茜色の錬金術士   作:緑雨

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あらすじ

 ドナの村に着いたよ!


怖い人と恥ずかしがりや

 

「はぁ… どうしましょう」

「なんや、何か困りごとか?」

「あ… はい。服を木に引っかけちゃって… この服、気に入ってたのに…」

「あっ、結構大きく破れちゃってますね… でも、直せないほどじゃないような…」

「せやな、糸さえあればって感じか?」

「はい。直したいのはやまやまなんですが、糸を切らしてしまって…」

「それなら、わたしが用意してきますよ?」

「え、本当ですか!? それでは、お願いします!」

 

 ドナに着いて、入り口の辺りにいたらお姉さんのため息が聞こえてきたから、気になって声をかけちゃった。糸ならコンテナに入ってるはずだし、すぐに届けてあげないとね。お気に入りのお洋服、破れちゃったら悲しいし!

 

「…フィリスちゃん。村長さんに挨拶するよう言われたの、忘れてない?」

「忘れてないよ! その… 糸くらいなら、コンテナに入ってるでしょ? それを持ってくるだけだし、その後じゃダメかな…」

「大丈夫ちゃうか? そんなちょいとの時間で怒る人なんておらんよ。それに、ホンマに気難しい村長さんなら、村の人を助けてからの方がええかもしれんで」

「うんうん! ちゃちゃっと済ませてから村長さんに挨拶に行こう」

「…せやけど、ウチはここで失礼するな。用事ができてもうた」

「あ、うん、また後で!」

 

 …用事ができた? どうしたんだろ、アカネさん。今の間に、何かあったのかな。しかも、周りをキョロキョロとしてるし… …う〜ん? わかんないなぁ…

 

 

 

「持ってきました! これ、どうぞ!」

「わぁ… 立派な糸ですね…! これで服を直せます! 本当にありがとうございました!」

「ふふー、喜んでもらえてよかったぁ… …ん?」

「じぃ…」

 

 うわぁ!? お姉さんに糸届けただけなのに、鎧着た人に見られてるぅー!?

 

「な、なに、あの人…! 鎧を着てて顔見えないし、こわいよぉ、リア姉(ねぇ)ぇぇ…!」

「む…」

 

 うぅ… あ、リア姉(ねぇ)が向かってっちゃった。大丈夫かな… リア姉(ねぇ)なら、大丈夫だよね…? こわい人だったらどうしよう、鎧を着て何も言わずに立ってるんだよ!? 絶対こわい人だよぉ…!

 

「うちのかわいい妹に、何か?」

「ひゃわぁっ!? え、えっと… わたし…!」

 

 …うん? 女の人…? それに、怯えてる…? もしかして、全然こわい人でも、悪い人でもないんじゃ…!

 

「ちょっと、兜を着けたまましゃべるつもり? それはあんまりなんじゃないの?」

「ご、ごめんなさい、脱ぎますっ!」 

 

 う〜ん、兜取ってくれるみたいだけど、リア姉(ねぇ)の背中で見えないなぁ… 見える場所に動かなきゃ。こっちに行けば見えるかな? って、脚がなにかに引っかかった!?

 

「うわぁっ!」

「す、すまんフィリス、ウチが隠れとって」

「あ、アカネさん!? どうしたんですか!?」

「いや… さっきお姉さんと話しとる時からあの鎧の奴はおったんや。せやから、気になってここで張っとったんよ」

「そうだったんですね…」

 

 ビックリした… アカネさんの用事ってそういうのだったんだ… 全身に草を付けてまで、お疲れ様です。 って、そうじゃなくて! リア姉(ねぇ)と鎧の人は… まだ話してる!

 

「それじゃあまだ妹が怖がるの! その威圧的な鎧も脱ぎなさい! さぁ、早く!」

「ひゃ、ひゃいぃぃ! ご、ごめんなさい、脱ぎますぅぅ…っ!」

「…ん?」「…あれ?」

 

 い、いつの間にか恫喝みたいになってない!? あぁ、今度はリア姉(ねぇ)を止めなきゃ! 鎧の人、もう建物の裏に行っちゃったし、たぶん脱ぎ始めちゃってるけど、ダメだよー! リア姉(ねぇ)に脅されても、それはダメ!

