茜色の錬金術士   作:緑雨

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あらすじ

 フィリスが町の人の困りごとを解決する為に、爆弾を作った! それと、ウチはプラフタさ… プラフタ先生から指南を受けることになった。


革の加工

 

「はぁー!」

「もっと重心を低くして… もっと力強く、突き刺してください!」

「はい! てやぁー!」

「もっと剣先まで直線的に!」

 

 休みなく、数時間やっとる! とてつもなくスパルタな気もするけど、実際の戦闘になったら命もかかるからな… これくらい大変な方が、よっぽど嬉しいわ。ちょっとは休みたいけどなぁ!

 

「…少しは良くなりましたね」

「そら、良かったです…」

「今からプニを連れてくるので、休んでいてください」

「はっ、はい!」

 

 プニ… ぷにぷにしとる魔物ってことやろか。ウチでも勝てる相手やといいなぁ…

 

「来ましたよ、構えてください!」

「ぷにー!」

「はっ、はやっ!」

 

 プニは… あぁ、ホンマにぷにぷにしとる。それにちっさくて弱そうやけど、それでも魔物や。灰色なんで周りの岩肌と同化してちょいと見づらいけど、そんな魔物ゴロゴロおるやろうし、弱音は吐けん。何とか突き刺してやらんと…

 

「先ずは守りの練習からです! 攻撃せず、刀身を利用して相手の攻撃を受け止めてください」

「守りからなんですか、わかりました!」

「守りからですよ、身を守ることが最優先ですから。私が回復しますから、臆せず立ち向かってください」

 

 くっ、くる…! プニの攻撃を、細剣(さいけん)の刀身で受け止める… こんなほっそい剣で受け止められるんか!? いや、やるしかあらへん!

 

「あいたっ!」

「目を逸らさず、相手を見続けてください! どこから攻撃してくるのか、見逃してはなりません!」

「目を逸らさず、見続ける…」

 

 思わず叫んでもうたけど、所詮はぷにぷにな生き物や。そこまで痛いわけやあらへん… ビビる必要はないんや、奴を視界に収め続けて… 攻撃を受け止める!

 

「いたっ!」

「高いところで身構えているから、反応が間に合わないのです。相手がどうやって攻撃するのかを考えてください!」

「…確かに!」

 

 そうや、プニはちっさい! 律儀に立って、胸の前で守ろうとする必要はないんや。最初から低い位置の攻撃に意識して、刃先は下に向ける!

 

「身体は立ったまま! 屈んでは反撃に移れませんよ!」

「立ったまま、下に気をつけて… はぁっ!」

 

 ふ、防げた! 完璧には防げとらんから、タックルは食らったけど… でも、守ったおかげで勢いが緩まっとった。おかげで殆ど痛くあらへん!

 

「良い調子です、繰り返し練習してみましょう」

「はいっ!」

 

 それからウチは、プニの攻撃を受け止め続けた…

 

 

 

 

 

「ほっ、はっ、ふっと」

「2匹相手でも凌げるようになりましたね。邪魔なので片方始末しておきます」

「ぷにぃ…」

 

 あっ、途中から来てたほうが爆破された… 修行の手伝い、ありがとうな。お前のことは忘れへんで… 数時間の付き合いやけど、絶対に忘れへんからな!

 

「それではアカネ、反撃に出ましょう」

「反撃、ですね!」

「次の攻撃を防いだら、即座に前に踏み込み突いてみてください」

 

 次の攻撃を防いだら、一気に前に… よし、来る!

 

「防いで… とりゃあ!」

「ぷにぃ!」

「掠ってはいますが有効ではありません。魔物も攻撃後は下がりますから、相手の動きを予測してください」

 

 確かに、魔物やって痛いのは嫌やもんな… プニの動きは何度も見たんや、もう予測はできるはず。前にタックルした後は、一気に下がって体勢を立て直す。せやから、狙う場所は…

 

「よっ、くらえ!」

「ぷに!」

「んなっ!? いっつ…」

「攻撃は効いていますよ! ですが、攻撃した後は直ぐに下がってください。こちらが相手の隙を狙うように、魔物もこちらの隙を狙いますから」

 

 プニ、思ったよりも賢いんやな… ウチと同じだけの技量と考えを持って戦っとるってことやん。つまり、ウチはプニと同レベル… だ、誰やって最初は素人や! いつかはウチだって、飛ぶ鳥を落とす戦士になれるはずや!

