ファーヴェ丘陵を抜けて、旅人の雑木林に入ったで!
「周りの雰囲気が変わってきた気がする…! えへへ、今度はどんな景色が見られるんだろう…! …ん?」
ファーヴェ丘陵から旅人の雑木林に入って、辺りを見回すと木しか見えんようになってきたわ。フィリスの言うとおり、雰囲気が変わってきたな… 虫が山程いそうなんが嫌やけど、木が多いとマイナスイオン? やら何やらで良いことがあるって聞いたことある気がするわ。 …曖昧ですまんな、調べることもできんからわからんのや。
ほんで、前に見知った姿が見えるな。金色の髪に紫のリボン、トボトボと林の奥からやってきたんわイルメリアやな。
「うー、参ったわね… アタシとしたことがしくじった…」
「あれって、ひょっとして…」
「イルメリアやんか、どうしたんや?」
「え…? あ。あなた… アカネさんと、前にメッヘンで会った錬金術士の子よね。 …そういえば、あなたには自己紹介してなかったっけ。アタシはイルメリア・フォン・ラインウェバー。今をときめく、超一流の天才錬金術士よ!」
「い、イリュメ… イル… イリュメイア…っ! うう、舌かんだ…」
ふふっ、フィリスは苦戦しとるけどウチは噛まんで。イルメリア、イルとメリアで分けて考えると言いやすいんや。噛むのはだいたいルメリの部分やからな… それに、こっそり練習もしたからな! ええ子やってメッヘンで会った時に思っとったし、名前にプライド持ってそうやったから間違えんようにと思ってな。 …フィリスにも教えておけば良かったやろうか。
「…呼びにくいならイルでいいわよ。あと、敬語もいらないから」
…あれ? 略されてもええの? …ほんならウチもイルって呼ぼうかな。その… “フィリス”に比べて“イルメリア”って名前呼ぶのに時間かかるなぁって思っとったんや。気をつけんと噛んでまうから、ホンマにな…
「うん、わかった。よろしくね、イルちゃん。 …じゃあ、次はわたしたちの番だね! わたしはフィリス。で、こっちはリアーネお姉ちゃん! それとアカネさんと、レヴィさん!」
「どうも」「アカネさんやで♪」「よろしく頼む」
「フィリスにリアーネさんに、アカネさんにレヴィさんね! こちらこそ、よろしく!」
「…で、イルちゃんはここで何をしてたの?」
そうや、本題は名前やのうてそっちや。雑木林の入口でうつむきながら歩いて、何かあったんやろうか?
「うーん… 立ち往生?」
「立ち往生? …何があったんや?」
「えっと、魔物を殴ったら杖がバキッと折れちゃったの。持ってきた爆弾も使い切っちゃって… 調合さえできればどうにかなるんだけど、こんな森の中じゃそれも難しいでしょ? だから、途方に暮れてたってわけ」
なるほどな… 確かに、途方に暮れるのもわかるわ。このまま武器も道具もなしに突っ切るんは危険やもんな。フィリスはソフィーさんにもらったアトリエのおかげでどこでも調合できるけど、アレって凄いものっぽいし普通はできんよな…
「なるほど… 私のアトリエでよければ、貸そうか?」
「え、いいの…? フィリスのアトリエって、この近くにあるとか?」
「ううん? ちょっと待っててね、すぐに張るから」
「張る…?」
「まぁ見とき、凄いもんが見れるからな」
「は、はぁ…」
「俺が見張りはしておく、安心して使え」
さっ、ウチもアトリエを張るの手伝うか。何度も見とるから、ちょいとはわかるで。確か、ここをこうして…
「…ホントに助かったわ。まさか、持ち運びできるアトリエがあるなんて」
「困ったときはお互い様だよ。でも… イルちゃん、錬金術上手なんだね。あっという間に杖を直して、道具まで作っちゃうなんて…」
