ドナの村でシャノンって騎士と出会って、仲間になったで。
「シャノン、今日も着いてきてもらってええか?」
「あっ、アカネさん。はい、任せてください」
…まだ目を合わせてはもらえんか。まぁ、昨日初めて話しての今日やから、難しいんやろうな… 兜は取ってくれとるから、顔が見れるだけマシと思うしかないか…
「あの、今日はどちらに…?」
「決めとらんよ、シャノンは行きたいところとかあるか?」
「え? えっと… 特には…」
「ほんなら、気まぐれに歩くとしよか」
ひとまずシャノンは捕まえたし、村の外で採取でもしよかな。フィリスはオレリーとかいうお婆さんのおつかいで忙しそうやし、ウチが採取くらいはやったげんとな。ほんで、ドナの村から採取に行くなら… 北側やな。南はすぐ岩壁、東も同じで西と北が開けとるんやけど、行ったことない西はフィリスと行かんとな。せやから、旅人の雑木林の方に向かいながら採取や!
「…シャノンって騎士なんよな?」
「はい。見習いですけど…」
「ほんなら、あのウサギやってくか」
「わかり… ました」
途中で一匹でおる“綿ウサギ”を見つけたから狩ってくことにするわ。ウサギはフィリスの大好物やからな、狩れるときに片っ端から狩っていかんと尽きてまう。それに、ウサギのローストを出せばフィリスに少しは野菜を食わせられるんや。せやから、ウサギは見つけ次第全て狩るくらいの気持ちでいかんと…
「…わたしが前に出ますね」
「わかった、仕掛けるのはいつでも大丈夫やで」
「わかりました」
シャノンの武器は槍なんやけど、どういう戦い方をするんやろうか。身長よりもちょいと長い槍やし、遠くから突き刺して攻撃… ってイメージや。せやけど、ウサギが近づいてきたところを狙って突くって絶対にムズいやんな… 近づかれてもうたら戦えんと思うし、そういうときはウチが守らんとな。
「…行きます」
「ウチも追っかけるから、一気に行こうな」
「はい…!」
槍をしっかり握って、ウサギに突っ込む… なるほど、ウチの想像しとった通りの武器なんやな。 …というかシャノン、思ったよりも動けるんやな。重鎧を着込んどったし、突撃なんてできんと勝手に思い込んどった。速いとまでは言わんが、鎧の割には速い!
「しっかり狙って…っ!」
「キュー!」
なっ…! シャノンの槍が光をまとったと思ったら、槍に合わせて光がウサギを貫いてった… あ、あんまり近づきすぎんほうがええな。特に、正面には絶対に立ったらあかん。あの光で貫かれてまう…
…っと、驚いとらんで、ウチも攻撃せんとな。
「これで終いや!」
「きゅぅ…」
「わぁ…!」
よしっ、ちゃんと炎も氷も出てくれたおかげで倒しきれたわ。
…シャノンの攻撃にはホンマに驚いたわ。単純な力はもちろん、槍を握って走れることも、綺麗に真っ直ぐ突き刺したことも、槍から飛び出した光も… 何もかもが、凄腕の騎士って感じや。 …ホンマにすごい人や、これで見習いなんが信じられん。全てが、ウチやフィリスの遥か上を行っとる。
「シャノン、ホンマにすごいな! あんなん、初めて見たわ」
「えっと、そう… ですか?」
「もっと自信持ってええ、ウチなんかよりよほど強いわ。 …ウチよりって言われても褒め言葉にはならんか」
「い、いえ、そんな… アカネさんも、すごかったです。わたし、炎とか氷なんて出せませんし…」
「これは武器の力やから、ウチの力やないよ」
「そ、それなら、わたしも武器のおかげです…」
「そうやったとしても、シャノンは強い。ウチも頑張らんとって、そう思うわ」
「…えへへ」
ウチもシャノンから色々と学ばんとな… 光を放ちながら突いたあの技はウチには無理やけど、他は学べることがたくさんや。魔物に対しての近づき方、そのまま攻撃に行く流れ、守る時の動き、味方との連携… ウチもプラフタ先生から習ったけど、シャノンは間違いなくウチよりも洗練されとる。
…シャノンと同じだけの技量を身につけるのに何年かかるかは… まぁ、気にしたらあかんな。できる範囲で、ウチも頑張ろう。
「…えっと、この後はどっちに向かえば…」
「あぁ、あっちや。あっちに行きたい場所があるんや」
「あっ、アカネさん! あの、これ、見てください!」
「ん〜… んぅ!? なんやこれ、なんや!?」
「金色のプニプニ玉ですよ! わた、わたし、初めて見ました!」
「ウチも初めて見た… フィリスに届けに行こう!」
「はいっ!」
あんな、信じられんかもしれんけど、金色のプニプニ玉があったんや! 場所は前に見つけた環状列石や、環状石碑群ってのが正式な名前やったかな…? ちょいと調べてみたいなぁと思って来たら、環状に並んどる石碑にカラフルなプニプニ玉があったんや! ほんで、それをシャノンと集めとったら、金色のを見つけたんや。金色やで、黄金色やで!
