ファーヴェ丘陵を進んでメッヘンに辿り着いたで。
そこで、非公認の一流錬金術士、イルメリアとも出会ったわ。
「ディオンさんのアトリエはここやな…」
「そうみたいだね… よしっ!」
「待ってフィリスちゃん、本当に今行くつもり? もう真夜中よ…?」
「…確かに。明日の朝にしよっか」
「ほんなら、近場の… あの辺りにアトリエを張って休むか?」
「そうしよー!」
メッヘンが誇る公認錬金術士のディオンさんのアトリエは、町の中心を縦断しとる川のすぐ東側にあったで。川の西側には風車や牧場があったけど、東側は家が多めな感じやな。たぶんやけど、お店とかも東側にあるんやないかな?
さっ、フィリスもアトリエを張ってくれたし、アトリエで休むとしよーか。
「調合… いや、今は寝る… う〜ん…」
「フィリスちゃん、疲れた顔だと推薦状も貰えないかもしれないわよ? ほら、身だしなみって大切だから」
「わかった、おやすみなさい」
「ウチは村を回ってますね、気になるんで」
「わかりました、また後で」
「おう、しっかり眠るんやで〜?」
「…入ろう」
「ウチらはフィリスの後ろにおるから、安心するんやで」
「フィリスちゃん、ちゃんと丁寧にお願いするのよ」
「わかってるよー! 大丈夫、ちゃんとする!」
翌朝、旅立ちから10日目にして1人目の公認錬金術士、ディオンさんのアトリエや。どんな人かわからんけど、公認試験に受かるくらいなんやから、凄い錬金術士なんは間違いあらへん。 …まだ10日目なんか、全然経っとらんのやな。
「失礼します…」
「よし、これで部品は大丈夫。ちょっと形がいびつだけど、たぶん平気だろう… あとは工具を忘れないように… ああ、ネジも持って行ったほうが安心かな…」
「あのー…」
「うわぁっ!? お、驚いた… もしかして、お客さんかい? でもごめん! 僕、今から風車を直しに行かなきゃいけないんだ! 悪いけど、用があるならまた後で! それじゃあね!」
ディオンさんは慌ただしくアトリエを飛び出していってもうた… 公認錬金術士は風車まで直すんか、大変やな。工具とかネジとか、錬金術とは関係なさそうな言葉がたくさん聞こえた気もするけど、気のせいやろ。
「…忙しいみたいやな」
「どうする? 風車を直しに行くって言ってたけど…」
「うーん… ここで待ってるのもあれだし、風車まで様子を見に行ってみようかな」
「ほんじゃ、追いかけるか」
風車の位置は正確に確認済みや、川の西側の南側に並んどる。大きな村やないし、ちょいと歩くだけで着くような距離やな。さっと行って、修理を見守る… だけやのうて、手伝えば手早く終わって推薦状もすぐに貰えるかもしれんな。
修理の方法は、まぁ… わからんけど。
「ふぅ、これでよし、っと…」
「こんにちはー」
「あれ、君たちはさっきの… わざわざ来てくれたのかい? …そういえば、自己紹介がまだだったね。僕はディオン、この村の錬金術士だよ」
「わたしはフィリスです! 錬金術士の公認試験を目指してます!」
「私はリアーネと申します、フィリスちゃんの付き添いです」
「ウチはアカネ、ウチもフィリスの付き添いや」
「フィリスさんにリアーネさん、アカネさんだね。うん、よろしく」
…ウチももう少し丁寧に自己紹介したほうがええんやろうか。こほん… 私は茜と申します。今はフィリスの付き添いをしています… いや、らしくないな。堅苦しすぎる。
そうや、ディオンさんのこともメモしといたほうがええかもな。推薦してもらう予定なんやし、大事な相手や。えーっと… 若くて落ち着いた雰囲気の男性で、服は白と黒と薄い青緑の3色、背格好は普通… かな。
「それで… 僕になにか用があったのかい?」
「はい。ディオンさんって、公認の錬金術士なんですよね? よければ、わたしに推薦状を書いてもらえませんか?」
「あはは… 公認の錬金術士って言っても、ついこの間試験に受かったばかりなんだけどね。まぁ、それはいいか… で、推薦状だよね? 書いてあげたいのはやまやまなんだけど…」
…これは何か試験があるな?
