戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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全てにおいて主を上回る呂布ちゃんの数少ない弱点①

内臓がデリケート。


62時間目 Passion

 

〜善Side〜

 

 

先頭には瀬能。その後に玲と私、最後尾に呂布が続き、校舎二階の廊下を当てもなく歩く。

 

ここは普段、学園の2年生がおもに使っている校舎で、私も玲も来るのは初めてだ。

 

「私たちが使っている校舎とあまり変わりはないのだな」

「廊下やトイレなんかの共有スペースはな。各クラスの教室は差がすごいぞ」

 

ただ感想を呟いただけで質問ではなかったのだが、瀬能が律儀に答えてくれた。

 

「そうなのか…瀬能のクラスはどのようになっているのだ?」

「…………」

「ナツルくんのクラスはどんな出し物やってるの?」

「ちょっとした喫茶店だな。あとで行ってみる?」

「いいの!?」

「この二年棟じゃなくて木造校舎の方で出してるから、すぐには行けないけどな」

「クラスの出し物なのに自分たちの教室でやっていないのか?」

「まー色々事情がありまして」

「そうか…そういえば2年はSからFまでクラスがあると聞いたが、瀬能はどこに属しているのだ?」

「………………」

 

自分のクラスの事になると途端に口を閉ざすようだ。なにか不都合でもあるのか?

 

…口を閉ざすと言えばもう1人、全く喋らない人物がいる。

 

「…………」

「ナツルくん、呂布ちゃんまだ具合がわるいみたい…」

 

心なしかぐったりとした様子の呂布。

玲の言葉に瀬能が立ち止まってこちらに振り返る。

 

「あんな劇物食った後なんだからしょうがないだろ。少し休むか?」

「……大丈夫…」

 

声に元気が無い。

 

呂布は先ほどのアイス屋で普通のバニラを頼んだが、一口食べた瞬間に瀬能と同じようなリアクションを取って倒れた。

 

店員に感想を聞かれたときは「……ゾディアッククラメーション…!」と呟いた。意味はよく分からないがとても強い衝撃とダメージを受けたということはわかった。

 

 

「瀬能も口にしたのに元気そうだな」

「流石に三度目だから慣れたよ」※本当は四度目。(姫路料理三回。劇物アイス一回)

 

 

…2年生とはそんなにしょっちゅう食事でダメージを受けるのだろうか。

玲が被害を受けないか心配だ。

 

 

「……………」

「おいマジで体調悪そうじゃねえか。褐色肌なのに顔が白いぞ」

「………大丈夫…」

「説得力がまるでないよ呂布ちゃん…」

 

同感だ。今の彼女はまるで余裕がない。

しかしなぜこうまで頑なに休むのを拒否するのか…

 

「(善、善!)」

 

玲が私の服の袖を引っ張りながら小声で話しかけてくる。

 

「なんだ、玲」

「(あのね、呂布ちゃんが休憩しようとしないのって多分、ナツルくんに置いてかれるかもって思ってるんじゃないのかな)」

「?そうなのか?」

 

どこかに腰を下ろす。

 

その間に別行動を取る。

 

瀬能がそんなことを提案するとは考え辛いが…

 

「考えすぎじゃないか?」

「(今の呂布ちゃんは心まで元気ないから、普段なら絶対ない!って言うことももしかしたらって不安になっちゃうんだよ、きっと)」

 

そういうものか。

 

しかし、玲の説明を聞く限りでは私たちが何を言っても聞かないのではないだろうか。

現に瀬能の説得が成功した様子はない。

 

 

「前から呂布ちゃん繊細だとは思っていたけど、ここまでとは思わんかった。吉井や直江とは違うな…もう保健室行くぞ」

「…!(ブンブンブン)平気…!」

「首横に振った反動でふらついてるじゃねーか。無理すんな」

 

 

体勢を崩して倒れそうになる呂布を慌てて瀬能が支える。

誰の目から見ても限界が近いのは明らかだ。

 

「(気持ちはわたしも分かるから止められないけど、少しでも別の想いに意識を向けられたら気分転換になるんじゃないかなって、思うの)」

「…?どうするのだ?」

「(ちょっと見てて…)ナツルくん!次はあそこ行ってみよう!」

 

