戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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72時間目 キマグレでワガママでヒネクレ

 

やり取りがひと段落したのを察して、皆んなが後片付けを始める。

 

 

「ところでナツル、そこの二人はいったい誰なんだ?」

 

最初から最後まで置いてきぼりを食らっていた顔も知らない男女に目を向ける。

観客みたいにじっとして一言も喋らなかったけど、ナツルの知り合いだよな?

 

「あ、忘れてた。悪いな善くん玲ちゃん」

 

ずっと廊下に立っていた二人に慌てて駆け寄るナツル。

……男の方が善で、女の子の方が玲、かな?

 

「終わったのか?」

「まぁ一区切りはついたけど…玲ちゃん飯食ってたんだな。通りで静かだったわけだ」

 

クリーム色の髪をした少女がドーナッツやらアメリカンドックやらをもぐもぐと無言で食べている。

 

さっき勧誘されてたはずだけど、その話はどうなったんだ?

 

 

「コレが俺が所属してるFクラスなんだが…あー……騒がしくてすまんね、マジで」

「ナツルくんなんであやまるの?みんな仲良しじゃない。ね、善!」

「賑やかだとは思う」

「そんなフォローいいから。黒頭巾被って青色のカツラつけた人形に鉈を振り下ろしてる奴らがいるんだぜ。ドン引きだろ?」

「きみによく合っているんじゃないか?」

 

 

 

……………………

 

 

 

ナツルは無言で教室の角へと歩み寄り、壁に向かって俯きながら体育座りをし始めた。

 

お似合いって言われたの相当こたえたみたいだな…

 

 

「………ストレートに傷ついた…」

「どうした瀬能。ひどく落ち込んでいるように見えるが」

「パンチの効いた皮肉言っといてよくもまぁぬけぬけと…」

 

「皮肉…?単純にクラスに馴染めているということを言いたかったのだが、気を悪くしたのなら謝ろう」

「お前よく恥ずかしげもなく言えるよなそういうの」

 

呆れた様子で立ち上がり善たちの元へと戻ってくる。

 

「馴染めていないのか?」

「まあ一年の時よりはクラスメイトと仲良くしてるかな。他んとこだとこんな風には――ってなに言わせんだおめーは!?」

 

 

…びっくりした。

 

何にびっくりって、思わぬところでナツルの胸の内を知ったことだ。

 

なぜかやたらと演技が上手いから、もしかしたら本当は俺たちに心を開いてないんじゃないかって思って心配してたんだけど…杞憂だったんだな。

迷惑なら打ち上げに呼ぶのもやめようかと考えてたけど(ゲンさんが出席辞退したし)、やっぱりナツルにも連絡はしとくか。

 

 

「あーもー、ヤメだヤメ!この話題やめ!約束通り案内はしたし問題も解決したから、直江の奢りの飲み物飲んだらさっさと他行くぞ!!」

「覚えてたか」流石にさっきの今だしな。

 

ただ俺が言ったのはナツルひとりだけに対してなんだが、いつの間にか呂布を含め四人全員に奢る流れになっている。抜け目ない奴だ。

 

「ナツルくん食べ物はダメ?」

「あんまり長居したくないんだよ。なんか呪われそうだし」

 

ナツルと善、玲の二人、それに呂布が四人席に座る。

その背後では黒頭巾のクラスメイトたちが何体目かのナツルの顔写真が貼られたわら人形にハンマーで釘を打ち立ててる。

 

せめて見えない所でやれ。

 

 

…ここで奢らないとか言ったらまた一悶着ありそうだな。

 

そうなったらとても面倒なので、諦めて全員分代わりに支払おう。

 

「ご注文は?」

 

辰子さんたち三人が来た時点で男子の大半が嫉妬の権化と化し、店が回らなくなったので、現在Fクラスは一時的に閉店状態になっている。

 

ウェイトレスやってた女子陣はこれ幸いと学園祭を満喫しに行ったし、ファミリーのみんな以外のまともなメンツもどっか行っちゃったから、仕方なく俺が給仕をするしかない。

調理は無理だから頼まれても出せなかったな。

 

 

「コーラ」

「えっと、私はカルピスがいいです!」

「玲と同じものを」

「……ウーロン茶…」

 

はいはい、コーラとウーロン茶が一つづつにカルピスが二つか。

呂布がウーロン茶なのはやっぱり中国産まれの偉人のクローンだからか?

