アカネのアトリエ〜不思議な色の錬金術士〜   作:緑雨

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あらすじ

 クラーデル平原で、イルちゃんとアカネさんの炎比べを見たよ。それと、石橋が壊れちゃってたから南に行けなくて困ってるんだ。


遠景を仰ぐ

 

 壊れた石橋から、北の方に進んできたんだけど…

 

「これは… 塔?」

「遠見の塔ね。遠くを見るための塔よ」

「面白いもんが見えたら、歩いて行くのもええかもな」

「ん〜… あそこに何か見えない?」

「…フィリス、塔を登って周りを見るのよ」

「わかってるよー! 下からでも見えちゃったの!」

「その… わたしには、何も見えないんですけど… えっと、あの先に何かある… のですか?」

「…何があると言うんだ? あの空に」

「雲の上に船でも浮いてるんちゃうか?」

「むー! 本当に見えたんだよー!」

 

 まったく、全然信じてない! 本当に空に何か見えたのになぁ… でも、空に何があるんだろう。大きな鳥さんか、絵本で見た空島か、アカネさんが言うような空飛ぶお船か… 絶対に信じてない声だったけど、ちょっとは考えてくれてるのかな…

 

 …塔、登ってみよう。そうしたら空の何かがちゃんと見えるはず。地面に足つけてても見えたんだから、塔に登ったらよく見えるはず!

 

 

 

「あっ、あれ…?」

「…アタシには何も見えないんだけど」

「見えた気がしたんだけどなぁ…」

「光の屈折で景色が歪んで見えることもある。その類だろう」

「蜃気楼(しんきろう)ってやつやんな? 雲もあるしパって消えてまったんかもな」

「フィリスちゃん、また見えたらすぐに教えてね」

「うん…」

 

 何かが浮いてる気がしたんだけどなぁ… 本当にシンキロウだったのかなぁ…? う〜ん… でも、そうじゃなかったら消えたりしないもんね。残念… すごいの見つけたと思ったんだけどな〜。

 

「…あの先に、道が続いているな」

「あの道を進めばライゼンベルグに辿り着けそうね。その先は山道みたいだけど…」

「南の方は砂漠なのかな? あっちも行ってみたかったな〜」

「…山の方の道も、途中で南に向かう脇道があるんちゃうか? はっきりとは見えんけど、道がありそうな感じがするんやけど…」

「行ってみればいいんじゃない? 他に行くあてもないんだし」

「そうだね、行ってみよう!」

 

 …頑張って登った塔を、もう降りないとなのか。うぅ、結構疲れたんだけど… 弱音吐いてても仕方ないよね、早く降りようっと。

 

 

 

「脚が痛い…」

「あの、背負いましょうか?」

「大丈夫、頑張って歩く…」

「本当に大丈夫? 次のたき火、結構先よ?」

「大丈夫… だと思う」

「辛いときはいつでもいって、私がおぶってあげるから、ね?」

「うん… その時になったらお願いするね」

 

 シャノンさんにもリア姉(ねぇ)にも迷惑かけたくないし、頑張らないと… ちょっと脚が痛いだけだし…

 

「痛いんやったら、軟膏塗ったらええんやないか?」

「…たしかに、塗ってみようかな」

「フィリスが作った薬?」

「わたしが生まれ育った、エルトナに伝わる軟膏だよ! イルちゃんも使ってみる?」

「ケガもないのに、どこに塗るのよ…」

 

 よしっ、脚に塗って… 楽になった気がする。イルちゃんも気になってるみたいだし、今度ケガしたら塗ってあげよーっと。ケガしないのが一番だけどね♪

 

 さて、塔を降りたわけだけど、進むのは東の方だよね。街道沿いに進んで行けばいいかな? 採取もしたいし、ちょっと逸れながらになっちゃうけどね。お花… はあんまり変わんなそうだけど、鉱石とかは新しいのが採れるかもだし。

 

 気になるし… あの岩を壊してみようかな?

