刀が肉を貫く音が雨の中なのに通る。
二刀に貫かれるのは一人の青年、それに向き直るは一人の老人とその後ろで臨戦態勢を崩さない18人の達人。
「真剣 涅槃滅界曼荼羅 (しんけん ねはんめっかいまんだら)…か…それに八皇断罪刃の無限陣、一影九拳の各自の最強の技…真剣勝負は一対一じゃなかったのかい?」
流石に二対一、三対一位までなら納得出来る。たった一人で国すら落とせると言われる達人が19人集まり、たった一人の青年に掛かる…それには呆れを通り越して苦笑しか出てこなかった。
「俺みたいな一般闇人一人に全員揃ってくるとはね、ちょっと闇抜けして活人拳に行こうとしただけなのになぁ…」
「お前に一般と言う言葉程陳腐にするものは無い。八皇断罪刃の全員と一影九拳全員で掛かってこの様だ。」
八皇断罪刃の長、世戯 煌臥之助(よぎ おうがのすけ)は吐き捨てる様に彼に呟く。
そう、一人で一国、複数人なら大国すら落とせる面子の全員で掛かり、満身創痍…全員ボロボロで息を吐くのすら苦労する程疲弊させられる。
青年の強さはまさしく一人で世界大戦を行える程であった。
ボロボロの青年に問いかけるのは世戯 煌臥之助と同じく最高位の達人のシルクァッド・ジュナザード。
「クカカ、お主を鍛えたのは我らじゃったが、それを昇華し、恐ろしい程の技巧…お主を殺すのは勿体なかったわいのう。お主はそんなに闇が嫌いだったのかのう?」
「まぁね…俺にとっちゃ、闇の生活は息苦しかったのさ…ああ…死にたくねぇなぁ、まだまだやりたい事有ったんだけどなぁ…」
「ふん、さらばじゃ…最凶のゼロ…我ら闇の出来損ないよ。」
「あんたぶっ殺せなかったのが心残りだわ、もうちょいこっち来てくれない?」
「断るわいのう、今近づいたら我ですら一瞬でひき肉だからのう。」
「そっか。」
青年の穏やかな表情から繰り出される物騒な言葉達がジュナザードに降りかかるも、いつもの事の様に語り合う二人。
その中には二人にしか通じない絆の様なものが有った。
そんな会話の後、青年には限界が来る。
「あー…限界…かな…師匠たち…今までありがとね、短い人生だったけど…それなりに刺激的だったよ…」
彼は意識を失い…その命の灯も消えた。
鵲涼介(かささぎりょうすけ)
享年21歳…あまりにも若い、短い人生だった…未練は残るものの、それでも自分に素直に生きた人生だった…
そんな彼が呼ばれた二つ名…それは…最凶のゼロだった…
しかし、彼の物語はこれで終わらず、まだ続くのであった、別の世界にて…
―――――
一人の少女が歩いている…黒髪をツインテールにしている、身長は小さいモノの、それ以外のスタイルは良く、所謂トランジスタグラマーと言うヤツである。
彼女の名前はヘスティア、この神時代に天界でダラダラしながら下界を見ていると、一つの流星が見えた…その流星は彼女にとって何か運命を感じさせるものだった。
ヘスティアは流星を追うかのように天界から下界に降り、その流星の落ちた所に向かっていた。
「んー見つからない…やっぱり下界に来て、すぐに追うのは失敗だったかな?眷属の一人でも…でもそんな理由で作った眷属の子にも申し訳ないし…」
彼女は善性の存在だった、多少だらけていたり、我儘を言う場面は有れど、それでも神としての格は高く、それに相応しい…むしろ稀有なほどの善性だった。
そんな彼女に取っては、運命を感じたとはいえ、それを追う為に自分の眷属を作ると言うのは看過出来ない事実だった。
ヘスティアは流星の近くに降りた為、近くで見つかると思って両手で頬を叩き、自分に活を入れる。
そんな彼女は地元の人に聞いた情報を頼りに進んでいく。
全知零能の彼女たち、神にとってはモンスターと遭遇するのすら怖い…しかし、彼女はその未知との遭遇こそ全てを優先するものだった。
そんな彼女が森の中を進むと、一人の青年が木にもたれかかっていた。
息も絶え絶え、傷だらけの青年…何故か目がそらせない。
彼女は確信した、彼こそがあの流星なのだと。
「大丈夫かいキミ⁉今村の人呼んでくるから‼」
そう言ったヘスティアに浅い呼吸をする青年は反応し、顔をゆっくり上げる。
整った顔が血に汚れ、それでも尚生きようとする青年…そんな彼を彼女は放ってはおけなかった。
あの流星の可能性も考えたのは有るが…
ヘスティアは走る、この子の命は繋ぎとめる…と。
―――――
温かい…俺は死んだはずでは?死後の世界ってのも案外温かみのある場所なのかね?
