では、どうぞ。
「ベル君‼ダメだからね、ハーレムなんて碌なことにならない。ボクは身内がそうだったから解るんだ‼」
「良いじゃん、ハーレム。みんな幸せに出来る甲斐性があるならそれでいいじゃん」
「ダメです‼ベル様の教育に悪いですよ‼」
「えーでも選ばれなかった子が可哀そうじゃん」
「それでも、節操無しに沢山増やすよりは…」
「まぁベルはハーレムが何か解って無さそうだしな。そのうち理解したら大丈夫だろ。一人しか選ばんだろ」
涼介、正解である…複数の女の子を助け、惚れさせながらも一人しか選ばない…そんな真っすぐさが有るのがベル君である。
三人は納得が行ってない様子だが、彼はそんな事お構いなしにベルに話しかける。
「んで、物語の英雄みたいにもなりたいんか?結構欲張りだね。」
「は、はい。無理でしょうか?」
「無理かどうかはやって決めるんだな。最初から無理だなんて折れてる奴には俺は教えない。お互いの時間の無駄だからな」
「…やります…僕、頑張ります‼」
その返答に涼介は満足し、頷いた後にリリの方も見やる。
「明日から、ベルの修行と並行してリリの修行も本格的に厳しめにやる…待たせたな」
「い、いえ‼今までリリの事考えてくれてたのは解ってます…でも嬉しいです」
「リューも修行ちょい甘いからメニュー見直そうか」
「ありがとうございます。達人級にまで昇りつめてから、複数人での組手なら結構経験があるのですが、自分一人でのメニューが甘い気がしたので」
「ヘスティアは…皆の為にメシ作ってくれるか?」
「うん‼ボクにも出来る事あるんだね。ボク頑張るよ‼」
三人の機嫌が良くなるのを見たベルの内心は…
(すごい、団長の皆に対する一言だけで皆機嫌が良くなっちゃった…すごいなぁ…)
「さて、メシはリューとヘスティアお願いできるか?後リリは俺の膝の上で」
「なぬぅ⁉」 「何ですって⁉」
「その…リョウスケ様…恥ずかしいです…」
「師匠特権だ。撫でまわしまくっちゃる」
頬を赤く染め、恥ずかしそうに照れるリリと対照的にヘスティアとリューの怒りのボルテージは上がる。
わちゃわちゃとした、平和な日々。そんな幸せな日々に少年も入り、物語は動くのであった。
―――――
「あのー…団長、これは?」
ベルは理解できなかった。ただ目の前の滑車の存在感に圧倒されていた。
所々血が付いている。その滑車の前に自分は引き出されていた。
「ん?修行道具、とりあえず最初は基礎体力付ける所から…ってのもあるんだが…」
ちらりと自分の方を見やる涼介に少しビクリとなるベル。
「ダンジョンには数日経ってからだな、少し鍛えんとお前死にそうだから」
ぐさりとその一言が刺さる。自分が弱そうだと理由で入団を断られていた彼にとっては、とても重い一撃だった。
その言葉に少年が打ちのめされるのも、気にせず涼介は続ける。
「お前に戦う才能は無い。期待させるのは死ぬ要因だから言っとくが」
少年の情緒はぐちゃぐちゃになる。才能が無い…英雄になれないのではないか…涙が止まらない。
そんな彼の頭はガシガシと強く撫でられる。
「何泣いてる?才能無いって言っただけなんだが?」
「ふぇ?」
「お前が英雄になれないなんて一言も言ってないぞ。俺が強くしてやる…ま、俺の次位にはな」
涙が止まらないのは変わらないが先ほどの一言よりもすんなりと染み入り、気持ちが少し明るくなる。
「そこで自分より強くって言わない辺り質が悪いですね」
「というか落として上げるってのがまた酷な事してると思いますよ、リリは」
「そこ、修行で泣かしてやるからな」
「「やばい、ミスった…」」
余計な一言を言った二人を滑車と修行器具…『決まった道を辿れ君』に放り込み、少ししたら断末魔にも似た悲鳴が聞こえてくると、否が応でもベルには現実と向き合う事になった。
しかし逃げたくなるものの、師匠である団長が自分を死なせない為に修行を付けてくれる…それに報いる為に彼と目を合わせる。
「ま、安心しろ。俺は優しいからな…地獄見るけどその分の成果は出してやるさ」
「あの…もしも団長の思った通りの成長できなかったらどうなるんですか?」
「はっはっはっ」
「答えてくださいよ⁉ホント怖いんですけど⁉」
「気にする必要は無い、『成長』させるからな」
「助けてください⁉リリルカさん、リューさん‼ダメだ‼二人とも目が死んでる⁉」
「いや~活きが良いなぁ。最近こういう元気なの居なくなったから、俺も腕が鳴るよ」
ウサギの悲鳴が響き渡るのであった。
―――――
それから数日地獄の修行を経たベルは一人、ダンジョン五階層に潜っていた。