 

 

「間違ってもこっちに投げるんじゃないわよ」

「そんな間違えないよ!? まっすぐ、岩に投げるから!」

「…俺たちは離れておくか」

「そうですね… アカネさんもこちらへ」

「ふふん、ウチがみんなを守る壁になったるわ」

「バカなこと言ってないで、もっと離れるわよ」

「そんな場所には投げないって!」

「岩の破片を気にしてるの! そこまでバカだとは思ってないわよ!」

 

 あっ、破片の話か。 …わたしもちょっと怖くなってきたな。岩に向かってフラムを投げたら、迷わず後ろに下がろう。みんなは… 50mくらい離れて、別の岩に隠れてるのかな。よしっ、あそこまで走ろう。

 

「ふーっ、はぁーっ」

 

 息整えて… いける。これを投げたら、すぐに切り返して、走る! せーのっ!

 

「逃げろーっ! うぁぁ!?」

 

 けふっ、土煙が、すごいっ… 破片は大丈夫だったけど、前が見えないよ… えっと、みんなは…

 

「フィリスちゃん! 大丈夫!?」

「大丈夫だよ、岩は?」

「ちゃんと… 壊れたみたいやな」

「使えそうなの、拾うんでしょ? 手伝うわよ」

「うん、ありがとう!」

 

 よしっ、上手くいったみたい。さーて、どんな素材が採れたかな〜?

 

 まずは… “玉鋼石”。黒い玉みたいな鉱石なんだけど、精錬すると金属が取り出せるんだ。その金属はすごく優秀でね、鋭い武器を作るのに使ったりするんだ。わたしとリア姉(ねぇ)も、玉鋼石でできたナイフを持ってるんだよ。獣を捌いたりするからね♪

 

 次は… この赤っぽくてゴツゴツしたかたーい岩は“クプルフ鉱”かな? ツルハシ砕き、なんて別名もある恐ろしい岩だよ。たまにプニみたいに柔らかい岩もあるんだけど、これは硬い。これもそうだけど… こっちも硬い。

 

 後、黄色い鉱石もあるね。…あいたっ! シビれた… 黄色くてシビれる岩、これは“ライデン鉱”だね。雷の力があるから、触ると感電しちゃうんだよね… 触らずに見極めないと、今みたいに痛い目に遭うから気をつけようね! …痛いよぉ。

 

 …この雷、戦闘に使えないかな? フラムみたいに、投げたら爆発して雷で魔物をビリビリって! …今のわたしなら、作れる気がする。よしっ、後で試してみよう。

 

「はいっ、フィリス」

「ありがとー、イルちゃん。 …イルちゃんも大丈夫? 使いたい素材とか、あるんじゃない?」

「必要なら自分で集めるから、気にしないでいいわよ」

「…わかった。でも、必要なのがあったらすぐ言ってね。わたしのコンテナにあったら、すぐ渡すから!」

「覚えとくわね」

 

 わたしのアトリエには、お釜が2つあるからね♪ ソフィー先生からのお下がりと、みんなで作ってくれたすごいやつ! だから、わたしとイルちゃん、2人で錬金術ができるのだー! …イルちゃんの錬金術は勉強になるから、ちゃんと見ないとね。

 

「ふぁふぁええはぁー」

「…アカネさん、何言ってるの?」

「ん… 仲良えなぁって」

「みんなで素材を拾ってるときに、何食べてるのよ」

「ツヴァイナッツや、2人も食うか?」

「食べる!」

「…それなら、アタシも貰うわ」

「はいよー、よく噛むんやでー」

 

 ん〜、美味しい。元気も回復、まだまだ行けるね! さぁっ、東に進むぞーっ!

