戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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90時間目 愚者の一念

 

〜〜〜〜

 

 

ム"ーー、ム"ーー

 

「(ピッ)どうした?」

『美鶴様!学園内でペルソナの反応が確認されました!!』

「なに!?どこだ!」

『二年体育館です!それと…』

「それと?なんだ?」

『…巨大なペルソナ反応の側に、試作機(デバイス)の信号が……!』

「……!!」

 

桐城美鶴はすぐさま携帯を切り、人目を気にせず二年体育館へと駆け出した。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

唐突だが、俺の戦歴はそこそこ多い。

 

さらにどちらかと言えば黒星(まけ)より白星(かち)の方が多い。

モモさんやワン子。些細な喧嘩を含めれば百近いだろう。

 

負けた試合についても惜敗が主だ。あともう少しで勝てたってのがほとんどだな。

例外は俺の祖父と叔母かな……数少ない惨敗の記録が身内ってどうなんだろう…

 

故に、初めて出会う。

 

 

「がハッ!!?」

 

 

挑んでも、全く手も足も出ないという状況に――

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「ヂィッ!!」

 

 

何度目かのアタックに失敗して、飛び跳ねるようにその場を移動し、距離を取る。

 

しかし、どんなにエリザベスから離れようとも、相手の射程距離から逃れた気がしない。

50mは離れてるんだぞ?釈迦の掌の上で足掻く孫悟空になった気分だ…

 

 

「――!ぐッ!!」

 

悪寒を感じ防御体勢を取ると、その直後に真横から強烈な圧力をかけられ、トラックに撥ねられたかのように宙を舞い床に転がる。

 

まただ…またこの謎の攻撃……まるで目に見えない大きな手で引っ叩かれてるみたいだ。

 

「いってー…」

「どうしたんだ瀬能!さっきからやられたばかりだぞ!?」

 

起き上がった俺に向けて、離れたところで善くんがヤジを飛ばす。

 

うるせえなぁ…スロースターな気分なんだよ今日は。ほっとけ。

 

「まさか…見えていないのか?そうなんだな?」

「なんだよ見えてないとか。怖いこと言うなよ」

夜眠れなくなるだろ。

 

…そういやさっき善くんと玲ちゃん、エリザベスじゃなくてその遥か上を見上げてたな。

 

もしかして()()()()()()か?霊的なものが今エリザベスに憑いていて、俺はソイツと戦ってるのか?

それなら雰囲気や性格が違うのも頷ける。

 

流石に幽霊に取り憑かれた奴との対戦経験は無いな。お化けとかが苦手なモモさんだったら発狂してるぞ。

 

 

「霊感はある方だと思ってたんだけどなあ」

『…どれだけ大口を叩いたかと思えば…資格無き者だったか…』

 

エリザベスの表情は変わらない。

 

しかしその目に込められた意味は明らかに"落胆"そしてゴミを見るような"見下し"。

 

Fクラスに入ってから散々向けられてきた視線だ。

 

 

『失せろ。貴様は我と戦う資格は無い』

「あ?おかしなことを言うな」

 

乱れた服を直しながら――もともと着崩してたからあんまり変わらない――口を開く。

 

「殴ったり蹴ったりするのに資格がいるか?覚悟一つありゃ充分だ」

 

そして再びボクシングのオーソドックススタイルで拳を構える。

 

『愚かな…せっかく見逃してやろうと言うのに、その好機を捨てるとは』

「そーいう上から目線が、反骨精神煽るんだよっ!!」

 

怒鳴りながらダッシュでエリザベスに突っ込む。

 

相手の射程圏内から逃げられないんなら、離れるだけ無駄だ。

 

『羽虫ほどよく煩く喚く…』

 

ゾクッ…

背中に悪寒が走った。攻撃が来る!

 

エリザベスの体勢は相変わらず棒立ちのまま。しかし攻撃は来るし避けれない。

なら防御で耐える!

 

 

ズ ドンッ!!

 

 

「ガッ――――!!!?」

 

いきなり上から、特大の鉄塊でも叩きつけられたかのような強烈な圧がかけられ、床に押し付けられる。

 

その勢いは俺を中心に体育館の床を陥没させる程――ってこのままだと押し潰される!

 

 

『染みとなって消えよ…』

「ガぁぁぁぁぁぁッッッ!!!?」

 

メリ…メリメリメリメリ…!

 

 

全身全霊の力を込めているのに、押し返すどころかびくともしない。圧力で強制的に地面へとめり込まれていく。

 

床のシミになるってレベルじゃねーぞこれ!!床板突き破って地下の物置部屋まで行っちゃう!

