次の日リヴィラの街、アンダーリゾートの冒険者達の街に行った涼介と留守番をしている弟子二人は話す、そう…昨日の出来事について。
「疾風、お前だったらあの男に対してどう立ち向かう?」
「猛者…あの時動けなかったのを後悔しているのですね。」
「…もしもあの男が殺す気で来ていたのならば、俺達は足手まといだ…」
「…それは…」
事実だった。
冒険者の上澄みと呼ばれ、持て囃されていても昨日自分達は動けなかった、その事実が二人の心にしこりを作る。
「恩恵を持っていて、自分は鍛錬を続けそれなりに強くなった…しかしゼウス・ヘラファミリアの連中でもあの二人には適わないだろう…自分の弱さにイヤになる。」
「私も…復讐しか考えていないこの身に、彼は教えを説いてくれる…本来ならば彼はあの男の様な達人が敵として来た時、彼は私達を弟子に取っていた…そのせいで死んだら…なんて考えてしまいます。」
自分たちは一人前の冒険者の筈だった、しかし昨日のあの瞬間はただの足手まとい、被保護者だった。
それがどうしても悔しかった。
「全く、くだらない事で悩んでんな…二人とも。」
「「⁉」」
二人が振り向くと買い物袋にどっさりと色んなものを持つ師の姿だった。
彼はくだらなそうに一つ溜息をついて続ける。
「弟子が師匠の足手まとい?それでいいじゃねぇか、いつかそいつが達人になったら力を持つ者として誰かを守り…自分の弟子が出来たら守ってやる、その繰り返しで世界は良くなっていくだろうよ。」
「…」
「しかし…その繰り返しが起きる前に私達のせいで死んでしまっては…」
「知らないのか?弟子を護る為に戦う師匠ってのは、死なないんだぜ?」
そう笑う師の言葉に彼女は尚も返す。
「それでも‼私は‼アナタに死んでほしくないんです‼」
そう心の底から叫ぶ彼女の目にはただの師を想うだけではない、別の感情も感じ取られたが、本人は気付いていない。
しかし、涼介は笑う。
「武術家にとっての負けって何かな?」
「…え?」
「勝負に負け死ぬことか?」
「そうではないのですか?」
「違うね、1000回負けても1001回目で勝てば勝ちだ、結局それまでの負けなんざ吹っ飛ぶ。」
「それは…詭弁では?」
「俺が思うのは、真の負けは自分の護りたい者を護れず死なせた時だけだ。」
「……」
「俺は…嘗て負けた、その意味に当てはまる負けをな。」
「「⁉」」
「それからは二度と負けていない…俺は…アイツの為に…負けられない。」
「リョウスケさん…アナタも…」
「それに、俺は最強だ、そう簡単に負けてちゃ最強は名乗れないだろ?」
へへんと、鼻を鳴らし笑う涼介。
まだ心配か?俺は負けないぞ?そう彼の表情は言っていた。
「それに心配だったら、ほら?」
ほっぺを指差し、リューに近づける。
「何を?」
「勝利の女神のキスってヤツ、くれよな。そしたら勝てるから。」
「⁉そんな事この私が⁉」
「いや~可愛い女の子からのキスがあれば勝てるんだけどな~。」
「あなた、からかってるでしょう‼いくら師とは言え説教させてもらいます‼」
「お~キスじゃなく説教は要らん、じゃあお前ら、ちゃんと寝ろよ~」
「ま、待ちなさい‼」
サッとその場から逃げ、残されたのはイチャイチャ空間の片隅に居た猛者と怒りの拳の行き場を失くした疾風の二人だけだった。
それからは暫く彼女の愚痴を聞かされる可哀そうな都市最強の姿があるだけだった。
「…上手く師匠やれてんのかな、俺は…もしも…未練だな。」
小川の横に座る涼介、彼はこれまでの自分を思い返していた。
『お願い…アナタは…負けないで…』
『どうして…?どうしてお前が死ななきゃいけないんだよ‼俺が‼俺が弱いからか⁉』
『ふふ…アナタは強くなるんでしょう?この世の誰よりも…だったら…そんな英雄には…悲しい顔は似合わないわ…』
『…俺は…キミが寂しいと言った蒼い空にはならない…頼もしい赤い炎になる‼』
『なら…生きて…それで…護れるモノは護ってね…』
『…約束する。』
思い返し、一人ごちる。
「俺に似合ってるのは消えない…赤い炎…か…一度は消えた炎、灯してやるさ。」
だから…見ててくれよ…
―――――
「ローズ、帰ったぞ、今回は37層行ってきたわ。」
「アンタ、何で生きてんの?それに後ろの二人は…その面子なら足手まといのアンタ連れても行けるか…」
「おいおい、俺も倒しまくったぜ?」
「はいはい、アンタの言う事は話一割位で聞いといた方が良さそうね…」