 

「ってナツルはコーラなのか?」

 

厨房へ向かおうとした矢先、咄嗟に立ち止まって振り返る。

 

「なんだ。コーラ無いの?」

「いやそういうわけじゃないけど…」今まで飲んでるとこ見たことがない。

 

それはコーラに限らず、炭酸が入ってるもの全般にも言える。

だいたい飲むのはポカリかジュースだった。だから炭酸苦手なんだと思ってたんだが…

 

「あんまり飲まないだけで飲むときは飲むぞ」

「そうなんだ…」

 

俺たちと一緒の時は手につけもしないのに、自分から進んでの見たくなるような気分にさせられる。

 

善・玲・呂布(この子たち)はそういう相手なんだな…ちょっと嫉妬するぜ。

 

「二人とはどういう経緯で仲良くなったんだ?」

 

気になったのでナツルに聞いてみる。

 

「…経緯?」

「そうだよ。あるだろ、どんなきっかけで知り合ったとか」

 

俺の言葉にナツルは顎に手を当てて教室の上の方を見つめ、そのまましばらく…

 

一分ほど待ったが一向に口を開こうとしない。

おいまさか、

 

「忘れたのか?」

「……人との出会いは引力だ。近づき触れ合うことに意味や理由なんていらない。それなのに言葉にしろだなんて、ヤボだと思わないか?」

「忘れたんだな」

「ヤダ直江くんのエッチ!そんなこと聞きたがるなんて、ハレンチよ!変態!尻フェチ!!」

「一番最後のは否定しないけど」尋ねただけでハレンチ扱いされる馴れ初めってなに?

 

「とっとと飲みもん持ってこいよ。早く立ち去りたいんだから」

 

そう言って視線を向けた先には、破壊されたマネキンの小山が。

 

いったん片付けないみんな?

 

「さっさと俺をこの場から追い出した方がいいんじゃないのかね?」

 

その意見には同意だが、言ってて悲しくないか?

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

コーラやウーロン茶はいいけど、カルピスは何味がいいか訊いてなかったな…種類多いからちょっと迷っちゃったよ。

 

プレーンにしたけど最悪奢りだからってことで許して貰おう。

 

 

「あれ、みんなは?」

 

厨房から店スペースに戻ってくると、クラスの男子(黒頭巾被ってた奴ら)の姿が消えていた。

 

まさかナツルの逆鱗に触れて異次元に……!

 

 

「…神頼み?」

「なんだそりゃ」

「いやなんか、三年でどっか笹使った企画出してただろ」

 

 

三年生の企画…ああ、Cクラスがやってたな。

確か『未完成アート展』とか…

 

 

「その笹に願い事書いて吊すと願いが叶うとかなんとかって噂を信じて出てったぞ」

「あいつら…」神様にナツルを痛めつけてもらいにでも行ったのか?

 

みんな信じたのかなそんなジンクス…ガクトはともかく、キャップやモロもいないし。残ってるのゲンさんだけじゃないか。

閉めてるとはいえ、ひとりだけ残して店を後にするなよ。

 

 

「ゲンさんはなんで残ったの?」

「あ?…興味ねえからだ」

 

窓際の席で所在なげに一人座っていたゲンさんは、ぶっきらぼうに答える。

 

「本当は店員が直江だけになるのを防ぐためだろ。源くんやっさしぃー」

「えっ…ゲンさんそんな、俺のために…!」

「てめえら……」

 

ナツルの言葉に青筋を立てるゲンさん。

 

そんな本気で怒らなくても…

 

 

「ナツルは行かないのか?」

見たところ飲み物も飲み終わったみたいだ。

 

今はイベントリから出したであろう大量の食料を四人でシェアしている。

 

「もうちょっと休んでく」

「…とか言って本当は俺のために…!」

「そーですねー」

 

軽くあしらわれた。ちょっと寂しい。

 

 

 

 

 

「ちなみにCクラスの出し物にはすでに行った」

「あ、そうなんだ。ちなみになんて書いたんだ?」

「人に喋ったら叶わなくなりそうだから言わない」

 

……どんな願い事をしたんだろう。なぜかすごい気になる。




・3年Cクラス出し物『未完成アート展』

=ルール=

この作品展示場に完成品は無く、全て未完成品。手を加えて完成させるのはあなた。

Cクラス担任「今年も色々な人が手を加えてくれてますねぇ…おや、ここは笹スペースですか。気のせいか去年より多いですね。なになに……」

"世界がへーわになりますように!!"
"玲の願いが叶いますように"

「世界平和…自分のことばかり書かれている中でこれは尊いですねぇ。他人のことを願えるのも実に素晴らしい。ただ個人名を書くのはどうかと思いますけど」

"主とずっと一緒にいたい"

「九鬼家の使用人の方ですかねぇ、これも微笑ましい。叶ってほしい願いです」

"直江大和がEDになりますように"

「悪魔のような願い事ですね。いったい誰が書いたのやら…」
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