「ふふん、だから言ったでしょ? アタシは超一流の天才錬金術士だって」
「ふふっ、そうやったなぁ」
「そういうこと。 …さてと、アタシはそろそろ行こうかな。その前に… はい、これ。アトリエを貸してもらったお礼よ、作りたてのホヤホヤだから、好きにして」
「いいの…? ありがとう!」
「いいのいいの、それじゃあ… バイバイ!」
イルがくれたんは、発破用フラムやった。 …ウチが見てもわかるくらい、質の高い代物や。ホンマに手際も良いし、素材の性質とか全部把握しとるんやないかって気がしてくるわ。ま、ウチはフィリスも横に並べると信じとるけどな。フィリスはまだ始めて2ヶ月も経っとらんのや、努力すれば並び立てるはずやで。もちろん、その間にイルも成長するやろうけどな。切磋琢磨して、2人とも公認試験に受かるとええなぁ。
「えへへ… イルちゃん… か。また会えるといいな…」
「…目的地が同じなんやし、一緒に行くのもええんちゃうか?」
「…たし、かに。よしっ、今度会ったら誘ってみよう!」
「せやせや、良いところ吸収して一流を目指さんとな♪」
「次に会えるとしたら、フルスハイムかしら… あんまりモタモタしていると、先に行かれちゃうかもだけど」
「よしっ、それじゃあわたしたちも、しゅっぱーつ!」
「見てみて! 木のトンネルだよ!」
「“ウッドアーチ”ね、この先に進むと“静かの森”っていう場所に行けるはずよ」
「方角的には北やから、ドナの方向とはちゃうが… 行ってみるか?」
「ん〜… 今は推薦状の方が大切だから、後にしようかな」
「そうか、それなら… そこを曲がって南に戻ろう」
結構な時間歩いて、日も昇ってもうたけど、ウチらの旅は続いとるで。 …ウチと違って、みんなはちょいと眠そうやけどな。一昨日の夜にメッヘンを
「…あ! あそこ、たき火じゃない?」
「本当ね… 少し休んでいかない?」
「うん! すぐに張っちゃうね」
「…元気だな」
「それがええところやろ?」
「…そうかもな」
眠りたいってのは今でも思うけど、旅しとる以上は眠らなくていい身体にも感謝はせんとあかんよな。もしもフィリスがおらんかったら、もしもテント型のアトリエがなかったら、旅しとる途中は野宿するしかなかったわけやろ? 虫やらお化けやらがいる場所で野宿なんて、絶対嫌や。そう考えたら、眠らんでええ身体もええ感じがするやろ? …フィリスがおってアトリエもある今は眠りたいけどな!
「…疲れた。おやすみ…」
「フィリスちゃん待って、お風呂入りましょう? その服のままベッドだと汚れちゃうわよ」
「わかった…」
…アトリエに入って落ち着いたからやろうか、フィリスも疲れと眠気が一気に来たみたいやな。ま、フィリスはリアーネさんが何とかしてくれるやろうし、ウチはいつものように剣を磨くとするか。愛を込めて磨いたらまた光が強くなるかもしれんからな♪
「今日は調合するね!」
「そうか」「わかったわ」「了解や」
「俺は外で鍛錬に励むことにする」
「ウチも外で採取してくるわ、また後でな♪」
「もちろん私はフィリスちゃんの側にいるわよ」
翌朝や、みんな疲れも取れたんか朝から活発やな。フィリスは新しいものを作るらしいで。まぁ、色々閃いとるみたいやからな。レシピのメモをたくさん書いとるのも知っとるし、よー頭をひねっとるのも見てきた。思いついたけど作れとらんものも多いやろうし、作りたいときに好きなだけ作れるように採取頑張らんとな。