小声で話すのをやめて、ある教室を指差しながら瀬能たちに向き直る。

 

玲の指の先にある店の名前は『放課後悪霊クラブ』。お化け屋敷みたいだな。

 

「…玲ちゃん今取り込み中なんだけど」

「うん、だからっ、行こう!」

「意味がわからないんですけど」

 

同感だ。

 

「どういうつもりだ、玲」

 

見ているように言われたが、つい我慢が出来なくて尋ねた。

 

「怖い思いしたら不安も吹き飛ぶと思って…」

「そんなんで体調良くなるわけねーでしょ」

 

どうやら瀬能には"不安"が"不調"に聞こえたらしい。

どういう耳をしているんだ。

 

「つーかせめてもうちょっとマイルドなアトラクションにしようぜ、黒魔術部のヤギの毛皮剥ぎとか」

 

……マイルド?

本当にマイルドなのかそれは?

よく分からないがマイルドとは言わないのではないか?

 

「そんなこと言わないで行こうよお化け屋敷ー!」

「なんで頑なに行きたがるのよ…そもそも玲ちゃん怖いの駄目じゃなかったっけ」

「そっ、そんなこと…ない!よ?」

「なんで疑問形だよ」

 

私はよく分からないが、玲は『怖い』もの全般が苦手だ。

週末のテレビ映画でホラー作品を見たら、1人で部屋で眠ることが出来ないほどだ。(なぜ見るのをやめないのだろう)

 

「ううう…〜〜善っ、善もお化け屋敷行ってみたいよね!?」

 

突如振り返り私に話を向ける。

その目は肯定してくれと力が入っていた。

 

「ああ、中がどうなっているのか興味がある」

「ええ〜、善くんも乗り気って…呂布ちゃんどうする?」

 

瀬能は肩を貸しているために密着している呂布に話しかける。

 

瀬能も身長は私より高い。一般の人間から見ても平均を超えているだろう。

そんな瀬能よりも呂布は頭ひとつ分ほど背が高い。並んでいると差がよく分かる。

 

「……いっしょ…」

「お前もかい。いやまあみんながいいならいいけどさ」

 

そう言って店の前に出ている受付に向かう。

 

瀬能本人は抵抗などないようだ。きっとホラーなどに苦手意識を持っていないのだろう。

 

「ぅぅ……」

 

反対に玲は表情を強張らせて緊張した面持ちをしている。

 

呂布の不安を吹き飛ばす前に玲が不安に陥っているのだが、いいのだろうか。

 

 

「いらっしゃいませー!5名様でしょうか?」

「あ?俺らは四人組だけど…なに、常人には見えない一人がいるとかいう演出?」

 

店に入る前から凝ってるな…と感心しているが、瀬能が言う『常人には見えない一人』は誰にでも見えるのが明らかだ。

 

「瀬能、先ほどから呂布の作品がずっときみの後ろについて歩いているぞ」

「ああ、仕舞うの忘れてた」

 

そう言って自分の背後、足元に目を向ける。

 

腰ほどの身長で、目と眉毛が描かれた頭巾に足が生えた不思議な存在。

 

工作室で呂布に作り出され、瀬能の作品と交換されたものだ。

確かメジエドとか言ってたか…

 

「製作風景をあんまり見てなかったけど、どういう仕組みで動いてるんだこれ。あの工房の素材でできてるんだよな?」

「先ほどからずっと周囲から注目されてるのはそれのせいだろうな」

「善くんが首輪してるのも目立つ原因だと思うよ」

 

…否定はできない。

 

行く先々で「あの男の子首輪してる」等の囁きが人混みから聞こえてくるからな。

 

「もう外したらそれ?」

「しかしせっかく玲が作ってくれた物を…」

「律儀な奴だな…それじゃあ……せめてコレで隠せ。俺まで目立つ」

 

瀬能はどこからともなく真っ黒い布を取り出し、それを私に押し付けてきた。

 

「昨日俺が使ったもんだけど、もう使わないからきみにあげよう」

 