 

「てい! ふっ、はぁ!」

「その調子です、それを続けましょう。 …次のプニを探してきますね」

「ほっ、とっ、たぁ!」

 

 何となく、感覚は掴んできたで… 防いで、踏み込んで、突き刺して、後ろに跳んでまた防ぐ! 次も、てやぁ!

 

「ぷにっ…」

「あ…」

 

 …お前のことも、絶対に忘れんで。 ずっとウチの修行に手伝ってくれてありがとうな。 っと、何か落としたな。これは… 何やろうか。もしかしたら錬金術に使える素材か…? よし、持って帰ってフィリスに使ってもらおう。それが1番や。

 

「次のを連れてきましたよ。さぁ、修行を続けましょう」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

「つっかれたー!」

「おかえりー、お茶どうぞ。プラフタは?」

「ありがとうございます。プラフタさんは、少し町を見てくるそうです」

「でっきたー!」

「お疲れ様ー、良い感じ?」

「良い感じです!」

 

 アトリエはやっぱり落ち着くなぁ… 実家のような安心感、というほどには馴染んどらんけど、エルトナの中では1番実家に近い感覚や。エルトナの家は色味が暗くてウチには寂しかったんやけど、アトリエは明るく優しい雰囲気で最高や。全体的に木って感じも強いし、落ち着くわぁ…

 

「フィリスは何を作っとったん?」

「なめし液です!」

「なめし液… なめしって、革とかの(なめ)す、であっとるか?」

「そうです! 届けてきますねー!」

「いってらっしゃーい!」

「転ばんように気をつけるんやでー!」

 

 なめし液か… 使ったことはもちろん、触れたことも見たこともあらへん。何なら、革をなめすのに専用の液がいることすら知らんかった。 …錬金術ってそんな物まで作れるんやな。戦闘に限らず、日常生活で活きそうな力や。なめし液を作れる能力、それだけで多分どこかでは重宝されるやろ。 …なめし液のこと殆ど知らんから何とも言えんけど、この町にある適当な材料で作れるんなら、凄いことやろ、多分。

 

「因みに、なめし液って何を使って作るんです?」

「フィリスちゃんは、“妖精の日傘”と“地底水”で調合してましたよ」

 

 …地底水はわかる。地底の水ってことやから、井戸で汲める水が多分“地底水”なんやろ。でも、妖精の日傘ってなんや。エルトナにそこそこおるけど、妖精なんて見たことあらへんし、日傘も見たことあらへん。

 

「…妖精の日傘ってどんなやつです?」

「キノコです!」

「…なるほど! 妖精ってちっさいから、キノコを傘にしとるってことですか!」

「そういう経緯で名付けられたんでしょうね♪」

 

 おもろい名前やな… ウチがこの前集めてたキノコ、妖精の日傘なんて名前やったんか… 洒落た名前でええなぁ、エルトナに日は差さんから日傘はいらんけど。ちょっと気に入ったし、妖精の日傘集めに行こうかな…

 

 っと、ノックの音や。誰やろう?

 

「失礼します、フィリスちゃんは… いないみたいですね」

「リアーネさん、フィリスちゃんに用事ですか?」

「はい、おやつを持ってきたんですけど…」

「すぐ帰ってくると思いますし、そこで待っててください」

「お気遣いありがとうございます、そうさせていただきますね」

「…その肉もフィリスにとってはおやつなんですか?」

「フィリスちゃんの好物なんです。おやつには重いって私も思うんですけど…」

 

 …もしかして、ご両親からの差し入れなんやろうか。大喧嘩になって家出みたいになっとる以上、直接渡せんからリアーネさんに代わりに届けてもらっとる、みたいな…

 

 …仲直り、できるとええなぁ。課題が全部終わった後にでも、家に帰って家族団欒(だんらん)で仲直りして、それから旅立ちになったらええよなぁ…

 

「…ソフィーさん、フィリスちゃんはしっかり、錬金術が出来ていますか?」

「はい♪ フィリスちゃん、吸収も早くて、どんどん上達してますよ」

「それなら良かった…」

 

 それからウチらは、フィリスの話をみんなでしとった。フィリスの話と言っても、悪い話やないで。今の、フィリスが錬金術でしとることの話や。硬い岩に困っとる人の為に爆弾を作った話とか、なめし液が足りなくて困っとる人の為になめし液を作った話とか、これから怪我をした人の為に薬を作るって話や。爆弾とか薬は外に出てからも使いそうやし、外に出る日に向けて準備も整ってきとる気がするな。なめし液は… 知らん。外で魔物の革でもなめすんちゃうか?

