科学部をあとにした俺たち。
次はどこに行こうかと当てもなく彷徨っていた。
ム"ーー、ム"ーー、
「瀬能、きみの左腕から変な音がするぞ」
「ああ、デバイスの着信音だ」
音楽とかうるさいからマナーモードにしてる。
のはいいんだけど、バイブはどうにかならんもんかねコレ。振動が強いからメールが来るたび腕が震えるんだけど。今回は電話っぽいが。
くすぐったくてかなわん。
とりあえず立ち止まってデバイスを操作する。
「(ピッ)お前か」
『そうだよ直江大和だよ』
そうか。じゃあな。
『まてまて待て!電話を切ろうとするな!』
通話終了の部位をタッチしようとしたのを察したのかデバイス越しに慌てた声が響く。うるせえなあ。
……ん?待てよ?
「お前なんでこの番号知ってんの?」美鶴先輩からの借り物よこれ?
『ナツルの携帯の番号にかけたんだけど…そういえばよく繋がったな。いつもだいたい電源入ってないのに』
俺の携帯すぐ電池残量がゼロになるからな。
てかなに、所持者にナイショで取り次ぎでもしてるのこのデバイス?それとも桐城グループからの計らい?
着脱不能になったり誤作動で勝手に通話したり、色々謎が多い機械だな…
「まぁいいや…それよりなんのようだ?なんかあったのか?」
『ああ…ああうん、今店にナツルの姉さんが来てるんだけど』
姉ぇ?俺の?
「俺一人っ子だぞ」
『いいから早く来てくれ。ガクトとかの嫉妬で店内が異界化しそうだ』
ブツっ、ツー ツー ツー
アイツ言いたいことだけ言って通話切りやがった。
前から思ってだけど俺の扱い結構おざなりじゃない?もしかして舐められてる?
どうすっかな……無視して…いやダメか。教室の設備環境整えるためになるべく売り上げ伸ばしたいって話があったっけ。
錆びた卓とクリーチャーのウェイターじゃ食欲湧かねーな。バズりはしそうだけど。
て事で…
「わりーな三人「……行く」とも、呼び出しくらったからって早い 早いよ呂布ちゃん」せめて最後まで言わせて?
俺が変な単語口走ったみたいになったでしょ。なに いくともって。
「私たちも行く!」
「後ほど案内すると言っていたし丁度いいだろう?」
「言ったけどさ…」
今じゃなくてよくない?
直江の口ぶりからしてぜってー問題あるよ。タダでさえ問題あるクラスなのに、問題に問題かけるなんて逆に平常な状態になっちゃってるかも?
じゃあ問題ない…いやいやいや、問題あるから連絡きたんだろ。
…止めよう。これ以上続けたら無限ループに陥る。不毛だ。
「一つだけ約束してください。クラスのことを嫌いになっても、俺のことは嫌いにならないでください!」
「なにを言っているんだきみは?」
うん、俺もわかんなーい。
「所属してるクラスがどんな環境だったとしても、それだけできみを嫌いになるなんて事あるはずがないだろう。馬鹿なことを言うな」
「そうだよ!私たちがナツルくんのこと嫌いになるなんて、あるはずないよ!!」
「(こくり)……主、大好き」
「………ぉ、おぅ…」
咄嗟に言葉が出てこなかった。
ヤバイ、身体がめっちゃ熱い…!不覚にも本気でグッときちまったぜ。
好き…好きか。この俺を嫌いになるなんてないって……ふっ、ふふふっ。
「言ってて恥ずかしくない?そういうの」
「?なんで?」
「なんでって…」
玲ちゃんの本気で分かってないって表情に言葉が詰まる。
三人ともが三人とも、いつもと変わらない様子で俺を見つめ返している。
すげーなキミたち…
「……主、照れてる?」
「そうなのか瀬能?」
「そっ、んなことーないさー?」
「口調がおかしいぞ」
「気のせいだよ、それよりさっさと行こうか」
返事を待たずにさっさと歩き出す。
「あ!ナツルくん待って!」
慌てて駆け寄ってくる気配がするが、無視して歩調を早める。今顔を見られるのは嫌だから。
赤く染めた上にニヤついた表情してるなんて知られたら恥ずかしいからな。
☆ ★ ☆
〜直江Side〜
・2-F 中華喫茶『ヨーロピアン』
「えっと…今連絡したんで、しばらくしたら来ると思います。店内でお待ち下さい」
「うん、わかったー」
長く青い髪のおっとりとした美人と、紅紫色をしたショートヘアーのつり目な美人と、黄赤みがかったツインテールの美少女を席に案内する。
「アミ姉ー、なんか頼んでいい?」
「そうだねぇ、ただ待ってるだけってのもなんだし。少しならいいよ」
「やった!」
この三人は先ほど「私と同じ青い髪の男の子いる?」と突然訪ねてきた人たちだ。
神月学園広しと言えども、青色の髪をした男子生徒は一人しかいない。意外なことに。
なのですぐに電話をしたんだが……
「チクショウ瀬能のやつ…こんな美人の姉妹がいたのかよ……!」
「ただでさえ無口系の巨乳美少女引き連れてるのに…三人もだなんて!」
「憎い憎いにくいニクイニクニクニクニクニクニクIIククククク」
来るんなら来るって先に教えといて欲しかったなぁ…そうすれば心の準備くらいできたのに。
「うぉぉっ!瀬能の身内だろうと関係ねえっ!美人のおっねーさーん!俺様と付き合ってくださーい!!」
「あ!ガクト!?」
年上の美人に目がないガクトが真っ先に突撃した!
