ソフィーさんとプラフタ先生と別れて、3人での旅の始まりや!
初めてのお外
「ん…? あれ、何だろう?」
「たき火の跡やな、火をつけたら使えるんちゃうか?」
「ちょうどいいわね、フィリスちゃん。あそこにアトリエを張ってみましょう。たき火があるってことは、あの場所で他の旅人が休んだっていうことよ」
「つまり、魔物に襲われずに休めるくらいには、他の場所より安全ってことやな」
「なるほどね…! わかった、早速張ってみる!」
ソフィーさん達と別れて、3人で“乾いた平野帯”を進んどる。地図に書いてあったから、そういう地名らしいで。大
当面の方針はそんな感じやけど、今はアトリエに入ってみよう。周りを見ても魔物はおらんし、ゆっくり休めそうや。 …旅立ってすぐに休んどるほど時間はない気もするし、ちょいと休んだらまた出発やろうけどな。
…楽しみや。プラフタ先生、アトリエの中にプレゼントがあるって言うとったもんな。さっ、何があるやろうか…
「出でよ、アトリエー!」
「はい、お疲れ様。せっかくだから、少し休んでいきましょうか」
「えー、わたしはまだ大丈夫だよ? まだ歩けるし、アカネさんも大丈夫でしょ?」
「ウチも大丈夫やけど、休める時に休むんも大事やで。なぁ、リアーネさん」
「ええ、そうよ。次に休める場所がどこか分からないもの。万全の状態で、進んで行きましょう?」
「…わかった。でも、ちょっと休んだら行くからね!」
プレゼントは… 錬金釜の近くにはないな。そんなら、他の部屋に… あった、食卓の机に手紙と細長い箱が置かれとる。 …プレゼント、細長すぎひんか。幅は20センチもないんに、長さは1.5メートルくらいあるんやけど。
手紙は… プラフタ先生からのメッセージやな。
『アカネへ
これからの旅路の安全を祈り
先生として特別な細剣を贈ります
鍛冶師に打ってもらった物ではありませんので
質に関しては最高とは言えませんが
錬金術により特別な力を宿しています
これが貴方の旅路の支えとなることを祈ります
プラフタ先生… つまり、この箱の中身は細剣か。ウチが使う用の武器を、新しく作ってくれたんやな… プラフタ先生の想いに応えるためにも、絶対にフィリスを護り抜いて、ライゼンベルグまで辿り着かなあかんな。
特別な細剣… ウチが今持っとる細剣は訓練用に貰ったものやし、ちょいと錆びついとったけど… 箱の中の細剣は、綺麗な刀身をしとる。細長く
持ち手と柄が赤色なんや。真っ赤で握りやすいし、ウチの手のサイズに合わせてくれたんやろうか。それに、持ち手から柄にかけて綺麗な装飾が付いとってな。曲線状の飾り、西洋の騎士って感じで好きや。 …これ、装飾やなくて意味あるんやろうか。わからんけど、大好きやで。
「アカネさん、それがプレゼントですか?」
「そうみたいです、手に馴染んでええ剣です」
「はぇー… わたしもいつか、そういう剣も持てるかな…」
「フィリスちゃんも頑張れば、いつか持てると思うけど… でも、フィリスちゃんは杖の方が似合うわよ」
「せやな。それに細剣は危険やから、ウチに任せとき♪」
「お任せします!」
スカートの左側に取り付けとった、今の細剣を取って… 新しいのを付けて、これでよし。これを使って戦う日が楽しみや… まだ実感はないけど、特別な力が宿っとるらしいからな。凄い力が湧いてくるんかもしれん。
「…フィリスちゃん、お腹空いてない?」
「少し… でも、ご飯ってどうすればいいんだろう」
「安心して、そこのコンテナの中に食材は沢山あるから。フィリスちゃんが大好きなウサギのロースト、作っちゃうわね」
「これか… 凄いな、ホンマに沢山ある」
「きっと、ソフィーさん達が旅の最中に食べるために用意されてたんだと思います。ありがたく使わせてもらいましょう」
「無限にあるわけやないし、町に行ったら買い足したり、途中で獣を狩ったりして補充もしていかんとな」
「そっか… そういう時間も必要なんだね」
「フィリスは気にせんでええよ、調合しとる間にウチらで済ませるから。なぁ、リアーネさん」
「ええ、任せなさい」
…このテント兼アトリエ、本当に快適やな。前に入った時よりも小物が増えとる気もするし、変わっとらん気もする。キッチン、食糧庫代わりのコンテナ、お風呂、リビングってあるし普通の家みたいやな… 玄関が釜とかフィリスのベッドがある部屋ってことを除けば、普通に家として理想的や。玄関がフィリスの部屋みたいになっとるんは仕方ない、集めてきた素材とかすぐにコンテナに入れな不便やから。それに、ウチやリアーネさんの部屋は存在すらせんし。 …思ったより家としては足りとらんな。
「それじゃあ、ご飯ができるまで周り見てくる!」
「…休むんやなかったんか?」
「…アカネさん、見張りを頼んでもいいですか?」
「もちろん、行ってきます」
フィリスは元気やなぁ… 元気で判断が早くて行動力もある、ウチが付いていけるか不安になるくらいや。せやけど、子供は元気なんが1番やからな。初めての外の世界で興奮しとるのもあるやろうし、大目に見てあげな、な♪
「おーいフィリス、何しとるんや?」
「アカネさん! さっき、そこの行商人さんと話して… お薬が切れちゃってたらしかったので、あげたんです。そしたらお礼で、コレを貰って…」
「これは… 青いフラム、か?」
「発破用フラム、らしいです」
アトリエの外に出たら、フィリスが“発破用フラム”を手に悩んどった。発破用ってことは、岩とかを砕くようやろうか。行商人さん、ええもんをくれたんやな。 …何を悩んどるんやろ。試しに使うか悩んどるんかな。貴重な一品やったら使うの
「…よしっ、あのプニにしよう!」
「もしかして、戦うんか?」
「うんっ! 魔物に試してみてって言われたんだ」
「そうか… ほんなら、ウチも手伝うで」
「2人で、頑張ろう!」
発破用やけど、岩を壊せる火力があるんなら魔物だってやれるはずよな。ウチが前で青いプニと戦って、フィリスが後ろから爆弾を投げ込む、完璧な陣形や!