 

 

 

「たき火だ〜! 今日はここにしよう」

「さっさと張って、料理するぞ」

「おっふろ〜、おっふろ〜!」

「…旅をしてるのにこうやって休める場所があって、お風呂も入れるなんて、やっぱり違和感ね」

「慣れてまうと、もうアトリエなしの旅は考えられんで」

「アカネさん、その… 少しいいですか?」

「ん? なんや?」

「休まれる前に、この前の技の練習だけでもと思って…」

「あぁ、せやな。やっとかんとよくならんし… キノコやってくるわ」

「アタシも行くわ。炎なら、アタシの専売特許だもの」

 

 3人でどっか行っちゃった… もう晩ごはんの時間も近いし、暗くなる前に帰ってくるんだよー! …あの3人なら大丈夫か、ドロッセルさんじゃないんだし。

 

 アトリエ張れたし、お風呂の中で雷の爆弾のレシピ考えよっと。あそこをあぁやって、こうして… これを使ったら… ん〜、悩ましい…

 

 

 

 

 

「でっきたー!」

「どれどれ… 上手じゃない、やるわね」

「ふふーん、これでもエルトナで1番の錬金術士だからね」

「分母が1やろ、それ」

 

 次の日に早起きして、雷の爆弾… “ドナーストーン”を作ったよ! 投げるとビリビリってして、魔物を倒しちゃうんだ! …たぶん。使ったことないけど、イルちゃんが褒めてくれたし、たぶん大丈夫! さーて、もうお昼過ぎちゃったけど、獲物を探しに行かないとね…

 

「フィリスちゃん、アトリエの側でこんな書類を拾ったんだけど…」

「書類…? 誰かの落とし物かな?」

「…見聞院の本院宛と書いてあるぞ」

「見聞院… じゃあ、これもアンネさんの落とし物かな…?」

「その人、フルスハイムにいた人よね。まだ船は動いてないでしょうし、別の人じゃない?」

「見聞院か… この近くにその本院があるんか?」

「たしか、“ヴァイスラーク”に見聞院の本院があったはずです」

「それなら、そこを目指してみよっか」

「ヴァイスラークならここから東のはずだから、ちょうどいいわね」

 

 ヴァイスラーク… どんな町なのか、まったく知らないや。でも、見聞院の本院があるってことは大きい町なのかな… あっ、見聞院っていうのはね、本がたっくさんある場所だよ! 情報を集めて記録する組織らしくて、わたしが書いた地図とか図鑑を持ってくとお礼も貰えるんだよ♪

 

 …あっ、お礼目当てで情報を届けるわけじゃないからね! エルトナとか、わたしが辿った場所のことをいろんな人に、正確に届けるために、見聞院に伝えてるだけだから!

 

 …ふぅ、落ち着こ。見聞院のことばっかり気にしてないで、今は目の前のことを考えないとね♪

 

 さあっ! ヴァイスラークの方に進みながら、ドナーストーンを試す魔物を探そー! 赤プニとかスポアドッグじゃ弱いし、もうちょっと強い魔物がいいな〜♪

 

 

 

「フィリス、そろそろあいつに挑まんか?」

「えっ… 無理じゃない…?」

「怖気づくなくてらしくないじゃない。アタシもいるんだから、大船に乗ったつもりでいなさい。 …で、どの魔物?」

「アカネが指差したのはグリフォニアンのようだな」

「…お、大船に乗ったつもりでいなさぃ…?」

「イルちゃん! すごい怖気づいてるよ!?」

 

 グリフォニアン… エルトナを出てすぐ、乾いた平野帯で出会ったときは逃げてきたし、アカネさんは襲われてケガもしてたけど… でも、いつまでも逃げてちゃダメだよね。わたしだって強くなった、錬金術士としても、冒険者としても!

 

 それに今は、みんながいる。あのときはリア姉(ねぇ)とアカネさんだけだったけど、レヴィさん、シャノンさん、イルちゃん… それに、リア姉(ねぇ)もアカネさんも、たくさん魔物を倒して強くなった。今のわたしたちなら、きっと…!