 

「イヤァァッナツルくん!!」

「…!!」

 

不意に、身体が沈み込む感覚がした。

 

 

硬い『地面に』じゃない。まるで液体の中にでも落ちたかのように、抵抗感なく下に沈み込んだ。

 

押しつけられすぎて感覚バグったか?と一瞬思ったけど、すぐに俺の意思とは関係無しに身体が急浮上する。

無理矢理水中に沈めたビート板のように勢いよく、そして都合よく、エリザベスの背後から少し離れたところに飛び出す。

 

『なに?』

「ブラッドフラウアシザーズ!!」

 

 

ザン――!!

 

 

振り返るエリザベスに向けて、"気"で作られた不可視の刃を振り下ろす。

 

しかしソレは当たるどころか、近づく前に見えない"何か"にぶつかって、呆気なく霧散する。

保健室や占いの館で見た物理無効とは違う。オバケにでも弾かれたか?

 

『潜水するような逃げ方に、魔法のような技…?貴様はただの資格無き者ではないのか?』

「嵐脚!!」

 

(タテ)がダメなら横からと、カマイタチを飛ばす。

が、同様に弾かれた。

 

『面白い…いいだろう。少し、遊んでやろう』

「ぐっ!?」

 

 

ザシュッ!!

 

 

突如、右肩に刺し貫くような強い衝撃を受けた。

 

同時に鮮血が流れる。見えない上に空中でうまく身動き取れんかった…!

 

 

『当たった瞬間に体を捩ってダメージを減らすか、器用なのだな』

「そりゃどーも……っ!!」

 

月歩で空を蹴り跳ね、後方に下がる。

 

今さらながら回復技無いって問題だな。痛みで腕が上がらん…!

 

「乱装天傀…!」

 

"気"を右腕に集中させて止血をすると同時に操作して無理矢理動かす。

 

 

『ほう…自身を強化する補助系統の技か…攻撃しかできぬ猪ではなかったのだな』

「狼・羊・羽虫ときて、今度は猪かよっ」

 

人外のパレードや。早く人間になりたーいとでも叫べばいいのかな。

 

「物理攻撃が阻まれるのはよく分かった。ならこいつはどうだ!!」

 

掌を地面に押し当て、そこから床を這うように"気"を広げる。

 

さらにその"気"を水へと変質させ、エリザベスの足元を水浸しにする。

 

『む?』

「ウォーターウェーブ!」

 

技名を叫ぶと同時に、勢いよく水柱が上がる。

 

水溜りの上にいたエリザベスも天高く――上がることはなく平然と地に足をつけている。

 

水圧は俺の目に見えない何かに負けて、彼女の周囲を避けるように曲がりながら水柱を形成していた。

ダミー人形で試した時は人形バラバラにしながら吹っ飛ばしたんだがな…

 

 

『水芸か?』

「るせーあらん((違う))わ!!」

 

 

悪態をつきながら両手で、さっき茜から奪い取った警棒を握りしめる。

 

「雷の呼吸・参の型!」

 

 

――聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)!!

 

 

一層速い動きでエリザベスの周囲を移動する。

 

……十数m離れて。

これ以上は見えない壁みたいなのに阻まれて、近づきたくても近づけない。

 

「デスペラードボム!」

 

即座に遠距離技を使う。

喰らえ融合剣技!!

 

 

 

――テンペストボム!

 

 

ドンッドンッドンッドンッ!!!

 

 

「うぉおおおおおおおおおお!!」

 

円を描くように駆けながら爆発する衝撃波を連続して放つ。

 

しかし集中砲火を浴びているはずのエリザベスはおろか、その立っている床にダメージを受けてる様子はない。

 

 

『騒がしい大道芸だ。…天も迷惑している』

「室内だよ!」

 

火を使ったから火災報知器が作動し、スプリンクラーから水が雨のように放射される。

 

ジリジリという警報音と、防火シャッターが勢いよく落ちる音が辺りに響く。

退路は塞いでしまったが異変に気付いて誰か来てくれるだろう。

 

 

「絶対強者みたいな余裕かましやがって青白電波眼が!テメーなんて所詮ストーリーに関係ないやり込み系の敵なんだよ!!」

 

走るのを止め、警棒を捨ててエリザベスに向き直る。

 

「今の攻撃はダメージを与えるためじゃない!俺の狙いはお前を濡らすことだ!」

 

叫びながら両腕を大きく広げ、掌に"気"を集中させる。

今度は氷だ!