「先ずは一撃や!」
「ぷにぃ!」
「爆弾、くらえー!」
「ぷにぃぃぃ!」「うわっ!」
派手に爆発したから思わず下がってもうたけど、プニがもうやられとる… プニ、弱いなぁ… ウチの突きと、フィリスの発破用フラムだけで終わってもうた。この調子ならちょっと安心や、外の魔物もエルトナの魔物に比べて極端に強いわけやあらへん。油断はダメやけど、警戒しとったら勝てそうや。
「これなら、アイツにも…!」
「アイツって… フィリス、あの鳥のことならダメやで。絶対に無理や、絶対に勝てへん」
「そっかぁ… あの鳥、そんなに強いの?」
「ウチは詳しくしらんけど、見た目からして絶対に強い。4足で歩いていて、身体がデカくて、羽もデカい、グリフォンか何かやないか?」
「グリフォン…! そっか、あの鳥がそうなんだ…」
発破用フラムは強そうやけど、フィリスが見とる魔物は絶対に無理や。ウチらよりも遥かに大きいし、辺りの魔物とは格が違う。この辺りを縄張りにしとる、この地の主か何かちゃうか? みんなで投げ込んでも無理な気がするな… 確かに派手な爆発やったけど、あくまで発破用やもん。あの魔物をやれるんなら、もっとええ名前なはずや。
「っと、またプニが来とるな」
「この辺りのプニ、全部倒そう!」
「せやな、やったろう!」
「つっかれたー!」
「お疲れ様、フィリスちゃん。ご飯できてるから、一緒に食べましょう?」
「うん! アカネさんも、みんなで食べよー!」
「ウチは食べんでも大丈夫やで。食糧は貴重なんやから、ウチの分はええよ」
「ん〜… でも、美味しいし、食べたほうが良いよ?」
「そうです、アカネさん。確かに食糧は貴重かも知れませんが、それ以上に、せっかくの旅なんですよ。食事も、探索も、みんなでしましょう」
「…わかりました、それならいただきますね」
軽くプニを捻り潰して、アトリエでお昼ご飯や。食糧を買うんにもお金がかかるし、そもそも次に買えるのがいつかわからんから、ウチの分は無くてもと思ったんやけど… フィリスもリアーネさんも、優しい人や。沢山食べるのはあれやけど、ほどほどにいただくことにするわ。
「あー、ご飯の前にちょいと服だけ変えてきますね。プニの体液が付いちゃってますんで」
「…あ、わたしも。変えてくるね!」
「そう言うと思って、替えの服も用意してあるわよ。フィリスちゃんのはそこ、アカネさんのもあそこに置いてあります」
「ありがとーリア
…あれ。ウチの服、なんで予備があるんや? ウチが転生してきた時に着とった服やけど、着とる分しかなかったはずよな… なんで2着目があるんや。黒くて、ワンピースで、肩脇の部分が空いとって、赤い紐の飾りが胸についとる。髪飾りもあるし、完全に同じ服やな…
「リアーネさん、この服どこにありました?」
「クローゼットに、プラフタさんの手紙と一緒に入ってましたよ。ずっと同じ服を着ているのが気になったから、複製品を作ってくれたそうですよ」
「複製品… 錬金術ってホンマに凄いんやな」
「わたしもいつか物を増やしたりできるのかな…」
「さぁ… でも、フィリスちゃんが頑張ったら、きっとできるわよ」
「そうだよね、頑張ろう!」
…物をコピーするって錬金術なんか? 錬金術って、素材の声を聴いて、自然の力を加えて変化させる術って聞いたんやけど… 何の対価もなしにコピーできたら、夢みたいやけど流石に無茶苦茶やろ。そんな力があるとは思えんし、となると… もしかして、人力で作ってくれたんか…? プラフタ先生が裁縫できるんかしらんけど、材料だけ錬金術で作って、服は頑張ってくれたんかもしれん。結局は推測になってまうけど、感謝しないとな♪
「ごちそうさまでしたー!」
「ごちそうさまでした」「お粗末さまでした」
「よしっ、冒険行こう!」
「食ってすぐ動いて大丈夫か?」
「大丈夫! リア
「大丈夫よ。携行用の食べ物だけ持って… 行けるわ」
「それじゃあ、レッツゴー!」
それからウチらはアトリエを出て、さっきの行商人さんと少し話してから、街道沿いを進んだ。行商人さんは“ソウルストン”って石を探しとるらしいから、見つけたらお届けせんとな。