 

「…行こう。わたしたちの力なら、きっと勝てる!」

「騎士として… わたしが、守るよ」

「フィリスちゃんには指一本触れさせないわ!」

「魔物風情に、遅れを取るつもりはない」

「ふんっ! 天才は、絶対に負けないんだから!」

「さぁ、派手にやったろうやないか!」

 

 まずは、グリフォニアンに仕掛ける前に隊列を組まないと… 前はシャノンさん、その後ろにアカネさんとレヴィさん、さらに後ろにイルちゃんとリア姉(ねぇ)、最後方にわたし… 自然とこう並んじゃったけど、こうじゃダメだよね。わたしだって、守られてばかりじゃいられないから!

 

「最初はわたしがやる! このドナーストーンで…」

「アタシも手を貸すわ! 一緒に仕掛けましょう」

「そうだね、イルちゃん! …せーのっ!」

 

 わたしとイルちゃんが投げたドナーストーンで、戦闘開始! ちゃんと雷が出てたから、ドナーストーンは上手くできてそう! …そんなこと喜んでちゃいけないね、もうグリフォニアンはすぐそこなんだから!

 

「守ります!」

 

 シャノンさんがグリフォニアンの攻撃を受け止めてくれたから… 攻めるなら今だよね! みんなも準備できてるみたいだし… 一斉に、叩き込めー!

 

「切り裂け刃よ!」「一気に貫く!」

「熱いわよ!」「避けられるかしら!」

「吹っ飛べー!」

 

 レヴィさんの剣から放たれた闇の斬撃波、アカネさんの炎と氷を帯びた剣の突き、イルちゃんの杖から飛び出した炎の魔法、リア姉(ねぇ)が空に放った矢の雨、そしてわたしの岩石の魔法! これだけやったらグリフォニアンも…

 

「ぐおぉぉぉー!」

「まだ生きてる!?」

「ぐぉ…」

「…断末魔だったようだな」

「まっ、アタシたちにかかればこんなものね」

「シャノン、大丈夫か?」

「大したケガではないので、大丈夫です」

 

 勝てた… それも、こんなに簡単に。強くなったのもあるけど、やっぱり6人もいると心強いね。シャノンさんが守ってくれるから安心だし、みんなが攻撃してくれるからわたしも当てやすいし、隙にどんどん連続で叩き込める! もしもわたしとリア姉(ねぇ)だけだったら、きっと勝てなかったよね…

 

「フィリスちゃん、ちゃんと素材も回収していきましょう?」

「そうだね… グリフォニアンさん、羽根とか使わせてもらうね♪」

 

 …勝てはしたけど、グリフォニアンってグリフォンの子供なんだよね。それに… わたし、遠くにグリフォンが見えてる気がするんだ。結構遠いから、気づかれてないみたいだけど… エルトナの近くより、魔物が強くなってる気がする。これからグリフォンみたいな強い魔物を倒すためにも、武器とか作ってみようかな… フルスハイムにいたときに、ロジーさんから買っとけばよかったかもね。

 

 わたしの杖、リア姉(ねぇ)の弓、アカネさんの剣… は要らないか。レヴィさんの剣とか、シャノンさんの槍も作れるかも。2人とも、武器の質とか気にしてないのかあんまり強くなさそうだし。…イルちゃんはいっか。イルちゃんの杖は自分で作りそうだし、わたしのより強そうだし…

 

 それに、装飾品も作ってみようかな。何個か閃いてはいるんだ、“エンゼルリボン”とか“グナーデリング”とか。まだ作ってないけど、ソフィー先生に作るもののイメージとレシピを伝えたら、完成品の名前を教えてくれたの。だから、きっと作れるはず!

 

 …そうと決まれば、ヴァイスラークに着いたら作ってみようかな。だーかーらー…

 

「よしっ… ヴァイスラーク目指して、しゅっぱーつっ!」

 

 

 




やることメモ
  0.エルトナ
  1.エルトナ周辺
 →2.湖の向こう側
  →1.クラーデル平原・ヴァイスラーク
    1.2人の炎
   →2.怖いもの知らず


 騎士として、みなさんを守れてよかったです
(シャノン)

 安心して戦えてるよ!
(フィリス)

 間違えても誤射しないようにね?
(リアーネ)
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