茜色の錬金術士   作:緑雨

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あらすじ

 乾いた平野帯を北西から南東に向かって進んどるで!


危険なオアシス

 

「できた、中和剤!」

「青に赤に、カラフルなんやな」

 

 昨晩張ったアトリエの中で、フィリスは調合三昧や。作ったんは“中和剤・青”と“中和剤・赤”の2つやな。 …調合二味? 青いのはエルトナで汲んできた沢山の水で作れて、赤いのは鉱石と水を合わせて作るで。カーエン石と地底水で作ったから、全部エルトナ産やな。 …もっとエルトナで集めてくるべきやったやろうか。

 

 中和剤は、錬金術に使う基礎って感じの素材らしいで。材料を中和させて、調合を手助けしてくれるらしい。丸いフラスコに入った液体やし、壊さないように気をつけなあかんな。

 

「もう朝過ぎて昼間になってもうたな…」

「フィリスちゃん、眠たくない? 大丈夫?」

「ん〜… ちょっと眠いかも…」

「ほんなら、フィリスは休んどき。ウチは外で適当に材料集めてくるわ」

「私も行きます。フィリスちゃんの為に、ウサギを狩らないとですから」

 

 フィリスの生活リズムは、完全に崩れそうやな… 調合って始めたら休まず続けなあかんし、眠ることはできんから… リアーネさんはちゃんと寝とったし、2人で散策に出るとするか。寝とったと言ってもソファーやけど、柔らかいし大丈夫やろ。遠くには行かんけどな、新しい景色はフィリスが1番楽しみにしとるやろうから、一緒じゃないとあかんもん。

 

「お〜、綺麗なオアシスやな」

「昨日は暗くて見えませんでしたけど、“うに”の木も生えていて、自然を感じる場所なんです」

「…うにの木? うにって、トゲトゲの雲丹(うに)?」

「はい、トゲの多い殻を持った果実です」

「…果実? 魚介やなくて?」

「果実ですよ…?」

 

 全くの別物なんやな… 元の世界と同じ物も多いけど、やっぱり異世界なんやから常識が通用すると思ったらあかん。うには海にある高級なやつやなくて、木になる果実、と。 …でもトゲトゲはしとるんよな、あの見た目のまま木になっとるんか…?

 

「あの木になってますよ」

「あの木… えっ、アレですか?」

「はい」

 

 …毬栗(イガグリ)? どう見ても毬栗やん、確かに雲丹と毬栗は似とるけど… この世界やと毬栗が雲丹なんか。 …ってことは、雲丹がクリって呼ばれとる可能性があるな。間違えんように気をつけんとな…

 

「うにって美味いんですか?」

「もちろん、美味しいですよ。 …実は、うにのトゲの数って必ず4の倍数なんですよ」

「そうなんですか!? 不思議やな…」

「調合に使うかもですし、集めてみますか」

「せやな、ウチがタックルするから回収頼んだで!」

「えっ!? 私が弓で落としますから、アカネさんが拾ってください!」

「…確かに! それが安全やな…」

 

 危ない危ない、頭にうにの攻撃を受けるところやった。 …こんなにトゲトゲしとるんやったら、攻撃にも使えそうやな。握る手が耐えられるかはわからんけど…

 

 じゃ、ちょっと集めてくるわ!

 

 

 

 

 

「閃いた…!」

「何を閃いたんや?」

「うにを袋に詰めて、“うに袋”!」

「…錬金術で作るんか?」

「うん! また今度、作ってみるね!」

「そ、そうか…」

 

 うにを集めて帰ってきたんやけど… うにを袋に詰めるんなら、錬金術じゃなくても良くないか? まぁ、フィリスがやる気になっとるし止めることはないんやけど…

 

「フィリスちゃん、準備できた?」

「うん。ご飯も食べた、服も着替えた、行けるよ!」

「ほんなら、出発や!」

 

 帰ってきて早々やけど、また出発や。荷物の整理はしたし、干し肉を軽く食べたし、ウチもリアーネさんも準備万端や。さっ、行くでー!

 

 

 

「あの亀さんだね…」

「フィリス、いつでも行けるで」

「私もよ、準備できてるわ」

 

 アトリエを出たら、女の人がおってな。話を聞くと、オアシスに住み着いた亀に困っとるそうなんや。せやから、ウチらで倒すことになってな。3人で戦うんは初めてやけど、ウチが前で2人が後ろやな。2人を、守り抜いてみせるで!

