「とりあえず朝の修行を始める訳だが…リリは俺と組手、ベルの修行は器具に放り込んで後は死ななきゃいいから…それだけ見てもらえるか、リュー」
「わかりました。クラネルさんの修行は私が見ます」
「リリが組手…ですか?今まで全然やらなかったんじゃ…」
そう、彼女の修行では組手を行わない。それどころかオッタルやリューを筆頭とする弟子たちと比べて余りにも温い修行をさせている…この意図は弟子の誰もが読み取れなかった。
しかし、涼介は最も大変な…リリにとって大変な修行をつけようとしていたのだ。
「リリも体が出来てきたからな、本格的に修行に入る。大変な修行だ…気張るんだぞ」
「…はい‼リリは頑張ります‼」
満面の笑みで彼に答えるリリ、その表情にはかつての卑屈な少女の姿は無かった。
少し空気が明るくなった所にヘスティアが現れる。
「おはよう皆‼リョウスケ君、ちょっと良いかい?」
「ああ、構わんが…リリ、ちょいと待っててくれ…ベル、ほれ」
そういって滑車の中にベルを放り込みスイッチをオンにする。
「うわっ⁉ちょ⁉」
ベルは走る。こけたら電気が走るぞ、頑張れベル。
涼介はヘスティアの元に歩いていき、ヘスティアは涼介以外の三人の目に映らない場所まで歩く。
「どうしたんだ?」
「ちょっとこれを見て欲しいんだ。」
ベル・クラネル
力 F 263
耐久 G 220
器用 E 320
敏捷 E 350
魔力 I 0
憧憬一途(リアリス・フレーゼ)
憧れが続く限り早熟する。
「めっちゃ伸びてるじゃん。スキルのせいか?」
「そうなんだ…ベル君は恐らくレアスキルの影響ですごく伸びてるんだ…今の彼に必要なのは何かな?リョウスケ君なら分かるかなって…」
「修行だな」
「いや…こうもう少しなんか無いのかい?必要な装備とか…」
「ん~なら…武器かな」
「武器かい…なら僕はヘファイストスと会う為に今晩出かけるね」
「了解、なんか要るもんあるか?」
「そうだねぇ…あっ」
何か思いついたかのように手を広げ、涼介を受け入れるような態勢を取るヘスティア
「…抱きしめて欲しいのか?」
「うん‼最近キミとイチャイチャ出来てなかったから…ダメかな…?」
上目遣いで見つめてくるヘスティアに対して涼介は抱きしめる。
「そうだな、最近はあんまりお前に構えてなかったな、たまにはいいかもな」
「へへっ。リョウスケ君…大好きだよ」
「…俺もだ…」
そこには確かに愛が存在していた、普段女遊びをしている涼介だが…それはとても純粋な愛情。
「やっぱりリョウスケ君が一番だね‼リリ君も抱き心地いいけど、キミには勝てないよ」
「ったく…誰かが聞いてたら恥ずかし…」
視線を感じてそちらを見るとリリルカとリューが羨ましそうにこちらを見ていた。
「お前らも混ざりたいの?」
「というよりは…二人きりで抱き合ってるのが羨ましいというか…」
「リューも隠さなくなってきたな…あんなにむっつりだったのに欲望まみれじゃん」
「なっ⁉私はそんなつもりじゃ‼」
「はいはい」
リューを抱きしめると途端に彼女はしおらしくなる。
「まったく、甘えたきゃ素直に甘えりゃいいのに」
「それが出来れば苦労はしません…」
甘え下手だな…そう考えるもむしろそこが魅力的に映る。
遠慮がちにこちらを見ているリリルカが目に入る。
「リリ、おいで」
「…でも…お二人に悪いです…」
「遠慮すんな、お前は俺にとって大切なんだ…抱きしめさせてくれ」
「…はい‼」
リリルカの小さい体を抱きかかえる。
美少女三人と交互に抱きしめあうという世の男が見れば血涙を流すような光景だが唯一見れそうなベルは地獄を見ている。
同じホームに居るのに天国と地獄である。
―――――
「いや~やっぱり柔肌はいいね~ベルも恋人欲しくなるよな」
「そ…そんな…こと…言えないです…」
「あら?そういう話題ダメなタイプ?」
先程の返事で最後の力を使ったベルは力なく呼吸している。
「やりすぎたか、まぁリリの修行の方も…」
リリルカの方を見ると彼女も床に倒れこみ力なく呼吸する。
「ま、最初はこんなもんだろ。それが自分で修行出来るように…達人になるまで続くだけだ。」
リリを横抱きにして部屋まで運ぶ。ベルは放置である。
「ま、男を抱きかかえる趣味は無い。自分で起き上がるんだな、ベル。」
「…は…い…」
「いい返事だ、これにて朝の修行終わり。ダンジョン行くにしろ何するにしろゆっくり過ごせ」
「…はい…」
そう言って涼介は支度を済ませるとホームを出る。
「…クラネルさん、運びましょうか?」
「…お願いします…」
リューの申し出にベルは涙が止まらなかった。
―――――
「さーて、今日は何にするか…夜に酒場行くのは決定だが…甘味でも食うか」
かなりの数の恋人から誰か選んでデートでも行くのも悪くないな…などと考えながら歩いていると肩を叩かれる。
「ん?」
「リョウスケ…」
昨日酒場でトラブルを起こした…ロキファミリアの少女アイズ・ヴァレンシュタイン。
と言っても彼女は否定しようとしていたのだが…
「なんだ、アイズか」
「…ごめんなさい‼」
「?」
「私、前よりは話すの得意になったけど得意じゃないというか…私達のせいで危険な目にあったのに。あの子が辛い目にあったのに私は…」
「それ以上良い。アイズ、頭を上げろ」
涙を流す彼女の目元を涼介は拭う。
「俺はあの場に居た。だから解る、お前は悪くないってな。だから泣くな…お前に泣かれたら俺は悲しいよ」
それにアイツをきっちり鍛えてなかった俺も悪いしな…と彼は続ける。
「リョウスケは悪くない‼だってあんなにも私を鍛えてくれたもん‼」
「今度は怒らせちゃったか、ダメだな~俺は」
頬を膨らませるて私怒ってます、という表情の彼女を見て苦笑する。
「ならこうしよう、俺とデートしてくれるか?」
「デート?怒ってないの?」
「俺は最初からお前には怒ってないよ…むしろありがとな、アイツを庇ってくれて。」
「いいの、だって彼はリョウスケの弟子なんでしょ?それなら私にとっては弟のようなものだから‼」
あちゃ~と天を仰ぐ涼介、
(ベルの恋路は長そうだな…ま、アイツが頑張っても振り向かせられなかったら娼館おごってやるか)
そうしてデートを始める彼らの後姿を鈍色の髪の酒場の店員がジッと見つめているのであった。
楽しめてる?
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面白いよ、このまま進め。
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もうちょい精進しても良いんじゃよ?