戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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自粛要請で外出できないこのご時世。
家から出て遊べなければ、内で思いっきり遊べばいいさ!


65時間目 Pagoda

「じゃ、失礼します」

「ええ、お達者で〜」

 

学祭初日にもされた見送りの挨拶で保健室を後にする。ただしあのときと今では足取りがまるで違うけど。

 

清涼祭の準備期間の時よりも身体の調子がすこぶる良い。最高にハイッ!て気分だ。今なら空だって飛べちゃうかも?

 

だからってまた保健室(あそこ)の世話になろうとは微塵も思わないけどね。二度と来るか。

 

「さて健康にもなったし次は…「副会長!」おん?」

 

廊下に出て数歩も歩かないうちに声をかけられた。

 

先ほど出てきた部屋とは別の教室の扉が勢いよく開き、中から数人の男たちが飛び出すように駆け寄ってくる。

 

「なんだお前ら」

「科学(プログラム)部の者です!」

 

言われてみりゃ、全員メガネでなよっとしてて白衣着てるな。

でもその科学部の連中が俺になんのようだ?

 

「副会長?」

「ナツルくんのことなの?」

「あ?ああ、善くんたちは知らなかったか?俺生徒会役員なんだよ。役職が副会長」

「副会長!ナツルくんすごい!!」

「不良副会長だけどね」

 

隙あらば退会しようと狙っているし。

 

「不良副会長!どうしよう善、カッコいい!」

「そうか、よかったな」

 

そーかなー?

玲ちゃんの感性っていまいち…善くんもなんか、対応がお座なりじゃない?大丈夫?

 

「あの…」

「あーハイハイ、話止めて悪かったな」

 

科学部の奴らがおずおずと声をかけてくる。

 

「いえ…なんか、今日の副会長優しいですね」

「そうか?」

「ええと…前回はウチの部員蹴飛ばされましたから……」

 

…そんなことやったっけ?

 

聞けばつい数週間前に協力を仰いだ時に「喧しい!忙しんだ俺は近づくな!!」とか言って文字通り蹴散らしたらしい。

 

あのときは学祭準備期間中で余裕がまったくなかったからな…ストレスもめっちゃ溜まってたし。

 

「まぁー…そんな日もあるってことで…ところでなんで声をかけたんだ?部費のアップなら無理だぞ」

 

南條千紗先輩がすべて仕切ってるから。

 

会計があの油断できない人ひとりっての問題ある気がするんだけど、今のところ円滑に進んでるから文句のつけようがない。同級生だったらと思うとゾッとするわ。

 

「そこをなんとかっ」

「部長、今はその件は置いときましょうよ」

「話が脱線しちゃいますよ」

 

白衣の集団が先頭の奴に注意する。

本当になんで声をかけたんだ。もう行っていい?

 

「ああっ、まっ、待ってくださいっ。じっ実は副会長に協力をお願いしたく話しかけた次第でして…」

「協力ぅ?」

「はい…」

 

協力って…科学部だろ?しかもプログラム、つまりパソコン使った作業が主だ。

 

ちなみに科学(工作)部はドリルとかハンダゴテとか使った作業を主にする部活だ。

基本この二つの部活でワンセットだけど、学園祭では毎回出し物のテーマで揉めるから事前申請で複数出展する事に決まってるんだって。どうでもいいねっ。

 

「俺にインテリ期待されても無理だぞ。成績よくないもん」

「いえ協力してもらいたいのはそういうソフト面ではなくて…ハードの方でして…」

 

ソフトじゃなくハード?パソコンのフレーム加工ってこと?

いまいちよく分からん。

 

「とりあえず詳しい事は中で…」

 

そういうと部長と呼ばれた男以外が、自分たちが出てきた部屋へ戻っていく。

 

空き教室かと思ったらここも出店舗のようだ。看板が出てた。

 

「どうするのだ瀬能?」

「うーん」

 

善くんの言葉に思わず唸る。

 

今の俺は完全オフだ。つーか例えオフじゃなかったとしても頼みを聞いてやる必要はない。

ないんだが…

 

「まぁ…アトラクションに参加すると思えば…」

「…!それで構いませんっ、ありがとうございますっ!」

 

科学部の部長はバッ!と勢いよくおじぎをして、部員たちが入っていった教室へと走り去った。

 

「そういやみんなはいいのか?次はあそこで」科学部の出し物がある教室を指差す。

 

「問題はない」

「……(こくり)」

「ずっとわたしたちが決めてたし、ナツルくんも自分がやりたいときは遠慮しなくていいよ!」

「ははは、ありがとう」

 

やりたい…ってのはちょっと違うかな。何するか分かってないし。ただ…

 

 

俺の直感が囁くんだ。『この出し物を見ろ』と。

 

 

「なんてね…」

 

戯言を呟きながら白衣メガネの連中の後を追うように歩きだす。

 

どうでもいいけどこの教室の看板に書かれてる名前なんて読むんだ?

Pagoda…英語はさっぱりだ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

ガラガラガラ、ピシャ。

 

 

俺・善くん・玲ちゃん・呂布ちゃんが室内に入り、最後尾の呂布ちゃんが扉を閉めた。

 

中は一教室の半分程の広さで…ってここ元々何に使われてだんだ?

 

「ここは保健室の備品置き場だったんですけど、なんか今の保険医の先生になってから中の物全部整理して移動させたらしいです。理由は知りませんけど…」

「なんとなく予想はつく」どうせ気まぐれだろ。

 

ぶっちゃけここら辺の人通りが皆無なのもあの人のせいだろ?この店が人気無いのも。

 

この部屋頑張れば保健室の様子観察できるぐらい近いもん。…エリザベスまたフロスト人形吊るしてら。(かわいそうだからやめてやれ)

 

「アレを倒すのは無理だ、諦めろ」

「なに言ってるんですかいきなり!?」

 

え?違うの?