 

「先手必勝ー! ストーンシューット!」

「さぁ、避けられるかしら!」

「一気に行くで!」

 

 フィリスが岩を飛ばして、リアーネさんが矢の雨を降らして、ウチが突撃して突き刺す! 亀の硬い甲羅だって、先生にもらった細剣なら貫ける!

 

「横の亀さんにはフラムでどーだっ!」

「撃ち抜くわ!」

「落ち着いて… ウチも行く!」

 

 今度はフィリスが爆破して、砂埃で見えんところをリアーネさんが正確に撃ち抜いて、視界が通ったところでウチが突っ込んで撃破! なんや、結構ウチらも強いやんけ… まぁ、油断はせんけどな。反撃されたら痛そうやし…

 

「あうっ!」

「フィリス!?」「フィリスちゃん!」

 

 後ろに別の亀やと!?

 

「む〜っ! くらえ!」

「ウチが前に出る! フィリスは下がれ!」

「フィリスちゃんの仇!」

 

 後ろからフィリスがやられるとは… 倒れてはないけど、結構痛そうや。油断しないって言ったばかりやのに、後ろを取られてまうとはな。ウチがちゃんと気をつけんと…

 

「くらえ!」「くらいなさい!」

「フラム、いっけー!」

「はっ、待ち!」「待ってフィリスちゃん!」

「…あ」

 

 あっぶない! …亀の気持ちが、少し分かった気がするわ。フィリス、なんでウチが亀に近づいた瞬間にフラムを投げるんや… いや、予告せずに突っ込んだウチも悪いな。後でみんなで反省会やな、リアーネさんが弾いてくれたから軽症ですんだけど、大事(おおごと)になりかねんとこやった。

 

「…とりあえず、亀はやりきったな」

「私がアカネさんの手当てをするから、フィリスちゃんはお姉さんに報告してきて」

「はい…」

「次を気をつけりゃええんやから、あんまり気にせんでええんやで」

 

 フィリスはトボトボ歩いてお姉さんに報告に行った… 大丈夫、ウチは元気やで。亀に襲われて投げたんもわかるし、確認せずに突っ込んだウチにも非はあるんや。だから… あんまり重く受け止めんなよ。

 

「それじゃあ、アトリエまで行きますよ」

「肩、お借りしますね」

「任せてください、すぐそこですから」

 

 

 

「アカネさ〜ん!」

 

 アトリエに入ってすぐに、フィリスも帰ってきた。リアーネさんが薬を探してくれとるし、フィリスと反省会を始めるか…

 

「これ、エルトナ軟膏! 使ってみて?」

「そういえば薬も作っとったな…」

「えいっ!」

「…おっ、おおっ!?」

 

 す、すごい… フィリスが軟膏を塗ってくれた傷口がみるみるうちに治っていく… しみたりもせんし、凄い薬や。それに、他の傷口も治ってく。 …それはなんでや? どうして腕に塗ったら肩とか脚の痛みも引いていくんや…? もしかして、血に入って全身に巡っていくような薬なんか…? 詳しいことがわからんのが怖いけど、傷を治すのには凄く便利な薬やな。

 

「あら… 包帯、要らなかったですね」

「フィリスのお陰で、なんとかなりそうです」

「えっへん!」

「…フィリスちゃん。フィリスちゃんが怪我させたんだからね?」

「…ごめんなさい」

「次から気をつけてくれれば大丈夫や」

 

 脚の痛みも、肩の痛みも、腕の痛みも、全部取れた! 錬金術ってすごいなぁ、って感想しかでてこーへん。こんなに良い薬があるなら、ウチも安心して戦えるわ。

 

「アカネさん、もう動ける…?」

「動けるで、出発するか?」

「うん…! リア(ねぇ)も、いいよね?」

「わかったわ、もう夜だから気をつけて進みましょう」

 

 依頼も済んだし、怪我も治ったし、今度こそ旅の再開やな。夜の旅やけど、満天の星空の下を旅するってロマンあって昔は憧れてたりしたんよなぁ。子供の頃の一つの夢を思い出しながら、駆けるとしようか。

 

 

 

「広い星空、綺麗だなぁ…」

「上を見上げるのも良いけど、足元も見てね。暗いと転びやすくて危ないのよ?」

「足元くらいは照らせたらええんやけどな…」

「ふむふむ…」

 

 ウチらは街道に沿って、南東の方に進んできたで。エルトナに背を向けて、少しずつ離れてきたわけや。あんまり採取も探索もしないで進んできたし、次のたき火に着いたら辺りを調べてみんとな。

 

「…気をつけて、何かいるわ」

「な、何かって…?」

「暗すぎて全然見えん…」

「あれは多分“ゴースト”ね、白いお化けよ」

「おばっ!?」「お化けか〜!」

 

 おおお、お化け… り、リアーネさんも冗談を言うんやなぁ…? お化けなんておるわけないやん、あんなの誰かが言った嘘ハッタリに決まっとる! お化けなんて、おったらあかんのや…!