もしかして、前に来たときにお供えしたからやろうか。確かフィリス、青いプニプニ玉をお供えしとったよな。 …こういうのって下心があるとダメなんかもしれんけど、試しにお供えしてってみるか。拾ったプニプニ玉をそのまま供えるんは気が引けるし、さっきのウサギの毛皮を… よし、これでええな。
「…ふふっ」
「ど、どうかしました…?」
「いや… 金色のプニプニ玉を見つけたとき、えらいはしゃいどったと思ってな」
「えあ、えっと、その、あの…」
「普段からあんな感じに楽に接してくれてええんやで、笑っとるほうが似合うしな」
「…頑張ります」
頑張ってもうたら違うんよなぁ… まぁ今はええか、早く帰ろう。
「おっ、アトリエがある… ただいまー」
「これが、フィリスちゃんのアトリエ… お、お邪魔しまー… はぅっ…」
「…いるのは俺だけだ、フィリスは魔物討伐に行った」
「そうかー、ほんならレヴィさん。これ、シャノンが見つけたんやけど、すごいやろ?」
「金色のプニプニ玉か… 珍しいな」
ふふっ、レヴィさんも驚いてはるわ。そらそうよな、金色やもん。金色のものはレアで高価って相場が決まっとる。 …売らんけどな。そもそもシャノンが見つけたものやし、フィリスの調合に使ってもらわんと。
「ほんでフィリスは、なして魔物討伐に?」
「長老に、魔物を倒して体を鍛えろと言われたそうだ」
「そ、そそ、そう、ですか… あああ、あの、わたし、帰りますね…」
「あー… うん、ありがとうな」
「…アカネ。俺は彼女に嫌われることを何かしたか?」
「…何も? 強いていえば… 雰囲気?」
「…そうか」
…まぁ、シャノンに説明せんかったウチにも非はあるな。レヴィさん、雰囲気だけは変で怖い人やからなぁ… ホンマは優しくて、周りを見れるええ人なんやけど。 …ある意味では初めて会った時のシャノンと同じやな。
そうや、レヴィさんにシャノンのこと説明しとかな。
「シャノンやって、悪い子やないんやで? ちょっと恥ずかしがりで、怖がりで、シャイなだけで…」
「…なんとなくはわかった。ただ… ちょっとではないんじゃないか?」
「…せやな。せやけど、これから一緒に旅するやろうし、仲良くな」
「本当にいけるのか…?」
「…たぶん」
まっ、なんとかなるやろ。なせばなる、何事も。 …それに、シャノンやって克服しなきゃって思っとるはずやから。その為にフィリスを観察しとったはずやし… せやから、なんとかなる。その… 旅くらいはな。
「…アカネ、俺は用事があるんだが、ここの留守番を任せてもいいか」
「任されたで」
ホンマはフィリスを探して魔物討伐の様子でも見に行こうと思っとったけど… アトリエにおるんなら、絵でも描こうかな。真面目に絵を描きたいと思って、イーゼルも買ったんやけど… 肝心の絵の具もキャンバスもないから今は紙とペンだけで描くわ。 …せめて絵の具から買うべきやったかな。イーゼルだけあっても、ありもしないキャンバスを載せる日を夢見る悲しい台座や。
まぁ、そんなのを気にするんは絵が上手くなってからでええか… 紙とペンで描く絵と、キャンバスと絵筆で描く絵は違うんやろうけど、ウチにはどっちもできんからな。今は紙とペンで、イメージだけでも描いて練習しよーっと。
「アカネさーん、ご飯ですよー!」
「ん… あぁ、すまん。 …集中するといつもこうなってまうな」
「悪いことじゃありませんから。それに… フィリスちゃんも同じですから」
「ふ〜ふ〜ふ〜んっ♪」
今は… 次の日の朝か。あかんなぁ、2人が帰ってきてるのはおろか、フィリスが調合しとるのにも気付かんかった。音も結構聞こえるし、鼻歌やって高らかに響いとるんにな…
