし、だだっ広い草原に来たみたいやな。

 

「なんだ、フィリスはこういう場所が初めてなのか?」

「うん! わたし、岩山の中で育ったから、初めて!」

「はぁ… オレにはわかんねぇけど、凄い育ちなんだな」

 

 …確かに、普通の人からしたら何で感動しとるのかわからんよな。ウチも、前までやったら不思議に思っとった気がする。せやけど、今はウチも嬉しくなってもうてるわ。ずっと岩と砂ばかりやったからな…

 

「そうだアカネさん! アカネさんも、こういう場所で育ったの?」

「ウチ? ウチかぁ…」

 

 …ウチが生まれ育ったんは家や学校、ビルやマンションがある現代の都市や。せやけど、そんな物がこの世界にあるんかもわからんし…

 

「あんまり覚えとらんけど、家がぎょうさんある大きな都市やった気がするで」

「そっか、昔のことは覚えてないんだっけ…」

「そうなのか… だが、それだけ家がある都市といえば、ライゼンベルグやメルヴェイユに限られる。いつか機会があれば行ってみればどうだ?」

「そうですねぇ… 覚えときます」

 

 メルヴェイユ… 聞いたことない地名やな。ライゼンベルグは公認錬金術士試験の行われる都市やろ? そこと並ぶくらいの都市なら、行ってみたい感じはするな… まぁ、どっちもウチの生まれ育った都市やないんやけど。

 

「…フィリスちゃん、もう日も暮れてきたし、そろそろ休まない?」

「そうだな、きっと朝のほうが綺麗な景色に出会えるはずだ」

「わかった! たき火は… あそこにある!」

 

 フィリスがたき火まで走っていったし、ウチも追いかけてアトリエに入るとするか… 夜になるとお化けが出るかもしれんしな。

 

 アトリエに入ったら、リアーネさんが作ってくれたご飯を5人で食べて、それぞれがお風呂に入り、軽く雑談したり本を読んだり、図鑑を書いたりしたら寝る時間や。 …レヴィさんとハインツはどこで寝るんやろ。

 

「2人はどこで寝るんや?」

「オレはてきとうにここらで寝るよ、おやすみ」

「…それなら俺はここにするか」

「ほーい、じゃあウチはここで剣磨いとるから、また明日な」

 

 そん時やった。アトリエに、ノックの音が響き渡ったんわ。

 

「あ〜、ウチが出るわ。みんなは寝とってええよ」

「ん… わたしも行く。アトリエの主だから…」

「フィリスちゃん、ちょっと整えないと…」

 

 フィリスの服を直すリアーネさんをよそ目に、扉に近づいたところやった。ウチらの返事を待たずして、扉は勢いよく開けられたんや。 …勝手に開ける人が多いなぁ、この世界。

 

「うわぁ、すごーい! 見た目はテントなのに、中は普通のお家って… まるでおとぎ話みたい! 机でしょー、ベッドでしょー。本棚に、おっきな釜!! …ん、釜…? どうして部屋の中に釜が…?」

「…楽しそうなところ申し訳ないんやけど…」

「うきゃああああ!?」

 

 …こんな夜でも元気やな。若い女の人っぽいけど… この人も旅人やろうか。動きやすそうな青緑のジャケットにオレンジのショートスカート、腰に剣もつけとるし… 間違いない、旅人やな。

 

「ご、ごめんなさい、食べないでください! まさか、魔女さんのお家だなんて思わなかったんです! 勝手に入ったことは謝ります! だ、だから… その釜で、グツグツ煮込むのはやめてぇぇ〜っ!」

「ちゃうちゃう、ウチは魔女やあらんし、あっちのみんなも魔女やあらへん!」

「そうです! わたし、魔女じゃなくて錬金術士です!」

 

 …少し落ち着いたか? 元気なんはええけど、夜にこんな騒がれたら眠れんくなる… ウチはもとから眠れんけどな。はっはっはっ… はぁ… 疲れた、準備できたみたいやし後はフィリスに任せよう…

 

