オアシスで亀と戦ったり、お化けから逃げながら道なりに進んだりしたで!
「調合、調合、ちょうごー!」
「今は何を作っとるんや?」
「ランタンを作ってるよ、夜も旅する為に!」
「ちなみに、そのランタンに除霊効果は…?」
「…ない!」
ないかぁ… ずっと細剣を磨いとったら、朝日が昇る前頃にリアーネさんが料理を作り始め、出来上がる頃に匂いにつられてフィリスが起きてきて、3人で朝食をいただいたで。今日は肉やったよ。昨日も一昨日も肉や、肉なら無限にとれるからな。亀肉も案外上手くてな、幾らでも食えるわ。
ほんで、食べ終わったらフィリスが調合を始めてな。ランタンの調合はどんぐらいかかるかわからんし、ウチは外の様子でも見てこよかな。
「ちょいと外を見てきますね」
「フィリスちゃんの為に、私もウサギを狩りに行ってくるわ。またね、フィリスちゃん」
「いってらっしゃーい!」
さぁ、外は… 何もないな。えっと、こっちがたぶん来た道やから… 来た道から見て左と右に道が続いとる、つまり北と南か? 東は岩壁やし、ライゼンベルグに向かうなら南に進むことになりそうやな。少しずつやけど、南には草も見えてきとるしな。
「リアーネさんはどっちに向かうんです?」
「ウサギは向こうに多いので、向こう側に向かいます。アカネさんは?」
「ん〜、北の方に鉱石っぽいのが沢山見えるんで、行ってみます」
「わかりました、それならまた後で」
「おう、また後でな」
キラキラした宝石を集めたら、錬金術に使えんくても高く売れそうやし、沢山集めるでー! お金が好きなわけやないけど、今のウチって一文無しやし、何かあったときのためにちょっとは欲しいからな。かき集めるでー!
「ざっくざっくや〜!」
…ツルハシで沢山掘って、アトリエから持ってきたカゴに入れとるんやけど、この石は何やろうか。青錆びた銅みたいな色の石が“エルトナイト”で、蒼白の細長い水晶が“エルトナ水晶”っていうのは知っとる。エルトナの名産品やからな、コンテナにも入っとったはずやで。 …問題は残りの石や。
薄いピンクと白の中間みたいな色の綺麗な石、初めて見たんや。光の反射で真っ白に見えたり紫に見えたり、凄い綺麗な石なんやけど… ツルハシで砕いてもうたんよな。なんとか大きなまま掘り出せた石も1つあるんやけど、欠片が沢山や。
壁や地面から突き出しとった水晶やら岩やらを砕きまわっとったら、もう夜になってもうた。お化けに化かされても嫌やし、流石にそろそろ帰るとしよか。
…なんか嫌なんよな。カゴから、嫌な気がするんや。砕いてもうた石に恨まれとるんかもしれん。 …なんてな、きっとお化けに後ろから見られとるんや。 …それも普通に嫌やな、さっさと帰ろ。
「ただいまー」
「おかえりー」「おかえりなさい」
「フィリス、鉱石掘ってきたで!」
「おー! エルトナイトだ…」
「他にもあるで、よくわからん白い石とか」
「それは… “ソウルストン”ね。死んだ人の魂が石になったと言われているわ」
「うえっ!?」
ホンマにそんな曰く付きの石やったんか… じゃ、じゃあ未だに背中のカゴから嫌な感じがするんは、ウチが誰かの魂のこもった石を砕いたからなんか…!? や、やばい、お化けなんかより恐ろしい…!