「一応、錬金術の実力を見ないことにはね。そうだなぁ、いくつか課題でも出させてもらって…」
「「「ディオンくん!」」」
「おぉ…」
「わ、わーっ! どうしたんですか、みなさん」
課題の話になるかと思ったら、村の人が集まってきよった。ムキムキな男の人に、若い女の人、それと主婦の人。 …ディオンさんは人気者なんやなぁ。
「村の近くに魔物が出たの! なんとかしてきてくれない!?」
「うちの牛が逃げちまったんだよ! 頼むから、探してきてくれないか!?」
「果物が豊作すぎて、収穫が追っつかないんだ! 悪いけど、手伝っておくれ!」
「え!? そ、そんなにいっぺんに言われても、えーっと…」
…人気者なのはわかったけど、錬金術関係ないもの多くなかったか? 魔物討伐はわかる、錬金術士は戦えるからな。牛探しはわからん、錬金術をどう使うんや? 収穫もわからん… 慕われとるみたいやけど、仕事は選んだほうがええんちゃうかな…
「…なんだか大変みたい。このままだと推薦状のこと、忘れられちゃいそうよ?」
「そんなことないって言いたいけど…」
「えっと、えーっと…?」
「言える状況やないな…」
「うー、そうだね… ディオンさん! わたし、いくつかお手伝いしますよ!」
「えっ… それは助かるけど、いいのかい…?」
「もちろんです! 手分けした方が、早く終わると思いますし…」
「そうか、ありがとう! そうだなぁ… 魔物退治は僕がしてくるから、牛探しと収穫の手伝いを任せてもいいかな?」
「はい! わかりました!」
よかった、魔物退治は不安やからな… せやけど、残り2つのやり方も知らんのよな。牛の探し方、果物の収穫の仕方、今から本で調べるくらいなら、困っとる人に聞いて手伝う方が早いやんな。どっちからやるかやけど… そこはフィリスに任せるか。
「それじゃあ、牛探しに行こう!」
「ほんなら、牧場に話を聞きに行くほうがええやろうな」
「そうね… ただ、アカネさん。思い出したんですけど… アカネさん、赤麦パンを届けに行くんじゃ…」
「あ〜、そうやったな… すまん、どっかで買って届けてくるわ」
「それならわたしが作ろうか? 作り方、思いついたから」
「…ほんなら、お願いしようかな」
「よーしっ、頑張っちゃうぞー!」
「ありがとうな」
フィリスはアトリエに戻って行ったし、パン作りを始めたんとちゃうかな。ウチは… どないしようか。遠くまで行ったらパンを受け取れんし、材料集めには行けん。ほんなら… 村の中で、情報集めやな。
「リアーネさん、ウチは向こうの方で近場の町の話とか、聞いてみますね」
「わかりました、私も少し調べてみます」
ウチは川の東側、リアーネさんが川の西側で情報収集や。次に行く町の場所も聞きたいし、牛探しと収穫のお手伝いの話も聞かんとな。さっ、情報が集まりそうな場所はどこかな〜。
「…なるほどなぁ、そんな町があるんか」
「あぁ、そうだ。自然豊かで良い町だし、行ってみるといい」
「そこまで言うなら連れに話してみるわ、ありがとうな。長話になってもうたし、ウチはそろそろ行くわ」
「確かにもう夜か、またどこかでな」
「次会うときまで元気しとるんやで〜?」
「あぁ、そっちもな」
行商人の人と話して、ええ話を聞けたわ。何でも、ファーヴェ丘陵から東に行って、そこから南に進んで行けば“ドナ”っちゅー町があるらしい。植物が元気に育っとる緑の町らしいで。錬金術士がおるんかはわからんかったけど、おってもおかしくない規模らしいし行ってもええかもしれんな。
それと、行商人さんから話を聞く前にちょいと買い物をしたから、それをアトリエに運ばんとあかんな。話を聞かせてもらう対価ってわけやあらんけど、何も買わずに話だけ聞くんも失礼な気がしてな。ま、殆ど金も持っとらんから、行商人さんが処分に困ってたもんを安く買っただけやけどな。
「フィリスー、ただいまー」
「おかえりー、もうすぐパンもできるよ!」
「おぉ、そしたらちゃちゃっと届けに行くわ」
「ご飯もできてますよ、アカネさん。 …その手にしているものは?」
「これか? これはなぁ、よくわからん絵画や」
「絵画…? お好きなんですか?」
「いや? 芸術なんてわからんよ、凄いなぁとしか感じんし」
「はぁ…」
ウチが買ったんは絵画や。殆ど見んで買ったけど、砦って感じの絵画やったで。 …まぁ、どっかの国のどっかの都市の砦の絵なんやろ。行商人さんも旅人に押し付けられたもので、名前とか知らん絵画らしいし、無名な画家のようわからん絵画やけど、絵は綺麗やで。 …どこの誰の何かわからんから何も言えんけど。
