戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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こぼれ落ちる。押さえられた本音。




92時間目 100%の本気、0%の覚醒

 

『舌が痛くなるから嫌なんだよ。妙に甘ったるいあの味も好きになれないし』

 

 

訳の分からない瀬能の独白に、私を含む全員が静かに聞き入る。

 

 

『でもパーティーで一人だけ飲んでないのもシラけるじゃん?だから結構ガマンしてるんだよね』

 

 

『あぁ、でもアレだ。あのシュワシュワって音は好きだな』

 

 

『いつからかな…あの音が好きになったの。確か…茜とレッサーパンダ先輩と初めて出会って、ひかりちゃんと仲良くなった時だったな。うん』

 

 

『…聞こえたんだよ。おまえらからも、炭酸がはじける音が』

 

 

『プライドは捨てられる…!でもおまえらは捨てられねぇ!!』

 

 

『気を許せる友達を犠牲にしてまで生を謳歌できるほど、俺は人でなしじゃねえ』

 

 

 

……自分の……目の…節穴さに…嫌気がさす………

 

私は瀬能(かれ)の何を見ていたのだろうか。

ひねくれてはいても真っ直ぐに、乱暴であっても繊細に、

 

たやすく他人を傷つけようとも仲間のためなら我が身をも犠牲にできる。それが瀬能ナツルという人間のはずだ。

 

「さっきの狂気じみた姿は演技か…」

 

すっかり騙されてしまったな…役者にでもなれば、その演技力で一躍時の人となるだろう。

 

「どう見ても本気でしたけど…」

「というかレッサーパンダ先輩っていったい…」

 

私と一緒にモニタールームに来た桐城の研究員二人、無駄口を叩いていないで早くロックを解除してくれ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

突然だけど関係ない話をひとつしよう。

 

俺は現実・非現実(マンガとか)に関係なく、見たり聞いたりした技をだいたい模倣できる。

もちろんオリジナルに比べると微妙に違うが、まぁそれはどうでもいいだろう。

 

しかし、そんな俺だがどうしても()()()()()()()()()()

 

…モモさんの『瞬間回復』だ。

 

"気"を活性化させて傷を癒す――と、理屈や効果を何度も説明してもらったが、いまいち理解できなかった。

それが理由かは知らないが、とにかく俺は瞬間回復が使えない。

…そもそも回復系との相性が悪いのかもしれない。波紋も使えないし。

 

間話休題。

 

 

『青臭い餓鬼が…!』

「あ?」なんだいきなり。

 

『自らを由とせず他者に縋り、他者との相対でしか己を語れぬとは見下げ果てた者よ!馴れ合いから何が生まれよう!?それは己を鎖で絡め、足を萎えさすだけだ!!』

 

 

ゴゥッ!!!

 

 

「きゃあっ!」

「くっ!?」

 

静まりかえっていたエリザベスから突如圧力が発せられ、それが暴風のように辺りを吹き飛ばす。

 

咄嗟に全力で踏ん張らなかったら俺も引き剥がされてたぜ…今離されるのはマズイ…!!

 

『目を覚ますがいい!他者に縋り、己を背負わせ、怠惰を貪るその生に、何の価値もありはしない!』

 

「うるせーなぁ…」

 

遠慮なく叩きつけられる突風に顔を顰めながら、両腕をゆっくりと前に出す。

 

ぐぢゃぐぢゃどうでもいいこと語りやがって。

一番重要なのはただひとつだ。

 

 

「空が泣いたんだよ」

『惰弱なり!!』

 

 

怒声と共にエリザベスが手に持った本を大きく振りかぶる。

 

思った通りあの不可視の攻撃は距離が近すぎてできないようだ。

テンション下がったせいかホットリミットも解けちまった。もう使えない。

 

つまりこれが最後のチャンス!!

 

 

ヴォンッッ!

 

 

斬りつけるような本での攻撃を、先程と同じく地面に沈み込んで素早く躱す。

そしてすぐさまエリザベスの背後に浮上。

 

空振りで無防備な体勢の、その頭部に両の手の指を優しく押し当てる。

 

『っ……?何――』

 

 

ゾッッ…………

 

 

触れている指越しに、エリザベスが()も言われぬ怖気(おぞけ)を感じたのを察した。

 

 

 

―――先程の話の続きだが、俺は『瞬間回復』が使えない。

 

だから川神院の奴とかには、派生技である『人間爆弾』は使えないと思われている。

真実は違う。

 

 

『貴様いったいッ!?』

「吐いた唾は飲めねえ…」

 

一回だけなら使える。一度の戦闘で一回だけなら。そのあと大ダメージで戦闘不能になって、尚且つ数日は怪我で後引くけど。

 

でもそんなことはもういい。あとの事は考えない。生涯で最期の技を放とう。

最大の威力の技を。

 

 

『バカなッ貴様、まさか死ぬ気か!?』

 

 

「なっ、!?」

「ナツルくん!!」

 

焦るエリザベス、善くん玲ちゃんの声、バイブするデバイス。それら全てを無視する。

 

"気"を高められる限界値まで高め、爆発の範囲は1.5mほどに設定。

 

最悪倒せなくても床に穴ぐらいは空くだろう。隙を見て脱出してくれ。

大丈夫。グロ映像は見せないように、粉々の木っ端微塵に燃え尽きてみせるから。

 

だから――

 

「俺と一緒に地獄を味わえ!!」

 

人間爆弾――――

 

 

 

 

 

 

 

 

『…次は…二人きりで見たい……かも、…花火……』

 

 

 

 

 

 

 

 

突如脳裏に響いた聞いたことのない女の台詞。

 

技が発動する直前。あと一歩のところで、その手が止まった。

 

『雷の洗礼!!』

「ギャァッ!」

 

 

静止した僅かな瞬間に、電光と激しい痛みが襲いかかる。

その衝撃で頭部に触れていた手が離れ、勢いよく吹き飛び体育館の床を転がる。

 

『…ハァ…ハァ……危なかった………よもや人間に恐怖を覚える日が来ようとは……!』

 

エリザベスが肩で息を吐き、流れる額の汗を手の甲で拭いながら振り返る。

 

畜生……最後のチャンスだったのに…!!