「はわっ、はわわわ…」
「そういう噂があるってだけですから、気にしないでください」
「ふむふむ… なるほど、そんなことが…」
「フィ、フィリス? もしかして…」
「ふふふ…」
「じょ、ジョークやんなぁ…?」
フィリスにそういう事を言われると本当なんか嘘なんかわからん! ソウルストンの声が聴こえとるんか? ウチに砕かれた石の叫びが聴こえとるんか!? あ、あぁ…
「よしっ、使っちゃうね、アカネさん」
「あ、ありがとう…?」
ソウルストンと仲良く話しとるのかと思ったら、ウチに砕かれた欠片が釜に沈められた… 大丈夫やろうか、ウチが砕いた後やけどフィリスが呪われたりせんやろうか… それか、あの砕かれたソウルストン達が調合してくれって頼んできたんやろうか…
…とりあえず、カゴの鉱石達をコンテナに移そう。これで嫌な感じからはおさらばや…!
「調合しながらでも食べれるような料理、作ってくるわね」
「ありがとー! あっ、アカネさん、コンテナから鉱物油とって!」
「はーい、えーっと… これやな、入れればええか?」
「わたしが入れてって言ったら、入れてもらってもいい?」
「はいよ、任せとくれや」
「入れて!」
「んあっ、はいっ!」
「ふんふふ〜ん、ふっふふ〜ん」
…1時間以上、自然鉱物油の入った袋を持たされてたんやけど。あの流れやったらすぐやと思うやん、こんなに待たされるとは… 途中でウサギ肉も食ったし、リアーネさんは寝る準備も始めとったんやけど。 …ウチも待たされて疲れたけど、調合しとるフィリスはもっと大変よな。この調合も早く終わるとええな…
「ちなみにフィリスちゃん、後どれくらいで終わるの?」
「…1日くらいかなぁ?」
「1日!?」「そんなにかかるんか!?」
「た、たぶん…」
「大変ね…」「応援しとるで…」
「頑張っちゃうよ〜!」
調合って大変なんやな… かといって、ウチが手伝えることもないし、手伝ったところで早く終わるとも限らん。ウチにできるのは応援することと、フィリスが何か欲しくなったときに持っていくことだけや。
…そういや、ソウルストンって行商人さんが探しとったな。発破用フラムをくれた人や、欲しいって言ってたはず。フィリスの調合を待っとる間に、掘って届けに行くか… せやけど、今はもう夜やし…
「アカネさん、ご飯用意してありますよ」
「ありがとな、いただくわ。 …ウチ、後でエルトナ出たあたりにおった行商人さんに、ソウルストンを届けに行こうと思うんやけど、リアーネさんも来るか?」
「ん〜… 夜にフィリスちゃんを1人にはできないので、やめておきます」
「アカネさん、そこのランタン、自由に使ってね♪」
「ん… これか、使わせてもらうな」
リアーネさんを連れてくことはできんかったけど、ランタンだけでも気は休まるな… 朝から作っとったランタン、淡く青白く光っとる。エルトナ水晶の光やろうか、あれはずっと光っとったはずやし。ほんなら、このランタンをカゴにつけて… 夜やけど、向かうとするか。ソウルストンを掘って、そのまま西に向かえばエルトナの方に行けるはずや…!
