茜色の錬金術士   作:緑雨

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あらすじ

 フィリスが町の人の困りごと3つを終わらせた! うちも、細剣を使ってプニくらいなら倒せるようになったで!


錬金術士の戦い方

 

「それでは、始めましょうか」

「えっと… 何を始めるんでしょうか?」

 

 プラフタ先生に、錬金術士と旅する上で大切なことを教えるって言われて採掘場に来たんやけど… また、プニと戦うんやろうか。せやけど、もう細剣の使い方も、プニの動きも多少は掴んだからな。そうそう負けはせんでー!

 

「アカネには、道具に慣れてもらいます」

「道具? っていうと、ツルハシとか爆弾ですか?」

「主に戦闘の話をしますので、薬品や爆弾などのことです。先ずはこちらを」

「これは…」

「フラムという爆弾です。フィリスが作っていたものと同じですが、訓練用に威力を抑えたものをソフィーに用意してもらいました」

 

 “フラム”、赤色で見るからに爆弾って形の爆弾やな。丸くて、導火線が伸びてて、ドクロマークが描かれとる。どこからどう見ても爆弾や、これ以上ないほど爆弾や。

 

「アカネはフラムの使い方、存じていませんよね?」

「導火線に火ぃ付けて投げるだけやないんですか?」

「この導火線は飾りだと思ってください」

「えぇ…」

 

 導火線が飾りやったら、どうやって起爆するんやろう… 勝手に爆発するような仕組みやったら事故が多発してまうし、何か仕掛けがあるんやろうけど…

 

「フラムは採掘などにも使える道具ですから、錬金術士でなくとも使えます。ですが、戦闘では話は別です」 

「導火線は戦闘以外の時用ってことですか?」

「そうです。戦闘では悠長に爆弾を仕掛ける時間はありませんし、フラムの力を最大限に引き出すためには、投げて使うしかありません。使い方を理解すれば、錬金術士でなくても十分に使用可能です」

「…ずばり、どう投げれば?」

「…口で説明するより、感じてもらったほうが早いですね。触りますよ」

「あっ、はい」

 

 …何をされとるんか全然わからん。ウチの右手の上にフラムを乗せて、プラフタ先生が後ろからウチの両手を掴んで、ラジコンみたいに操作しとるんやけど… こ、このまま投げればええんか? 下手投げで、全力でぶん投げればええんか?

 

「ほいっ!」

 

 ウチが投げたフラムは、空中で大爆発した。 …訓練用に威力を抑えたって言っとったけど、嘘やろこれ。軽ぬ人が吹っ飛ぶで、これ。絶対に、訓練用の火力やない!

 

「もう少し落ち着いて投げてください。気持ちと息を整えて」

「フラム、何個もあるんですか?」

「同じフラムですよ、10回ほど使えますから」

「…え、爆弾って使い切りやないんですか?」

「錬金術の力です」

「…そうなんですね」

「落ち着いて、錬金術… 自然の力を意識して投げれば、上手くいくはずです」

 

 落ち着いて、落ち着いて… フラムは錬金術の産物なんや、せやから何が起きてもおかしない… 自然の力とか分からんけど、落ち着いて… ていやっ!

 

「今度は爆発せんかった…」

「こればかりは繰り返して感覚を掴むしかありません。錬金術の感覚を掴むまで、ひたすら繰り返しましょう」

 

 …それから、ウチはフラムを投げ続けた。爆発したり、せんかったり。空中で爆ぜたり、地面にぶつかってから爆ぜたり、色々やった。

 

 

 

「ほっ!」

「掴んできましたね、続けましょう」

「ほいっ!」

「もう一度」

「てやぁ!」

「完璧です、完全に会得したようですね」

 

 …ウチには、上手く言語化はできへん。せやけど、何となく感覚は掴んだ。投げる時に、思いと力を込めるんや。そうすると、なぜだか丁度いいところで爆発してくれる。 …何でなのかはウチにはわからん。何を込めてるんかもよくわからん。せやけど、なぜか爆発するんな。