 

 

失意に加えて疲労とダメージで水中にいるかの如く重い身体を無理矢理に動かし、ノロノロと立ち上がる。

 

 

シャレになんねぇ………………

 

 

 

……花火見たさに生き残っちまった……!

 

 

 

『…先程の言葉は撤回する、貴様は餓鬼ではない…戦士だ』

 

『故に我が全力を持って排除する』

「グっ……!」

 

 

その言葉通り、奴から先ほどまでの見縊(みくび)った様子が消えて、戦闘技者の雰囲気が発せられる。

 

ダメだ。まったく隙がない…

さっきまでは本気じゃなかったから少なからず対応出来ていた。

 

しかしもう無理だ。きっと近づくこともできない。

それどころか次の一撃を避けることも難しいだろう。

 

俺のせいだ…弁明のしようがない…ほんの一瞬、幻聴に気を取られたためにせっかくのチャンスを無駄にした。

 

それだけじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という甘い期待さえも打ち砕いた。

 

逃げ道を塞ぎ、チャンスを潰し、選択肢を奪った。

出来ることはもはや無い。ならせめて―――

 

 

「ぐぅ…っ」

 

刺し貫かれた右肩を押さえながら足を動かし、善くんと玲ちゃんの前に立つ。

 

 

せめて…二人の盾になろう。

 

 

こんなどうしようも無い俺のために泣いてくれる少女。

 

 

 

「瀬能…頼む、逃げろ…!!」

「……出来ること言えよ…」

 

 

 

相談もせず勝手に防火シャッターを下ろして逃げ道を塞いだのに、責めるどころか逃走を促す少年。

 

 

 

…一瞬だけだったんだ…迷ったのは……

でも限りなく永遠に近い"一瞬"

 

 

こんな優しさの塊みたいな二人を置いて自分だけ逃げようとしたんだなぁ…

 

 

 

『闇の審判』

 

 

微塵も情を感じさせない女から真っ黒な闇の塊が放たれる。

 

俺が使うギャラクティカイリュージョンと似たようなものなのかもしれない。アレに触れたら助からないだろうというのが直感的に分かる。

 

 

何がしたかったんだ?俺は?文字通り決死の覚悟で自爆を行おうとしたのに、一時の気の迷いで死にそびれた。

 

たかだか数分寿命を伸ばすために生き残ったのか?無様に無駄死にするために?

 

確かに迷ってばっかりで罪深いかもだけど、これはちょっとあんまりじゃないか…?

 

 

 

 

………強くなりてぇ…

 

最強じゃなくていい。ただ、ほんの少し、

大切な友だちを守れるくらいに――

 

 

強く…強くなりたい!

 

 

 

 

 

 

 

 

(ガハハッ、いいぜ…力になってやる!)

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

ガカッ!!!!

 

 

「、!?」

 

 

心の底から強く願った時、いきなり目の前で閃光が爆ぜた。

 

眩しくてつい腕で顔を庇ったが、隙間からその光にぶつかって暗黒球が消滅するのが見えた。

 

「なっ…何が…」

 

警戒しながらゆっくりと腕を下ろすと、

 

青白く輝く一枚のカードが、宙に浮いていた――――

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜美鶴Side〜

 

 

ほんの数分前まで瀬能の自爆で騒がしくしていたモニタールームが、画面からの音声を除いて時が止まったように静まりかえる。

 

幸い自爆は未遂に終わったが、ある意味でそれを上回る問題が目の前に広がっている。

 

 

「なぁっ……あぁ………?」

「あ…ぁあ……」

 

 

同じくモニターで体育館の様子を確認している研究員も言葉が出てこない。

それだけの衝撃が繰り広げられている。

 

私は、震える手で携帯を取り出し電話をかける。

 

「……私だ…学内の桐城関係者を全員、二年体育館にあつめろ………」

『はい?美鶴様、なにを――』

「今すぐにだ!急げ!」

 

電話の向こうの相手―――桐城グループ所属の研究員―――の困惑を無視して、一方的に通話を切る。

 

そして一度も目を離していないモニター画面を、穴が開くほどに見続ける。

 

 

「なぜだ…瀬能……」

 

 

あの二人…卯月善と卯月玲なら分かる。

 

昔見た資料によれば二人とも僅かながら適正があったはず。危機的状況に陥れば覚醒する可能性もあるだろう。

 

しかし、

 

 

「お前の適性はゼロのはず…それなのになぜ……ペルソナを召喚させられる!?」

 





■雷の洗礼・闇の審判
 ペルソナ2の魔法。エフェクトと効果は本家とは異なります。ご了承ください。


適性0%。
それ故にその『力』は、純粋な思いから生まれた――

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