「全…滅…」
一人の少年が道端で俯く、オラリオに来て冒険者になりたい。
その一心で故郷を飛び出し、ギルドの受付にて加入することの出来るファミリアの情報を貰い、それを片手に加入しようとしたのだが…
ある所では主神に弱っちそうだからダメだと言われ、またある所ではそもそも門番に門前払いされる…
彼はもう涙がボロボロ出て、大声で泣き出す寸前だった。
そんな彼に近づく少女が居た。
「どうしたんだい、泣きそうな顔をして?良かったら話を聞くよ?」
少年は涙が止まらないまま彼女に話す、自分がギルドから貰った加入出来そうなファミリアに行ったこと…その全てで加入する事が出来なかった事…それで道端で泣いていたことを少女に話す。
「そっか、入りたいのに入らせてもらえないなんて辛いよね…探索系ファミリアじゃないとダメなのかい?」
少年は頷き、続ける。
「僕…英雄になりたいんです…物語に出てくるような英雄に。探索系じゃないと成れないんじゃないかって思ってて…」
「…あの子が居なかったらボクもこの子みたいに…うん‼少年‼キミの名は?」
「ベル…ベル・クラネルです」
「そっか、ベル君…良かったらボクのファミリアに来るかい?本来なら団長の子に聞かないとだけど、今回はボクが彼に推薦するよ‼」
少年…ベルは本当に…本当に嬉しそうに笑顔で応える。
「はい、僕入りたいです‼アナタのファミリアに‼」
その答えに彼女…ヘスティアは嬉しそうに笑みを返すのであった。
―――――
全く同じ時間、ヘスティアファミリアのホーム、竈の館にて。
「ヤァ‼」
一人の少女が槍を振りぬく、彼女の名前はリリルカ・アーデ。
元々別のファミリアに所属していたが、偶然サポーターとして契約した男に拾われ、それから彼の弟子となり、ヘスティアファミリアに改宗した。
その際ひと悶着あったのだがそれはまたの機会に…
そんな彼女は現在、師がダンジョンに潜っている為に自主鍛錬をしていた。
「やっぱり…リリには才能はありませんね…あの人曰くまずは身体をちゃんと作るのが大事とのことですが。やっぱり悔しいものですね、連れて行ってもらえないのは…」
15になった、だから修行はそろそろ厳しくする…と言われているものの、そのタイミングを見極めている最中だと言われた。
それでももどかしいモノはある、せっかく助けてくれたあの人の力になりたい…そう思っているのに、彼ときたら…
『今は守られとけ、可愛い可愛いリリが身体を壊したら、俺…泣いちゃうぜ?』
『その優しさ私達に欲しいんですが…』
『俺に口を挟むとは弟子の癖に生意気だ、もう少し上下関係教えとくか』
『私は何も言ってな…』
『れ~んた~い責任』
『ギャ~ス⁉』
なんて事があった。あの時の彼の言葉を借りるなら、自分はまだ弟子ではないのではないか?そう暗い気持ちが自分の中を駆け巡る。
「ダメですね、自分一人だと良くない事ばかり考えてしまいます…気分転換に甘味でも買いに行きますか…確かお茶請けも切れかけてた気がしますし」
そう彼女が考えた瞬間、館の扉が開かれる音がする。
この時間は誰も帰って来る筈は無いのだが…彼を師としている弟子の誰かが来たのだろうか?
