俺達は薄鈍色の髪の少女、シル・フローヴァの勧めにより、彼女の働いている酒場にて、エルフの治療をしていた。
と言っても手術が必要な傷は無く、軽い治療で済むのは助かった。
もっとエグい傷なら治療系のファミリアに行かなければならなかったから、その手間が無かったのは良かった。
「シルちゃん…だっけ?」
「はい、呼び捨てで構わないですよ、冒険者さん‼」
なんか目輝かせてグイグイ来るんだけどこの娘…しかし…
「なんかスープみたいな、胃に優しいモノを用意してもらえるか?彼女の様子見る限りあんまりご飯とか食べれて無さそうなんだ。」
「なんかお医者さんみたいですねぇ、わかりました、ミア母さんにお願いしてスープ貰ってきます。」
「頼む、お代は俺が払うからさ…それとヘスティア、血に濡れたタオルは俺が処理するから置いといてくれ。」
「わかったよ、ボクに何か出来る事はあるかい?」
「今は、下の方で食事を注文しといてくれ、この娘を連れ帰るしろ何にしろ俺らも食わんともたん。」
「わかったよ、向こうにお任せにするね。」
「ありがとう、頼むよ。」
二人が各々のすることの為に部屋を去る…
それを見て涼介は彼女に向き直る。
「ちょっとは落ち着いたか?風邪とか引いてなければいいんだが…」
「…私は…」
「名前くらいは聞かせてくれると嬉しいな、呼びかけにくいんでね。」
「…リュー…リュー・リオンです。」
「そっか、そんじゃリュー、事情聞かせれるなら聞かせてくれないか?」
「…あなたを巻き込む訳にはいかない…」
「…そっか、お前…優しいんだな。」
ピクリと反応するリュー、掠れた声で彼女は声を捻りだす。
「…私は…優しくなんてない…優しければ…仲間を見殺しになどしていない…」
「理由があるんだろ、そんな時も人生にはある。」
「……」
「…見捨てたかったのか?」
リューの語気が荒くなる。
「…見捨てたい訳があるか‼あんなに…あんなに最高の仲間を‼」
「なるほど…勝てない相手が来て、お前を庇う為に死んだ…って所か。」
「何故それを…?」
「俺もまぁまぁ戦いに身を投じている、その中にはそういう事だってある。」
「あなたも…?」
リューと涼介、失った者同士なのに、その表情…心は違う。
当然だ、人間は全く同じの経験など積める訳がない、完全に共感することなどできないのだ。
それでも…
「長いこと暗い道を歩いてると…この先もずっと暗いもんだと思っちまう…」
「……」
「前に進むことがイヤになる…」
「……」
「自分の道がこの先どうなってるか分かってる奴なんてこの世に一人も居ねぇ。」
「……ッ…」
「俺らにできるのは、立ち止まって泣くか、一歩でも前に進むかの二つだけだ…」
「……して…」
「リュー…アンタはどっちでも好きな方を選んでいい。入口までは俺が案内してやる。」
「……どうして…?」
「ん?」
「どうしてそんな事が言えるんです…私は、見ず知らずの…」
「…ん~…キミの笑顔が見たいから…じゃダメか?」
「そんな事を言って‼絆すつもりですか‼あなたも復讐を捨てろと⁉」
「復讐しても良いんじゃね?でも、やるなら後の自分が終わらせて良かった…なんて思える形で終わらせな。」
復讐をしても良い…そしてやるなら良かったと思える形で終わらせろ?