 

「…フラムって、どんな原理で爆発しとるんですか?」

「原理を詳細に説明するには数日では足りませんが、よろしいですか?」

「簡単に、簡単にでお願いします」

「それでは、簡単に。そもそも錬金術とは、素材の声を聴き、それに応え、自然の力を利用して調合を行うことで物を作り出します。そうして作られたフラムもまた、声を持ち、自然の力を持っています。ですから、フラムを使う時には、その声に応え、自然の力を引き出す必要があるのです。導火線はそれを簡易的に叶えるもので、爆発こそ引き起こしますが、フラムの力を引き出しているとは言えません」

 

 ほへぇ… フラムの声なんて聞こえへんし、自然の力なんてウチにはわからんけど、錬金術って凄いんやな。

 

 …ってことは、フィリスは調合する時、素材の声を聞いて、自然の力を操っとるんやな。ちょっと、尊敬してまうかもしれん。

 

「…理解していただけましたか?」

「なんとなく… 錬金術って凄いんやなって」

「そうですね… 錬金術は、夢のような力です」

「そんな錬金術なら、きっとフィリスの夢も叶えられるはずやんな」

「ええ、きっと」

 

 

 

 

 

「大丈夫、わたしなら大丈夫…!」

「ほんまに大丈夫やろうか…」

「私達には見守ることしかできませんよ。これもきっと、外に出る為の試練ですから」

「そうなんやろうけど、フィリスって戦えるん?」

「…わかりません。とても不安ですが、見守るしかありません」

 

 フラムの使い方を教わった後、そのまま採掘場で採取の仕方を習っとったら、フィリスが来たんや。ウチらに気づかず、杖を握りしめて奥の方に駆け抜けて行ったから、ウチらも隠れて追いかけたんやけど… フィリス、そこのプニと戦おうとしてるんや。

 

 ウチも手助けしようと思ったんやけど、プラフタ先生に止められてな。先生曰く、近くで村長が隠れて見守っとるらしいんや。それと、リアーネさんもおるらしい。 …ウチには全くわからんけど、先生は錬金術の力か、往年の勘でわかるんやろ。

 

 …で、村長とリアーネさんが見とるってことは、外に出る為の課題の可能性が高い。せやから、ウチらは見守ることしかできんのや…

 

「ぷにぷにー!」

「痛かったら、ごめんね!」

 

 おぉ、フィリス、フラムを使いこなしとる。せやけどプニはプニでフラムを耐えて、フィリスにタックルしとる。 …ちょっと待て、今の爆発、明らかにウチが訓練用で渡されたヤツより小さかったで。やっぱりアレ、訓練用やなくしっかりした爆弾やんけ…

 

「うっ… 負けない! 力を貸して、ストーンシュート!」

「ぷにぃ…」

 

 何や今の… フィリスが杖を振ったら、その先に魔法陣が描かれて、でっかい石が飛び出してプニに飛んでいったんやけど。バリバリの魔法やん、錬金術やないやん。フィリス、魔法使えたんか… というか、普通に強いやん。石の魔法、絶対に強いやんか。

 

「強い…」

「最低限は戦えるようですね」

「…ウチ、フィリスの足手まといになってまうかも」

「そんなことありませんよ。フィリスは荒削りですし、アカネの方が力もあります。何より、錬金術士は仲間がいてこそです」

「そうやろうか…」

「アカネ、そろそろ帰りましょう。フィリスがアトリエに戻ってくる前に、です」

「ですね、帰りましょう」

 

 少し、外の世界が怖くなってきた。石の魔法を使えるフィリスが、危険だからと親に外に出してもらえないんやろ…? 剣術を数日学んだ程度のウチが、戦えるんやろうか。そら、筋力とかフィジカル的なところはフィリスに勝てると思うけど…

 

 足手まといにだけはならんように、もっと磨かなあかんな。最低限、盾役くらいはできるようにならんと…

 

 

 