それに対して三人―――のうちの年上と思われる青髪の美人と紅紫髪の美人の反応は、
「んー?ナツルくんじゃなきゃやだなー」
ばっさりと拒絶された!
青髪の人はかなりのブラコンだな…もう一人の方は…?
「そういやアミ姉、リュウへのお土産とかどうする?」
「ああ…どうしようかね。ここって持ち帰りはできるのかい?」
ガン無視!?
あああ、思いっきりぶつかりに行ったガクトがショックで崩れ落ちた。
でもいつも通りだな。
「あいにくテイクアウトはしていません…」
「そうかい。ま、竜には何か適当に買ってくとするかね。辰は何頼む?」
「…………」
「アミ姉、タツ姉寝てる」
「この娘は…目を離すとどこでも寝るね…」
………カオスだ。
今のこの状況を打破するのは俺には無理だ。救世主が…救世主が必要だ…!
「ナツルーー!早く来てくれーーーー!!たのむーーーーーーー!!!」
「今猛烈に帰りてえわ」
うわビックリした!!
「近くにいたからしょうがなく来てやったのになんだよいきなり。クリ●ンみたいな台詞吐きやがって」
いつの間にか来ていた青い髪の学友が、教室の入り口から冷めた目でこっちを見ていた。
その傍らには同じみの呂布と…見知らぬ男女が二人。誰だ?
「なんだい騒がしい…おや」
卓についていた三人組のうち、アミ姉と呼ばれてた女王様チックな女の人が入り口の方を振り返って…なぜか立ち上がる。
目当ての人間が来たから―――ってわけじゃなさそうだ。
「あーん?珍しいな。アミ姉のメガネにかなう奴がいたの」
「え?どういう意味ですか?」
ツインテールの子に質問する。
「アミ姉は一目見ただけで相手がSかMか分かるんだってよ。よくわかんねーけど」
SかMって…もしかして性癖?それを一眼で見抜くとか、そうっぽいとは思ってたけどやっぱりそっち系の職業の人だったんだな。
「ふーん…本格的な調教はまだやってないから目覚めてはいないみたいだね。それでも豚を飼ってるのは無意識か?いいねぇ、久しぶりだよここまで素質高いのは」
品定めするみたいに呟きながらゆっくりと女王様が歩いていく。
飼ってるとかSとか……心当たりは一人いるな。
褐色肌で見た目首輪してる女子生徒常に引き連れてたり、戦闘で嗤いながら必殺技連打する青い髪の男が。
納得の判定だな。
やがて彼女はナツルたちがいる教室の入り口にたどり着き―――
「どうだい?私について自分の才能を開花させてみないかい?」
「え?私?」
―――クリーム色の髪をした少女に手を差し出した。
ってそっち!!?
「ちょっとぉ!なんでそっちの方行っちゃうんですか!?」
我慢ができなくて思わずツッコミを入れる。
「もっと相応しいのいるでしょう、これっコレ!この青いの!!」
「おい人を指差すなよ」
うるさいちょっと黙れ!
「そいつはMだね。」
「ゑ?」ゑむ?
エム?
えむ。
エム。
「え?ナツルおまっ、Mなの?」
「…?俺はNだけど」
イニシャルの話じゃねえよ!!
昨日だって躊躇なくガクトに"気"を放って昏倒させたし、聞いた話じゃ吉井を換気扇に突っ込んで処刑しようとしたらしいし、とても肉体的精神的苦痛を喜ぶようなタイプじゃ…まてよ。
「ナツル。お前がいつも呂布に好き勝手に付き纏われても邪険にしないのは『こんな無害な見た目の奴にいいようにやられてる俺』みたいな感じで性的快感を得ているから…なんてことないよな?」
……………
「……何を言っとるのかねキミは」
一瞬の間が空いた後、ナツルが口を開く。
「俺がそんな変態なワケないだろう?」
さらにhahaha、と声を上げて笑い、俺の言葉を否定する。
でも顔はまったく笑ってない。
さらにその瞳は深淵のように黒く、見ていると精神が不安定になってきそうだ。いつもは青色なのに。
どっちだ。
とても気になるがこの話題を引きずるのは危険な気がしてきた。
こいつがSなのかMなのか、それは永遠の謎にしておこう。
『戦士』の七不思議に登録しました。(特に意味はない)
マジ恋から板垣三姉妹、再び登場。どうせだからとネタをぶっ込んでみました。
一発ネタだから特に深い意味はないです。多分。
Q.玲ちゃんがSっていうのについても?
A.…………