 

 

「ぜ、全部は無理ですけど、ちょっとだけ外してきました…」

「…まぁ、それならいいでしょ。で、あなたは?」

「あ、えっと… わたし、シャノンと申しますっ… き、騎士をやってますっ! …まだ正騎士じゃなく、見習いですけど」

 

 シャノンさん… よかった、全部脱いじゃわないで… リア姉(ねぇ)がすごい詰めてるから、こわかったよぉ… えっと、シャノンさんは茶髪の女騎士さん。わたしよりもおっきくて、リア姉(ねぇ)よりも大きい… この身長でガッチガチな鎧だから、こわかったんだなぁ…

 

「騎士さんなんですか…! わたしはフィリスです!」

「フィリスちゃんと、えっと…」

「ウチはアカネやで」

「…私はリアーネよ。さて… 話してもらうとしましょうか」

「り、リア姉(ねぇ)! シャノンさん、絶対悪い人じゃないから、威圧しないでっ!」

「いいの、フィリスちゃん。 …シャノンさん、私のかわいいかわいいフィリスちゃんのことをどうして覗き見なんてしてたのか、答えてもらえるかしら…!」

「ひ、ひぃぃ…!」

 

 あぁぁ、リア姉(ねぇ)が止められないよぉ…! なんでかリア姉(ねぇ)はすごい怒ってるし、シャノンさんは怯えちゃってるし、アカネさんは草まみれだし、もう滅茶苦茶だよ…

 

「リア姉(ねぇ)、落ち着いて… シャノンさん、怒らないので、教えてください。ねっ?」

「うぅ… あ、あの… ね? フィリスちゃんのことがうらやましくて、つい…」

「うらやましい…? わたしが… ですか?」

「うん… わたし、すっごい人見知りで… 上手に人とお話できなくて… そのせいで、頼みごとを引き受けられなくて、困ってたの… でも、フィリスちゃんは簡単に依頼を受けちゃうし、ぱぱっとこなしちゃうし… それで… その… フィリスちゃんを見てたら、何か参考になるかなって思って… つい…」

 

 やっぱり悪い人じゃなかった… 鎧でこわかったけど、人見知りなだけだったんだね。 …そんな人をリア姉(ねぇ)は脅して、鎧まで脱がしちゃうなんて、悪い人だよっ、まったく。 …わたしのためだし、怒れないけどさ。

 

「それで覗き見をしていた、と。なるほどなぁ」

「そうだったのね… 詰め寄ってごめんなさい、悪かったわね」

「あ、いえ、その… わたしこそ、ごめんなさい」

 

 よかった、リア姉(ねぇ)もシャノンさんも仲直りできたみたいで… …仲直り? 初対面だし、仲作り? …う〜ん?

 

「ねぇ、シャノンさん。提案なんだけど、わたしたちの旅について来ない?」

「えっ…!?」

「見習いとはいえ、騎士ならそこそこ戦えるでしょ? 私たちも助かるし、それに… こそこそ覗き見するより、よっぽど健全だと思うの。 …どうかしら?」

 

 たしかに、来てくれたら心強いかも… でも、騎士さんって忙しいんじゃないのかな。みんなを守ったり、すごそうだし…

 

「ぜ、ぜひお願いしますっ!」

「えっ、本当にいいんですか!? 騎士のお仕事だってあるんじゃ…」

「え、えっと、それは… よくないけど、いいの…」

 

 …うん? よくないけどいいって… 結局よくないってこと…? …でも、いいって言ってるからいいのかな…?

 

「そういうことなので、いつでも声をかけてください! 未熟者ですが… しぇい一杯、がんばりましゅ!」

「よろしくお願いします、シャノンさん!」

「…今暇なら、ウチに付いてきてもらってもええか? ちょいと採取に行こうと思っとって、手伝ってもらえると心強いんやけど…」

「あっ、はい! 頑張り、ます!」

 

 アカネさんとシャノンさんは行っちゃったし… わたしもそろそろ、村長さんに挨拶に行かなきゃ! …そっちもこわい人じゃなければいいなぁ。

 

 

 

「お、おじゃまします…」

「誰だい、あんた!」

「ひっ!」

 

 本当にこわいお婆さんだった… でも、ちゃんと挨拶しなきゃ… えっと、えっと…

 

「え、えっと、わたしはフィリス… です」

「声が小さくて聞こえないよ! それになんだい! 見たところ旅人のようだけど、挨拶に来るのに土産のひとつも持ってこないのかい! まったく、礼儀がなってない連中だね。出直してきな!」

 

 あう…

 

 

「ぐすっ、ひっく… なんなのあの人ぉ…! もうやだぁ、この村こわい…」

「あのー、すみません。もしかして、長老の洗礼を…?」

 

 村の入り口で、長老さんに挨拶したほうがって教えてくれた人だ… うぅ、この人はこわくない… でも長老さんは凄くこわい…

 