せやけど、気付けんほど集中して描いとったおかげか、ウチにしては綺麗な絵が描けたわ。白黒の線画だけやけど… うん、ウチの家や。アスファルトの道路、石ブロックの塀、ちょっと綺麗な門、門の側の電柱、花が咲いてる庭、2階建ての家… 懐かしいなぁ…
「………」
「…アカネさん、何を描いていたんですか?」
「…ウチの家や。子供の頃から、大人になっても過ごしとった、たった1つの家や」
「まぁ… 覚えてたんですね。それなら、アカネさんの生まれた街も探せるかも…」
「せやなぁ… この絵で、探せるんやったらよかったな…」
「…?」
「いろんな人に聞いてみようね♪」
「…せやな」
…当然のことやけど、ウチの家はこの世界には存在せん。探したって、見つかる可能性はゼロパーセントや。コンマ1もない、完璧なゼロ。 …そんな物を探す為に時間を使わせるんも悪い気がしてまうな。
…話題、変えるか。この話をこれ以上しとったってええことあらへんし。
「フィリスは何を作っとるんや?」
「オレリーさんに頼まれた湿布薬! もうできるから… よしできた、届けてくるね!」
「あぁ、行ってらっしゃい… リアーネさん、最近のフィリス、オレリーさんの雑用ばかりしとらんか?」
「私もそう思ってたんですけど… 全部、課題だったそうですよ」
「…課題?」
「はい。オレリーさん、実は公認錬金術士で、フィリスちゃんを試すためにおつかいさせたり、雑用をさせてたそうです」
はへぇ… あの人、ただの怖い長老さんやなかったんか。たしか、甘竹を買ってこいとか、魔物を倒してこいとか、そんな話やったよな… 課題とは思えんけど、ディオンさんの課題も殆ど課題じゃあらへんかったし… そんなもんなのかも知れんな。
「…ウチやったら、途中で雑用ばっかやーって嫌になって、推薦状貰えへんかったやろうな」
「私もそうだと思います。 …フィリスちゃん、カッコよかったんですよ。オレリーさんに、雑用は嫌じゃないのかって言われたら、雑用でも何でも人の役に立ちたいって!」
「そりゃフィリスらしいな。 …フィリスの良いところや、自分やって1年で公認試験を受けなあかんのに、人の為に時間を使える」
…フィリスが帰ってきたら、お出迎えしてやらんとな。きっと推薦状を貰えるやろうけど、それはフィリスでなければ貰えんかった、フィリスの良さの証明やろうから。
「ただいまー! リア
「おめでとう、フィリスちゃん!」
「よかったなぁ、もう2枚目やんか」
「うん! このままいけば、3枚集まる!」
今は… 4月の26日か。このペースやったら、26枚くらい集められるかもな。 …こっからライゼンベルグまでに24人もおったらやけど。たぶんおらん、そんなに町もないやろうからな。中間地点のフルスハイムにはおるやろうけど、その先は… 地図見た感じ、町も2つから4つやろうし、公認錬金術士もおって8人やろ。 …1つの町に3人もおることないよな? もしそうやったら、その町で生まれた人は知り合いに3枚書いてもらうだけで済んでまうからな…
「ほんなら、明日にでもここを発つんか?」
「ん〜… もうちょっとドナにいようかな。錬金術の勉強もしなきゃだし」
「それなら、今のうちにウサギをたくさん狩っておくわね♪」
「ウチもシャノンと狩りしよかな…」
旅立ちまでの間は、のんびりと自然を味わうとするかな。
やることメモ
0.エルトナ
→1.エルトナ周辺
1.乾いた平野帯
2.ファーヴェ丘陵
→3.旅人の雑木林・白霧ヶ森
1.一流の立ち往生
2.元気な迷い人
→3.ドナにて
1.内気な見習い騎士
→2.錬金術士の心得
たとえ雑用だったとしても、人の為なら頑張りたいな♪
その意気やけど、ウチにも手伝わせてくれよ?