喋りながらも布を、首輪が傷つかないように丁重に巻き付けていく。

そうして私は、傍目からはマントを着込んでいるような外見になった。

 

「不思議としっくりくるな。似合ってるぞ」

「善かっこいい!」

「そうか?」

 

そう褒められると悪い気はしない…いや、正直言おう。嬉しい。

 

しかし…

 

「瀬能、この布…学校のカーテンによく似ているように思えるのだが…」

「気のせいだよ」

「それにいったい何に使ったのだ」

「所用でちょっと」

 

その所用を詳しく聞きたいのだが、多分答えてはくれないだろう。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

バーンッ!

ケケケケッ!!

 

「ひぅっ!?」

 

 

 ……遊ぼうよ…

   遊ぼ…遊ぼ……

 

「ひゃあ!!」

 

 

        うふふ…

 

  くすくす……

 

    あはは…

 

 

「ううううう…こわいよー…」

 

 

お化け屋敷と化した教室に足を踏み入れてから数分だが、暗い室内と休みない演出に早くも玲の心が折れそうになっている。

 

「…………」

「素人の作品にしちゃ中々のクオリティだな」

 

そんな中を瀬能と呂布はいつもと変わらぬ様子で私たちの少し前を並んで歩いている。

この2人の後ろ姿がなかったらきっと、玲は一歩も進むことができなかっただろう。何も言わずに先頭を切ってくれてありがたく思う。

 

「玲、大丈夫か?」

「………ぴやー…………」

 

いかん、目が虚だ。

 

これ以上は玲の精神が持たない。今すぐここを出なくては。

しかし私たちから言ったのに早々に退散を申し出るのは…

 

「玲ちゃん善くん。もう限界だからギブアップしていい?」

 

いつの間にか瀬能たちが私たちと向き合うように立っていた。

 

「…瀬能、気遣いは嬉しいがその言い訳は無理があるぞ」

「いや気づかいとかじゃなくてガチで」

 

どこがだ。平然としていて普段通りの顔をしているじゃないか。

 

「な…ナツルくん…腕がすごい色してる……!」

 

そこで気付いた。瀬能の腕が、呂布が抱きしめている右の腕が………

 

 

紫色をしている、と。

 

 

「瀬能…大丈夫なのか?」

「うん…もう、肩から下の感覚も無いんだ」

 

末期じゃないか。

 

「俺を気遣うならとっととここから出よう。俺が隻腕を利点とした必殺技を編み出さないうちに」

「わ、わかった…」

 

それしか言えなかった。

 

暗くてよく分からなかったが、よく見れば呂布は小刻みに震えており、瀬能は額からあぶら汗を滲ませている。

玲以上に余裕がない。

 

 

「……………」

「レッドアームボルトとかどうかな。決め台詞は『真っ赤に燃えただろ?』とか」

 

 

「ぜ、善…」

「玲、振り返るな。早くここを出るんだ」

「う、うん…」

 

大分錯乱している瀬能に背を向けて入り口に向かって歩き出す。思わず早足になってしまうのはしょうがないだろう。

 

次の目的地は保健室で決まりだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こんな可愛くて美人な女の子に抱きつかれてるのにちっともうれしくないなんて…世の中クソだな」

「……!、…///」

「呂布ちゃんさらに力込めるのやめて」

 




■ゾディアッククラメーション
 セイントセイヤ。ゴールドセイントの必殺技12個をいっぺんに放つ技。
 原作では射手座の技が出てこないから必然的に使われる事はない悲しい技。

・メジエド…
 呂布ちゃんがなんとなく手掛けた作品。Fクラスのかぁビィ達と同じく自力で動くことができる。
 本当は動く気なかったけど手作りこーぼーに置いてかれそうになったので慌ててついていった。


善くん玲ちゃんナツルでやってみたかった絡みが今回のお化け屋敷の話。

ナツルにどうやってギブアップ宣言させるか考えてたけど呂布ちゃんがどうにかしてくれました。

玲ちゃん以外のことで動揺する善くんが見れるのは(多分)nickの作品だけ!

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