戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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76時間目 秘書も筆の誤り

・木造校舎棟 廊下

 

島田を皮切りに四人の人間が倒れ、教室中が騒然としだしたので隙を見て店から逃げてきた。

 

倒れた奴らがどうなったかは知らん。

とりあえず冥福を祈ろう。(※死んでません)

 

「さて、これからどうしようか」勢いで飛び出したがまったく当てがない。

 

一緒についてきた三人に問いかける。

 

「どこか行きたいとこない?」

「え?えっと………」

「とくにはない」

「……主が行くところ」

 

リクエストも無し、か。

呂布ちゃんのそれは聞く人が聞いたらストーカー発言と取られるから人前では言わないようにね。

 

しかし困ったな。目的地が消えてしまった。また当てのない屋台巡りでもするか?

 

 

「―――――もし」

 

 

「っもーしかーめよーかーめさーんよー」

 

ハイっ!とばかりに、玲ちゃんに合いの手を振る。

 

「ぅえぇっ!?せっ、せーかいーのうーちーでー、おーまえーほどー?」

 

驚きどもりながらも歌い、玲ちゃんは善くんに目を向ける。

 

「歩みの遅い者はない」

 

 

歌えや。

 

無表情に淡々と歌詞そのまま言っただけじゃねーか。メロディ付けろメロディ…まあいいや。

 

 

そこまでいって、自然と最後の一人に全員の視線が集中する。

 

「……?…!…!?」

 

自分に来ると思ってなかったのか、呂布ちゃんがあわあわと焦り出す。そして―――

 

「……………」

 

 

はらはらと静かに涙を流しだした。

 

…童謡知らなかったんだな。

 

 

「………教えてやるから一緒に覚えていこうな」

「呂布ちゃん泣かないで?」

「私も詳しい訳ではない」

「…………」

 

善くんと玲ちゃんも慰めに入る。

 

無垢な少女を泣かせて俺はいったいなにがしたかったんだろうか。

 

 

「進むべき道が分からず、お困りのようですね?」

「少しは動じろよ」

今の流れ全無視か。

 

現在進行形で俺が困ってるのは別のことだ。

 

だいたいどっから話しかけてきてんだ?廊下の壁際に設置してある…ほったて小屋みたいなところから聞こえてくるな。

 

看板に書かれている店名は『占いの館 THE長鼻』…

ちょっと、入りたくないな。ていうかこんな店あったか?

 

 

「良ければ(わたくし)が道を示してあげましょうか?」

「いらん。帰れ」

「信用できませんか?ではひとつ、あなた方を占ってあげましょう」

 

意味が分からん。

 

なんで占うことが信用の証明になるんだろう。謎だ。

 

 

「本日占いで扱わせていただくのはタロット…どのようなものかご存知かしら?1から10までの数札…4枚の人物札をスートとした4スート56枚の小アルカナと、寓意画が描かれた22枚の大アルカナで構成された78枚1組のカードのこと。今回は大アルカナのみを使わせて貰うわ」

「ナツルくん、ぐういがってなに?」

「比喩っていうか、抽象的な事柄を表した絵みたいなもん」

「スートは?」

「トランプのスペードやダイヤみたいなマーク」

「きみは博識だな」

 

なんでもは知らないわ。知ってることだけ。

 

逆になんで俺こんなこと知ってんだろ。謎だ。

 

 

 

「こちらは不思議なもので、同じようにカードを切っているはずなのに、出る結果は毎回違―あっ」

 

 

バララッ

 

 

…………

 

カードをシャッフルする音がしていたと思ったら、いきなりバラバラと札が落ちる音がした。

 

二十二枚しかないんだからミスるなよ…

 

 

「………」

 

しばし店側から静寂が響く。

 

そして――

 

「ふんっ!」

 

 

グシャッ!!

 

 

「ひっ!?」

 

いきなり何かを握りつぶす音がして、玲ちゃんが悲鳴を上げた。

 

俺もびびったわ。

 

「失礼しました。痛恨の合体ミスです」

「なにとなにを掛け合わせたんだなにとなにを」

 

なにもなかったかのように声をかけてくる店主(?)の女。

どうしよう。じんわり恐怖が湧いてきた。あれだ、保健室のときのエリザベス(アレ)に似てる。

 

今からでも逃げるか。

 

 

「瀬能様」

「はっい、」

考えを読まれたのかと、思わずどもった。

 

「まずは貴方について占いましょう……」

 

そう言って集中し出したのか、しばし無言になる。

 

さっきの不意打ちみたいな安っぽい静寂じゃなくて、今回のはなんか…雰囲気あるな。成功しそうだ。

 

ていうかなんでどいつもこいつも真っ先に俺を指名するんだ。目立つから?