「れ、錬金術士? それって確か、お薬作ったりする?」

「はい、その錬金術士です!」

「そ、そっかぁ…! よかった、魔女じゃなくて! あたしね? 旅の途中で変わった形のテントを見かけたから、思わず入っちゃったの。あなたたちのお家だとは知らなくて… 本当にごめん!」

「ううん、気にしないでください。ところで、あなたも旅をしてるんですか?」

「うん! あたし、こう見えても冒険者なんた。 …あれ? あなたもってことは… あなたも?」

「はい! わたしも、みんなと旅をしてるんです!」

「わぁ! それじゃあ、あたしたち旅仲間だね!」

 

 すごいなぁ、もう仲良くなっとる。さっきまで魔女と間違われてたんに。これが若さか… っていうほどにはウチも老けとらんけど。

 

「そうですね! えっと… わたし、フィリスって言います!」

「フィリスちゃんかー! あたしはティアナ! 気軽にティアって呼んでね!」

「ティアちゃん…! えへへ、よろしくね、ティアちゃん!」

「うん! …ねぇねぇ、錬金術って、どんなものでも作れちゃうんでしょ?」

 

 …こんな夜なのに、話は長くなりそうやな。今日一日歩いてウチも疲れとるし、ウチはソファーに戻るとするか…

 

「リアーネさん、後は任しました」

「わかりました、休んでくださいね」

 

 

「あぁー! そういえばあたし、依頼の途中だったんだった! ごめんねフィリスちゃん、また!」

 

 ウチが離れてすぐ、ティアの叫びが響いたと思ったら出ていってもうた。 …嵐のような少女やったな。

 

「あぁ、錬金術見せられなかった…」

「また会う機会もあるやろ、お互いに旅しとるんならな」

「そうだね…! 次会ったときは、錬金術を見てもらおう!」

「せやな♪ …さっ、寝るで」

「うん、おやすみ!」

 

 ほんなら、ウチもしっかり休むとするわ。戦闘中に疲れて動けない、なんてなったら笑い者にもならんからな。

 

 

 

 

 

「むぅ…」

「フィリスちゃん、嫌かもしれないけど、お野菜だって美味しいのよ?」

「そうだぞ、偏りなく適切に摂らなくては」

「そうや、ちょっとずつでも食べてみんか?」

「……一口だけ」

 

 …それでもええか。今は翌朝の朝ごはんや、ハインツは外の見回りに行ったからおらん。ほんで、フィリスにウサギ肉と野菜の炒め物を出して、野菜を食べさせようと画策してたところやな。

 

 3人で味付けも話しながら料理しとったんやけど、レヴィさんが料理できるってのは意外やったな。それも軽く習った程度のことやなくて、普段から料理しとる人の腕前やった。 …最初は変な人やと思っとったけど、この人、普通の良い人なのかもしれん。料理できるやつに悪いやつはおらんからな。ウチの持論や、これまでの経験的にはだいたい当たっとる。

 

「うぅ…」

 

 

 

 

「よしっ、行こう! みんな、大丈夫だよね?」

「大丈夫よ」「大丈夫やで」「大丈夫だ」「行けるぜ!」

「それじゃあ、出発!」

 

 フィリスと“ほうれんそう”の死闘を見届けて、旅立ちの時やな。えーっと、地図によると… 乾いた平野帯からファーヴェ丘陵に入ったから、今おるのはファーヴェ丘陵の左上側… つまり北西側やな。ライゼンベルグを目指すなら、ここから東に進んで林を抜けて、フルスハイムに向かう、と。ただ… 丘陵って住みやすい地域やし、町もありそうよな。

 

「ひとまずは町を探すんか?」

「うん! 採取しながら、町を探す… って感じかな」

 

 採取も大切やな、ここまでの場所とは採れるものが別物なはずや。草、花、木、実。生き物やって違うやろうし… とにかく、沢山集めんとな。

 

 …それと、町に着いたら“赤麦パン”を買ってこんとな。明け方に散歩しとったら、たき火の近くにおった人に頼まれたんや。赤麦パンが食べたいって。フィリスも作れんらしいし、買える場所を探さんとな…

 

「ふっふふ〜ん♪」

「上機嫌なのも良いが、周りに注意しろ」

「ただの緑色のプニ… やけど、油断したらあかんで」

「よしっ、やっちゃうよ!」

 

