アンチ・ヘイトで匙加減が一番大変な酒場のシーン、開始です。
「ミア母ちゃん来たでぇ~。今日はよろしく頼むわ」
「フン、騒ぎすぎるんじゃないよ」
「安心して欲しい、そんな事する輩は吊るすさ」
「…そうかい。」
案内されるロキファミリアの面々、それを見て酒場の客がざわつく。
「ロキファミリアだ、今回も五十階層より深く行ったらしいぜ」
「流石二大派閥って言われるファミリアだな…最高幹部はレベル7…他の幹部もレベル6とか行ってるヤツ居るんだろ?俺らとは格が違うわな」
ロキファミリアは凄い、そう語り合う彼らの中にはもはや嫉妬の感情すら湧かない人間ばかりだ。
「凄いですね…やはりロキファミリアはこの街で羨望を集めるだけの実績がありますからね…」
「ふん、でも幹部の子は涼介君が鍛えたんじゃないか。涼介君の方が凄いやい」
「それは否定しません」
リリルカが周りの反応をかいつまむと、ヘスティアはロキの子供達には自分の子が負けてないと呟く。
「あのなぁ…俺は程々に女の子にモテて、のんびり過ごせればそれでいいんだよ」
彼の考えは平穏…それは元の世界でどれだけ欲しくても手に入らないモノを手に入れれば満足だという。
ベルはアイズを横目でチラチラ見ながらエールを煽る。
そんな中、一つの大きな声が鳴り響く。
「アイズ‼あの話してやろうぜ、こいつらに‼」
「あの話…?」
「ああ、あのトマト野郎の話をな‼」
ビクリと白兎が肩を震わせる。
曰く、その冒険者は逃げる事しか出来なかった…曰く死ぬ直前にアイズに助けられ、その返り血がその冒険者にかかりトマトの様だったと。
「アイツはダメだな‼あんなの冒険者辞めて花屋にでもなっとけば良いんだよ。」
「⁉」
「やめてください、ベートさん…」
「い~や、辞めないね…あんな奴が居るから俺らの様な一流が下に見られるんだ。それによぉ…アイズ、お前だったらあんなのを番に選ぶか?」
「それは…」
「ベート、酔いすぎだよ」
「ミノタウロスを逃がしたのは我々の失態だ、それを理由に嘲笑うなど…恥を知れ‼」
「雑魚にアイズ・ヴァレンシュタインは釣り合わねぇ」
その一声が切欠になり、ガタリと一人の少年が酒場から逃げる。
「ベル君‼」
黒髪ツインテールの神が呼びかけるも少年は酒場から去る。
それと同時に気当たり…濃厚な気がロキファミリアの面々にぶつけられる。
「か…は…」
「これは…まさか…」
ロキファミリアの面々、その幹部達ですら呼吸が辛い…直接ぶつけられたベートに至っては息が出来ていない。
「あんまりこういう場で気当たりぶつけたくは無いんだがな…でも先に言葉の剣を抜いたのはそっちだよな?」
気の出どころを探る面々は…修羅を見た。
ぶち切れていっそ静かにキレるという器用な事をしているのはヘスティアファミリア団長…涼介だった。
「まさか…キミが居るとはね…リョウスケ…」
「ぐ…うぅ…」
フィンが何とか対応しようとするも、涼介は怒りの様相を収めない。
「えらくなったもんだ…一流?誰のおかげでなったと思ってる…ウチの末っ子泣かしてくれるとはな。」
「リョウスケ様‼気当たりで人が死にます‼」
「そうだよ…抑えるんだ、リョウスケ君‼ムカつくのは分かるけどやりすぎだよ‼」
「死ななきゃ漏らす程度良いと思うんだが…まぁ抑えてやるか」
気当たりが収まる。全員が息を吐く。
「て…てめぇ…」
「お前の酒癖が酷いのは分かるが…お前程度の実力で一流を語るにはまだ早いんだよ。ミア母ちゃん、勘定頼むわ。気分悪い…」
「ああ、解ったよ…あの坊主にもまた来る様言っときな…冒険者についての心がけ教えてやるから」
「ああ頼む。んじゃまたな…」
「あ、リョウスケ君…待ってくれよ‼」
「…失礼します…」
ヘスティアファミリアの面々が勘定を済ませ去る。
その間ロキファミリアの面々は動けなかった…。
「リョウスケ…」
剣姫は一人呟く、その瞳に何を思うのかを誰にも言えないままに。
―――――
ダンジョン六階層…そこでは少年がナイフを振るう。
防具もつけずに一人戦う少年は自分の無力に涙が止まらなかった。
「ハァ…ハァ…クソッ‼僕は…僕は‼」
何も出来なかった…自分が無力でミノタウロスに殺されかけた…自分が無力で酒場でこき下ろされたのを言い返せなかった…自分が無力で…‼
そう息巻いているが、力が足りず背後の魔物を処理しきれない…
やられる…そう思い振り返った時には魔物は消えていた。
「え…?」
驚く程気の抜けた声が出る、自分の目の前には師匠がいた。
「ったく…五階層で死にかけたのに、六階層まで来てるとはな…ホントにお前は面白いよ」
これまで見たことの無い師の穏やかな笑顔に驚くも、彼は続ける。
「ベル…悔しいか?」
悔しくない訳が無い。自分がこれまで何もしていなかった…やろうとしていなかったのを棚に上げて自分の無力を嘆いていたのだ。
「ベル…強くなりたいか?」
強くなりたい…誰よりも…自分が立ち向かえなかったモノに立ち向かえるようになりたい…
「ベル…お前次第だ…お前が諦めない限り俺はどんなモノにでも立ち向かえる様にしてやれる」
そう言って師は手を差し伸べてくれる。
僕は…その手を取ろうとした時に師は語り掛ける。
「お前はどんな力が欲しい?」
「どんな力…?」
誰にも負けない勇敢な力? それとも…周りを助ける優しい力?
強くなれば同じじゃないの?
僕の目を真っすぐに見てくれるその目に僕が戸惑うと…
力は色々ある…人にはどちらかしか選ばせない…普段は俺が決めるけど…今回はお前が決めていい。
掴んだ手を優しく握り、彼は問う。
「どっちを選んでもお前を導いてやる。でも…今本当に渇望している…お前の魂が望む力はどっちだ?」
どっち…どっちを選べば…?
勇敢な力?優しい力?
そこで僕は握られた手を見る。
優しく…温かい手。僕を包み込んでくれるその手を見て僕は決めた。
「周りを…周りを助ける優しい力でお願いします」
「そっか、お前にはそっちのが向いてるだろうね」
「え?」
「何でもない…さ、帰るぞ。ヘスティアとリリはもう帰したからな、さっさと明日に備えて寝ないと背が伸びねぇぞ」
―――――
安堵…という心が涼介の心を埋める。
先程の二つの力…という問いは殺人拳と活人拳のどちらを選ぶかの問いだった。
ベルの性格としては殺人拳は合わない…だから選んで欲しくは無かったが…
今の彼には選ばせる事が大事だと思った為にあの力を二つ並べて選ばせた。
活人拳を選んだ少年を見やる。
(思ったがコイツは心根が優しい…典型的な活人拳向きだな。それでも自分で選ばせるのは大事だからな。)
「ま、ミスっても無理やり誤魔化して鍛えてたけどな」
「?」
隣の白兎は分かってない様子。
キミは知らなくていいぞ、それが幸せだ。
楽しめてる?
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面白いよ、このまま進め。
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もうちょい精進しても良いんじゃよ?