 

「…出ました。貴方、人に言えない秘密を持っていますね?」

「待たせた結果それかよ」当たり障りがなさ過ぎてどうリアクションすればいいのかわかんねーよ。

 

人に言えない秘密なんて誰でもひとつやふたつ抱え込んでるもんだろーが。せめて内容を言え内容を。

 

ていうかそれ占いか?

 

「あら、言っていいのかしら?」

「べつに」やましい事なんてないし。

 

それを恥と思ってないからな!!

 

「では言いましょう。瀬能様貴方の秘密は……」

 

 

 

…………………………………………………………………………

 

 

 

早よ言えや。

 

訳ありみたいな物言いで引っ張りやがって。実は占い結果出てねえんじゃねぇのか?

 

 

「この一月(ひとつき)の間に女子生徒を押し倒していますね」

 

 

立ち去ろうかと考えた瞬間にエライ爆弾ぶちこんできやがったな…

 

俺がなんだって?

 

「ナツルくん……?」

「瀬能、それは本当か?」

「あっあらぬ誤解!」

 

善くんと玲ちゃんが引いてる!やめて、そんな目で見ないで!!

 

「する訳ねーだろそんなこと!適当なことほざくなや!!」

「おや、真実ではないと?」

「たりめーだ!俺のコンセプトは"さわやかなゲス"だがそれは暴力系であって、セクシャルな部分には適応されてない!!」

 

 

何言ってんのか俺自身分からないが、ここで引いたら性犯罪者のレッテルを貼られかねない。

 

有象無象からどう思われようとも気にはしないがこの三人からのマイナスイメージはなるべく無くしときたい。なんとなく。

 

 

「あ、でもあれか。モモさんとの試合とかでなら押して倒したことはあるな」

あの人も一応女子生徒だし。

 

「そういった戦闘関係ではなく日常生活でよ」

「じゃぁねーよ!なぁ呂布ちゃん!?」

 

ショックから立ち直り、側に控えていた彼女に話しかける。

 

文化祭準備期間中はあまり一緒にいなかったが、それでもこの一ヶ月一番近くにいた奴だ。俺がそんな不埒なことしてたら覚えがあるはず!

 

 

「………………………………………………なぃ…」

「ほらみろ!彼女もこう言ってる!」

 

いつもより沈黙が長かったのが気にかかるが、無実は証明された。

 

褐色の頬がほんのり赤い気もするけど、人前で涙流したのが今更ながら恥ずかしくなったんだろう。きっと。

 

 

「…まぁ、そういうことにしておきましょう」

「しておきましょうじゃねえよ、疑惑で終わらすな」そのような出来事はございません。

 

「だいたい押し倒したっていうんなら相手がいるはずだろ。でも被害届は一切出てないぞ」

 

出てたら学園総出で吊し上げられたうえで会長と美鶴先輩に処刑されてるだろうな。

 

「被害者側が貴方を庇ってるのでは?あるいは被害と思っていないのか…」

「押し倒されて喜んでるってか?そんな風変わりな奴がいるかよ」

 

俺なら襲いかかってきた瞬間に反撃するぞ。アロガントスパークで。

 




 ・解除条件:合体事故を起こす。

勘のいい読者ならお気付きだろう。そう、ナツルに押し倒された女子生徒が呂布ちゃんである事に!(誰でも想像つくわ)


朝眠っているナツルを起こしにいったところ、寝ぼけて抱きつかれそのまま押し倒されたのです。

なんの心構えもなく油断しきっていて、パニックになった彼女は主を無双投げして逃走。それからは恥ずかしくて再び登場するまで顔を合わせる事ができませんでした。

奇しくも学園祭の準備期間と重なったため、全く出会わなくてもナツルは変に思わなかった、という裏話があるとか無いとか。(ホントかよ)


次回もマーガレットとの絡みが続きます。UPは来週くらい。
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