 

「…そこよ」

「ひぃっ!?」「お〜!」

「…アカネさん、大丈夫ですか?」

「だだだ、大丈夫や、ウチのことは気にせんでええで…」

「フラム、いくね! 痛かったらごめんねー!」

 

 フィリス、お化けなんて幾らでも痛めつけてええ! あいつらに痛覚とかあるんか知らんけど、あんな怖い… やなくて厄介なやつは徹底的にやらなあかん! できれば、ウチに近づかれる前に…

 

「ど、どうなった…?」

「ふっふ〜、一撃!」

「でも、まだ沢山いるみたいよ」

「そ、そんなら… 次のたき火まで駆け抜けるんはどうや?」

「それが良いわね、行きましょう」

「お〜!」「おーっ!」

 

 走れ、走れ、止まるなウチの足… お化けなんていない、お化けなんて嘘や、大丈夫、大丈夫や…!

 

 

 

「あった、出でよアトリエ!」

「入る入る入る! よしっ!」

「アカネさん、とてもお化けが苦手なんですね」

「そ、そうやな、お恥ずかしいところを…」

「そんなそんな、苦手なものくらい誰もが持っていますよ」

 

 はぁ、はぁ… 随分と走ったから、どこかわからん。道なりに走ったし、あのまま南東に向かってきたんかな…? 周りの様子なんて全く見ずに走ってきたから、何もわからん… 息もしんどいし、疲れた…

 

「さっ、調合〜!」

「フィリスは元気やな…」

「それがフィリスちゃんの良いところですから。でも、フィリスちゃん。今眠らないと、またお昼に眠って、夜に旅することになっちゃうわよ?」

「それは… やだ。メモだけ書いて寝るよ」

「その前に、ちゃんとご飯を食べて、お風呂に入りましょう?」

「うん、そうする」

「お姉さんしとるなぁ」

「お姉ちゃんですから」

 

 ウチも、今日はちゃんと休もう… エルトナを出てからずっと何かしとった気がするし、疲れはどんどん溜まっとる。相変わらず眠くはないけど、目を閉じれば眠れるかもしれん。眠れへんくても、体は休まるはずや。せやから…

 

「フィリスが出たら、ウチもお風呂に失礼しますね」

「わかりました、準備しておきますね」

「ありがとうな、リアーネさん」

 

 風呂入って、部屋に帰って休もう! …ウチの部屋なんてないけどな。フィリスとリアーネさんは玄関のある部屋で眠っとるし、ウチはリビングかキッチンやな… キッチンで寝るんはなんか嫌やし、リビングにするか。リビングのソファーに布団代わりの布を敷いて… ここをウチの寝所とする!

 

 ほんじゃ、また明日。

 

 

 

 

 

「…寝れん」

 

 何時間経ったやろうか。ずっと布団の中で目を閉じとっても、全く眠れへん。元の世界の、人やった頃が懐かしい… ゆっくり休みたくても、起きるしかないんやな…

 

 てきとうに、本でも読んで時間を潰すか… 壁に立てかけといた細剣取って、本を… 玄関の方にあったかな? ついでに2人の様子も見ていくか。

 

「ちゃんと寝とるか…?」

「ふふふ、フィリスちゃん…」

 

 …あ〜、うん。ウチは何も見とらん、何にも見とらんよ。フィリスの寝顔を楽しそうに眺めとるリアーネさんなんて、見とらんよ、うん。 …リビングで、細剣を磨いとろう。下手に動くんは、怖くなってきた…

 

 …お化けよりもリアーネさんのほうが怖いかもな。

 




やることメモ
  0.エルトナ
 →1.エルトナ周辺
  →1.乾いた平野帯
    1.初めてのお外と旅人
   →2.オアシスを超えて

 アカネさん、どうかしましたか?
(リアーネ)

 い、いや、なんでもあらへんよ〜?
(アカネ)
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