採取やけど、当然ファーヴェ丘陵とは違う素材が採れるわけで。昨日は採取せんかったけど、すごく目立つ素材もあったんよな。縦にながーく茎が伸びとって先端に紫の花が咲いとる、“セイタカトーン”や。その名の通り、背の高いトーンやな。地面に栄養が豊富やと際限なく育つらしいんやけど、まさか身長で負けるとは思わんかったわ。地面の低いところに白い花を咲かせとる普通のトーンとは似ても似つかんな。
それと、“藪イチゴ”も魅力的や。イチゴって言っても赤いのやのうて、黒いイチゴや。確かこういうイチゴのことをブラックベリーって言うんやったっけ。見た目もちっさい粒がたくさんある感じやし、ブラックベリーやな。美味しいで。つまみ食いしながら採取するか。
植物はそんな感じやし、岩も掘ってみるか… ちょいと時間かかるから、魔物には気をつけんとな♪
「ただいまー、お風呂入ってええか?」
「もちろんです、準備してありますよ。 …雨が降ってるんですね?」
「そうや、急に降り出しおった」
「へぇー、いいなぁー、わたしも浴びたいなー」
「そんなええもんちゃうんやけどな… 採ってきたもんここに置いとくから、リアーネさんに任せてもええか?」
「わかりました、これは… セイタカトーンと藪イチゴ、それと“アイゼン鉱”ですか」
「アイゼン鉱… 鉄になる鉱石やったか?」
「そうです、精錬すると鉄を抽出できる鉱石です」
「わたしも知ってるよ!」
掘れたんはアイゼン鉱やった。黒光りしとって、見た目から鉄っぽい鉄の鉱石やな。見た目だけ見てもどんな鉱石かはわからんけど、名前聞けばちょいとはわかるようになってきたわ。これでも本で勉強しとるからな、暇やから。 …アイゼン鉱やのうて鉄鉱石とかに改名してくれんかなぁ。
…そんなこと言ってても何も変わらんな、お風呂行こー。
「よしっ、できた!」
「何を作ったんや〜?」
「“中和剤・緑”! それと、“汎用触媒”!」
「中和剤って青と赤もあったよな、緑は何が違うんや?」
「赤は鉱石、青は水、緑は植物から作るんだ。だから、ちょっと違うよ」
「なるほどなぁ…」
材料が違うんやな、覚えとこう。性質も違うんやろうけど、聞いたってわからんし聞かんでええか。中和剤は色によって材料が違う、まだウチが知らん色もあるんやろうけどそれはまた違う材料なんやろうな。鉱石、水、植物と来たら、次は… なんやろ、だいたいはもうあの3つでカバーできてもうてる気がするわ。
「触媒は初めて見たな、これも調合に使うんか?」
「うん! 調合でどんな触媒を使うのかによって、色んな変化があるんだ」
「今までも何か使っとったんか?」
「ほうれんそうとか使ってたよ。赤麦パンのときとか」
「あぁ、あの時のってそういう意味やったんか」
ほうれんそうが触媒になるんか… ほんなら何が触媒になってもおかしくないな。どれが触媒になるんか、どれが触媒として優秀なんかはウチにはわかり得んし、気にせんことにしよう。とりあえず、色んなものを集めればええ。それだけ覚えとくほうがシンプルや。
「それじゃあフィリスちゃん、この後はどうする? もう夜も遅いし、出発は明日でも良いと思うけど…」
「うん、そうする。もう寝て、明日は朝から頑張るぞー!」
「おー! やな」
「準備オッケー、しゅっぱーつ!」
「ぱーつ!」
「…私も合わせたほうがいいのかしら」
「俺はやらんぞ」
翌朝、アトリエを出て出発の時や! 張った時は暗くて気付かんかったけど、このたき火のすぐ側に“森の小屋”もあったんよな。 …まぁ、小屋よりもアトリエの方が快適やし泊めてもらったりすることはないんやけど。
「こんにちは」
「あっ、こんにちは」
「こんにちは〜」