 プニはカラフルやな。エルトナにおったのが灰色の石プニ、乾いた平野帯で青プニ、ここで緑プニ。色で何が変わるんやろ、格? せやったら… 緑は強いんか? 弱いんか? まぁ、強いって思って戦うか。油断はあかんからな。

 

「ていやぁ!」

「おらぁっ!」

「はぁっ!」

 

 ウチが突いて、ハインツがどついて、レヴィさんが斬る。これで終わ… なっ、耐えるんか…! ほんでこいつ、フィリスの方に行きおった! ほんなら…

 

「ウチが庇う!」

「ありがとう! …じゃあ、そこにストーンシュート!」

「私の矢も行くわ!」

 

 …よし、倒したな。ふぅ、上手く庇えて良かったわ。 …というかこのプニ、前にハインツとレヴィさんが並んどったのに、一気に隙間を抜けて一番後ろのフィリスを狙ってきおったな。あの2人より少し後ろに立っとって良かったわ、咄嗟にかばえる位置におらんかったらフィリスが怪我しとった。

 

 …魔物も、考えを持ってフィリスを狙ってきたんやろうか。プニが賢いとは到底思えんし、気まぐれやと思うけど… フィリスの位置は気にかけといたほうがええな。基本、フィリスの右前か左前におるようにしよう。正面やと、誤射が怖いからな…

 

「緑のプニプニ玉だ〜」

「青プニは青いの落としとったけど、これってなんなんやろうな?」

「さぁ… でも、これを持たないプニはプニとは言えない、そんな代物よ」

「プニの魂みたいなものなのかな〜?」

「…あまり深く考えないほうが良いと思うぞ」

「あ、あぁ、そうしとくわ…」

 

 レヴィさんの言う通り、考えるのはやめとこう… プニが落とすプニプニ玉は、カラフルで丸っこくて綺麗な、錬金術に使う素材。そうとだけ、思っとこう。

 

「ん〜、美味しい! アカネさんも食べる?」

「美味しい…? ほんまか…?」

「本当ですよ、プニプニ玉は美味しい食材なんです」

「…ほんなら、1つだけ」

 

 はむ… あ、ほんまに美味しい。甘くて、フルーツみたいな味やな。柔らかくてグミみたいや、プニの魂とか気にせず食材として考えたほうがええな。動物の肉と同じもんってことや、野菜もおんなじやな。

 

 …肉とか野菜にも魂って宿っとるんやろうか。ウチ、そんな魂も…

 

「アカネさーん、美味しい?」

「んっ、美味しいで」

「よかったー、じゃあ残りは後でのデザートにしよう!」

「…せやな」

 

 …美味しい食べ物、そうとだけ思っておこう。

 

「それじゃあフィリスちゃん、そろそろ出発しましょう?」

「そうだね! 目指せ南側!」

 

 

 

 それからウチらは、街道に沿うように南側を目指して進んで行った。途中で“そびえ立つ巨大岩”があったから、それを地図にメモしながら進んだで。あの巨大岩、倒れたりせんのかな… でっかい岩が立っとると、ちょいと怖いやんなぁ。

 

 もちろん、採取もしながら進んできたで。食材として良さそうなもんで言うと“葉レタス”や“ほうれんそう”、後は“甘竹”に“ツヴァイナッツ”やな。前2つはそのまんまの食べ物で、甘竹は甘い竹やな。そのまま齧りついても甘いらしいで、フィリスが食っとった。ツヴァイナッツはナッツやな、必ず1つの殻に2つの実がつくからツヴァイなんだとか。どれも美味しそうやし、なんなら葉レタスとほうれんそうは料理に使ったことあるけど、錬金術にも使えるみたいやで。

 

 それと、木から“クルミ”と“ハチの巣”も回収したで。クルミはその名の通り、硬い殻にくるまれとるあのクルミや。くるみ割り人形が欲しくなるな。ハチの巣も、ハチの巣やな。ハチがおらん時に盗んできたから、襲われんですんだけど… ちょいと悪い気はするな。半分以上は残してきたから、元気にしてくれとるとええけど…