「ただいま~‼帰って来たけど誰かいる?」
「ヘスティア様でしたか、おかえりなさい。バイトはどうしたんです?」
「ちょっと事情があってね、お願いして抜けてきたよ。ベル君…ここがボク達のホーム、竈の館さ‼」
「すごい、結構広いんですね」
「ウチの子達が頑張ってくれたおかげさ、ウチの子達は皆良い子ばかりでね、この子はウチの末っ子のリリ君だ‼」
この神は…そう考えながらも不快感は覚えない、これが神徳なんだな…なんて考えながら案内される少年を見る。
雪の様に真っ白な髪、目はパッチリとした赤、ホントに見た目はウサギである。
「ベル様…ですか…初めまして、リリルカ・アーデといいます。よろしくお願いします」
「は、はい‼ボクはベル、ベル・クラネルです‼よろしくお願いします‼」
クスクスと笑ってしまう、純朴さがあり、初々しい…年下であろう彼は年上の女性なら放って置けない独特の…なんというか、悪い事教えたくなるタイプの少年だ。
自分も彼が居なければ、少し惹かれていたかもしれない…まぁ彼が居る時点でありえない仮定ではあるのだが…
目の前の少女のクスクスと笑う姿はベルにとっては何故か刺激的で、目を奪われる…
そんな風景を見ていたヘスティアは…
(ベル君純朴すぎやしないか?確かにリリ君は多分、恋をしているからそれのせいで魅力的に見えてもおかしくないけど…あの子が帰ってきたら相談しないと…)
なんて考えていた。他の神なら面白がって色々するだろうが、この優しい神はそんな悪い事考えつきもしなかったのである。
―――――
「帰ったぞ、ローズ。今回の成果だ、纏めといたから見といてくれ」
「わかったわよ、こっちで見とくわ。んで他に面倒事起こしてないでしょうね?」
「…無いよな、リュー?」
「今回はありませんよローズ…苦労しますね、お互いに」
「おいこら、今回はってどういう事だ、俺がまるでいつもやってるみたいに…」
「階層二つぶち抜いた件、それのせいでイレギュラーな魔物湧いたんだけど、それに関しては?」
「……」
「後は何股したかわからない位手出しまくったせいでトラブル起きたとか?」
「…記憶にございません…」
受付嬢が青年を引っぱたく。
「アンタ、下の話までこっちに持ってこられた時の感情解る?アンタのお母さんじゃないのよ、こっちは」
「ママァ~」
「ぶち抜くわよ?」
「はい」
形無しである、ローズがもしも嫁だったら尻に敷かれていただろう。
「アンタ、いい加減誰か一人に絞ったら?」
「俺は気の向くままに生きる、雲だ‼」
「散らすわよ」
「ピエン…」
「真面目な話、誰か一人に絞らないんですか…」
「なんかなぁ…一人に絞れないんだよな…」
「「どうして?」」
「凄い食い気味に聞いてくるじゃん、まぁなんつーか一人に絞れない」
「アンタねぇ…」
「ま、その内答え出すよ。必ず…どうするかは決める」
「まだ前向きな言葉を引き出せただけ良いでしょう、ローズ」
「そうね、それじゃ帰りなさい、仕事の邪魔なんだから」
二人はローズに手を振りながら去る、そんな二人…特に彼を見て溜息をつく…
「ローズ先輩どうしたんですか?」
「彼が誘ってくれなかったから不機嫌なのよ」
「⁉ソフィ、アンタねぇ‼」
そそくさと逃げるエルフを追うローズであった。
―――――
「今日はシチューだな」
「そうですね、私が作ります」
「オッケー、楽しみにしてる」
そう言って二人はホームの扉を開ける。
「お帰り、リョウスケ君‼」
「お帰りなさい、リョウスケ様」
「お、二人とも揃ってるね、今日はリューが作ってくれるらしいぞ」
「ボクも一緒に…ってそんな事言ってる場合じゃなかった…新しい子を入れたいんだけど…ダメかな?」
「新しい子?どっかで拾って来たか?」
「それがね…」
ヘスティアが事情を説明する、それに対して涼介は…
「良いぞ。ウチもリリが入ってから二年、結構時間経つしな…新しいメンバーを入れるのもいいだろう。ただ、ちゃんと見るからな?」
「わかった‼それじゃ、今客間に居るから、呼んでくるね‼」
そのまま走り去るヘスティア。
少し後に少年を連れてくる。
「ほほう…」
「なるほど…」
ベルを見た涼介とリューの感想は…
((これは確かに才能無いな…))
二人は全く同じ感想だった。
「どうかな…?」
緊張した空気が居間に溢れる。
少年はビクビクしている、また落とされるのではないかと不安になる。
「少年…」
「…はい‼」
「何のためにオラリオに来たのか…キミの口から聞かせてくれ」
「その…物語の英雄に憧れたのも有るんですが…」
「だが?」
誰かがゴクリと喉を鳴らすのが聞こえる。
「男ならハーレムを作れってお爺ちゃんが言ってたので、作りに来ました‼」
「採用、キミ、見込み有るよ」
「「「おい⁉それでいいのか⁉」」」
はい、リリは拙作ではヘスティアファミリアに入ってる事にしました。
まぁ泣いてる女の子を涼介が放置できるか?って感じで考えてもらえたら幸いです。
楽しめてる?
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面白いよ、このまま進め。
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もうちょい精進しても良いんじゃよ?