「フィリス、この壁に飾ってもええか?」
「うん、どこでも」
「ほんじゃ、ウチのソファーの上に… っと」
「綺麗な絵画ですね、どこかの風景画ですか?」
「それがわからんのよな… 行商人さんも情報がないからって安く売ってくれたんやけど、行商人さんが知らんってことは近くの場所を描いたわけやないと思うんやけど…」
「おぉ、すごーい! いつかこんな場所にも行けるのかな〜?」
「ふふっ、きっと行けるわよ」
「せやな、旅して行けばどこかにあるはずや」
ま、わからんものを考えても仕方ないからな。この絵画みたいな… 川が流れとって大きな砦があって城もある場所を見つけるまでは、ただの綺麗な絵画と思っとこう。
ほんで、赤麦パンが完成したみたいやな。もう日も暮れてきたし、明日… いや、明日には牛探しを始めるやろうし、今晩のうちに届けに行くべきやな。よしっ、行こう。
「パン届けてくるわ、ありがとなフィリス!」
「うん! いってらっしゃーいっ」
「アカネさん、ご飯…」
「…それだけ食べてからにするわ」
「ええ、そうしてください」
ほんじゃ、ウサギのロースト食べてひとっ走りしてくるわ! …最近走ってばっかりやけど、ウチの脚大丈夫やろうか。牛探しに支障でんとええけど…
「ただいまー、フィリス。ええもん貰ってきたでー」
「んぅ… おかえり…」
「あ〜… すまん、起こしてもうたな」
「朝ごはんはもうできますよ」
「ほんなら、シャワーだけ浴びてくるわ」
赤麦パン3つを握りしめて夜な夜な歩いて、依頼人にちゃんと届けて帰ってきたで。もう日も昇って朝になってもうたし、歩き疲れて脚もパンパンやけど、フィリスに届けなあかんものを受け取ったから急いで走って帰ってきたんやで… そうや、シャワーの前にそれを渡さんと。
「フィリス、これ置いとくな」
「ん… これ、レシピ?」
「パンのお礼にって、“干し草”のレシピを教えてくれたんや。ウチにはわからんけど、ちゃんとしたレシピ… やろ?」
「うん! これなら作れそう…」
どうしてパンのお礼で干し草のレシピを教えてくれたんかはわからんけど、フィリスが使えるレシピだったみたいで安心や。干し草を作る機会がいつになるかはわからんけど、フィリスならきっと上手く使ってくれるやろ。
「そうだ、これなら…」
「フィーリースーちゃん? 調合する前にご飯、食べないの?」
「あっ、食べる!」
これから牛探しやし、ちょいと休んだら気合い入れんとな…
「ふんふっふふっふふ〜ん」
汗流して着替えて戻ってきたら、フィリスが上機嫌に鼻歌を歌っとった。何やろう、ご飯がウサギのローストやったんやろうか。流石に昨晩から連投はウチ的にはキツイんやけど…
「なんや、えらくご機嫌やんか」
「ふっふっふ〜、良い案が思いついたからね♪」
「なんやなんや、どんな案なんや」
「アカネさんに教えてもらった干し草を使って、牛さんに帰ってきてもらうのだ〜!」
「ほぉ…!」
ほぉほぉほぉ、ほぉ! 牛を探しに行くんやのうて、牛に自ら帰ってきてもらう、考えたな… ウチは牧場の状態も見とらんし逃げた牛の話も聞いとらんからわからんけど、そういうことができる状態なんやな? ほんなら、この作戦さえ上手く行けば…
「そんなら、今から干し草を作るんか?」
「うん! 今から… あっ」
「ど、どうした?」
「…草ないや」
「えっ、そんな… 色々なかったか?」
「あれぇ…? ほうれんそうも赤麦もどこ行っちゃったんだろ…」
「…フィリスちゃん、赤麦もほうれんそうもパンに使っちゃったでしょ。好きじゃないからって、そんなに集めなかったし…」
…え、あの赤麦パンほうれんそう入ってたんか。普通のパンにしか見えんかったけど、そうやったんやな…
…そんなところはええんや、問題は草がないことやな。近くに生えてるやろうし、それを摘んでくればええだけの話でもあるんやけど…
「ほんなら、ウチが集めてこようか?」
「ん〜… やっぱり歩いて探しに行こう。見たことない景色が見れるかもだし」
「わかったわ」「わかったで」
ほんなら、また冒険やな。目標は牛、それと綺麗な景色。推薦状の為にも、ちゃちゃっと見つけんとな♪
「よしっ、行くぞー!」
やることメモ
0.エルトナ
→1.エルトナ周辺
1.乾いた平野帯
→2.ファーヴェ丘陵
1.超一流の非公認
→2.メッヘンにて
→1.公認錬金術士ディオン
忙しそうだし、わたしたちも頑張らないと!
公認になると大変なんやな…