 

 後は、“メッヘン赤麦”も採ったで。この辺りにある“メッヘン”って町の特産品やから、メッヘン赤麦って名前らしい。 …人が育てとるもんを盗んだわけやなくて、ちゃんと自生しとるもんやで。見た目もウチが知っとる麦やし、頼まれとった赤麦パンもこの麦で作るんやろうな。 …フィリスが作り方を閃いてくれたら助かるんやけど、どうやろうか。

 

 …ここまで食べ物の話ばかりやったけど、ちゃんと他のもんも集めとるで。まずは“白砂”と“黒砂”や。 …まぁ、その名の通り白い砂と、黒い砂やな。この2つは普通のもんやけど、無茶苦茶に面白いもんも1つあるんや!

 

 それが“グラビ石”、ノングラビティーな石やで。 …つまり、浮くってことや! 全体的に青と黒の中間みたいな色の丸っこい石なんやけど、それがふわふわって浮いていくんやで〜! なぁ、面白いやろ! …集めづらいったらないけど、神秘的な力を感じる凄い逸物や。

 

 …以上が、ここまでで集めたものやな。ほんで、ウチらが今おる場所はというと…

 

「ついたー!」

「ここがメッヘンっちゅー町か… 風車に牧場に、自然的ないい町… 村か? やな」

「ひとまずは目的地か… 俺は宿屋に行く、また旅に出るときは教えてくれ」

「オレもどっか行ってくるわ! また誘ってくれよ!」

 

 ウチらがおるのは“メッヘン”、さっき言った赤麦が特産の村や。石畳の道に、木でできた家、後は果樹園やら牧場やらがある、のどかな村や。 …殆ど、リアーネさんに聞いとった通りの村やな。

 

「メッヘンは牧畜や農業が盛んな村なの」

「へぇ…! あ! なんか、変な物があるよ!」

 

 そして変な物… こと、風車が目立つ村やな。船の帆みたいなのが並べられとって、風を受けてくるくる回っとる。実物を見るのは初めてやな、風車(かざぐるま)みたいに縦に回るものやと思ってたけど、横で風を受けるんやな。 …その方が効率的なんやろうか?

 

「あれは風車ね。風を受けて粉を挽いたり、水を汲んだりするの」

「そうなんだ… 風で回るなんて、おもしろいねー」

「風車が何基も見えるし、ここは結構大きな村みたいやな」

「これくらいの大きさの村なら、公認錬金術士がいるかもしれないわね… 絶対にいるっていう保証はないけど、ちょっと探してみない?」

「うん、そうだね。それじゃあ、情報収集… ん?」

 

 石畳の道を正面から歩いてきとる子がおるんやけど… 金髪に大きな紫のリボンを付けとって、お洒落な白地に赤や黄で飾られたシャツに赤のスカート。宝石もつけとる。 …言い方悪いけど、こんなのどかな村には似つかん都会っ子な感じの女の子や。 …何者やろうか。

 

「あの子… ひょっとしてこの村の子かな…? すみませーん!」

「ん?」

「あの… この村の方ですか? ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど…」

「…失礼しちゃうわね。アタシのこの格好が、ここの村人に見える?」

「え!? あ、ごめんなさい… その…」

 

 やっぱり、この村の人やないんやな。エルトナ育ちのフィリスにはわからんやろうけど、ここまでお洒落に着飾っとるんはおそらく、どっかのお嬢様か何かやと思う。声は元気な感じやけど、近くの都市の偉い子… とかやろうか?