「酷いねぇ…ま、いいさ。これで報告終わりでいい?」
「良いわよ、ホラ、さっさと帰った帰った。」
「ん、了解…あ、これお土産。」
「これは?」
「ダンジョン内の香料を使った香水、狼人でも臭く感じないらしい…リヴィラの街に売ってたから買ってきた。」
「アンタ…」
「じゃ、俺はこれで…行くぞ、オッタル、リュー。」
三人は去っていく、
ローズは香水を手に取り、眺め、懐に大事そうに仕舞う。
「彼、調子のいいタイプだけど良い男ね。」
「ひゃう⁉」
「もしかして、彼に惚れた?」
同僚のソフィにからかわれた彼女の怒声がギルドの中に響くのであった。
―――――
ここは黄昏の館、涼介は弟子を連れ、昨日穿彗と会ったことを伝えておく為に来ていた。
「フィ~ンく~ん、お~ちゃし~ましょ~」
「アンタはいきなり来て何言ってるんだ、こっちの団長をいきなり呼べだなんて⁉」
門番は思わずツッコみを入れて、見知らぬ冒険者だからと追い返そうとするが、その男の後ろの面子を見て思いとどまる。
フレイヤファミリアのオッタル、アストレアファミリアのリュー…両者ともに彼の後ろに付き、こちらに覇気を向けている。
目の前に至っては両手を頭の上に置きピコピコ動かし始めている。
猛者が聞く。
「何をしてるんだ?」
「なんか馬鹿にされてそうだから威嚇のポーズしてる。」
「…やめておけ…最悪俺が交渉しよう…」
むしろ馬鹿にされそうな事をしているのだが、それを突っ込んだら大惨事になりそうだとオッタルは目で門番に早くしろと伝える。
「わ、わかりました、呼んできます‼少々お待ちを‼」
駆け出す門番にまだ涼介は威嚇のポーズをしている。
少ししてフィンとリヴェリア、アイズが来る。
アイズは涼介の前に走ると、首を傾げる。
「リョウスケ‼…何をしてるの?」
「威嚇のポーズ、お前もやるか?」
大人は辛い事が有るんだろうかとアイズは考えるのだった。
それはそれとして威嚇のポーズは二人で並んでやった。
―――――
「すまなかったね、ウチの門番が…」
「ホントだぜ、レベル1だからって馬鹿にされてそうだから威嚇のポーズを披露する羽目になっちまったじゃん。」
(((((((((レベル1よりそっちの方が馬鹿にされるのでは?)))))))))
((威嚇のポーズ?))
大人組、子供組の反応は違うが、両者は疑問を口に出すことは無かった。
アイズはお土産のジャガ丸君をむしゃむしゃ食べていた。
「それで…今回はどうしたんだ?お前の事だから、近くを通ったという事ではないだろう。」
「穿彗…師匠に会ったよ。」
全員が戦慄する、この男の師匠…話に聞いてはいたが、あまりにも唐突だった。
「それで…怪我がないって事はやり合っては無いんだろうが、敵だったのか?」
「ああ、敵になるって話だ、闇派閥の側に立つと。」
「ふむぅ…聞いてる限りじゃと、儂等オラリオの冒険者では敵わないらしいが、オッタル、リュー…どうじゃったんじゃ?」
全員の視線が二人に集まる。
「俺は、数週間鍛えられ、前とは比べ物にならない程の実力を得ただろう…しかしそんな俺ですら、瞬きの間に殺されるだろう。」
「ええ、オラリオの冒険者では勝負の土俵にすら立てません、これは3年前の彼女たちを見た私も同じ意見です。」
全員が再び唖然とする、話に聞いてはいたとはいえ、そこまでの隔絶した差があるとは思っていなかった…甘かったと言っても良いだろう。
「俺がぶっ倒す、俺以外に勝てないなら俺が勝つだけだ。」
「殺せるのかい?」
「殺さない、倒すだけだ。」
「それは…」
フィンの懸念点ももっともだった、闇派閥は殺す気、そして殺めなければ自分が危ない。そんな理由で生け捕りなど難しい…
生け捕りなど遥か格下でしか出来ない、それが当然の世界で生きてきた。
「格下の相手…ではないんだろう?」
「武術にはある、最初から殺意を消し、殺すつもりの無い技がな…俺オリジナルの技だ、それを使えばいける。必ず勝つ。」
言う彼の目に迷いは無く、全員が目を離せなかった…
オラリオには電気の代わりに魔石で動くという設定あるの助かる、ケンイチの修行のレパートリーが使えるのは大分気が楽ですね。
楽しめてる?
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面白いよ、このまま進め。
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もうちょい精進しても良いんじゃよ?