「今、まさに…」

「ですよね… ごめんなさい。わたし、伝え忘れてました。長老はとても気難しい方なので、訪ねるときはご機嫌取りの品を持って行かないとダメなんです」

「そんなの知りませんよぉ… ぐすっ…」

「ほ、本当にごめんなさい! そういうわけですので、わたしはこれで…」

 

 うぅ… ご機嫌取りの品ってなんなのさ… もう長老さんに会いたくないけど、挨拶できてないし…

 

「フィリスちゃん、どうする?」

「挨拶できてないし、また行かないとだよね… ご機嫌取りの品ってどんなのがいいんだろ…」

「村の人たちに聞いてみるのが良いかもしれないわね」

「そうだね… 気は進まないけど、逃げるわけにもいかないもんね…」

 

 

 

 

「うぅ…」

 

 ちょっと聞き込みしてきて、長老さんが好きなのは甘い物ってわかったんだけど… うぅ… また会いに行くの、こわくて脚が震えちゃうよ… でも、行かなきゃなんだよね…

 

「どうしたフィリス、立ち止まって」

「アカネさん! えっと…」

「ここ、長老の庵やろ。入らないんか?」

「アカネさん、フィリスちゃんはさっき長老さんに怒られて、怖くなっちゃったみたいで…」

「うぅ…」

「ほんなら、ウチも一緒に入ったる。なんかあったら守ったるから、安心せいよ」

 

 アカネさん…! …大丈夫、いける。アカネさんも、リア姉(ねぇ)もいる。大丈夫、わたしならいける…!

 

「長老さん! お土産、持ってきました…!」

「…お土産か」

「はい、これです!」

 

 み、見られてる… どうしよう、『質が悪い!』とか『こんなんじゃダメだ!』とか怒られたら… プニゼリーのかわいさに免じて、許してもらえないかな…

 

「ほう、これは… ふん、悪くないじゃないか。さて、それじゃあ… 話くらいは聞いてやろうかね」

「あ、ありがとうございます… お話って言っても、挨拶しに来ただけなんですけど…」

 

 …そうだ、自己紹介しないと。先にしないと怒られちゃうかもだし…

 

「わたしはフィリス。公認試験を目指してる錬金術士です」

「私はリアーネと申します。フィリスの姉で、旅の付き添いをしています」

「同じく付き添いをしとるアカネです」

「そうかい、あたしはオレリー。知っての通り、この村の長老だよ」

 

 オレリーさん… 紫色のローブをまとってて、風格のあるお婆さん。耳とかおでこに宝石の飾りもつけてるし、偉い人って感じの見た目だよ。 …でも、顔がこわいよぉ。鎧着てたシャノンさんの何倍もこわいよぉ!

 

「しかし… あんた、錬金術士だったのかい。なら、ちょうどよかった。あたしは腰が痛くてここから動けないからさ。あんた、商人のとこで野菜を買ってきておくれよ」

「おつかい… ですか?」

「そうだよ、こいつが金だ。釣りは駄賃にしな」

「あ、はい… でも、ちょうどいいって?」

「錬金術士なんて、なんでも屋みたいなものだろう? ほら、早く行った行った!」

「は、はいぃ!」

 

 あ、お金だけじゃなくてメモもある… 甘竹を5つ、だね。買ってこないと…

 

「…なるほどな。ホンマに恐ろしい雰囲気の人やな…」

「でしょぉ!」

「せやけど、おつかいを受けたからにはやらなあかんよ」

「うん、頑張る…」

「そうや、頑張り。ウチはまたシャノンを拾って採取行ってくるから、じゃあな」

 

 アカネさん、またシャノンさんと… 前はレヴィさんとよく話してたけど、レヴィさんは連れてかないのかな。

 

「アカネさん、レヴィさんとかドロッセルさんとは行かないの?」

「ん? ん〜、そうやな… まだウチすらシャノンに警戒されとるからな。他に何人も連れてったら倒れてまうやろ、あの子。せやから、2人で慣らしていかんとって思ってな。大丈夫、ドナを出るまでにちょいとは何とかするから」

「わかった、頑張って… でいいのかな。まぁ、バイバイ!」

「おぅ、じゃあな!」

 

 …もう夜だけど、大丈夫かな?

 




やることメモ
  0.エルトナ
 →1.エルトナ周辺
   1.乾いた平野帯
   2.ファーヴェ丘陵
  →3.旅人の雑木林・白霧ヶ森
    1.一流の立ち往生
    2.元気な迷い人
   →3.ドナにて
    →1.内気な見習い騎士

 よよ、よろしく、お願いします!
(シャノン)

 よろしくね!
(フィリス)
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