 

 

 

「……アカネさん、前から腰に剣なんて携えていました?」

「これですか? ついさっきまで、使い方を習っとったんです。最低限戦えたほうが、役に立てるやろうからと」

「役に…? 何の役に、ですか」

「もちろん、フィリスの役に、ですよ。ウチにできる範囲で、フィリスの手助けをするつもりなんで」

「まぁ… フィリスちゃんのこと、守ってくださるんですね。 …お願いしますよ?」

「…守れるだけの技量があるかは、怪しいところですけどね…」

「1人で守らせたりしませんよ。フィリスちゃんのことは、が、全力で守りますから」

 

 えらく力強い“私”やったな… ウチはリアーネさんからフィリスを取ったりせんから、安心してもらってええで。ある種、同志やと思っとるから。妹大好き同盟が完成する日も近いと、そう踏んどるからな。

 

 っと、長く話して疲れも取れたし、そろそろ採取に出かけようかな。ウチには妖精から日傘を奪い取る仕事があるんや。 …実際に妖精が日傘にしとるわけやないやろうから、そんな(ごう)の深い仕事やないで。

 

「戻りました。アカネ、これをどうぞ」

「プラフタ先生、それなんですか?」

「エルトナで採取可能で、調合に使える素材をリストアップしました。完全に網羅(もうら)できているかは分かりかねますが、フィリスが使う可能性のある素材は全てまとめてあります」

「ありがとうございます! ほんならこれ持って、採取行ってきます!」

「いってらっしゃーい!」「また今度」「頑張ってください」

 

 よーっし、集めてくるでー!

 

 

 

 

 

「『風はまるで、旅人のように世界を巡る。日が落ち、月が沈み、数多の星が流れても』…」

素敵(すてき)詩的(してき)な本やな」

「………」

「すまん、やけど素敵な詩って思ったんは本当や」

「アカネさん。お外に行ったら、わたしも世界を巡る風に会えるかな」

「そらもちろん、きっとすぐに会えるで」

「…よし、頑張ろうっ!」

 

 数日後、アトリエでフィリスが本を読んどった。課題も佳境って感じで、今から“エルトナ軟膏(なんこう)”っちゅー薬を作るそうでな。その前に、本を読んで気を落ち着けてたんやろ。エルトナ軟膏にはウチが拾ってきた“自然鉱物油”って素材が使われるらしくて、ウチとしても薬の完成が楽しみや。

 

 …自然鉱物油、集めるの無茶苦茶大変やったからな。岩から油が溢れ出とるんはええんやけど、それを集めなあかんからな。岩を持ってきたらベタベタするし、油を集めようにも全然袋に入ってくれん。岩ごと袋に詰めて集めたんやけど、その過程でウチの手は酷い有様や。湖で洗い流したからもう大丈夫やけど、あの日は手から妙な匂いもしたし、最悪やったな…

 

「…これでフィリスに出された課題も、一段落になるんやな」

「そうですね… フィリスちゃん、凄く頑張ってたから」

「本当に努力していましたね。これほどまでに成長が早いとは思いませんでした。この調子なら、外に出ても問題ないでしょう」

「きっと、外に出る許可ももらえるやろうな」

「…そうなったら、アカネさんはどうするんですか?」

「ウチですか? ウチは…」

 

 答えは1つ… 何やけど、断られる可能性もあるんよな。 …せやけど、エルトナにとどまったって何も起こらんし、ウチだって外の世界は気になるし、絶対にコレしか答えはあらへん。

 

「ウチは、フィリスと旅がしたい思っとります。 …フィリスに断られるかも知れませんけどね」

「アカネさん、断らないよ! わたしも、アカネさんと、リア(ねぇ)と、みんなで旅がしたかったんだ!」

「おぉ、響く声やな…」「フィリス、釜に集中を」

「ふふっ、良かったですね、アカネさん」

「ええ、断られんでよかったです」

「それならアカネ、また訓練に行きますよ。錬金術士と旅に出るのなら… あなたに教えなければならないことは、まだまだありますから」

「プラフタ先生、望むところです!」

 

 それからウチらは、2人をアトリエに残して再び採掘場に向かった。フィリスと旅に出るその時に向けて、フィリスを守れるようになるためにも…

 

 




やることメモ
 →0.エルトナ
   1.来訪者
   2.錬金術を知ろう
  →3.お外に出る為に
    1.硬い岩を壊したい
   →2.革鞣(かわなめ)しと腰治(こしなお)

 これで困りごとも全部解決!
(フィリス)

 外に出る日に向けて、準備を進めんとな♪
(アカネ)
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