「ただいまー」「戻りました」

「おかえり、アカネさん、プラフタ。フィリスちゃんは村長さんに頼まれて、魔物退治に行ったよ」

「見てきました、フラムも使いこなしとりましたよ」

 

 久し振りのアトリエや… …何か散らかっとんな。まぁええか、近いうちに調合に使うものとか分かりやすいように置いとるだけやろ。足の踏み場もあるし、問題あらへんな。綺麗なんが1番やけど、汚くないなら使いやすいのが1番や。

 

 …綺麗とか汚いとか言っとったら、風呂に入りたくなってきたな。ウチ、今月に入ってから1度も風呂に入っとらん。フィリスの家に泊まっとった時は使わせてもらっとったんやけど、アトリエで暮らすようになってからは1度もや。石を掘ったり自然鉱物油を集めた後は光差す場所の側の湖で手足は洗っとったけど、身体は洗っとらん。 …ウチ的には匂いはせんけど、流石に汚いんやろうか。

 

 …というか、他のみんなも大丈夫なんやろうか。フィリスも、ソフィーさんも、プラフタ先生も。匂い… は気にならんけど、何か解決できる錬金術の代物とか、あるんやろうか。それか、町の何処かに温泉とかあるんか…?

 

「…すんません、この近くにお風呂とかってあります?」

「あっ、アカネさんに言ってなかったっけ… このアトリエ、お風呂もあるんです! そこです!」

「おぉ、そうやったんですね。 …使ってええですか?」

「どうぞー! あっ、服も脱衣所のカゴに入れたらすぐに綺麗になりますよ♪」

「…ソフィー、相手がアカネなのでまだ良かったですが、お風呂の存在などは最優先で伝えるべきで…」

 

 …ウチだから良かったとはならんよ。人間やないらしいし、お風呂に入らなくても問題ないって意味なんやろうけど、入りたいもん。でも、プラフタ先生はお説教モードに入ってもうたし、反論せずにお風呂入ろ。ソフィーさん、達者でな!

 

 

 

 

「ふぅ、あがりましたー」

「アカネさん! やりました! わたし、お外に出られるんです!」

「おぉ! 良くやったな、フィリス。おめでとう」

「あー、その。水を差すようでね、申し訳ないんじゃがね… 1つ言い忘れておった。扉の外に出ることは許す。許するじゃが… 期限付きじゃ」

「…はっ? えっ? ええええええっ!?

 

 お風呂から出たら、嬉しいシーンかと思ったら、雲行きが一気に怪しくなってきたな… 雲は見えないんやけど。フィリスと村長が話しとって、それをソフィーさんとプラフタ先生が横で聞いとる感じやし… ウチもプラフタ先生の横に立っとくか。

 

「ど、どうしてですか!? 期限って何ですか! 約束が違うじゃないですかー!」

「ええい! お前が仕事を離れて以来、採掘量が極端に減っておるんじゃ! このままでは困る! そういうわけで、外にいていいのはしばらくの間だけじゃ。よいな」

 

 フィリス… エルトナは採掘の町やし、鉱石の声が聞こえるフィリスがいなくなると困るのはわかるけど… せやけど、期限付きってのは話がちゃう! フィリスの為にも、ウチが声を上げるべきやろうか… 少し待って、フィリスが受け入れてまうようなら反論に出よう。

 

「そ、そんなぁ… なんとかならないんですか…?」

「うっ… そんな顔をするでない。心が痛くなるわ。まぁでも… そうじゃなぁ… もし、ソフィーさんが言っていた公認試験に合格するくらいの錬金術士になれば、その時はずっと外にいることを許そうかのう。まぁ、不可能に近いじゃろうが…」

 

 …公認試験ってなんや? ソフィーさん、そんな試験を目指しとるんか? …公認って何の公認や?