「ほんじゃ、行ってきます」
「いってらっしゃーいっ!」「お気をつけて」
「気づくな、気づくな…」
「ぐあぁー!」
「鳴くな、こっち見るな…」
ソウルストンも掘り終えて、昼ごろに行商人さんのことは見つけた、見つけたんやけど… ちょうど進路上に奴がおる。奴ってのはグリフォンや、絶対に凶暴な魔物や。隠れながら横を通り抜けようと思うんやけど…
あ、目が合った。 …ははっ。
「追いかけっこや!」
「ただいま…」
「アカネさん! 大丈夫ですか? 今すぐ手当てしますね?」
「ありがとうございます… ちょいとグリフォンにやられてもうたけど、行商人さんにはちゃんと届けられたで。 …フィリスおるか?」
「そこで…」
「すぅ、すぅ…」
「…あぁ、寝とるんか。すまんな、騒いでもうて」
「やっとの休みですから、そう簡単には起きませんよ。軟膏塗りますね」
夜も遅い時間に、やっと帰ってこれたわ… 1日中ずっと歩いとったから、脚の疲れも半端ない… 睡眠も食事もいらんのに、なんで疲れだけはあるんやろうな。自分の体がわからん、何なんやこの体…
「これ、行商人さんに貰った200コールや。フィリスに渡しといてくれ」
「それはアカネさんが使ってください。お金に関しては、フィリスちゃんが自分で考えないと、ですから」
「…わかった、ほんならそうさせてもらうわ。とりあえず、そこの棚にでも入れといてくれんか?」
「わかりました、ここに入れておきますね」
「ありがとな、リアーネさん」
200コールってどんな価値なんやろうか。ソウルストンの価値もわからんし、200コールが高いのかも安いのかもわからん。200円やったらわかるんやけど、コールかぁ… 町についたら色々と調べてみんとな。エルトナ育ちのフィリスには物価とか絶対にわからんし、今はリアーネさんだけが頼りや。
「そういや、フィリスは1日かけて何を作っとったんです?」
「“インゴット”ですね、鉱物を精錬して延べ棒にしたものです」
「ほへー、実物を見るんは初めてです。重いんです?」
「とても重いですよ、持ってみます?」
「ん〜、遠慮します。疲れとるんで落としてまう気がします」
錬金術ってインゴットも作れるんやな。このインゴットを加工して、武器とか鎧とかを作るんやろ? …鉱物の精錬って無茶苦茶温めんとダメやって聞いたことあるんやけど、錬金術は常識が通用せんな。 …そんなの、今に始まったことやないか。
「ん〜、痛みも引いたわ、ありがとうな」
「いえいえ、私はフィリスちゃんの薬を使っただけですから、フィリスちゃんにお礼してください」
「フィリスに助けられとるんはもちろんやけど、リアーネさんにも助けられとるで」
「お世辞を言っても何も出ませんよ」
「ふふっ、お世辞なんて言える性格に見えるか?」
痛みは引いても疲れは引かんし、当分はアトリエで休むとするか…
「そうだアカネさん、エルトナを出てすぐのところにいたあの魔物はグリフォンではなく“グリフォニアン”っていう、グリフォンの幼体なんですよ」
「ほぉ、幼体と成体で呼び名が違うんか」
「強さも全く違いますからね。 …グリフォニアンも弱くはないですけど」
「強いですよ、逃げるだけで手一杯ですもん」
「倒れちゃったら助けられませんから、気をつけてくださいね?」
「わかっとる、気をつけるよ。リアーネさんはもう寝るか?」
「はい、もう寝ます」
「そうか、おやすみな」
「おやすみなさい、アカネさんもしっかり休んでくださいね」
…てきとうに本でも読むか。
「フィリス、これで上手くいくんか?」
「多分、きっと上手くいくはず…」
「大丈夫かしら…」
翌朝、フィリスは変な人に渡されたカギを元に戻すために調合を始めたで。 …人のことをあまり“変な人”なんて言いたないけど、名乗らんかったからそうとしか呼べんのや。折れとるし錆びついとるカギやけど、元はきれいなカギやったんかな…
「そういやリアーネさん、今日って何日や?」
「4月の5日ですよ、旅立ちから5日目です」
「まだそれしか経ってないんだ…」
「帰ろうと思えば1日で帰れてまう距離しか進んどらんもんなぁ」
「…急いで進んだほうがいいのかな?」
「急いだってええことあらんよ。それに、錬金術の腕前を磨かんと、試験には受からんのやし」
「それもそうだね… 調合頑張ろっと」
目的地のライゼンベルグはまだまだ遥か先やけど、一歩ずつ確実に進んで行こうな♪ …今は目の前の調合が優先やけど。
「よしっ、できた! 変な人のカギ!」
「変な人のカギ、こんな形やったんか…」
更に翌朝、ウチとリアーネさんが朝食を作っとったらフィリスがカギの修理を終えたみたいや。いつもはリアーネさんに任せきりやったからな、少しは手伝おう思ってウチも料理してたんよ。これでもウチもお姉ちゃんやからな、実の妹はここにおらんけど、フィリスの為に料理頑張っちゃうで〜♪
…で、変な人のカギや。フィリスが1日かけて直したんやけど、錆は取れんかったな。せやけど、折れとったのは直ったんや。 …錆の落とし方はわからんな。酢につけても落ちんかったし、昔の物らしいから簡単には取れんみたいや。
「ほんで、変な人に返さなあかんのやけど…」
「…変な人で悪かったな」
「うわぁ!? 変な人っ! どうして…」「うわっ!? いつの間に…!?」
釜の前で楽しく話しとったら、変な人に後ろを取られとった… ノックもなしに入ってきて、突然背後におるなんて、あかんよ〜?