リリは修行優先…ベルは自分がダンジョンに潜ってどこまでやれるか気になっていた為に無理を言って潜らせてもらっていた。
「団長…師匠のおかげで村に居た時よりは足腰使えてる気がするけど…本当に強く…でもリューさんは似たような修行した事有るって言ってたしなぁ…」
そう愚痴る彼の前に運命が現れる。
ミノタウロス…ダンジョン五階層に間違っても現れる筈の無い圧倒的格上。
「ブモォォ…」
「あの…嘘だよね?」
「ブモォォォ‼」
「本物だった⁉師匠居ませんか⁉ホントは付いてきてたり…」
周囲を見渡すが自分とミノタウロスしかいない。
「こういう時って誰か居るもんじゃないの⁉助けて⁉誰か⁉」
「ブモォォォォ‼」
逃げるウサギに追う牛。
どれだけ逃げただろうか…体感的には数時間逃げたつもりだろうが、実際には数分しか逃げる事しか出来ていない。
そんな彼も追い詰められ、逃げ場が無いところに逃げ込んでしまう。
ミノタウロスの一撃がベルの身に降りかかる瞬間…一閃
魔物の半身が分かれ、血がベルに降りかけられる。
そして目の前には金髪の少女、女神かと見紛う程に美しいその娘を見たベル。
「大丈夫…ですか?」
「だ…」
「だ?」
「だぁぁぁ⁉」
逃げるベル、後に残るは少女のみ。
「…逃げちゃった…」
「くっくっく…逃げられてやんの、アイズ」
「うるさいです…ベートさん」
彼女は不貞腐れるかのように剣を鞘に戻そうとするも取りやめる。
周囲からは濃厚な気の気配。
ベルにはまだ感じ取ることの出来ない…しかし達人級にのみ分かる程度に振り撒かれる気。
「…誰?」
「覗き見たぁ性格がわりぃ奴も居たもんだが…」
周囲を警戒する二人の目の前の通路より歩く音がする。
「いや~修行を怠ってないようで何よりだ。二人とも今ならそこそこの達人とやり合えるんじゃないか?」
通路の影より現れるはヘスティアファミリア団長…涼介。
二人は彼の姿を見るなり警戒を解く。
「リョウスケ‼」
「なんだてめぇか、要らねぇ警戒しちまったじゃねぇか」
「俺じゃない可能性も考えて警戒するのは良い事だぞ?」
「けっ…てめぇと同格だったら警戒しても意味ねぇだろうが」
アイズは目をキラキラとさせながら涼介に抱き着く。
自分を強くしてくれた…そして…
『自分の為に戦ってくれる英雄が欲しい?暇だったらなってやるよ、お前の中の英雄にな。』
そう言ってくれた彼に抱き着くのだ、彼女は。
「つーか趣味悪くねぇか?てめぇだったらさっきのガキ…アイズが出るまでもなく処理出来た筈だ。」
「0.2秒早かったからな、アイズが動いたのが」
「「?」」
「後0.2秒でギリギリの限界ラインだった。だからそれまでは手出さないでおこうってね」
(こいつ…性格の悪さに磨きがかかってないか?)
ベートが思ったことは…先ほどの少年が可哀そうに思えてくるという事。
彼はツンデレクソ狼なので…口では嗤うが意外と気遣いの出来る男なのだ。
「ねぇリョウスケ、さっきの子は知り合いなの?」
「ああ。ウチの新しく入団した末っ子さ」
「「⁉」」
四年前のあの戦いの後、ヘスティアファミリアに入団しようとする人間は増えた。
しかし誰も…それこそ二年前偶然彼が拾った小人族の少女以外は入団する事が出来なかったのだ。
彼の教えを受ける事が出来た人間も数が少ない程…その為に大金や貴重な素材を積んだ者も多かったのにも関わらず…だ。
「おい。」
「なんだ?」
「アイツは才能有るのか?」
「才能…恐ろしい程無いね。花屋でもやってた方が幸せなんじゃないの?」
「何…?」
「才能は無い…けどアイツには一番必要なもんが有る。」
「⁉それって何⁉リョウスケ?」
「ナイショ…ま、アイツを見とけば分かるんじゃね?」
そう言って抱き着いているアイズを引き剥がすと、次の瞬間には彼は居なくなっていた。
二人は後ろから来る自分の仲間達の声も聞こえない様子だった。
本当に必要な物…それは…おっと今はナイショさ…
本当に必要な物はもう考えてますが、しばらく後かなぁ…ベル君のヒロインとの闘い一戦目で出るかもです。
Q 通りすがりの涼介の戦いを見ていた観客
そういえば主人公って恩恵の補正ありきでギリギリだったんだよなぁ
師匠ヤバくね?
A 涼介君が死んだのがケンイチ原作開始数年前の設定なので、それからもう一度あんな醜態をさらさない為に…と穿彗も努力しました。
ケンイチ原作でも田中勤というキャラが仇討ちするためにとあるキャラを研究し続け、食らいついた事例がある為無理では無いと思っています。
楽しめてる?
-
面白いよ、このまま進め。
-
もうちょい精進しても良いんじゃよ?