戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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本編と関係あるようなないような間話回。




86.5時間目 Gulliver

 

 

勢いで立ち去ったけど、冷静に考えたらトイレ行った二人を待たなきゃいけないんだった。

 

校舎内で比較的単純な造りをしているとはいえ人が多いから簡単にはぐれる可能性がある。なるべく同じ場所にいた方がいいだろう。

若干の気まずさを覚えながら、Sクラス前に戻る。あの二人移動してっといいな。

 

 

 

「―――小僧、また力をつけたようだな」

 

 

 

廊下の途中にある狭い横道を通り過ぎようとした瞬間、突然声をかけられて思わず立ち止まる。

周りが騒がしいにも関わらずはっきりと聞き取れる低音(バス)。これは…

 

視線を横にずらすと、脇道に髪も髭も瞳まで金色の筋骨隆々な執事服を着たジイさんが、腕を組んで壁際にひっそりと立っていた。

こんなに目立つのに人目を避けれるから不思議だ。

 

「『九鬼揚羽さん』と小十郎の主従ペアの次はアンタか、九鬼家ってヒマなのか?」

 

 

ヒューム・ヘルシング。

 

一千人以上いると言われてる九鬼家の従者部隊の序列零位。とかいうジジイだ。

 

ぶっちゃけ立場がよく分からん。偉いのか偉くないのか…

 

 

「馬鹿を言え。秒単位で予定が入っておるわ」

「どこの馬の骨ともしれない善良な一般市民に喧嘩ふっかけるくせに?」

「チッ…ああ言えばこう言う…減らず口め……」

「テメーに足んねえのは他人に対する礼儀だろ」

 

コイツがこんなんだから小十郎とかメイド達(※忍足とステイシー)が素行良くないんだよ。

 

人生の先輩として、後陣の手本となるようにもう少し態度を改めようと思わんのか?無駄に歳取りやがって。

 

「あとは目か」

 

二つあるはずの鋭い眼光が、片方だけ眼帯に覆われて隠されている。

 

初対面のときはそんなのしてなかっただろ。真島の兄さんのコスプレか?

 

「貴様が原因だろうが…!」

「え?そうなの?」まったく覚えがないけど。

 

「意識を刈り取るつもりで串刺しにしてやったのに、気がついたら俺の片目を潰しおって…どうやったんだ?」

 

そういやコイツと戦ってから人智を超えた技(順逆自在の術やバラバラ緊急脱出等)が使えるようになったんだっけ。

 

このジジイのおかげと言えばそうなんだけど、礼は言いたくないなぁ。

 

だがあえてやる。

 

 

 

「キミとの戦いは俺を一段階引き上げてくれたよ。メルシィ、ヒューム」(ニコッ)

(ビキビキビキッッ)「……小僧…キサマァ……!!」

 

 

 

煽ったら鬼の形相で睨んできやがった。

落ち着けよジイサン。血管切れるぞ。

 

「九鬼ってクローンとか生み出せるくせに眼玉の再生できないのか?歪な医療技術だな」

「クローン技術を応用すれば臓器を作ることはできる。心臓などはまだ難しいが、眼や皮膚を元通りにする事は可能だ」

 

あーん?じゃなんでコイツといいさっきの『九鬼揚羽さん』といい、傷をそのままにしてんだよ。

アレか、俺に対する精神的な嫌がらせか。そもそも忘れてたから全然こたえてないけど。

 

「これは『戒め』だ。貴様を他と同じく赤子と侮ったが故に負った傷…二度、二度とこのような傷を作らぬように――」

「あ、善くんと玲ちゃん」

 

少し離れたところでキョロキョロと辺りを見回してる二人の姿が。

 

きっと急にいなくなった俺を探してるんだろう。勝手に移動してごめん。

 

「小僧ォォ…!聞いているのかキサマ…いい度胸をしているな……!!」

「キレんなよいちいち」川神の爺さんと違って短気なヤツだな。

 

ちゃんと聞いてるよ。一応。

 

「自戒もいいけど、いつまでも現役張ってないで後継者育てたらどうよ?他人に指導すると見えなかったものが見えてくるぜ」

「この俺に説教か」

「事実を言ったまでだ」

 

ワン子に色々教えたり、呂布ちゃんに色々教えたり、

 

思い返せば、ひかりちゃんとの特訓でも何かを得ていたような気がする。変わっていく自分を。

 

 

「大切なことはいつだって、自分じゃない誰かが教えてくれるもんさ」

「………」

 

これ以上玲ちゃんを不安にさせるのは可愛そうなので、ヒラヒラと手を振ってジイサンにサヨナラする。

 

願わくばもう二度と会わないことを祈って。

 

 

 

「待て、小僧」

 

 

 

一歩足を踏み出した瞬間に話しかけられた。

 

ブチ殺すぞジジイ。

 

「つい先日昔の傭兵仲間から連絡が来た。とある依頼を受けたが失敗し部隊も壊滅したとな」

「……」

「赤子ではあるが、他と比べるとマシな赤子だった。その奴が今回の件で傭兵稼業から足を洗うと決めたそうだ」

 

「貴様はどんどん力をつけていく。そんなに強くなってどうするつもりだ?際限ない強さでもって世界でも征服するのか?」

 

 

「ジジイらしいありきたりな発想だな。頭が固い証拠だ」

「なに…?」

「俺が欲しいものはそんなもんじゃない」

「なら何が――」

「あ!ナツルくん!」

 

ヒュームが尋ね返そうとした瞬間、俺に気づいた玲ちゃんが大声をかけてきた。

 

ぶんぶんと大きく手を振って笑顔を向けてくるその姿は――…失礼だがとても高校生には見えない。(本当に俺の一歳(ひとつ)下か?)

 

「玲ちゃんあんまりオーバーアクションしないでよ。こっちが恥ずかしい」

「ええ!あんまんに大葉(おおば)たくさん竹刀滅多はす斬り回し!?」

「それどうゆう状況?」

 

今ひとつイメージができん…この子は俺の想像の斜め上を行っている。

 

 

「おい小僧、質問に答えろ。貴様が真に欲しているのはなんだ」

「それぐらい自分で考えろ、老害が。何でもかんでも欲しがりやがって」

 

引き止めようとするヒュームをほっといて再び足を進める。

 

介護士じゃねーんだよ俺は。いつまでもジジイの相手なんてしてられっか。

身内でもねえクソ老人なら尚更だ。小十郎にでも遊んでもらえ。

 




■ヒューム・ヘルシング
 九鬼家従者部隊序列0位。ナツルとの戦闘で片目を負傷している(らしい)。
 負けず嫌いな性格でナツルにリベンジしようと考えているが、同僚や主から止められている上、ナツルの意味不明な技(順逆自在の術等)の原理がまったく分からないので手を出せずに常にヤキモキしている。
 本人に煽られてすぐキレるのは間違いなくこれが原因。


Q.ナツルくんヒュームに勝ったの!?
A.(ナツル談)さぁね。
A.(ヒューム談)標本にしてやろう……!
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