「そろそろカギの修理が終わるころかと思ってな。それより、変な人呼ばわりはやめろ。俺の名はレヴィ・ベルガー。レヴィでもベルガーでも、好きなように呼ぶといい」
レヴィ・ベルガー… もちろん聞いたことない名前や、レヴィが名前でベルガーが苗字か? ウチらはみんな名前で呼び合っとるし、レヴィさんって呼ぶことにするか… それか、変な人呼びで貫くか、やな。
「じゃあ、レヴィさんで… えっと、わたしはフィリスっていいます」
「ウチはアカネ、フィリスの同行者や」
「私はリアーネと申します。よろしく、レヴィさん」
「あぁ、よろしく。それで… カギの具合はどうだ?」
「こんな感じです。折れてたところは直せたんですけど、錆がどうやっても取れなくて…」
「…いや、十分だ。礼を言おう」
錆が取れんかったのは気になるけど、レヴィさんが十分ならそれでええんかな。頑固な錆やったけど、綺麗なカギを見たかったなぁ…
「しかし、こいつを直せるとは… お前は中々に優秀な錬金術士のようだな。どうだ、ここは1つ協力でもしてみないか?」
「協力… ですか?」
「協力って、具体的にはどんな話なんや?」
「俺にはとある目的があってな。その目的を果たすためにお前の錬金術が役立つと見た。俺は、今後もお前の錬金術の力を借りたい。その代わりにお前の身を守る、というのはどうだ? 俺の刃は鋭いぞ。いかなる魔物だろうと、息の根を止めてみせる」
…信じてええんやろうか。出会い頭にカギの修理だけ頼んで名乗らんかった男やで、微妙に怪しい気がしてまうが… せやけど、ウチとリアーネさんだけやフィリスを護りきれるか不安はあるし、強い人に同行してもらえるんは心強い。 …ひとまずは、フィリスに委ねるか。
「レヴィさんって強いんだ… 一緒に旅してもらえたら、心強いかも…? でも、アカネさんだけでも…」
「ウチにそこまでの戦力はあらへんよ?」
「…その気になったら声をかけろ、俺はいつでも構わない」
「それなら、お願いします!」
「それは、その気になったということか?」
「はい! いいよね、リア
「もちろん」「構わんよ」
これからはレヴィさんも加えた4人旅か… 前衛2人、後衛2人で良い感じのパーティーになってきたな。ただちょいと変な人やし、フィリスに手を出さんか見張っとらんとな。もう何かしでかしたら、ウチとリアーネさんが許しはせんで…
「………」
「…? どうかしたか、レヴィさん。ウチの顔に何かついとるか?」
「いや… 良い剣を持っているなと思ってな。アカネは騎士なのか?」
「ただの旅人やで。この剣も先生に貰ったものやし、ウチは騎士なんて大層な人やあらへんよ」
「そうか…」
…ま、悪い人には見えんな。無警戒なんもあかんけど、共に旅する仲間なんやし、レヴィさんとも仲良くしてかなな♪
やることメモ
0.エルトナ
→1.エルトナ周辺
→1.乾いた平野帯
1.初めてのお外と旅人
2.オアシスを超えて
→3.突然の依頼
これからよろしく頼む
よろしくお願いします!