無職転生一週目クリアRTA   作:さくらいJAN

4 / 5
ルーデウス視点 1/2

 

 

「何もなかったんならいいよ」

 

 

というヒトガミの言葉を聞いて俺は目を覚ました。

いつものヒトガミと少し違う気がした。

普段はもっとおちゃらけているのだが。

 

いや、前回もあんな感じだったか。

俺はそう思い横を見る。

 

なんと目の前には耳長族の可愛らしい裸の女の子が!

シルフィである。

これ俺の嫁なんですよ。

 

そんな感動を胸にシルフィに抱きついて二度寝をしようとする。

これが毎朝のルーティーンなのだ。

 

 

と、思ったのだが寝付けない。

何故か焦燥感を感じる。

 

これはあれだ。

家の鍵閉めたっけ?の時のやつだ。

 

ヒトガミの頼みで地下室を見たわけだが、

そういえばまだ細かく見れてない箇所があった気がする。

棚の下とかご神体の上とか。

見たような見てないような、だ。

 

 

『何もないならいい』

ということは、何かあったら良くないということだ。

 

良くない、が俺にかかっているのかヒトガミにかかっているのかは分からない。

でもこの焦りはさっさと解消したい。

モヤモヤしたままではせっかくのシルフィから出る癒し成分の効果が薄まってしまう。

 

 

俺はベッドから起き上がり部屋着に着替えた。

下の階に降りる。

まだまだ寒いな。

 

すると台所から音が聞こえた。

リーリャさんだろうか?

いつも朝からありがたいな。

せっかくだしお礼を言おう、と思い様子を見ると、アイシャだった。

 

それならお礼だけではなく、ちょっといたずらをば。

と思い忍び寄ると箒と塵取りを持っている。

足元にはネズミの死体が見えた。

 

 

「おはようアイシャ」

 

「あ、お兄ちゃん!

おはよう!今日は早いね」

 

「なんか目が覚めちゃってね。

それはネズミ?まだ寒いのに珍しいね」

 

「そうなの。

なんか変なネズミでさあ。

病気もってそう」

 

 

きもちわるーい。

というアイシャ。

 

ネズミ……か。

真っ先に思い出されるのはペストだ。

黒死病とも言われるそれは、ネズミが原因と言われている疫病で、

当時のヨーロッパの人口を半分にしたらしい。

 

 

「ちょっと見せてみて」

 

 

これが『何か』なのか?

いやだとしたらおかしい。

それなら『ネズミがいないか見てきてよ』と言うはずだ。

虎がいるとかならともかく、ネズミでは見落とす可能性が高すぎる。

 

ヒトガミの助言はいつも的確だった。

なのに今回だけやけにぼんやりしていた。

警戒心が上がるのを感じる。

 

ネズミを観察すると、半開きになった口から、

紫色に透き通る歯が見えた。

まるで、魔石のような歯である。

 

俺はこのネズミを調べるとアイシャに伝えて、

土魔術で棒と箱を作って、それらを使い保管した。

決して触らないように気を付けながら、だ。

 

 

そしてそのまま地下室に降りた。

このネズミが『何か』なのか確かめたかったのだ。

 

 

早朝だからか、地下室への階段はまだ暗かった。

俺は懐から光の精霊のスクロールを取り出し、周囲を照らした。

階段を降りて行き、深呼吸をして扉に手を掛ける、

 

 

「……ん?」

 

 

すると、階段の隅。

わずかに溜まった埃の中に、気になるものを見つけた。

 

足跡だ。

ネズミの足跡。

その足跡は地下室へと続いていた。

 

 

そして地下室を開けて、調べる。

昨日とは違い、床を中心に。

すると先ほどの足跡と同じものを見つけた。

糞のような物も見える。

 

何が起きているのか分からなかった。

俺はヒトガミに騙されたのか。

ただの偶然か。

 

いや、いったんそれは置いておこう。

まずはネズミについて調べなくては。

 

 

俺は速足でクリフ先輩の家に向かった。

早朝におしかけて申し訳ないが、

クリフ先輩にお願いしてネズミを診てもらった。

クリフ先輩は先日の魔大陸でキシリカから識別眼を貰っている。

彼なら見るだけでこのネズミが紫色の歯をした普通のネズミなのか、

病気を持っている危険なネズミなのか分かる。

 

気のせいであってくれ。

 

そんな俺の願いは潰える。

若干迷惑そうで眼も半開きだったクリフ先輩の表情が固まった。

そして呟くように、言った。

 

 

「……魔石病」

 

 

俺は急いで学園の図書館に向かい魔石病について調べた。

クリフ先輩も同行してくれた。

 

神級の解毒魔術でしか治らない病気。

身体が次第に魔石と化していく難病。

 

ぼんやりと記憶していたそれらの情報は正しいことが分かった。

そして感染力が低く、人間にはめったに罹らないという情報を得た。

最初は安堵した。

だが、続く情報で息をのんだ。

 

 

妊婦の場合は胎児が感染する可能性が非常に高い。

 

 

心当たりは、ある。

避妊なんてしていないから当然だ。

 

俺は一瞬頭が真っ白になった。

手足の感覚がない。

俺、今どうやって立ってるんだ?

 

そんな俺をクリフ先輩がせかす。

 

 

「急げ!君の妻たちの様子を診るぞ!」

 

 

クリフ先輩に言われて家まで急ぐ。

そして家族全員を集めた。

 

すでに起きていたシルフィとロキシー、

念のためリーリャさんとアイシャとノルンにも聞く。

 

正直に答えてほしい。

とても大事な質問なんだ。

今、子供を妊娠しているか? と。

 

リーリャさんとアイシャは困惑しながらもNOと言った。

そういった行為もしてないと。

 

ノルンも顔を真っ赤にして怒りながらNOと言った。

 

シルフィはついこの間生理が来たからNOと言った。

 

 

だが、ロキシーは少し悩んでからYESと言った。

まだ安定期ではないので言ってませんでしたが、と。

 

 

奥歯が震える。

ロキシーに謝ってから服をめくりあげて直接お腹をみた。

まだ大きくはなっていない。

 

そしてクリフ先輩を見る。

 

頼む!

杞憂であってくれ!

 

だがクリフ先輩は若干震える声で、言った。

 

 

「……胎児が魔石病に感染している」

 

 

目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。