…今すれ違った人、妙な格好やったな。深い緑の服の上に白いローブを着とるんか? 上半身から下半身まで同じ服やけど、ワンピースとはちょいと違ったしな… 緑の布切れで前をカバーして、横を白いローブで補っとるような、そんな感じやった。イメージ的には… どこかのシスターとかか? 神官っぽさもあったな…
「あれ? 何か落ちてる」
「本やな、普通はこんな場所に落ちとるわけないし…」
「ひょっとして、さっきのお姉さんの!?」
「そうみたいね…」
「わたし、届けてくる!」
「あっ、待ち… 行ってもうたか…」
「…俺たちも追いかけよう、あれだけ走って行けば魔物に襲われるかもしれん」
「せやな、急ごう」
落とし物を届けるの良いことやけど、周りを確認せずに突っ走るのは悪いとこやなぁ。その上、判断も早いし脚も速いから出遅れてもうて追いつけん。 …フィリスの突然の動きに付いていけるように、鍛えたほうがええんやろうか。
考えるのは後にして、今は追いかけなあかんな。
「フィリスちゃん、やっと追いついた…」
「あっ、リア
「次から気をつけてくれれば大丈夫や… ほんで、届けられたか?」
「うん! アンネさんに、ちゃんと届けたよ♪」
「アンネさん… ってのはあの人の名前か?」
「あ、うん。アンネリースさんって言ってた」
アンネリースさんか、覚えとこう。向こうも旅しとるみたいやし、今後も話す機会はあるやろ。服装もメモして… と。これでよし。
「よーし、今度こそ、しゅっぱーつ!」
「えっと… こっち、だよね?」
「ここをこのまま南… やからあってると思う」
「私もそう思うわ。きっとこの先よ」
「…森が深くなっていくようだな」
森の小屋から南に流れとった川を越えて、右に曲がって左に曲がったらたき火があったから少し休んで、更に進んだ先を左に曲がって右に曲がったところや。だから、えっと… 南に進んでたところから、西に行って南に行ってたき火、そこから東に行って南やな。せやから、うちらは南に進んどる。 …はずや。
「…あ、カゴがいっぱいになっちゃった」
「結構採取してきたからなぁ。あのたき火で荷物整理してくればよかったな」
「そうだね… 次のたき火に着いたらちゃんとしなきゃ」
採取もたくさんしてきたから、新しい素材も手に入れたで。ずばり、“粘銀の糸”や。クモの糸なんやけど、鉱石を食べるクモの吐き出す糸やから、丈夫らしいで。 …あんまりクモの糸をそのままベタベタ触りたないけどな。でも、ええ糸らしいから頑張って集めたわ。
カーエン石とかアイゼン鉱も拾えたし、素材はたくさんや。それを使えるのはフィリスだけやから、素材が多くても使い切れんのやけど… いつか山のように素材を使うレシピを思いついたり、ここらじゃたくさん採れる素材が採れん場所もあるかもしれんしな。貯めといて損はないはずや、何事においてもな。
「…ん? フィリス、その紙はなんや?」
「これ? アンネさんに会った時に、落ちてたんだ。ドナのお医者さんに宛てたお手紙みたいだよ」
「そうなんか、ほんなら届けんとな」
「うん! …これもアトリエにしまっといたほうがいいか」
「せやな、落としてもうたら危ないからな」
さっ、旅人の雑木林も抜けて、いざドナ… のある地域。なんて名前なんやろ?
「リアーネさん、この先の地名ってわかります?」
「たしか、“白霧ヶ森”という名前のはずです」
「迷いやすい場所だ、気をつけろよ」
「ほいよ、気をつけるんやで、フィリス」
「地図をよーっく見て、迷わないように進むよ」
いざ、白霧ヶ森へ!
やることメモ
0.エルトナ
→1.エルトナ周辺
1.乾いた平野帯
2.ファーヴェ丘陵
→3.旅人の雑木林・白霧ヶ森
→1.一流の立ち往生
雑木“林”から白霧ヶ“森”だから木が増えるのかな?
せやな、きっと50パー増しになるはずや!