 

「すまんなぁ、ウチら世間知らずなもんで…」

「…まぁ、いいけど。で、聞きたいことって?」

「ああ、えっと… この村に錬金術士の人がいないか、知りたくて…」

「錬金術士…? へぇ… あなた、錬金術士を探してるの。ふふん、なら運がよかったわね。アタシ、錬金術士なの。それも、超一流の!」

「超一流の錬金術士…!? すごいです! わたしとあんまり年も変わらなさそうなのに…」

「ふふん、でしょー?もーっと褒めていいわよ?」

 

 超一流の錬金術士、か… そういえばソフィーさんもお洒落な格好やったし、錬金術士はみんなお洒落な服を着とるんやろうか。商売する仕事やし、そういう服の方がイメージがいい、とか…? 詳しいことはわからんけど、超が付くほどの一流錬金術士に会えるなんて、運がええなぁ。 …ちょいと子供っぽいのが不安やけど、若くて超一流なら将来は超超一流になりそうやな♪

 

「あの! だったらお願いなんですけど… わたしに推薦状を書いてもらえませんか?」

「えっ」

「実は、わたしも錬金術士なんです。公認試験を受けに行くために旅をしていて…」

「私からもお願いします。超一流の錬金術士なら… 妹に推薦状を書いてあげていただけませんか?」

「あ… え、えーっと…」

 

 …ん? なんか、反応がおかしいような…? …もしかしてやけど。

 

「ご、ごめんなさい。アタシ、まだ推薦状は書けないの。その… アタシもこれから公認試験、受けに行くところだから…」

「え!? 超一流の錬金術士なのに!?」

「うっ… そ、そうよ! 超一流だけど、試験にはまだ受かってないの!」

「そう、ですか…」

 

 自称、超一流ってことか。 …まぁ、ほんまに超一流やったら、そう簡単には推薦状なんて書いてくれんかったやろうし、気にせんでもええんやないかな? それに、正直に言うあたり、悪い子ではなさそうやし…

 

「ああ、もう! 悪かったってば! …お詫びと言っちゃなんだけど、いいこと教えてあげる。この村にはね、公認の錬金術士が住んでるの。アタシも推薦状を書いてもらったところだし… その人、ディオンっていうんだけど… あっちの方にアトリエを構えてるの。推薦状が欲しいなら、行ってみるといいわ。それじゃあ、アタシはそろそろ行くから」

「ディオンのアトリエ… やな」

 

 なるほど、ほんなら次の目的地はそこやな。

 

「その… 推薦状のことはホントにごめんなさい。じゃあね、バイバイ」

 

 …ほんまにええ子やな、丁寧に謝ってから去るなんて… ウチやったら、恥ずかしくて走って行くか、強がって去って行くか、って気しかせんし。あの子も公認試験を受けるんなら、ライゼンベルグを目指しとるんやろうし… この後も会う機会はありそうやな。少なくとも、ゴールでは会うやろうし。

 

「…なんだか変わった子だったわね。悪い子じゃないみたいだけど」

「あはは… まぁとりあえず、教えてもらったアトリエに行ってみようかな」

 

 …そういえば、名前聞きそびれたな。名乗りも忘れてたけど、ええ子やったし名前くらいは聞いときたい… よし!

 

「ウチ、名前だけ聞いてきますわ!」

「あっ、はーい!」

 

 遠いし暗いけど背中は見えとる、走れば… 追いつけるはず!

 

 

 

「はぁ、はぁ…」

「えっ、大丈夫ですか? あの、何か…」

「身構えんで大丈夫や、名前だけ聞いとこう思って追いかけただけやから…」

「あぁ、名乗ってなかったわね… アタシはイルメリア・フォン・ラインウェバー。あなたは?」

「イルメリアか… ウチはアカネ・コトノハ。気軽にアカネって呼んでくれ」

「わかりました、アカネさんですね」

「おう! …じゃあ、名前聞けたから去るな。ありがとな、イルメリア… さん?」

「呼び捨てでいいわよ」

「ほんなら、イルメリア、またライゼンベルグでな!」

 

 イルメリア・フォン・ラインウェバー… 自称超一流錬金術士であり、公認試験を目指す同士であり、ちょっと高飛車な感じがするけどその実優しくてしっかりした女の子。メモしたし… さっ、例のディオンさんのアトリエを目指すか! …こんな夜やし閉まっとりそうやけど。

 




やることメモ
  0.エルトナ
 →1.エルトナ周辺
   1.乾いた平野帯
  →2.ファーヴェ丘陵
   →1.超一流の非公認

 よーし、ディオンさんに会いに行こう!
(フィリス)

 イルメリア… あの子には今後、何度も会う気がするわ
(アカネ)
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