 

「喰らえ、オーロラボレアリス!!」

 

両手から胸元に向けて凍気を発し、それをビームのように一気に放った。

 

バキバキバキバキ!!

 

『むっ』

 

冷凍ビームが当たったエリザベス周囲の空間が瞬く間に凍りついていく。

 

氷は水で濡れていたところを侵食するように広がってゆき、数秒でエリザベスを閉じ込めた。

…思ってたより見えない壁の範囲が広い。もしかしたら俺が対峙している"何か"は、今まで戦ったどんな奴よりも強大なのかもしれない。

 

なら殺す気で行こう。

 

「プリズムレーザー!!」

 

 

ガッ―――!!

 

 

最大限までチャージされた"気"が、技名通りレーザーのように素早く真っ直ぐに空を切り裂く。

 

俺の持ち技の中でもトップクラスの殺傷力を誇る禁じ手。初めて使った時はダミー人形だけでなくその背後の物さえ切断した。

 

身動きができない状況でまともに喰らったら命に関わるだろう。

だが構わん、死ねエリザベス!

 

 

『ケラウノス』

 

 

―――――――

 

「え?」

 

気がつけば、眼前が真っ白に染まった。

 

気がつけば、迸る衝撃と激しい痛みが全身に隈なく走り抜けた。

 

 

初めて覚える。

 

 

 

 

全力で挑んでいるのに触れることさえ出来ない

 

 

 

 

絶望感。

 

 

――――――――バヅンッ

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

〜〜〜〜

 

 

『下等にしては粘ったな…』

 

床に力なく転がる青い髪の少年を、冷静に見下ろすゼウス。

どこか寂しそうだった。

 

が、それも一瞬のこと。すぐに憑依しているエリザベスごと身体を180度反転させ、背後を振り向く。

 

『さて』

「ひぅっ…!」

「…!!」

 

『ほう、戦う意志を見せるか…』

 

 

視線を受けて、咄嗟に怯えた様子を見せた玲とは対照的に、強く睨み返す善。

 

 

彼は決意していた。ナツルが倒された時に。

 

いやあるいは防火シャッターが降りた時…それよりも前、ナツルが戦闘を始めて一方的にやられている時から決意を固めていたのかもしれない。

 

次は自分が戦う、と…

 

恐怖に震える少女と、見えもしない相手に一歩も引かず果敢に戦った少年を逃すために、足を踏み出す。

 

 

「善…?」

「…玲、私が――」

 

「ま…だ……だ……」

 

 

「!?」

 

倒れ伏していたナツルがゆっくりと立ち上がり、再びファイテングポーズを取る。

 

 

 

"何かが切れる音が聞こえた"

 

 

 

「まだ…限界なんかじゃない……!!」

 

 

 

"それでもいいと、思えたんだ"

 

 

 





・解除条件:ペルソナを所有せずに「力を司る者」に挑む。


■ブラッドフラウアシザーズ
 セイントセイヤ。本家とは違いナツルのは腕の振り下ろしに合わせて刃状の"気"の塊を指定した場所に上空から落とす技。前にも使ったかな?

■嵐脚・月歩
 ワンピース。うちの主人公、月歩は割と使ってるイメージある。

■乱装天傀
 ブリーチ。凄い技のはずなのに本家では一回ぐらいしか使われてない気する。

■ウォーターウェーブ
 ロックマン。5のボスが使う特殊能力。"気"を水に変えるって今更ながら格闘の領域を超えてない?

■雷の呼吸〜
 鬼滅のヤイバ。最終決戦で敵が使ってた奴。

■デスペラードボム
 レイブ。こっちはラスボスが使ってた技。

■オーロラボレアリス
 セイントセイヤ。ポセイドン編読めば使い手がわかるヨ。
 基本的にうちのナツルくんは敵の技が大好き。

■プリズムレーザー
 ポケモン。
 プリズムの ちからで きょうりょくな こうせんを はっしゃする。

■ケラウノス
 ペルソナQ。5とかで見た覚えないから完全専用技なのかな。

・何かが切れる音が聞こえた
 Dグレイマン。主人公が咎落ちした味方を助けようとして使った台詞。
 「限界なんかじゃない…!」も別の戦闘をメインとした少年漫画で見た台詞だけど、似たようなのはどこにでもありそうだから割愛。熱血系はナツルに合うなぁ


※どうでもいい設定:ナツルのイベントリは本人が急に意識を失うと、仕舞ってるアイテムをランダムで一個排出する。本文で使ってた警棒も描写はないけど床に落ちてたやつ拾ってます。

なんだその欠陥。
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