そんなの…そんなの復讐ではない…そう思った彼女は彼を罵る。
出来るはずない、いつか自分が闇に隠れるのを引きずり出し、必ず報いを受けさせる、それが奴らに対する復讐だ…と。
それを聞いた涼介は過去を思い返す…
『復讐か…』
『ああ、俺の大切なアイツをなぶり殺しにしたヤツを…絶対に殺してやる‼』
『今のお前では死ぬだけだわいのう。』
『なら…どうしろってんだ⁉』
『力をつけよ、お主には誰よりも才がある。儂等が教えるだけの価値がのう。』
『なら、力をくれ‼』
昔の自分と、今の彼女が重なった。
自分と違うのは師匠達が居なかったと言う事。
ならば…。
「力が欲しいのか?」
「…ああ、力さえあれば、私は‼」
魂の叫び…しかし、復讐だけではない、別の心も感じ取れた…それに賭けるには十分だと思えた。
「俺が鍛えてやる、弟子にしてやるよ。」
「…え?」
「強くなってそっから周り見てみな、それからでいい、これからの事考えるといい…俺はつえーぞ、何せオッタルも倒したからな。」
「ふふ…何ですかそれ…アナタはジョークのセンスは無いみたいですね。」
「なんだよ、ホントに俺は強いんだからな?」
「そうですね、立ち振る舞いを見ればわかる…アナタは強い、恐らく私よりも。」
少しはマシな顔になったか…
そう考えた涼介はスープを受け取りに行く為に扉を開ける…
扉の前にはバツが悪そうにするヘスティアと、ニコニコと笑うシル。
「あー…聞いてた?」
「ええ、ばっちりと。カッコよかったですね~色々と前を向いて歩いてもらう為に声をかける…彼女みたいな女の子ならイチコロなんじゃないです?」
そう言われたリューは恥ずかしそうに頬を染め、顔をそむける。
バツが悪そうにしていたヘスティアがピンとツインテールを立て、怒る。
「浮気だよリョウスケ君‼ボクと言うモノがありながら‼」
「やかましい、盗み聞きしといて厚かましいわ。」
「あう⁉」
パシンと頭をはたかれ、その場にしゃがむヘスティアを無視して彼はシルの手からスープをひったくる。
そしてリューに突き出す。
「ほら、食わせてやろうか?」
「大丈夫です、ありがとうございます…」
リューがスープを受け取り食べ始めるのを見やり、三人は下のフロアに向かうのであった。
―――――
「もぐ…でもさ、もぐ…彼女はどうするんだい?ウチで預かる?」
「それが一番だな、放って置いたら碌な事にならん。」
「彼女には私も目を付けてたんですけどねぇ…」
「…たまにここでバイトさせればいいか?」
「交渉成立…ですね、後もう一つお願いあるんですけど。」
「聞くだけ聞いてやる。」
「私とデートしてくれません?」
「俺は純朴な奴じゃないぞ?狼に食われても文句は言うなよ?」
「あらぁ…その時はその時ですね~。」
「もぐぅ⁉ダメだからね‼いかがわしい事なんて‼」
そう言ってヘスティアが立ち上がると同時に酒場のドアが開かれる。
都市最強の男、オッタル…それを見た冒険者達は逃げる様に会計を済ませ、出ていく。
「営業妨害じゃないかい、オッタル‼」
店主のミアが怒鳴るも、それを恐れずに店の中に踏み入る。
「すまん、ミア…だが今しかないと見てな。」
「アンタがここに来るなんて珍しい事もあるもんだ、そこの客に用かい?」
顎で涼介達のテーブルを指す。
「ああ、そうだ。」
「これから予約客が来るんだけどねぇ…」
「むこうがキャンセルするならその分も俺が払おう。」
「…あんまりこういう事やらないでおくれよ?」
「ああ、迷惑をかける。」
「全くだ…お客さん、この厳ついのが席一緒でもいいかい?」
その言葉にビクリと怯える表情を見せるヘスティアと、意に介さず酒の注文をする涼介。
「良いぞ、代わりにウチの主神怯えさせたんだ、ここの払いは持ってもらうぞ?」
「それはこの厳ついのに相談しな‼」
「あいよ~、オッタル、ここの支払いお前持ちな。」
「ああ。」
「凄いですねぇ、オッタルさんが怖くないんですか?」
「余裕勝ちした相手が怖い訳ないだろ、見た目だけでビビる時期はもう過ぎてる。」
「リョ、リョウスケ君…」
「怖がってるみたいだけど、すまんが用があるみたいでな、我慢してくれるか?コイツが暴れたら俺がぶっ飛ばすから。」
「う、うん…リョウスケ君を信頼するよ…」
ヘスティアの頭を撫でるリョウスケ、それを見て羨ましそうにして、頭を彼に差し出すシル。
彼女の頭を撫でると嬉しそうに喜ぶ。
「んで?何の用だ?オッタル。」
「ああ…」
オッタルの口から出る言葉に、涼介以外の酒場の人間は驚愕した。
長い間暗い道を…の下りは龍が如く0の桐生一馬の名言を借りました、今の彼女にピッタリの言葉だと思ったので。
次回ももう少し酒場、続くんじゃよ。
Q リョウスケって師匠たくさんいるらしいけど、誰が仲良かったの? 通りすがり乳のないアマゾネス
A 基本的に無手組のが仲良かったです、ジュナザードに関してはジジイ呼びして殺されない位には可愛がられてましたし、ガイダルからは芸術教えてもらったり…ディエゴとは映える戦い方一緒に研究したりしてましたよ。
後、美雲には延年益寿法教わるほどには可愛がられてました。
武器組は考え方が合わなかったものの概ね良好で、師匠達からは矢印向いてましたが涼介本人が多対一を辞さない考え方もするのが嫌なポイントでしたね。
楽しめてる?
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面白いよ、このまま進め。
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もうちょい精進しても良いんじゃよ?