そう考えた涼介が目を開けると見知らぬ天井が目に入る。
「ここ…どこだ?」
そう言って身体を起こすと、自分がベッドに寝ている事に気付く。
ベッドの自分の手元に柔らかい感触が当たる。
そちらを見ると、黒髪の美少女が自分の手に頬を乗せているのが見えた。
「こんな可愛い娘、俺の知り合いにはいなかった気がするけど…ッツ⁉」
全身が痛む、当然だろう、傷は完全に治っておらず、それでも少し治っている事に驚く程だ、そもそも自分は死んでいる筈だった。
もう一度、少女の方を見ると、彼女はスヤスヤと眠っている。
空いてる手を使い彼女の頬をつつく。
柔らかい感触が返ってくる。
彼女が身じろぎをして、目を開ける。
「んみゅー…キミ‼大丈夫だったのかい⁉」
少女は良かったぁ…などと呟きながらその場にへたり込む。
彼女は善性だな、と涼介は納得した、目が覚めて直ぐにこちらの心配、中々出来る事ではない。
「おかげ様で…と言った方がいいかな?ありがとう。」
「いいんだよ、子ども達が無事なら喜ぶ、それが神としてある姿だからね‼」
そう言ってへたり込んだ態勢のまま、胸を張る少女。
なんとも眼福な…なんて邪な事を考える涼介だったが、それよりも聞き逃せない言葉があった。
「神?君は神なのかい?」
「そうだ、名乗ってなかったね、ボクはヘスティア、この下界に降りてきたばかりの神なんだ。」
「ヘスティア…確か竈の神じゃなかったっけ?」
「おー良く知ってるね、ボク結構マイナーだと思ったんだけどね。」
「…下界…もしかして神は実在するのか?ここは。」
「んー?そうだけど、どうしてそんな事聞くんだい?君は違う所から来たなんて言うんじゃないだろうね?」
「そうだと言ったら?信じてくれるかい?」
「うん‼信じるさ‼君は嘘をついてないからね。」
その後ヘスティアから軽い説明が有った、神は人の噓が解ると。
そして人に恩恵(ファルナ)を与える事ができ、それによりファミリアを作るのだと。
そして恩恵を得た人間を冒険者と呼ぶのだと。
「なるほど…家族を作って、強くなって…英雄になる…それが他の冒険者達の願いか…」
「皆が皆英雄になるかはわかんないけど、英雄になりたい子は一定数いるだろうね。」
「ボクはキミを見た時に思ったんだ、これが運命だって…だから、キミが元気になったらボクと家族になってくれないかい?」
不安そうになりながらも、こちらの様子を伺いながら聞いてくる彼女に…俺は…
一話目こんな感じです、どうでしたでしょうか?反応次第で続けるか決めるつもりではなく、書けるウチはずっと書く感じで行こうかと思ってます。
以下主人公の強さについてケンイチ世界を知らない方に対しての今作においての設定です。
一影九拳、八皇断罪刃は一人ひとりが一国の軍隊と同格かそれ以上なので、それが全員集まって戦って満身創痍なので世界大戦を一人で起こせる上に一人で解決できる実力として書きます、強すぎですが上手い事作品になるよう落とし込んでいきたいと思います。