街道沿いには殆ど魔物はおらんかったから、戦わずに採取しながら進んだで。 …というか、採取に時間をかけたから歩く時間より草とか岩と戦っとる時間のほうが長かったわ。せやけど、そのおかげで新しい素材も手に入ったんやで。
リアーネさんによると、重なるように緑の葉を付けとって一番上に白い花を咲かせとる“トーン”って草と、白い綿を付けとる“野綿花”っていうそのままな名前の綿花と、青白くて不思議な模様が入っとる“白灰岩”って鉱石らしいで。フィリスが熱心に白紙の図鑑に書き込んどるし、ウチも後で見せてもらうわ。
「あそこ、たき火の跡やな」
「それなら、あそこで休みましょうか。もう日も暮れてきましたし…」
「はーい! よーっし、集めた素材で新しい物作るぞー!」
リアーネさんが作ってくれたウサギのローストを食べて、フィリスは調合を始めた。 …肉ばっかり食っとんな。ちゃんと野菜も食わなダメやで〜? 肉も美味いけど付け合わせの山盛りのキャベツも美味いんやから。まっ、あんまり偏っとったらリアーネさんが注意するやろ。
「……むぅ」
あ、ダメそう。むすっとしとる。
「フィリス、野菜は嫌いなんですか?」
「ええ、とっても。何とか食べさせようとしてるんですけど… 今日も、目を離した隙に全部アカネさんのお皿に移されちゃって」
「えあっ、あれフィリスに移されてたんですか!?」
「はい…」
「
…これは何とかせなあかんな。リアーネさんだけじゃどうもできんなら、ウチも協力して野菜を食わせるしかない。フィリスはまだ子供なんやから、ちゃんと色んな栄養を
その為にも、フィリスが食べれそうな野菜を考えなあかんな。1種類でも食べられたら苦手意識も薄れるやろうし、それだけ食べ続ければ最低限は栄養が摂れるはずや。
「ちょいと外見てきますね」
「邪魔をする。お前たちは旅人か?」
「うわぁ!? なっ、なんや!?」
扉を開けようとしたら、外から開けられて紫髪の男が入ってきた… 何者や、薄紫の髪色はこの世界やと普通かもしれんから触れんけど、服装も奇抜すぎる。暗い青緑の前掛けに、暗い紫の服、ところどころ金色やし、なんや…? 突然乗り込んできたし、気をつけたほうがええか? ウチより背も高いし、力もありそうや。
「フィリス、下がれ」
「うん…」
「…だったら、なんだって言うんですか?」
「ふっ… そんなに警戒するな。ひとつ聞きたいことがあるだけだ。君達は騎士のような姿をした、骸骨の魔物を見たことはないか?」
「そんな魔物、ウチらは見とらんよ」
「…ならいい、忘れてくれ。ところで、その釜… もしや、お前は錬金術士か?」
「あ、はい、一応…」
…ホンマに何者や。魔物の情報を集めとる冒険者か? 錬金術のことは知っとるみたいやけど、ウチらが知らんかっただけで常識なのかもしれんし… せやけど、警戒を解くわけにはいかん。
「そうか。ならば、こいつを直せるのか?」
「これは… 何かのカギですか? 折れちゃってますけど…」
…鍵や。折れとるし、錆びとる。何の鍵やろ…
「ああ、とても古い物らしくてな。俺が手に入れた時には、すでに折れていた。それで… どうだ? 直せるのか?」
「…えっと。たぶんこれくらいなら、なんとか…」
「そうか、それなら任せたぞ」
「…あっ、待ち! 名前くらい…!」
「行っちゃった…」
「一体何だったのかしら、あの人… 突然来たと思ったら、カギだけ置いて行っちゃって…」
「わかんない… けど、任されちゃったわけだし、カギの修理はちゃんとやっておかないとね…」
何やったんや… カギはフィリスが直すらしいし、任せるけど… そもそもあの人、どうやって受け取るつもりなんや。ウチらは旅しとるんやし、次にいつ会えるかわからへんぞ…?
…まぁええか。何とかなると信じて、ウチは草でも摘んでくるとするわ。フィリスに野菜だとバレずに食べさせられる草があればええなぁ…
やることメモ
0.エルトナ
→1.エルトナ周辺
→1.乾いた平野帯
→1.初めてのお外と旅人
フィリス、あぁいう人には騙されないようにな
そんなに悪い人じゃなさそうだけど…