 

「この近辺の無人化を解消するために元凶を排除してほしいって依頼なんじゃ」

「ないですよそんなの」

「もう3日目なんだし集客は諦めてます」

 

そうか……よかった。

ぶっちゃけ俺と呂布ちゃんがコンビ組んだとしても手も足も出ないだろうからな。

 

あの治療術が美鶴先輩の処刑と同じような能力だとしたら、力の源が見えないから対抗できん。

 

「協力してほしいのはそういった物騒な感じのじゃなくて…我が部で開発した作品の被験をお願いしたいんですよ」

「作品の被験?」てなんの?

 

俺の疑問に答える代わりに白衣の連中による人垣が左右にはけていく。

そうして現れたのは何やらゴテゴテとした椅子のようなもの。

 

「これは、人間の脳波を解析して過去の追体験を行える…VRシュミレーションシステムです」

「???」

「簡単に言うと、昔に対戦した相手と仮の世界でもう一度戦える装置…ですね」

 

……どっかで聞いたことある機械だな…

確かインナーファイターとか…

 

「ただ相当想像力が強くないと使えないみたいで…まだ1回も動作確認できてないんです」

「ダメじゃん」机上の空論じゃん。

 

「ですからっ、心体ともに強靭だと言われてる瀬能副会長にっ、何卒ご協力をと思いまして…!」

「お願いします!」

「我々の悲願なんです!」

 

「どうするのだ瀬能」

「うーん…」

 

どうしよう。

 

いや実験台になるのは別にいいよ?俺も健全なる男子だからVRとか言われてワクワクしちゃう気持ちは当然持ち合わせている。

 

ただねぇ…機械の見た目が…

 

「なんでこれ処刑用電気椅子みたいな見た目してんの?」

おかげでとても座り辛い。

 

 

「予算を節約するために他の部や同好会から不要になった物を使いました」

「こんな物使ってた部ってなによ」

「ええっと…たしか…打首拷問同好会とか、」

 

本当にそんな団体が我が学園にあんのか?

 

「電気を通す機能がどうしてもほしくて…他にも欲しがってる団体があったので、ゲットできてよかったです」

「こんな物欲しがった団体ってどこよ」

「えっと……なんていったか…」

「アレですよ部長、Fクラスの人が団長を務めるFFF団とかいう集まり」

 

 

………………………

 

 

「ああっ、そうだ、そんな名前だった」

「なぜか異様に執着してましたよね」

「非認可の団体じゃなくてきちんとした部だったらとられてたな…」

 

 

………………………………………………

 

 

「しかしいったいなにに使うつもりだったのか……そういえば副会長Fクラスでしたよね、なにか知って」

「――さっさと始めようか。時間は有限だ」

 

科学部の部長の台詞を遮って、椅子に腰掛ける。

 

別に俺がFクラスだっていうことを善くんたちに隠すつもりはない。ないんだが……なんか恥ずかしい。

 

誰にも言ってないけど召喚大会で自分の本心知っちまったからなぁ、にも関わらずなんか素直を認めるのはシャクというか…

それに話題に上がりはしたが、電気椅子の取り合いしたって話だから別の意味で恥ずかしい。なにやってんのウチのクラス。

 

 

「ここからどうすればいいんだ?」

「あ、はい、このバイザーを頭に付けてもらってですね…」

 

そう言って改造ヘルメットみたいなのを渡される。

 

この状況で視界を塞がれるメットを被らされるのは遠慮したいんだが…

 

「次に身体を椅子に密着させます」

「なんで?」

なんで俺の手足を拘束するの?

 

「電極になるべく多く接してほしいんですよ…なにしろ一度も作動したことありませんから」

 

それらしいこと言ってるけど目の前真っ暗な状態でカチャカチャと身体の自由を奪われるのってけっこう恐怖よ?

 

大丈夫俺?ここからいきなり「11121の男……!!」みたいな言葉吐いて白眼で鼻から血を流す最期迎えたりしない?

 

……まぁいざとなったら引きちぎるなりして脱出すればいいか。さっきまでと違って今は体調万全だから。

 

 

「ナツルくん…大丈夫なの?」

「…………」

 

側で玲ちゃんの不安げな声が聞こえてくる。

 

視界が塞がれているから顔は見えないが、純粋に俺の心配をしてくれているんだろう。

一言も発していないが善くんと呂布ちゃんも同じ…はず。

 

なんか背中がむず痒くなってきたな。早いとこ終わらせてくれ。

 

 

「それじゃあ……いきますっ、VRシュミレーションシステム、起動!」

「ギャァぁぁああああああ!!!」

 

 

科学部の部長がスイッチを入れた(と思われる)瞬間、俺の身体に紫電が走る!

 

「なっ、瀬能!?」

「ナツルくーん!!?」

「…!?…!!?」

 

突然の出来事に慌てふためく呂布ちゃんたち!

 

果たして瀬能ナツルの運命は――――――――――――――!!?

 




(頭の)内で思いっきり遊べばいいさ!

■インナーファイター
 龍がごとく。過去に戦ったボスと擬似戦闘できる摩訶不思議な装置。現実で作られる日は来るのかなぁ。

■ 11121の男……!!
 サイレントヒル4。自宅で電気椅子で殺害されたリチャードの台詞。悲鳴が楽しげに聞こえるのは気のせいだと思いたい。



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