 

「先生、公認試験って何ですか…?」

「錬金術士の力量試験です。年に1人か2人しか合格しない厳しい試験で、私達はその試験を受ける為の推薦状を集める旅をしています」

「…本当ですね? 本当に、試験に受かったらずっとお外にいてもいいんですね!」

「えっ、いや、その…」

「本当ですねっ!!」

「うっ、うう… わかった、約束しよう… 次の公認試験に合格できれば、もう町に戻って来いなどとは言わん。ただ、不合格だったときは… 大人しく町に帰ってきてもらうこれでいいな?」

 

 …厳しい試験らしいけど、合格できるんやろうか。ウチにできることはフィリスを信じて、合格できる手助けをすることだけやけど… 本当に、その条件でええんか?

 

「わかりました! それで問題ありません!」

「先生、ええんやろうか」

「フィリスなら不可能ではありませんよ」

「…まぁ、いずれにせよ、お目付け役は付けさせてもらうぞ。入ってこい」

 

 絶対にリアーネさんやろうな。

 

「リア(ねぇ)!?」

「やっぱり…」

「ふふ、長老から頼まれたの。フィリスちゃんのこと、朝から晩までずーっと見張っていてほしいって」

「…いや、そこまでは言っておらんよ、うん。遊びほうけないように見ておれと言っただけじゃ」

「あら、そうでしたっけ?」

「…ごほん。とにかくじゃ。リアーネなら戦いに慣れておるし、地理にも詳しい。一緒にいればお前も心強かろう」

「はい! …リア(ねぇ)と旅できるんだ。えへへ、楽しみだなぁ…」

「ええ! 私もよ、フィリスちゃん!」

「…うむ、とにかく、そういうことじゃ。それではの」

 

 となると、5人で旅することになるんか… …いや、ソフィーさん達とは別れるんやろうか。ずっと頼り切りなのも悪いし、ソフィーさん達はソフィーさん達で公認試験を目指すんやろうし… どこで何をする試験なんかも知らんけど、推薦状を集めるんやろ? どこの誰の推薦状かも知らんけど、ソフィーさん達が既に行った道を通っても意味あらへんしな…

 

「なんだか、ちょっと変なことになっちゃったね…」

「あははは… そうですね…」

「でも良かったやんか、ひとまずは外に出られるんやで?」

「そうです。期限付きとはいえ外に出られますし、その期限もあなたが公認試験に合格できれば撤回される。あなたが頑張ればいいだけのことですよ」

「そうですよね…! わたし、絶対に試験に受かってみせます!」

「うん、その意気だよ!」

「ここまでの成長を見れば、無理な話ではないはず。 …応援していますよ、フィリス」

「そうや、絶対にできるはずや!」

 

 

 それからウチらは、外に出る日に向けて準備を進めた。外に出るんは、4月の1日。キリのいい日で、丁度次の公認試験の1年前や。そこから1年で、ウチらは推薦状を3枚集めて、ライゼンベルグっちゅー町に辿り着かなあかんらしい。

 

 推薦状を書けるのはこの試験に既に受かった錬金術士のみらしいから、その人を探しながらの旅になる。ソフィーさんに簡単な地図をもらったけど、道なりに進んでフルスハイムって町に行って、そこからライゼンベルグを目指すみたいや。大きい町には錬金術士がおる可能性も高いし、1枚はフルスハイムで手に入りそうやな… となると、その途中… ひとまずは、道行く人から町の話を聞いて、町に行ってみな話が始まらんな。旅の指揮はフィリスに委ねるけど、情報は集めて共有しよう。

 

 …さぁ、こっからが始まりやな。フィリスが公認試験に合格する、それだけがウチらの目標や。受かったらフィリスも自由の身やし、ウチのことを調べるんはその後でええな… そん時になったら、フィリスにも手伝ってもらおう。

 

 

 

そうして、時は流れていった

 




やることメモ
 →0.エルトナ
   1.来訪者
   2.錬金術を知ろう
   3.お外に出る為に
  →4.最後の課題

 お外に出る準備、全部できたかな…
(フィリス)

 道具だけやなくて、心の準備も済ませるんやで♪
(アカネ)

 
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